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2011年4月27日 (水)

「第二百五十四話」

「店長?」
「ん?何だ?バイト君。」
「僕、この文房具屋のバイトを、たかが文房具屋だろうって、かなりナメてました。」
「あそう。それで?」
「だから僕、今日でバイト辞めます!」
「そうか。」
「すいません。」
「何も謝る事はないじゃないか。でも、なぜ急に辞めますとか、そんな訳の分からない事を言うのかを教えてくれませんか?」
「まあ、理由も告げずに辞めるって言うのも虫のいい話ですよね。」
「場合によっちゃあ、何も聞かないってのもあるけど、にしてもまずはその何も聞かないかの判断材料となる原因を聞かねばだよ。バイト君!」
「遠回りになんだかんだで結局、辞める理由を聞いてるじゃないですか。まあいいですけどね。実は、それなんですけど、あまりにも文房具屋独特の専門用語が、独特過ぎて着いてけないんですよ。」
「そう?そんな言うほど専門用語じゃないっしょ!」
「ないっしょ!って、いやいや、めちゃくちゃ専門用語だらけですよ!頭ん中がこんがらがっちゃうぐらい専門用語だらけですよ!」
「ええっ!?そうかなぁ?」
「じゃあ、例えばですよ?店長、これを何て呼んでます?」
「ピラミッド。」
「でも、世間一般では、これを三角定規って言いますよね?」
「とも言うね!」
「形や用途などなどから、独特の専門用語がどの職業にもあるのは分かります。でもですよ?」
「でもなに?思わせ振りだねぇ?まさか好きなの?」
「何で僕が、急におっさんを好きんなんなきゃならないんですか!そうじゃなくて!文房具屋の専門用語があまりにも不可解で!あまりにも理解不能なんです!」
「そうなんですかねぇ?」
「そうなんです!なら!なら店長!」
「はい!」
「これは?」
「四角定規!」
「そらみたことか!世間一般では、これを普通に定規と言うんです!確かに、確かに四つの角があるから四角です!」
「だったら別にいいじゃないか。」
「でもですよ?店長?普通の定規を四角定規と呼ぶのは、三角定規あっての話ですよね?その根本の三角定規をピラミッドって形で専門用語化してる時点で!普通の定規を四角定規と専門用語で呼ぶ事が成立してないんですよ!」
「いらっしゃいませ!」
「誰も来てませんよ?そんなあからさまに惚けていられるのも今のうちですからね!」
「ねぇ?何か私が悪い事でもしたの?」
「これは!」
「消しゴム!」
「ほら?」
「何?」
「ほらね?」
「何ね?」
「世間一般では、これを修正液と言うんです!でね?何が言いたいのかと言うと?」
「何が言いたいのだろう?」
「あるから!ありますから!消しゴムって文房具が!あるんですよ!そこの現場で扱ってる物をそこの現場で扱ってる物で専門用語化しちゃダメ!それは、それだけは、絶対にやっちゃダメ!なぜなら混乱を招くから!なぜなら訳が分からなくなるから!」
「そう・・・・・・かなぁ?」
「で、もうこれはかなりこちら側が譲歩したとしてですよ?こう言った消す物を総称で消しゴムと呼んでいるなら分かります!」
「ほっ!なら、ちょっと、ほっ!だね。」
「これは?」
「便利マン!」
「ほっ!となんか一瞬たりともしてる場合じゃありませんよ店長!なぜなら、世間一般では、これを消しゴムと言うからです!」
「便利じゃないか。」
「いやもう、それを言われたら、文房具屋にある物すべて便利ですから!便利以外の目線で作る側も使う側も文房具を見てませんから!」
「バイト君?」
「何です?」
「便利マンはね。文房具の中でも、それはもう一番便利なのだよ。」
「個人差っ!それはもう個人差の域ですよ!鉛筆が一番便利だと言う人もいれば!」
「ああ、不味い棒ね。」
「ホッチキスが一番便利だと言う人もいるし!」
「武器ね。」
「中には、分度器が一番だと言う人もいるでしょう!」
「用途不明ね。」
「その専門用語はやめろっ!分度器は、用途不明なんかじゃなーい!ちゃんと計りますよ!角度を正確に計りますよ!てか、文房具屋が!文房具を用途不明って専門用語化しちゃったらアウトでしょ!」
「アウト?今は、用途不明の話をしているのであって、アウトは関係無いのではないだろか?」
「確かに、セロハンテープの話はしてませんよ。アウトとついつい言っちゃたのは、僕の不注意でしたよ。けど、けどですよ?そう言う日常会話に入り込んで来るような専門用語の方が悪いんですよ!だいたい何でセロハンテープがアウトなんですか!」
「まあなんだ?文房具としては、ギリギリアウトだからさ。」
「じゃあもう!文房具じゃないじゃん!ギリギリでも何でも!アウトだったら!そいつぁもう別物じゃん!」
「アウトだったら、別物?ちょっと文章として意味が分からないなぁ?」
「例えば僕が、セロハンテープだったら、別物じゃん!って言ってるんだったらそりゃそうでしょう!そうなりますとも!でも今のアウトは、そっちのアウトじゃなくて!本来のアウトの意味ですから!ってもう!こう言う感じが面倒臭くてややこしくて嫌になるんですよ!」
「まああれだな?臨機応変ってやつだな!」
「貴方が言うな!貴方は、絶対に臨機応変なんて言葉を口にしちゃダメだ!だったら、これは!これは、何て言うんですか!店長っ!」
「ありがとうございました。」
「世間一般では!これをコンパスと言うんです!」
「でも何かこうして丸を物凄く上手く書けた時、物凄く感謝じゃないか!人間、自力でこんな物凄く上手く丸は、書こうと思っても書けるもんじゃないぞ?」
「だからあるんじゃん!だから、コンパスがあるんじゃん!その感謝の念を文房具に向けるなら!全ての文房具に、ありがとうございましたでしょう!」
「でも!ありがとうございましたは、画期的じゃないか!画期的な文房具じゃないか!」
「それも個人差っ!だったら、それはコンパスを発明した人へ向けるべきだ!そして、コンパスをありがとうございましたって専門用語化しちゃったもんだから、店長はお客さんに一度もありがとうございましたって言わないじゃないか!」
「バイト君?馬鹿を言ってもらっちゃ困るよ。私は、常にお客さんへは、感謝の気持ちでいっぱいだよ。文房具を使って、笑顔になるお客さんの顔がこうして目をつぶれば浮かんで来るってなもんだよ!」
「だったら!言いましょうよ!そんなお客さん達に!その感謝の気持ちを伝えましょうよ!」
「お客さんをありがとうございました扱い出来るか!!」
「だから、貴方は絶対に臨機応変って言葉を口に出しちゃダメだって言ってんだっ!!」
「あっはっはっはっはっ!何かまるで、それじゃあ私が犯人だと、言わんばかりの勢いじゃないか。」
「一体全体どんな誤魔化し方だ!それに、これだけは納得いかないと言うか!もっとも不可解で理解不能なのが!これです!」
「ノート?」
「ノートです!そうですノートですよ!世間一般でもこれはノートと言うんですよ!」
「ノートがどうかしたのか?」
「どうかしたかも何も!何でノートは、ノート何ですか!」
「それは、ノートって代物が!文房具として使う物ではなく!文房具に使われる立場の物だからだーっ!だから私は!ノートを文房具として認めた事は一度もない!いや、これから先も認める事はないだろう!」
「あ、あまりにも個人的観点過ぎる!?」
「それの何が悪い!」
「いやだって、専門用語って言うのはその職業の・・・・・・ってまさか店長!?これって全て店長独自の文房具へ対しての専門用語化だったんですか!?」
「実はな。バイト君。私は、病気なんだよ。」
「病気?病気って、何の病気なんですか!?」

第二百五十四話
「専門用語シンドローム」

「せ、専門用語シンドローム!?」
「私は、あらゆる物に対して、あらゆる職種からの観点で、何らかの専門用語を付け、そして専門用語で呼ばずにはいられなくなってしまうのだよ!それが専門用語シンドロームなのだよ!!」
「何て、何て僕は間抜けなんだ!おかしいと思ったんだよ!随分とおかしな専門用語だと思ってたんだよ!でも逆にこんな小さな文房具屋ですらって、いろいろ深く考え過ぎたんだよ!そんなカラクリだったなんて、あらゆる物に対して、あらゆる職種からの観点で、何らかの専門用・・・・・・?ちょっと、待って下さいよ店長?」
「何だね?バイト君。」
「まさかそのバイト君って言うのも文房具屋観点からの何らかの専門用語なんじゃ!」
「まあね。」
「そんな!?いったいどう、専門用語化したんですか!世間一般ではバイト君を何て言うんですか!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「店長ーっ!!」

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