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2011年6月 1日 (水)

「第二百五十九話」

「死ぬ!?」
「そう!そのオジサンを見た人は、24時間後に必ず死ぬんだってよ!」
洒落たオープンカフェに呼び出して、めでたい話かと思ったら、いつも以上に、世にも奇天烈な話を語り出した友人。そんなんだからこの前の合コンだって、女の子全員途中で帰っちゃうどんでん返しを巻き起こすんだよ。何が見たら24時間後に必ず死ぬオジサンだよ。
「で?そのオジサンは、何なんだ?」
「おおっ!?食い付いたな!」
どうせ俺が聞かなくても話すくせしやがって、だいたいこれを食い付いたって言うなら、コンビニで店員に肉まん下さいって言う事すら、食い付いた事になる。
「殺人鬼なのか?そのオジサンってのは?」
「いやいや、オジサンは、ただ単にジーっとこっちを見てるだけだよ。」
「何だそれ?何でそんなんで24時間後に死ぬんだ?」
「だから!恐いんじゃないか!だからだよ!」
何がいったいそんなに、だから、なのかが理解不能だ。俺にしてみりゃ、この手の話を簡単に信じるコイツの方がよっぽど恐い。
「ガキの都市伝説的な話だろ?下らない。ディテールが甘いんだよ。その手の話はさぁ。何もかもが不明。知りたい情報は、一切分からない。都合のいい、どうとでも解釈出来る、単なる奇天烈な話にすぎないんだよ。」
「言うねぇ!言う言うとは聞いてたけど、ここまでズバッと言えるとは!」
「なら聞くけんども?そのオジサンは、鏡に映った自分の姿を1度も見た事ないのか?オジサンになるまで、自分がどんな容姿なのか分からずに成長したってのか?」
「お前さぁ。オジサンはオジサンだよ。オジサンに幼少期もなけりゃ、これから歳を重ねる事もないんだよ。」
「妖怪か?」
「まあ、妖怪みたいなもんかな。」
「だいたいさぁ。1番の不明点は、そのオジサンの目的は何なんだよ。何で人を死なせなきゃならないんだよ。」
「そこはほら、そうでなきゃ面白くないじゃん!」
「はあああ??」
やれやれ、面白いかつまらないかで殺されてたんじゃ、たまったもんじゃない。
「どう?どうどう?」
「どう?って、見たら24時間後に必ず死ぬオジサンねぇ。」
「で!」
「ん?」
「実は俺な!見ちゃったんだよ!オジサン!」
「じゃあ、死ぬんだ。」
「死ぬ!」
これから死ぬ人間が、こんなに楽しそうに笑うかっつぅの。
「それで?お前は、何でそのオジサンが、見たら24時間後に必ず死ぬオジサンだって分かったんだ?」
「何かさぁ!俺の事をジーっと見てたんだよ!でな!ビビっと来たんだよ!来ちゃった訳だよ!」
「あのなぁ?」
そんなんで死んでんなら、俺は今まで一体何回死んでんだ?
「間も無くです!」
「はあ?何が?」
「だから、俺がオジサンを見てから24時間が経つんだよ!あと1分で俺は死ぬ!」
「御愁傷様です。」
「香典弾めよ!」
「何でだよ!逆に下らない理由で死んだ友人の葬儀に顔出してやった料をくれよ!」
「言うねぇ!言う言うとは聞いて………。」
「ああ、下らない。そう言う死んだフリとか、しょうもないからやめてくんないかなぁ?」
「・・・・・・・・・バレた!」
「早っ!どうせやるなら、あと何回か声掛けたら生き返れよな!」
「・・・・・・・・・。」
「なあ?」
「・・・・・・・・・。」
「いや、もう1回死んでるからさ。」
「・・・・・・・・・。」
「下らなすぎだっつぅの。」
「・・・・・・・・・。」
「満面の笑みで死んだフリするヤツがいるかよ!」
「・・・・・・・・・。」
「お、おい?おいってば!」
「・・・・・・・・・。」
「う、嘘だろ!?」
「・・・・・・・・・。」
そして、友人は死んだ。見たら24時間後に必ず死ぬオジサンに出会って丁度、24時間後に満面の笑みで・・・・・・。

第二百五十九話
「見たら24時間後に必ず死ぬオジサン」

「はあ。」
「おう!大変だったなぁ!目の前でだろ?」
「ああ。」
「まさかアイツが死ぬとはなぁ。何か、嘘みたいだな。」
「本当だよ。」
友人の葬儀の席で、2年振りに出会ったその友人の目は赤く、そして腫れていた。
「そうそう。俺、昨日変なオジサンに会っちゃったんだよな。」
「変な・・・オジサン?」
「そう。駅のホームでさぁ。ただただ、ジーっとこっちを見てるだけなんだけどな。何か気持ち悪くてさ。」
「えっ!?」
「あんまり見てくるから俺さぁ。そのオジサンに近付いて行って、注意してやったんだよ。」
「で?そのオジサンは、何か言ったのか?」
「やけに食い付くなぁ。そんな面白い話でもないぞ?」
「いいから!オジサンは、どうしたんだよ!」
「バカ、大声出すなって。」
「わ、悪い。」
「お前、大丈夫か?何か顔色悪いぞ?相当、疲れてるんじゃないのか?」
「俺の事はいいから、それで?オジサンは?オジサンは、どうしたんだよ。」
「ああ、オジサン?何も言わずに、俺を見ながら去って行ったよ。なっ?面白くも何ともないだろ?ただただ気味が悪かったってだけの話だよ。」
「そうか。・・・・・・ん?」
「どした?」
「いつ見たんだよ!そのオジサン!お前は、何時に見たんだよ!なあ!」
「お、おい。」
「なあ!教えろよ!オジサンを何時何分に見たんだよ!」
「ちょ、ちょっと落ち着けよ。どうしたんだよ。」
「いいから言えよ!オジサンを何・・・あ・・・れ・・・・・・。」
「お、おい!しっかりしろ!大丈夫か!おい!どうしたんだ!誰か!誰か救急車っ!」
次に目覚めた時には、病院のベッドの上だった。どうやら俺は、葬儀の最中にぶっ倒れてしまったみたいだ。
「びっくりだよ。急に大声出したかと思ったら倒れちゃうんだもん。みんな心配してたよ?」
「・・・・・・悪い。何か急に目の前が白くなっちゃってさ。」
「いっつも2人で授業中に騒いでたもんね。その大親友が目の前ででしょ?アタシでもショックで倒れちゃうかもだよ。」
「いや、ショックでと言うか・・・・・・・・・なあ?」
「ん?」
「アイツは?アイツ、どうした?」
「・・・・・・・・・。」
「おい!何で黙ってんだよ!」
「・・・・・・・・・。」
「なあ!アイツはどうしたんだよ!」
「・・・・・・・・・あのね?」
「・・・・・・・・・。」
「実は・・・・・・・・・。」
「死んだのか!」
「どうして分かったの!?」
「本当だったんだ。」
「今は、出来るだけショックを与えないようにって、体力が回復したらって、先生にも止められてたんだけどね。やっぱりあれかなぁ?友達って、そう言うの分かっちゃうのかな?」
「・・・・・・違う。」
「えっ?」
「そんなんじゃねぇ!」
「ど、どうしたの急に?ねぇ?変だよ?本当に大丈夫?」
「オジサンだ。」
「オジサン?」
「オジサンなんだよ。カフェでアイツ言ってたんだよ!オジサンを見たって!そのオジサンを見たら24時間後に必ず死ぬって!で、葬儀の時、アイツもオジサンを見たって言ったんだよ!だから死んだんだよ!見たら24時間後に必ず死ぬオジサンを見たからなんだよ!」
「・・・・・・・・・ぷっ!」
「何が可笑しいんだよ!」
「ごめんごめん!だってぇ!オジサン見たら死ぬなら、だったらアタシ、今まで一体何回死んでるの?」
「違うんだ!そうじゃないんだよ!そのオジサンは!普通のオジサンじゃないんだって!」
「普通じゃない?じゃあ、何かしてくるの?」
「いや、その逆だ!オジサンは何もしない!ただ単にジーっとこっちを見てるだけなんだ!」
「ふ~ん。」
「なあ?俺は、真面目に言ってんだぞ!友人2人を亡くしたから頭が変になったんでもない!」
「分かってるよ。」
「2人ともそのオジサンを見て24時間後に死んでんだぞ!」
「じゃあ、あれだ。アタシも間も無く死ぬんだ。」
「えっ!?」
「昨日ね。病室に行く途中にね。見たよ。そのオジサン!」
「み、見た?」
「うん!ただ単にジーっとこっちを見て来るオジサン。な~んか気持ち悪かったなぁ。たぶん変態だね。うん。だってぇ!そんな顔してたもん!」
「間も無くって?」
「えっ?」
「間も無く死ぬって、何時何分だよ!」
「えーと?あっ!あと5秒で、24時間にな・・・・・・・・・。」
「お、おい?おい!おーいっ!!」
身近な人間が短期間で立て続けに3人も死んだ事で、警察は俺を疑い出した。俺は、何度も何度もオジサンの話をしたが、警察は毎度毎度、話を信じちゃくれなかった。信じてくれないどころか、友人同士にはありがちな些細ないざこざやケンカを理由に、気付くと俺は、いつの間にか連続殺人犯に仕立て上げられてた。
「1104番!出ろ!」
何がどうなってこうなったのか?何で友人を不条理に3人も失った俺が、間も無く刑を執行されようとしてるのか?
「1104番。何か最後に言い残す言葉は?」
「・・・で・・・・・・け・・・つう?」
「ん?何?」
「・・・・・・何で、俺だけ普通?」
「何だと?」
「なあ!オジサンどこだよ!どこにいるんだよ!」
「1104番!」
「オジサンは?」
「どうしたんだ!1104番!」
「俺、見てねぇよ!」
「おい!」
「見てないんだよ!なあ!なあってば!」
「静かにしろ!」
「オジサン、関係無いじゃん!」
「執行っ!」

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