« 「第二百二十八話」 | トップページ | 「第二百三十話」 »

2010年11月 3日 (水)

「第二百二十九話」

 古い廃屋な古い地下牢な場所。
「貴方、誰?」
20代前半の女。
「お前こそ、誰だ?」
30代前半の男。
「ねぇ?その人、死んでるの?」
「死んでるだろ?普通・・・・・・。」
そして、横たわる無数のナイフが突き刺さった60代前半の男。
「いやあああああああ!!!」

第二百二十九話
「密室」

「・・・・・・・・・黙れ。」
「だ、黙れって、目の前に死体があるのよ!」
「冷静になれよ。」
「冷静になれって!冷静になれるわけな・・・・・・・・・。」
女は無言になり、男を見た。
「何だよ。」
「まさか、貴方が殺したんじゃ!」
「はあ?」
「だってそうでしょ!アタシじゃないもん!だいたい、アタシこの人知らないし!貴方・・・。」
再び女は無言になり、男を見た。
「どうした?」
「ねぇ?知ってるなら教えて!」
「知ってるならな。」
「アタシは、誰?」
「その様子だと、俺が誰なのかは、教えてもらえそうもないな。」
「えっ!?ちょ、ちょっと待って!これって、まさかその・・・・・・・・・。」
「記憶の・・・喪失。」
「それ!!」
「一時的なのか知らないが、俺達は記憶を喪失してるみたいだ。つまり、この男を殺したのは、俺ではなく、お前かもしれないって事だ。」
「アタシなはずないじゃない!」
「なぜ断言出来る?記憶を喪失してるのに・・・・・・・・・・・・・・・。」
男は無言になり、女を見た。
「な、何よ!」
「だが、こうも考えられる。」
「はい?」
「この男が、俺達を殺そうとしていた。」
「はあ??じゃあ、なんで死んでるのよ!」
「鈍い奴だな。」
「何ですって!」
「逆に俺達が殺したんだよ。正当防衛って奴だ。」
「なるほどね!・・・・・・って、ちょっと待って!逆の逆に、アタシ達がこの男の人を殺そうとして殺したって事も考えられるって事?」
「なら、見事に成功だな。」
「冗談はやめてよ!」
「お前が言い出したんだろ?それに、冗談かどうかは、分からないだろ?本当は今頃、どこかのレストランで祝杯を挙げてたかもしれないんだぞ?」
「でも!それって憶測だし推測じゃない!」
「ああ、そうだ。全くその通りだ。全てがな。」
「全て?」
「ああ、とにかく俺が言いたいのはな。記憶を喪失してる俺達には、無限のシチュエーションが考えられるって事だ。そして、現段階では、そのどれもが憶測や推測の域を越えられないって事だ。」
「それってもしかして?アタシ達が恋人同士とか?ってのもアリ?」
「純粋に愛し合ってる仲かもしれないな。」
「とても笑えない、凄く面白いジョークね。」
「試しにキスでもしてみるか?何か思い出すかもしれないぞ?」
「思い出さなかったら、貴方の事、おもいっきりブッ飛ばすわよ?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「もう1つ、可能性がある。」
「可能性?」
「俺達3人共が被害者だって可能性だ。」
「誰かに監禁されてるって事?」
「ああ、そして故意に記憶を喪失させられた。」
「まあ、それもアリかもね。寧ろ妥当?」
「だったら話は早い!」
「えっ?どうする気?」
「出るんだ。」
「出る?ここから?」
「そうだ。」
「どうやって?」
「はあ、やっぱり俺達は、恋人同士じゃないみたいだ。安心したよ。」
「何の話よ!」
「俺は、お前みたいな鈍い女が嫌いみたいだ。」
「どう言う意味よ!」
「いいか?どうやって出るかって?あのドアから出るに決まってるだろ?」
「はあ、良かった。ホント、アタシ達は恋人同士じゃないみたい。」
「何?」
「アタシ、貴方みたいに後先考えずに突き進むタイプの男って、大っ嫌いみたい!」
「何だと!俺のどこが後先考えてないって言うんだ!」
「アタシ達、記憶が無いのよ?もしも、この場所へ故意に逃げ込んでいたとしたらどうするつもり?」
「逃げ込んだ?」
「ええ、そうよ。例えば、何かから身を隠す為にとかね。」
「何かから?殺人鬼からか?」
「殺人鬼からとは限らないわ。謎の病原菌とか、ゾンビとか・・・・・・あと・・・・・・。」
「下らない。映画の観すぎだ。病原菌やゾンビだったら、男の死体の意味が分からない。これは、明らかに人の手によって殺されてる。」
「先入観。」
「何だと?」
「アタシ達が目覚めた時に、ここに3人いたからって、始めからアタシ達3人が共に行動していたとは限らないわ。たまたまアタシ達が逃げ込んで来た場所に、死体があったのかもしれないじゃない。」
「つまりこう言いたいのか?俺達は、病原菌やゾンビみたいな訳の分からない代物から逃げてて、偶然ここへ辿り着いた。そして、そこにはたまたま死体があった。更に、なぜか2人して記憶を喪失して目覚めた。」
「そう。」
「全く下らない。俺は、そんなお前の妄想の産物に付き合ってられないね。」
「待って!」
「まだ何か妄想すんのか?」
「おかしいと思わない?何で、アタシがこんな発想を持ってるのか?そこ変だと思わない?」
「それは、こう言う異常な状況下で、思考が変になってんだろ?いや、お前の場合、元から変なのか?」
「いちいち頭に来る事を言ってくれちゃうわね!なら貴方の言う通り、第3者の存在があるとして、その第3者は、アタシ達が目覚めてるってのに、どうして何もして来ないの?それとも、こんな馬鹿げたやり取りを楽しんでるっての?つまり!貴方の言う第3者の存在こそが妄想なのよ!アタシの発想は、きっと記憶の断片なのよ!」
「第3者の方が妄想で、病原菌やらゾンビの方が本当だとしよう。でもな。まずは、何かしら外部と接触しなけりゃ、話が進まないだろ?とにかくドアを開けて外の様子を伺う。」
「待ちなさいよ!」
「いいか?仮に病原菌だとしたら、こんな場所じゃ、とっくに俺達は感染して死んでる。だから、その考えは捨てろ。それと、死体と俺達が無関係だって発想もだ。どう考えたって無関係に結び付ける方が難しい。それともう1つ!」
「まだあるの!?」
「俺は、最初の考えを捨ててない。」
「最初の考え?」
「俺達のどちらかが、殺人鬼だって考えだ。」
「ああ、それね。アタシは、100%貴方が怪しいと思うけどね。」
「いずれにせよ。記憶を取り戻す前に、俺達は別行動をした方がいい。でなけりゃ突然、お前が俺を殺すかもしれないし、俺がお前を殺すかもしれないからな。」
「つまり、ここを出た方が安全って事?」
「ああ、そうだ。何かから身を隠してるとしても、こんな場所にいたんじゃ、発見された時に身動きがとれない。どの角度から考えてみても、ここから出る方が安全って事だ。」
「ねぇ?」
「何だ?」
「その理論は分かったわ。でも、根本的な質問していい?」
「言ってみろ。」
「あのドアに、鍵が掛かってたら?」
「その時は、俺達が逃げ込んで来たって可能性が無くなるだけだ。そして、いまだに第3者の存在が無い以上、俺は、お前の記憶の喪失を疑う!」
「えっ?ちょ、ちょっと何を勝手な考え言っちゃってんのよ!」
「俺は、俺の記憶の喪失は分かるが、お前の記憶の喪失が本物かどうかまでは分からない。つまり、第3者はお前だって事だ。」
「それが勝手な考えだって言ってんのよ!アタシは、ちゃんと記憶喪失よ!」
「どうだか?」
「アタシにしてみれば、今の話をそっくりそのまんま貴方に返すわよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
男と女は、しばらく無言で互いを見ていた。
「とにかく、その話はドアが開くか開かないかを調べてみてからだ。」
「・・・・・・・・・オッケ。」
男は女の返事を聞き立ち上がると、ドアへと歩き出した。そして、ドアの前まで来ると、ドアノブに手を掛けた。
「・・・・・・・・・ゴクリ。」
男は唾を飲み込んだ。
「・・・・・・・・・ゴクリ。」
女も唾を飲み込んだ。
「行くぞ。」
「いつでもどうぞ?」
「ガチャッ!」
「開いたわ!」
「よし!逃げ!?えっ!?」
「えっ!?」
「プシュー!!」
「ガスだ!!」
「な、何!?どう言う事なのよ!?」
その時だった。どこからともなく部屋中にガスが立ち込め、男も女もその場に倒れ込んでしまった。そして、その光景を会場の大画面で観ていた観客達は、ある者は歓喜し、ある者は激怒していた。すると、壇上に1人のタキシード姿の40代前半の男が現れた。
「ええ、皆様!第6ステージの結果も!第4、第5ステージ同様!ドアを開けて脱出をする!と言う結果になりました!間も無く第7ステージが開始されますが!ここでオッズの変更をお知らせ致します!皆様!よーくお聞き下さい!ドアを開けて脱出する2倍!男が女を殺す5倍!女が男を殺す7倍!相討ち15倍!プロポーズ101倍!その他58倍!さあ!第7ステージ開始まで残り15分です!お早めにお賭け下さいっ!」

|

« 「第二百二十八話」 | トップページ | 「第二百三十話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/37503857

この記事へのトラックバック一覧です: 「第二百二十九話」:

« 「第二百二十八話」 | トップページ | 「第二百三十話」 »