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2010年12月 1日 (水)

「第二百三十三話」

「熱がある!」
そう、今日の僕は、かなり熱がある。
「あっ!壁か!」
だから、うっかりしていると壁に話し掛けちゃう。壁を壁だと思わずに、思わず話し掛けちゃう。
「熱が・・・・・・ある!」
本当は、かなり熱があって、かなりフラフラしているから、家の中で薬飲んで寝てた方が、かなりいい。けど僕は、極度の淋しがり屋さんだから、誰かに知って欲しい!かなり熱がある僕の事を!僕以外の誰でもいいから、とにかくかなり知って欲しい!ってな、欲求が僕をこうして布団から飛び出させているのかもしれない!
「あっ!電信柱か!」
でも僕は、極度の淋しがり屋さんであると同時に、極度の人間嫌い屋さんだから、熱があるとは言えども無意識に!そう、無意識に!大嫌いな人間へ話し掛ける事を避けているのかもしれない!
「熱がある!」
本当は、お医者屋さんに行った方が!いや、確実に行くべきだ!だってでなきゃ、僕が行くよりも先に、僕が逝ってしまうのだから!だから、行こう!お医者屋さんに行こう!
「あっ!道路か!」
でも、お医者屋さんも所詮は人間!人間の端くれ!人間のくれ端!である以上!嫌いだ!大嫌いだ!見るのも嫌だ!話すのも嫌だ!ましてや、密室で同じ空気を吸うだなんて!考えただけでも吐きそうだ!
「熱がある!」
そう、熱はある!どうしようもなく果てしなく限りなく止めどなく熱はある!その現実は揺るがない!揺らいで欲しいけど、ちっとも揺るがない!
「あっ!小石か!」
本当は分かっているんだ!分かりきっているんだ!何だかんだ言っても!あーだこーだ言っても!僕が布団を飛び出した理由は、お医者屋さんに行く為だ!僕に、かなり熱がある事を一番に知って欲しいのは、親戚の叔父さんや遠い親戚の叔父さんではなく!歩いて5分のお医者屋さんにだからだ!
「熱がある!」
熱の力を借りれば或いは、人間と会話出来るかもしれない!そう、思った!
「あっ!空気か!」
でもそれは、あまりにも浅はかで、せつない考えであると同時に、あまりにも浅はかで、せつない考えだ!同じ事を平気で繰り返し言っちゃうぐらいの熱がある加減と言えども!お医者屋さんに行く訳には行かない!いや、行けないんだ!僕の中の人間嫌い屋さんが淋しがり屋さんを上回っている以上、それは不可能なんだ!
「熱がある!」
ここで僕は、叫びながらも閃いた。人は閃いた瞬間、熱がある!と叫ぶって聞いているけど!今のそれがあれなのかは、今の僕には分からない!
「熱がない!」
そう!そんな僕が閃いた、そんな僕に残された方法とは、自己暗示しかない!僕が今から行おうとしている行為が、自己暗示か自己催眠かは、専門家屋さんじゃないから僕にはそこんとこ詳しくはよく分からないけど!残された方法は、これ1本しかない!かなり熱がない!そう自分に言い聞かせるんだ!
「熱がない!」
うん!いい!いいぞ!いくら極度の人間嫌いだとは言っても!さすがに、そこはさすがに自分に話し掛ける事は可能だ!これなら人間以外への話し掛け間違いも起こらないぞ!
「熱がない!」
イケる!今、はっきりと迷信が確信へと変化した事を確信したぞ!だってほら、何だか熱が下がって来た!下がって来たじゃないかって気がするじゃないか!イケる!イケちゃうぞ!イケイケだぞーっ!
「熱がない!」
そうだ!熱がないんだ僕は!ふらふらじゃないんだよ僕は!お医者屋さんになんて行く必要なんて真っ平ないんだよ僕は!
「熱がない!」
凄い!凄いぞ僕!凄いじゃないか僕!天才だ!僕は自己暗示か自己催眠の天才だ!言いたい!凄く僕以外の誰かに言いたい!
「熱がない!」
でも、無理!無理無理!!この眠っていた物凄い才能を他の人間に伝えられないのは、凄く残念だけど!それは高望みってもんなんだよね!高望み屋さんってもんなのだよね!分かる!分かっている僕は!分かりきっているのだよ僕は!
「熱がない!」
熱が下がればそれでよしとしなくっちゃ!熱が下がる!僕にはそれだけで十分だ!それ以上を高望むだなんて贅沢!罰当たり屋さんだよね!
「熱がない!」
よーし!よーしよしよし!いいぞいいぞー!順調!順調!絶好調!
「熱がない!」
うひゃっほー!!
「熱がない!」
ひゃっふぉーっ!
「熱がない!」
いやった!いやったぞ!かなり熱があると言う状況を僕は!僕の力だけで克服したんだーっ!!!さあ、さあさあ!あと1回!あと1回で完全に僕の勝ちだ!大勝利だ!
「熱が…ないーっ!」
・・・・・・・・・・・・勝っ・・・・・・た!

第二百三十三話
「freezing to death」

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