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2011年2月

2011年2月 2日 (水)

「第二百四十二話」

「大先生!どうにかお願いしますよ!」
「アタシもねぇ。この業界長いけど初めてですよ。ヒーローを守るヒーローを考えてくれと言われたのは・・・・・・・・・。」
「大先生!そこを何とか!お願いします!!」
「正直、戸惑ってますよ。」
「大先生ともあろうお方が、何を戸惑っていらっしゃるんですか!今の時代、単なるヒーローってだけではダメなんですよ!特撮も時代の流れと共に変わって行かなければならないんですよ!」
「そうなの?」
「そうですよ!」
「でもさぁ?でもだよ?その、ヒーローを守るヒーローは、ヒーローだけを守るの?」
「そうです!」
「じゃあ、じゃあだよ?チビッコ達は、誰が守る訳よ。」
「ヒーローを守るヒーローに守られているヒーローが守ります!」
「じゃあさぁ?ヒーローを守るヒーローがだよ?例えば、ヒーローを守りに行く途中で、怪人に襲われそうなチビッコを目撃したらどうするの?」
「無視です!」
「無視!?」
「ヒーローを守るヒーローは、あくまでヒーローを守るヒーローです!」
「ちょっと待ちなさいよ。なら、ならばその怪人に襲われそうなチビッコは、誰が守るんです?」
「ですから大先生!チビッコを守るのは、ヒーローに守られているヒーローの仕事なんですよ!だから、ヒーローを守るヒーローは、1秒でも早くヒーローに守られているチビッコを守るヒーローを助けなければならないんです!でないと、でないとです!チビッコが怪人に連れ去られてしまいます!一大事です!」
「ヒーローを守るヒーローは、ヒーローに守られているヒーローをピンチに追い込む程の怪人より強いって事だよね?」
「勿論です!でなければ、ヒーローを守るヒーローが勤まりません!」
「なら、チャチャッと、チャチャチャッと、怪人に襲われそうな、一大事に巻き込まれそうなチビッコをだよ?助けて上げちゃえばいいじゃないの。ヒーローに守られているヒーローを窮地に追い込む程の大ボスに勝てるなら、チビッコを襲う程の中ボス以下なんて楽勝でしょ?」
「大先生!何をトンチカンな事を言っているんですか!」
「アタシ、何かトンチカンな事を言いました?」
「言いましたよ!ヒーローを守るヒーローが、怪人に襲われそうなチビッコを助けてしまったら!ヒーローに守られているヒーローは、いったい誰を助ければいいんですか!」
「いや、何を言ってるのかサッパリですよ?その時々な感じでやればいいでしょ。」
「またトンチンカンな事を!」
「アタシ、また何かトンチカンな事を言いました?」
「言いましたよ!だったら、ヒーローに助けられるサイドの一般人はですよ?いいですか?」
「いいですよ。ヒーローに助けられるサイドの一般人は?」
「より確実に助けられたいと切に願っている訳ですよ!」
「まあ、そうでしょうね。」
「そしたらですよ?考えてもみて下さい?ヒーローを守るヒーローが、ヒーローを守らずにチビッコを守ってしまったら!チビッコ達は、次から怪人に襲われそうになった時には、ヒーローを守るヒーローにお願いしよう!うん!そーだ!そーだ!絶対そーだ!ってなっちゃうんですよ!」
「そうなっちゃうんですか?」
「なります!するとどうです?どうなります?」
「どうなるんです?」
「ヒーローに守られているヒーローは、全く出動要請が無くなり!この世界には、ヒーロー難民が溢れかえってしまうんです!」
「ヒーロー難民って、何ですか?」
「ヒーロー難民は、ヒーロー難民ですよ!」
「ヒーロー難民ですか。」
「ヒーロー難民ならまだいい方ですよ!仮に、ヒーローを守るヒーローが、ヒーローに守られているヒーローを助けに行く途中で、怪人に襲われそうなチビッコを助けている間に、ヒーローに守られているヒーローが、ヒーローを守るヒーローに助けてもらえずに、ヒーローに守られているヒーローを怪人が殺してしまったらどうするんですか!」
「えっ?ちょっと!?えっ?」
「ですから!ヒーローを守るヒーローが、ヒーローに守られているヒーローを助けに行く途中で、怪人に襲われそうなチビッコを助けている間に、ヒーローに守られているヒーローが、ヒーローを守るヒーローに助けてもらえずに、ヒーローに守られているヒーローを怪人が殺してしまったらどうするんですか!」
「ん?んん?ちょっと、もう1度、お願いします。何か頭の中がゴチャゴチャにこんがらがっちゃって、ゆっくりお願いしますよ。」
「いいですか?ヒーローを守るヒーローが、ヒーローに守られているヒーローを助けに行く途中で、怪人に襲われそうなチビッコを助けている間に、ヒーローに守られているヒーローが、ヒーローを守るヒーローに助けてもらえずに、ヒーローに守られているヒーローを怪人が殺してしまったらどうするんですか!」
「もう1回!」
「えっ!?ヒーローを守るヒーローが、ヒーローに守られているヒーローを助けに行く途中で、怪人に襲われそうなチビッコを助けている間に、ヒーローに守られているヒーローが、ヒーローを守るヒーローに助けてもらえずに、ヒーローに守られているヒーローを怪人が殺してしまったらどうするんですか!」
「もう1回!」
「もういいですよ!分からなくても!とにかく簡潔に話すなら!チビッコを守るヒーローが減り、世の中はヒーロー不足に陥ってしまうんです!」
「ヒーロー不足って何?」
「ヒーロー不足は、ヒーロー不足ですよ。」
「ヒーロー不足ねぇ?でも、ヒーローを守るヒーローがいるじゃありませんか。」
「しかしですね。大先生?ヒーローを守るヒーローが、ヒーローを守るヒーローの掟を破った段階で、ヒーローを守るヒーローは、ヒーロー失格なんですよ!」
「それ、無かったよね?その設定、後付けでしょ?今、考えたでしょ?」
「いいえ!言い忘れていただけです!」
「それなら、今までの説明いらないでしょ。あれだね。どうしてもアタシにヒーローを守るヒーローを考えて欲しいんだね。」
「はい!大先生が、よっしゃ!なら、ヒーローを守るヒーローを考えよう!と、首を縦に振ってくれるまで、僕はどんな汚い設定を使ってでも妨害するつもりです!」
「はあ、やれやれですね。分かりましたよ。君の熱血漢には負けました。」
「て事は!大先生!」
「うむ。いいでしょう!ヒーローを守るヒーロー!面白そうじゃありませんか!」
「だ、大先生!」
「考えましょう!」
「ありがとうございます!それでですね?大先生?」
「ん?何ですか?」
「話の流れ次いでにヒーローを守るヒーローの次回案なんですけどね?」
「気が早いね。一応、聞いときましょうか?」
「ヒーローを守るヒーローの次回作はズバリ!ヒーローを守るヒーローを守るヒーローです!」

第二百四十二話
「だからヒーローは死なないっ!!」

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2011年2月 9日 (水)

「第二百四十三話」

  最果ての街、欲望の街、逆転の街、人の数だけ、この街の呼び名がある。そして俺は、この街を、糞の溜まり場と呼んでいる。

第二百四十三話
「スリーティーズ・シティ」

「RIN!RIN!RIN!RIN!RIN!」
深夜2時、ホテルの電話が鳴った。電話が鳴って、いい事が起きたためしがない。それでも電話ってのは出なきゃ鳴り続けるから、うっとおしい逸品だ。きっと電話を作ろうと考えたヤツは、相当のいじめっこか、かなりのいじめっこに違いない。
「GACHA!」
「誰だ?」
相手が誰だって関係ない。どうせ、いい事なんて起きないんだ。ただ、相手が誰かは知っておかなきゃと、思っただけだ。
「やっぱりここだと思ったわ。」
だが、状況は変わった。今回ばかりは、どうやら相手を知らない方が良かったみたいだ。電話の向こうの微かに聞き覚えのある女の声。女ってのは、いつも極上の厄介事をギフトする最上級のいじめっこだ。しかもそれが、微かに聞き覚えのある女なら、5倍。更に、電話の向こうの女が泣いていたなら、そりゃもう無限大だ。
「人違いだ。」
だから俺は、丁重にお断りし、受話器を置き、糞みたいな現実より遥かにましな夢の世界へ戻ろうとした。あと、数ミリでヘブンへ行けるとこで、受話器の向こうから女が呪いの言葉を泣き叫んだ。
「待って!お願いだから切らないで!!」
これで俺は、地獄行きが決定した。俺は、静かに受話器を耳へ戻した。ここで少し、俺の話をしよう。俺は、この糞の溜まり場で生まれ、糞の溜まり場で育ち、糞の溜まり場で暮らしている。もちろん、ちゃんとした自宅もある。なら、なぜこうして、同じ街のホテルを転々としているのか?答えは簡単だ。こうした厄介事に巻き込まれない為だ。家に居たんじゃ、電話だけでなく、訪問者って面倒臭いいじめっこがたまにやって来る。ホテルに逃げ込んだ俺へ厄介事をギフトするのは、俺の居場所を知る1部の親しいいじめっこの仕業だ。更にここで、簡単に受話器の向こうの女の話をしよう。女は、6年間付き合ったのち3年前に別れた女だ。そんなに広くないこの街で、今の今まで出会わなかった奇跡を少しだけ神に感謝をしとこう。そして、今回の電話の内容が厄介事じゃなかった時には、朝一番で教会に行き、改めて心から感謝しよう。
「何の用だ?」
「人を・・・殺しちゃったの。」
決まりだ。朝一番でこの街にある教会を全て、ぶっ壊してやる。
「で?」
「どうしたらいい?」
どうしたらいい?どうしたらいい?だと?この街の人間は、人を殺したらまず、警察に行くって考えが無いから糞なんだ。
「誰を殺したんだ?」
「旦那よ。」
結婚してた事実を初めて知り、お祝いの言葉でもギフトしてやろうかと思ったが、その相手がもうこの世に居ないんじゃ意味が無いと思って、やめた。
「で?」
「だから!どうすればいいの!」
どうしたいんだ?なんてこの女と無駄な文字数を費やして会話をしたいとも思わなかった。女は、旦那の死体を処分したがっている。で、選りにも選って、その厄介事を俺にギフトしてきやがった。まあ、この女と結婚して、俺が死体にならなかっただけ良かったと、今は思う事にしよう。そんな糞みたいな事でも考えてなきゃ、俺が救われない。話を本題に戻そう。妻が夫を殺した場合、その罪から逃れるのは、至難の業だ。警察は、執拗に妻を疑う。靴の裏についたガムの様に、靴の中に入り込んだ小石の様に、執拗にだ。つまり、このケースは最悪だって事だ。
「どう、殺した。」
「撃ち殺したわ。」
「何でだ?」
「ショットガンよ。」
最悪の上乗せだ。こんなんだったら、旦那を殺す前に電話をしてくれれば、とさえ思えてきた。だが、まだ逃げ道はあった。それは、殺した場所だ。キッチンやリビングやベッドルームじゃなく、湖畔や山奥って贅沢な事は言わない。せめて室内ではなく、屋外であれと神に祈った。
「どこで撃ち殺した?」
「リビングよ。」
薄々勘づいてはいたが、これでようやく確信した。神は、この世に存在しない。500%警察の執拗な追跡からこの女を救い出す事が、これで不可能となった。
「おめでとう。」
だから俺は、ここでお祝いの言葉をギフトしてやった。
「おめでとう?何が、おめでとうよ!ふざけないでよ!どうしたら私が殺した事にならないかを聞きたいのよ!」
人は、自分が思った事や考えた事が、全て自分の思い通りになると思った時が、人の終わりだ。ましてや人を殺しといて、人を殺してない事に出来ると思ったら、それはもう糞以下だ。息も臭くなり、見栄えも茶色くなり、そして蝿がたかり出す。リビングに飛び散った血肉を綺麗に掃除して、旦那を豚に喰わせたとこで、女は確実に警察に捕まる。精神錯乱や過剰防衛でも、女は確実に警察に捕まる。あらゆる方向、あらゆる角度、あらゆる計算、どれも辿り着く答えは同じだ。女は確実に警察に捕まる。1つだけ女が確実に警察に捕まらない方法があるが、この女が自ら死を選ぶ事はないだろう。あったら、俺に電話するなんて糞みたいな考えが浮かんで来ないからだ。
「諦めたらどうだ?」
「何を?何を諦めろって言うの?貴方は、私が警察に捕まってもいいと思ってんの?」
警察に捕まって悪いって考えが浮かばないって言葉が口から出掛けたが、今年1番の努力で飲み込んだ。
「ゲフッ!」
「・・・・・・ねぇ?誤って子供が撃っちゃったってのはどう?」
結婚して、おまけに子供まで居たとはな。こう言う糞みたいな親が居るから、この街の糞みたいな連鎖は止められないんだ。そう考えると、女はまさにこの街そのものだ。
「歳は?」
「2歳よ。」
2歳の子供が、本気で誤ってショットガンをぶっぱなせると思ってる頭だから、人なんて殺しちまうんだ。血肉を綺麗に掃除して、旦那を豚に喰わせて、家を焼き払ったとこで、女は確実に警察に捕まる。真実を隠蔽するには、女とよく通ったステーキ屋の肉を噛みきる以上にエネルギーを使う事を、女は知らない。いや、女だけじゃなく、多くの人間は知らないだろう。だから、人を殺す以上に、人が嘘を付くって行為は難しいんだと、学校で教えるべきだ。まあ、教えたとこで、この糞の溜まり場の糞どもが、糞の脳味噌で理解出来るはずもないとは思うが、それでもやらないよりかは、やったほうがましだ。そんな事より、本題に戻って、とりあえず鼻の中をさ迷う取れそうで取れないこの鼻糞みたいな疑問を解決しとこう。
「なぜ、刑事の俺に電話を?」
「決まってるじゃない!刑事だからよ!」
何もかもが間違いだらけのこの糞の溜まり場で、糞にまみれて生きてきたわりには、どうやら女と別れた俺の考えだけは、間違ってなかったようだ。だから今日の夕食は、贅沢にいこう。
「分かった。俺が行くまで何も触るな。」
「ありがとう。早く来てね。」
「GACHANN!」
で、女がこの街で俺を選び、俺と付き合ったって選択肢もあながち間違ってなかったんだって事にもしとこう。とりあえず俺は、どうやって子供に母親が父親殺しの犯人だって事実を告げるのがベストなんだろうかと考えながら、やっぱり朝1番で教会に行く事を決め、ホテルをあとにした。

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2011年2月16日 (水)

「第二百四十四話」

  私は、物書きだ。だから、書いてる途中にその作品が消失してしまうと言うハプニングにもめげない。だったら、消失する前の作品よりも遥かに面白い作品を書いてやろう!と言う闘志がみなぎるばかりだ。ゴホンッ!さて、こんな物書きの端くれの私でも、他人が私の作品を読んで、いったいどのような感想を抱くのかは、気になる。まあ、微々たるもんだがね。まあ、微々たるもんの中でも物凄くだが、気になる。だから、私はマンションの隣人に、私の作品を読んでもらおうと閃いた。でもって、次いでにもし良かったら感想なんかを聞いちゃおうとも閃いた。これはもう、押さえきれない欲求と言うかもう、訳の分からないゴリ押しの訪問販売以下の下衆な閃きだ。いやむしろ、物書きが物書きを主人公とする作品を、漫画家が漫画家を主人公とする作品を、ミュージシャンがミュージシャンを主人公とする作品を、画家が画家を主人公とする作品を、などなどのような作品を作る時点で私は、下衆を超えた下衆以下の卑怯者で卑劣者だ。だから、こんな物書きが物書きを主人公とする作品を二度と書くまいと、頼まれても書いてやるまいと、明日から始めるダイエット心の如く胸に強い野心を抱きながら、私は隣人のチャイムを鳴らした。
「ビィィィィィィィィィィィィィィィ!」
隣人が、いったいどのような感想を述べるのか?そんな事は、微塵も考えちゃいなかったが、そんな事を微塵も考えちゃいけない事は、閃いていた。
「はい。」
「あのう?」
大きく全開に開いたところには、隣人が立っていた。しかし、その男の後に見える光景を目にした時、私の時間が止まった。それは全ての業務を中断してでも、例えそれが地球存亡の危機を免れる為の業務を中断してでも、そこに全神経が、全細胞が、注目を集めてしまうには、男の後に見える光景はあまりにも価値があり過ぎた。何もかもがどうでよくなり、ましてや下衆な私が持って来た下衆な作品なんて、ましてやそれを読んだ隣人の感想なんて、その鉄の扉に比べたら、どうでもいいの中のどうでもいいだった。その鉄の扉には、大きな文字で、秘密基地。そう書かれていた。
「何か用でしょうか?」
「・・・・・・・・・。」
訪ねたのは私だが、尋ねられたのは私だった。頭の中を冷静にしようと思えば思う程、パニックへと誘われて行く事だけは、物凄く鮮明に理解していた。
「大丈夫ですか?」
「えっ?だ、大丈夫です。少し立ち眩みがしただけですので、ご心配なく。」
「そうですか。」
聞くか?聞いてしまうか?秘密基地って何ですか?って、聞いてしまおうか?いやでも待てよ?目撃者理論を考えてみろ。殺人を目撃した目撃者は、どうなる?えっ?どうなるんだ?殺人犯に殺される。そう、目撃者は、理不尽に殺される。殺人を目撃しただけだと言うのに、その目撃した殺人を誰かに言うか言わないかの目撃者の意思とは無関係に、殺人犯の自分勝手な強迫観念により、不条理な死を遂げる。なら、私はどうだ?どうなんだ?秘密基地って何ですか?って、聞かずに、聞かずに知らんぷりか?そこまでか?私は、そこまで下衆なのか?いいや、違います。私は、そんな男ではありません。秘密基地。それは、男のロマン!秘密基地。それは、男の憧れ!それを目と鼻の先にして、例えそれを知ってしまったと知られて、地球上から抹殺される事を恐れて、この命を惜しむ程、私は腐っちゃいませんよ!秘密基地に比べたら、こんな命なんて代物は、あまりにも無価値!そう、始めから私の選択肢の中には、無意識レベルからして聞かない選択肢なんて存在しないのです!!
「あのですね?私、物書きなんですよ。実は。」
「そうだったんですか!」
「ま、まあ。あまり売れてないんで、知らないのも当然だと思うんですけ秘密基地って何ですか?」
「えっ?」
「えっ?」
「ひみ?」
「で、それでですね?大した事じゃないんですけどね?もし良かったらなんですけどね?もしも良かったら、私の作品を読んでもらって、更にもし良かったらなんですけどもね?もしも良かったら、感想なんかを聞かせてもらえればと閃いて訪ねて来たら、まさかお隣さんとこに、秘密基地があるなんて、と。」
「そうですか。」
「そうなんです。」
「なら、読ませてもらいます。それに、感想もちゃんと。あっ、でも僕、ストレートにものを言っちゃうタイプですけど、いいんですか?」
「構いません。その方が私も素直に受け止められるので、是非!」
「では。」
「どうぞ。」
「どうも。」
「で、秘密基地って?」
ここは、あくまでも冷静でなければならない。けして相手を刺激しちゃいけない。ゆっくりと、一歩一歩踏み出すんだ。焦りは禁物だ。如何なる場面、如何なる状況下であろうが、焦りは死を招く。ここは、もう腹を決めるんだ!だってもう後戻りは出来ないんだから!出来るとすれば、後悔のみだ!ああ、それと後退りも出来るか。いや、後退りなんてしてたまるか!さあ?さあさあ!どうなの?秘密基地!
「秘密基地です。」
「なるほど。」
なるほどじゃない!本当は、物凄くなるほどじゃないけど、この胸の高まりを相手に悟られたらダメだ。何でダメなのかもうよく分からないけど、何かダメだ!命なんてとは思ったものの、何事もなく、この場を立ち去れるなら、それはそれに越した事ない。
「ほら、秘密基地って、男の憧れじゃないですか。だから、作ったんです。」
「作った?」
「はい。作りました。」
「憧れですか。分かりますよ。その気持ち!」
「ですよね!秘密基地の中で地球征服を考えるのって、まさに至福の時なんですよ!」
「征服?」
「ええ、どんな風に地球を征服してやろうか?どんなタイミングで地球を征服してやろうか?果たして地球を征服した後の自分は?秘密基地の中で、もうそんな事を考えているだけで、一日が終わってしまうぐらいですよ。もう面白くて!面白くて!仕方ないです!」
「それは、素晴らしいですね。」
「はい!」
私は、ネガティブ思考の持ち主だ。何で消しゴムで?何でアップルパイで?何でコーンポタージュスープで?何でそこまでネガティブに思考出来るんだって程、ネガティブ思考の持ち主だ。しかし、しかしね。しかしだよ?それでもやっぱり、秘密基地って言うのは、地球の平和を守る正義の味方の、そっち方向の秘密基地だと考えてた。だから、下地にその思考ありきの命いらない発言だったんだ。でもまさか、隣人が悪者で、更に今日が私にとっての最終回になるとは、閃きもしなかった。仲間になる選択肢もあるだろうが、悪者の仲間になるぐらいだったら、始めから物書きなんてしていない。物書きは、いい者じゃなければならない。いいや、せめて私だけでも、端くれ物書きの私だけでも!唯一無二のいい者じゃなければならない!そして、いい者とは最期の最期まで、いい者じゃなければならない。それが物書きなんだな!
「・・・・・・・・・。」
「そんな好きなら、お隣さんも絶対に作った方がいいですよ!秘密基地!本当は僕、いい者用の秘密基地が欲しかったんですけどね。入荷未定だったし、すぐ欲しかったんで、まあ悪者用でもいいかって、即買いしちゃったんです。今すぐって話じゃなかったら、絶対!いい者用がオススメです!」
「へ?そゆ事?」

第二百四十四話
「秘密基地(悪者用)」

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2011年2月23日 (水)

「第二百四十五話」

「どうも。」
「警察の方で?」
「はい。」
それは、電話の声から想像した大柄な男とは違い、随分と痩せた男だった。
「わざわざこんな夜遅く来ていただいて、申し訳ありませんでした。」
「いえいえ、これが仕事ですから、専門のね。だから、気にしないで下さい。夜の小学校だろうが、例え廃墟だろうが、例えトンネルだろうが、例えミステリーサークルの畑だろうが、例え謎の足跡がある雪山だろうが、いつでもどこでも駆け付けるのが、超常現象課ですから!」

第二百四十五話
「超常現象課 file019ー幽霊調査ー」

さっそく私は、男を連れ、幽霊が出現する場所へ向かう事にした。
「しかし、驚きましたよ。警察に電話したら、まさかちょ、超じゃ?ちゃう常?」
「超常現象課です。」
「そうでした!そうでした!こういった事件を専門に扱うとこがあるなんて、長年生きてきましたけど、知りませんでしたよ。」
「先生は、どう思いますか?」
「ええ、始めは、生徒達の単なる噂話か悪戯だと思いました。でもここ数ヶ月で、あまりにも目撃情報が多くて、で、もしもこれが幽霊ではなく、不審者の類いだったらと考えたら、生徒達に被害が及ぶ前にと思いまして、警察の方へ。」
「いや、そうじゃなくて。」
「はい?」
「名前ですよ。名前。」
「名前?さあ?生徒達や学校関係者に聞いても、目撃された男の名前は、分かりませんでした。それ以前に皆、初めて見る顔だと。」
「幽霊の名前じゃなくて、超常現象課!です。」
「超常現象課が何か?」
「先生?超常現象課ですよ?超常現象課!」
「は、はあ。超常現象課が?」
「正直、やけにダサくないですか?と言うかですよ?まんまじゃないですか。超常現象を専門に扱うから、超常現象課って!犬を飼うから犬って名前を付けちゃうようなもんですよ!まったく、どんな超常現象よりも超常現象ですよ!」
「わ、分かりやすくていいんじゃないのでしょうか?」
「確かに、確かに分かりやすいです!でも、何て言うんですか?果たして分かりやすいだけでいいんでしょうか?例え分かりにくくても、もっとこう、カッコいい名前があると思うんですよね!いや、カッコいい名前を付けるべきなんですよ!」
「はあ、例えば?」
「例えばですか?」
「はい。そうおっしゃるぐらいなら、何か候補でもと。」
「先生!よくぞ聞いて下さいました!」
「まあ、何と無く話の流れ的に、まあ。」
「ジャック・ラッセル・テリア!」
「ジャッ、ジャクラル?」
「ジャック・ラッセル・テリア!です。略して、JRTです!」
「それは、どう言う意味です?」
「犬種ですよ。」
「犬種?」
「意味はありません。ただ響きがカッコいいからです。ジャック・ラッセル・テリア、カッコよくないですか?」
「ああ、はあ。」
「でもね。上が絶対に認めてくれないんですよ!それ、どう思います先生?」
「単なる教師が警察の方に意見するのも、あれですから。」
「違います。」
「はい?」
「幽霊の正体です。」
「ああ、そっちのどう思いますか?でしたか。」
「こんな事を言ってしまうと、先生や子供達の夢をぶち壊してしまうみたいで申し訳ないんですが、幽霊は存在しません!」
「えっ!?ではやはり、不審者の仕業ですか?」
「あっ!誤解させちゃいましたね。」
「誤解?」
「幽霊は、存在しますよ。いやこれはマジで!です。」
「あのう?おっしゃってる意味が少し難しくて分からないのですが?」
「簡単に言いますと、幽霊とは人間が死んでからなるもんじゃないんですよ。だから、いわゆる皆さんが言う幽霊は、存在しないんです。」
「妖怪みたいな存在って事ですか?」
「河童とかひとつ目小僧みたいな?」
「え、ええ。」
「どろたぼうや朧車みたいな?」
「は、はい。」
「面白いですね、先生!それは、かなり新しい考えですよ。幽霊族と言う人間に非常によく似た存在ですね。でも、でもでも、でも、残念ながら、幽霊は100%人間です。」
「では、存在するのでは?」
「もちろん!存在します!けど、人は死んだら、残念ながらそれまでです。炭素です。灰です。だったら幽霊って何なんだよ!何を言ってんだよこの刑事!ってなりますよね?」
「い、いえそんな事は。」
「ご安心下さい。幽霊の正体は、これです。」
「テープレコーダー?ですか?」
「そうです!正確には、磁気です!」
「磁気?」
「空気中に磁気が漂っているのは、知ってます?」
「まあ。」
「更に、今のこの時代、機械化により、磁気はあらゆるところに存在します。昔みたいに、磁場の強い場所だけでなく、こうした大都会の小学校にも強い磁気がね。」
「はあ。」
「ピンと来てませんね?」
「すいません。」
「では更に、ピンと来ない話をしちゃいますね。」
「えっ?」
「先生は、記憶についてどう思います?」
「記憶?」
「生物だけの特殊な能力だと思いますか?」
「ええ、まあ。」
「では、これは何ですか?」
「テープレコー、まさか!?」
「そのまさかの現象が巻き起こっているんです!磁気テープのように、地面が建物が車が服がガードレールがトンネルが水が、などなどなどが!人の死を記憶し再生しているんです!」
「で、ですけど!」
「幽霊は、意思で動く!ですよね?」
「ええ、人の死を再生しているだけなら、その場に死体があるだけなんじゃないのでしょうか?」
「そうですよ。もちろん!」
「いやでも!」
「地面や建物は、死体の状況をリピートで再生し続けてるだけです。それが、動いて襲って来たり話し掛けて来たり着いて来たりするのは、人間の先入観です。」
「先入観?」
「錯覚です。」
「錯覚!?」
「人間の脳は、錯覚には逆らえません。錯覚を認識してしまった段階で負けです。そもそも今の我々には、幽霊と言う先入観が既に頭の中に存在します。考えてもみて下さい?実際、その場に無惨な死体があるのと、幽霊とでは、どちらと出会いたいですか?目が覚めて、ベッドを見下ろす知らない女性が生身の人間なのと、幽霊なのとでは、どちらが本当に心から安心できますか?」
「そ、それは。」
「死体より幽霊、見知らぬ生身の人間より幽霊、そうであって欲しいと思う人間の錯覚なんですよ。精神的ダメージへの防御です。そのイメージの選択肢が幽霊しかないだけの話なんですよ。」
「で、でも全ての人に見える訳じゃないですよね?」
「え~と、あれ何て言ったっけなぁ?ほら、文字が色で見える人がいるじゃないですか!何て言いましたっけ、そう言うの?」
「すいません。分からないです。」
「部屋に帰れば分かるんだけどなぁ。ま、まあまあまあいいですよ。今回は関係ないんで、とにかく文字が色で見える人がいるんです。」
「はあ。」
「そう言う事です。」
「はい?」
「だから、磁気テープを再生してる映像も見える人と見えない人がいるんです!って事です。」
「それはなぜですか?」
「分かりません。」
「えっ?」
「さすがにそこまでは分かりませんよ。病気みたいなもんなのか。晴れ男や雨女、みたいなもんなのか。それか、何か特殊な条件下で発動するのか?まあほら、幽霊が見える人より、問題なのは、幽霊を見せてる場所なんですから、ねっ!」
「そ、そうなんですか?では、この小学校の幽霊も?」
「まあ、十中十で、磁気テープの再生です。」
「では、どうやって解決するんですか?」
「逮捕します!」
「逮捕?」
「ええ、これでも刑事ですからね。」
「どうやって逮捕するんですか?」
「これですよ。」
「テープレコーダー?」
「これ実は、ただのテープレコーダーではないんですよね。簡単に説明すると、リピート再生をこのテープレコーダーにダビングするんです。吸い取っちゃうんです!で、おしまい。幽霊さよなら!です。」
「ま、まさか!?」
「まあ、見てのお楽しみって事で!あっ、そうだ!先生の感想を是非ともお聞きしたいですね。」
「今の話ですか?にわかに信じ難いです。」
「違いますよ。」
「はい?」
「やっぱり、ほら、こう言うのって、コンビの方がよくないですか?」
「何の話でしょうか?」
「超常現象課ですよ。だって、映画やドラマとかでも必ず意見の対立し合うコンビじゃないですか?だから、ほら、口うるさいとか熱血漢とか、やたらとプロファイリングな女性刑事などが相棒に居た方が、よくないですか?」
「そ、そうですか?」
「絶対にそうですよ!あっ、でも、やっぱり、熱血漢な熱い人はちょっと苦手かもしれませんね。でも、かと言って冷静な女性もちょっと」
「刑事さん!刑事さん!」
「は、はい?」
「着きましたよ。」
「・・・・・・ボイラー室ですか。」
「ええ。開けますよ?」
「いきなり襲って来たりしませんよね?」
「襲うって、それは錯覚だって刑事さんが先程言ってたじゃありませんか。」
「いくら錯覚でも痛みは伴いますから、ほら知ってます?お湯だと言って水を掛けても、人って火傷するんですよ?」
「・・・・・・開けても宜しいですか?」
「正直、ここまでとは思いませんでした。」
「はい?」
「実際に体験してみなきゃ分からないもんですね。」
「今度は、いったい何の話ですか?」
「幽霊の話ですよ?たぶん、正門の前では、私を待ってる大柄な先生が居ると思います。」
「わしには、先程から刑事さんがおっしゃっている事が、全く理解出来ませんよ。」
「70年も経てば顔も名前も知る人なんて学校関係者の中からは、居なくなって当然です。ここ最近で購入した特殊な機械、同時期頃から多発した幽霊目撃情報、怪談話の宝庫な小学校、独り歩きする不確かで不鮮明な事実がねじ曲げられたボイラー室事故。だからもう、いいですよね?ダビングを始めちゃっても?この距離からでも十分なんで、だってほら、扉を開けたら貴方の全身が焼けただれた死体が再生されてる訳じゃないですか。三日前から決めてたんですよ。今日は、雑誌で見た駅前のあの店のあのハンバーグ食べようってね。あとこれ、余談なんですけどね。正門からボイラー室までの私の一部始終を陰から見てたら、かなり面白かったと思いますよ?だって、延々と私は独り言を言いながら歩いてたんですからね。錯覚でもなかったら、こんな長時間私の話に耳を傾ける比較的肯定的な人なんていませんよ。」
「何をおっしゃ」
「っているのかが、さっぱりですよ!ですよね?では、逮捕します。」
そして、私がスイッチを入れると、ボイラー室の中から痩せた男がテープレコーダーの中へ吸い込まれていった。

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