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2011年1月19日 (水)

「第二百四十話」

 俺は今、自らが置かれいてる現状に気付いてしまった。自分が、この物語の、第二百四十話の、主人公って事に・・・・・・・・・。

第二百四十話
「主人公240」

 初めは、自分に超能力があるんじゃないかと疑った。なぜって?そりゃあ、数日前から次々と次々に巻き起こる未来が分かったら、誰だって一番に超能力を疑うのが普通じゃないか?なら、なぜ自分が超能力者じゃなく、第二百四十話の主人公だって分かったのか?答えは、かなりシンプルなもんだった。ある未来から先が、俺には見えないからだ。しかし、これじゃあ、ただ単に俺がその時に死んだだけだと疑うのが普通かもしれないが、俺の回りでは反比例な現象が巻き起こっている。そう、俺は死ねない。その死ねない現象こそが俺を真実へと導いた。つまり、事態は最悪だって事だ。俺の見えない未来、正確には11分04秒後だが、俺は確実な死に向かっているって事だ。フィクションの主人公が何を言ってんだって考えるかもしれないが、これほどまでに確実で正確な死の恐怖に、フィクションもノンフィクションも関係ない。自我と意志が生まれた以上、そこに最悪の変わりはない。だが、俺の心は寸前のとこで、ギリギリのとこで、折れないでいた。なぜかって?なぜなら、見えないからだ。これまで100%未来で巻き起こる事が見えているのに、肝心の死の未来が見えないからだ。その先の未来が見えないからと言って、確実に死ぬとは限らない。もしかしたら、そこで俺は、未来が見える力を失うのかもしれない。或いは、あの女が俺の所に訪ねて来た時に、この物語が終わるのかもしれない。
「こんばんは。」
ドアを開けると知らない美しい女性が俺に、知らない美しい声で言葉を放つ。
「こんばんは。」
不思議そうに俺は知らない女を見詰めながら、不思議そうに俺は知らない女へ返事をする。そして、ここで忽然と未来が見えなくなる。正直、俺は全くと言っていいほど、本を読まない主人公だ。だが、そんな俺にだって分かる。物語としてのこの終わり方は、異常だ。唯一、読む事が出来る過去の239作品を振り返ってみても、こんな異常な終わり方はない。何のどんでん返しもなく、何のメッセージ性すらない。仮に夜には、こんばんはの挨拶をしなけりゃならないってメッセージなら、下らない以下のお粗末な終わり方だ。つまり、何かある。そこで、何かがあるって事だ。既に俺が挨拶を交わした時には、俺は女に殺されているってのか?だが、それなら、どんでん返しは?どんでん返しは、どこにある?このまま俺が殺される事に、何のどんでん返しも無いじゃないか。それに、いくら何でも一瞬で殺され過ぎだ。フィクションとは言え、人がそんなにも一瞬に殺されるか?そして、そもそも俺は、この物語の主人公だ。仮に俺が一瞬で女に殺されたとしても、女が口にするだろう物語をどんでん返す事になる一言を聞かずに死ぬはずがない。
「こんばんは、10時になりました。ニュースをお伝え致します。」
しかも俺は、女が来るまで、何か部屋で、世界征服とかを企んでいる訳でもない。普通に、座ってテレビを観ているだけだ。なのになぜ?文章にしたら3行程度ののちに、俺は死ぬ?数日間の記憶の中を探したって、女への伏線は見当たらない。と言うか、その数日間の記憶だって、文章にしたら数十行だ。つまり、つまりだ。この物語は、始まったばっかりだって事だ!物語が始まったばっかで主人公が死ぬのは、良いとしてだ。物語上、仕方ないとしてだ。そのあとの未来が見えないのは、物語の結末が見えないのは、絶対におかしい!!何だ!?何が巻き起こる!?まさか!?俺は、自分が第二百四十話の主人公だと思い込んでいるだけの単なる登場人物って事なのか!?単なる脇役って事なのか!?いや、違う。仮にそうだとしたら、俺が今、こんなどんでん返し的な事を、この段階で考える事は不可能だ!いくら自我と意志が芽生えたとは言っても所詮は、物語の登場人物、その中の俺が、どんでん返しを語れる訳がない。しかし、この考え自体が作者の意図的な創作だとしたら?ダメだ!訳が分からなくなって来た。頭がおかしくなりそうだ。とにかく、間も無く訪ねて来る女に会えば、答が分かるはずだ。きっと何かが完結するはずだ。でなけりゃ俺は、でなけりゃ俺は、いっ
「ピーンポーン。」
来た!女だ!俺は、足早に玄関へ向かう。
「ガチャ!」
「こんばんは。」
ドアを開けると知らない美しい女性が俺に、知らない美しい声で言葉を放つ。
「こんばんは。」
不思議そうに俺は知らない女を見詰めながら、不思議そうに俺は知らない女へ返事をする。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
なるほどな。未来が見えないんじゃなく、ここで未来が止まったんだ。つまり、どんでん返しも何でもない。単に、ここで作者が物語に煮詰まって、書くのを止めたって事だ。

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