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2011年3月 2日 (水)

「第二百四十六話」

 お母さんに頼まれて、僕が家で1人で留守番してたら、何の前触れも無く突然、サイボーグが訪ねて来た。
「こんにちは。」
「どぞ。」
何やらビームっぽいのが発射しそうな右腕を上げて、サイボーグは挨拶した。だから僕は、このチャンスを逃したらって思って、サイボーグを2階の僕の部屋に案内する事にした。だって、そうでしょ?人がサイボーグに出会う確率なんて、人が野生のハムスターに出会う確率より低いんだよ?僕の人生じゃあ、きっともう2度とサイボーグに出会う事なんて無いんだからさ。そりゃもう、部屋に招いちゃうよ。
「こっちだよ。」
「お邪魔します。」
飛ぶかな?飛ぶのかな?翼的なもんが出て来て飛んじゃうのかな?それとも足の裏からジェット噴射的な事なのかな?そこ、かなり興味津々だよ。翼的なもんかな?それとも足の裏からジェット噴射的な事なのかな?そこ、物凄く気になっちゃうよ。
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
うん。だよね。そうだよね。翼なんて出したら家が壊れちゃうし、ジェット噴射的な事をしたら、やっぱり家が壊れちゃうもんね。階段は、普通の人と同じ感じで上がるよね。サイボーグって言っても割合的には、人間と機械で五分五分っぽいもんね。
「ここが僕の部屋だよ。その辺に座って待っててよ。今、何か飲み物持って来るからさ。」
「どうぞお構い無く。」
ん?でもちょっと待てよ?サイボーグって、オレンジジュースとかグレープジュースとか飲めるのかな?やっぱり、ガソリンとか特殊な燃料とかなのかな?
「あのさ。」
「はい。」
「何、飲む?」
「本当にお構い無く。すぐに帰りますから。」
「遠慮しないで言ってみてよ。まあ、家にあるもんならなんだけどね。」
すぐに帰りますから?すぐに帰してなるもんかってんだい!これからなが~い時間掛けて、いろいろ聞かなきゃなんないし、いろいろ見せてもらわなきゃなんないんだからさ。
「では、ほうじ茶を。」
「ほうじ茶?」
「無ければ結構です。長居は致しませんから。」
「あるあるある!ほうじ茶あるから!すぐ持って来るから、待ってよ!」
「はい。」
ふっふっふっ!あるんだなぁ。ほうじ茶!家は食後にいっつも、ほうじ茶が出るんだなぁ。まさか、僕の嫌いなほうじ茶に、こんな形で助けられるとは思ってもみなかったよ。感謝だよ!ありがとうだよ!ほうじ茶!
「ほ~う~じ茶~!ほう~じ茶~!ほっほっ、ほう~じ茶~!」
もう、ウキウキが止まらなくて、ワクワクが押さえきれないよ。階段も今まで味わった事ないくらいにリズミカルに下りれちゃうよ。でもって台所に到着っと!え~と?確か、いとしのほうじ茶は台所の棚の中に!
「あった!」
ふっふっふっ!あったあった!いったい何を聞いてやろうかな?とりあえず左目について聞いてやろうかな?それとも、中に何かを隠してそうなお腹について聞いてやろうかな?それともそれとも、半分見えてるガラスケースの中の脳ミソについて聞いてやろうかな?って、そんなウキウキを胸に、ほうじ茶の茶筒を手に取り、いやいや、やっぱり口から火が吹けるのかな?バリアとか出来ちゃうのかな?どう言う感じで飛ぶのかな?どっから来て、どこに行くのかな?何でサイボーグになったのかな?とかから聞いてやろうかな?って、こんなワクワクを胸に、ほうじ茶の茶筒を僕は勢いよく開けた。
「えっ?」
空だ!?ウソ!?何で?どうして?まずい!まずいよ!これじゃあ、サイボーグが!せっかく何だか分からないけど訪ねて来てくれたサイボーグが!帰っちゃうよ!ダメかな?オレンジジュースとかグレープジュースじゃ、ダメなのかな?
「どうやら、無いようですね。」
「えっ?サイボーグ!?いや、ちょっと待てよ!あるあるある!絶対どっかにあるから!ほうじ茶!」
出来ればその右腕のビームっぽいのが発射する所を見たいって僕の夢が!二まわりぐらい大きな左手のメガトンパンチの破壊力を見てみたいって僕の夢が!きっと電撃っぽいのが出るんじゃないかって左膝の辺りのバチバチしたとことか!小型のミサイルっぽいのが隠されてそうな右腿のパカパカしたとことか!その耳やその肩や何だか分からない緑色のヤツとか!
「いくら探しても、きっとほうじ茶は、見付かりませんよ?」
「そんな事ないよ!家は食後には、いっつもほうじ茶なんだから!」
「だからこそですよ。」
「えっ?どう言う事?」
「それでは、私はこの辺で失礼します。」
「えっ!?ちょ、ちょっと待てよー!サイボーグ!行かないでよー!サイボーグ!行っちゃダメだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
行かないで!お願いだから行かないでサイボーグ!まだ、僕まだ何にも聞いてないじゃないか!まだ何にも見せてもらってないじゃないか!こんなのイヤだよ!こんなのウソだよ!帰らないでよサイボーグ!
「うぇぇぇぇん!お母さぁぁぁぁぁぁん!!」

第二百四十六話
「母は、お茶屋へ」

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