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2011年10月

2011年10月 5日 (水)

「第二百七十七話」

 事件はいつも唐突だ。唐突だから事件であり、事件だから唐突なのだ。そう、そこには例外など存在しない。この商店街の特異な地下商店街でもまた、それは唐突起きる。これは、いつもの私の小さな事件簿である。
「おいおいおい。そりゃないだろ?刑事さん。」
この見るからにマジシャンな男は、地下商店街に店を構えるこのマジシャン屋の店主であり、今回の私の小さな事件簿の犯人だ。
「いやあ、マジシャン屋さん。惚け方が唐突ですねぇ。」
「惚けてなんてないさ。そりゃあ、マジックの道具として鳩は重要だよ。」
「やはり。」
「やはりってなんだよ!そのあからさまな、やはりってのは!あのな?刑事さん?だからって何でわしが向かいの小鳩を盗まなきゃなんないの?」
「マジシャンの道具に鳩が不可欠!小鳩屋の小鳩が盗まれた!そこに何かマジシャン屋の店主!貴方を疑わない理由が唐突に存在しますか?」
「するだろ!」
「それは、唐突な自供と考えて宜しいですね?」
「いやいや、どこをどう捉えたら、反論が自供に聞こえちゃうんだい!いいか?確かに鳩はマジシャンにとって必要不可欠だ。だかな?それはあくまで鳩であってだな。まだ小さな小さな毛も生え揃ってない小鳩の事じゃないんだよ。」
「ふむふむ。」
「いや、ふむふむ、じゃなくて!分かってんのか?小鳩を盗んだのは、わしじゃない。」
「わしじゃない。ですか。何ともまあ、犯人が唐突によく言いそうな言葉ですね。いや!実際、犯人が唐突に言いそうな言葉ランキング堂々の第1位です!」
「そこだけをピックアップすりゃあ、そりゃあ、そうだろうよ!あのさ?刑事さんさ?わしも暇じゃないんだよ。アンタに店の中ウロウロされたんじゃあ、商売にならないんだよ。それに、アンタだって暇じゃないんだろ?」
「ええ、事件はいつも唐突ですからね。まるで水滴屋の水滴の様に、生き物の如くその辺に隠れて、唐突に現れる機会を狙っていますよ。」
「そんなピンと来ない例え話なんて、どうだっていいから、もう帰ってくれよ。」
「これは?」
「ん?」
「この唐突に置いてあるステッキですよ。何なんですか?」
「商品なんだから唐突に置いてある訳ないだろ。ああ、それか。ちょっと貸してみな。」
「唐突ですね。」
「何がだ?いいか?見てろよ?こうすると、このステッキが一瞬にして生きた蛇に変わるんだ。」
「おおっ!!」
「そんな驚く事じゃないだろ。ステッキが何かに変わるのとかは、何かで見た事ぐらいあるだろ?」
「ええ、でもそれってあれですよね?マジックか何かなんですよね?」
「当たり前だ!何かじゃなくて正真正銘のマジックだ!マジシャン屋でこれがマジックじゃなきゃ何なんだ!」
「これは?」
「ん?」
「この唐突に置いてあるコップは?」
「唐突じゃないけどな。ああ、それか。そのコップに水を入れてハンカチで隠すと一瞬で中味が蛇に変わるってヤツだ。」
「まさか。」
「リアクションがいちいちおかしいだろ。友達の家に遊びに来た訳じゃないんだぞ?ほら、貸してみな。」
「唐突ですね。」
「順当だろ。いいか?コップいっぱいに、こうして水を入れだろ?」
「ええ。」
「で、こうやってハンカチを被せる。」
「ふむふむ。」
「ワン、トゥ、スリー、どうだ?」
「ええ、ツーの発音が唐突に素晴らしく良いですね。」
「どこに食い付いてんだ!じゃなくて、ハンカチの中のコップの中は今、どうだ?って事だ。」
「いや、水でしょ!何を言ってるんですか!大丈夫ですか?」
「アンタが大丈夫ですか?いいか?これをこうする。」
「こ、こうするってマジシャン屋の店主!?ハンカチごとコップを持って!まさかそれを私に?ちょっと待ちましょう!落ち着きましょう!そんな事をしたら、私は唐突にびしょ濡れ」
「ほれ!」
「うわぁぁぁぁ!!ぁ?濡れてない!それどころか水が一瞬にして蛇に変わった!?」
「いいお客さん過ぎだろ。」
「どうなってるんだ?マジシャン屋の店主!」
「簡単なマジックさ。」
「この化け物め!!」
「いや、大昔の人?」
「今の人だ!!」
「切り返しもおかしいし、銃を向けるのもおかしいだろ?何で事前にマジックの流れを説明してんのに、そのリアクション出来んだ?どんだけ純粋なんだよ!例えば水が紙吹雪に変わるとかってのなら見た事ぐらいあるだろ?」
「これは?」
「いやもはやマジック見たいだけだろ?小鳩が盗まれたのとか、どうでもよくなってるだろ。」
「私の質問に答えられないと言うのは、何かそこに気まずい真実が唐突に隠されているからですね?」
「刑事さんのリアクションが、いちいち面倒臭いからだよ。それは、ギロチンだ。」
「凶器じゃん!」
「いや、マジックの道具だよ。だいたいギロチン凶器にする人なんて聞いた事ないぞ?」
「道具?こんなもんでマジックが成立するのか?こうしてマジシャン屋の商品の中に犯罪で使用した凶器を唐突に隠しているだけなんだろ!」
「もう強引加減が物凄いな。なら、貸してみな。」
「唐突ですね。」
「刑事さんさぁ?その口癖やめた方がいいよ?」
「いいから早くマジックを披露しろ!」
「そのすぐに銃を人に向ける癖もどうかと思うぞ?だったら刑事さん。この穴に人差し指を入れてみてくれ。」
「嫌だよ!何で入れなきゃなんないんだよ!そんなとこに指入れたら切り落とされるだけじゃん!分かってて入れるかよバカ!絶対嫌だよ!」
「何だろうな?何かムカムカするこの感覚?じゃあ分かったよ。わしが人差し指を入れるよ。」
「お、おい!?正気か!?そんな事をして指が切り落とされたら、もうマジックが出来なくなるかもしれないんだぞ?いや、最悪の場合!出血多量で死ぬかもしれないんだぞ?」
「アンタがだよ!正気かは!いいか?こいして人差し指を穴に入れて、ギロチンを落とすとだな。」
「やめろぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「刑事さん?ちょっと?手で目を隠してないで、見てみなよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「なっ?指は切り落とされてないだろ?」
「・・・・・・嘘だーっ!嘘だよ!だって、指の回りの穴に入ってた蛇は、切り落とされてんじゃん!これあれでしょ?私が両目を両手で隠してる間に、唐突に指を穴から抜いたんでしょ?そう言うマジックでしょ?」
「成功率低く過ぎだろ!普通ガン見だぞ!」
「分かった!一瞬にして縫合!」
「どんなマジックだ!だいたいそんな技術があるぐらいなら、マジシャン屋なんてしてないで、そっちの道へ行くよ。」
「夢かな?」
「このマジックで、そんな感じだったら、アンタきっとそのうち心臓止まって死ぬぞ?」
「心臓止まって生きてる仏さんがいてたまるかーっ!!」
「えっ?何でわしが怒られる?」
「おやおや?おや?」
「アンタの展開の方が、よっぽど唐突だよ。」
「このシルクハットは何です?」
「いや何かもう知ってる感じだろ!シルクハットから蛇が出て来るマジック知ってる風なアプローチじゃん!」
「出て来るんですね?」
「出て来ますよ。」
「鳩が!」
「蛇が。」
「小鳩屋から盗んだ小鳩が!」
「いや、業者から仕入れた兎を入れると、業者から仕入れた蛇に変わってな。」
「それは、子兎屋から子兎を盗んだ余罪も、唐突に自供したと考えて宜しいですね?」
「唐突過ぎだろ!だいたい子兎屋って何だ!子兎屋って!」
「だったら、何で兎が蛇に変わるんだーっ!」
「そんな感じのマジックだからだーっ!」
「マジシャン屋の店主?」
「何だい!」
「そんなに怒らなくってもでしょ。」
「いや、逆に今までよくぞ怒りを押さえてたと自分で自分を誉めてやりたいぐらいだよ。あのさ?刑事さんさ?見ての通りうちに鳩はいない。なっ?それでも私が小鳩さんとこの小鳩を盗んだ犯人って証拠が出て来たなら、そん時は罪を認めるよ。だからそこんとこ頼むよ。刑事さん!」
「分かりました。そこまで言うなら、もう一度捜査を洗い直しましょう。」
こうして、小鳩屋の小鳩が盗まれると言う私の小さな事件簿は、ふりだしに戻ってしまった。しかし、私は諦めない。この街の商店街の為、どんなに小さな事件簿だろうが、必ず私が解決してみせる。
「では、失礼します。」
「なあ?刑事さん?こう言ったらあれだがな。こう言うのはあれだ。警察にでも任せといた方がいいんじゃないのか?」
「・・・・・・唐突ですね。」

第二百七十七話
「刑事屋」

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2011年10月12日 (水)

「第二百七十八話」

 男同士の友情を乗せ、ブリティッシュグリーンなクラブマンは夜の国道をひた走っていた。

「なあ?」
「ん?どうした?」
「いや、どうしたじゃなくて、お前がちょっと話があるって、だから少しドライブでもしながら、ドライブがてらに、ってさ。」
「なるほどね。」
「いや、何だよその返し?このままだと山だぞ?どこまでドライブすんだよ。てか、いつになったら話するんだよ。んまあ別に、そこはお前のタイミングでいんだけどさ。」
「山か・・・・・・ってそれってまさかお前!俺を殺して山に埋める気なんじゃないだろうな!」
「何でだよ!どちらかと言えばお前が俺をだろ!何で殺される方にわざわざ埋める殺害遺棄現場まで運転させてくんだよ!」
「お前、斬新だな!斬新殺人だな!」
「殺害方法及び遺棄状況は、ベタだけどな。」
「あっ!でもさっき飲み物買うために立ち寄ったコンビニの防犯カメラに俺達の足取りは録画済みだぞ!それでもお前はまだ!俺を殺す気ですか?」
「これどんな状況?何で殺される側が殺す側を脅迫してんの?いや、殺さないから!」
「じゃあ何だ!そうか!人気の無い山!さては体目当てか!」
「さてはじゃねぇよ!目当てな訳がないだろ!」
「お前に抱かれるぐらいだったらな!ウンコおかずにウンコ食った方がまだましだ!」
「だから、目当てじゃねぇよ!ウンコおかずにウンコって、ウンコばっかじゃねぇか!だいたい、お前がこのルート走らせてんだろ!」
「やっぱりな!」
「はあ?何がやっぱりなんだよ。」
「やっぱり?」
「いや、知らない。お前の中のやっぱり、俺に聞かれたって知らないよ。」
「ほら、やっぱりだ!」
「だから何が?」
「やっぱり、俺がボケたら、お前がツッコム!」
「いやまあ、まあそうかもしれないけどな。」
「そこで今日の大事な話があるんだ!」
「どんなタイミングだよ!」
「いいからいいから、聞けば分かるから!」
「分かったよ。」
「今日の大事な話って言うのはな?」
「うん。」
「ああ、もう昨日の大事な話か!」
「えっ?ああ、いいよ午前0時回ってるとかそう言うのは。」
「何を言ってんだよ、お前は!」
「なぜ怒られる?」
「じゃあさあ!スゲー地球規模な話があってさあ!もう何十年もそんな地球規模な話をしてた偉い奴等がだよ?いよいよ今日、スゲー地球規模な話で決まったそのスゲー地球規模な実験をするって言うんで集合したら、一人が遅刻して来て時計を見たら午前0時を過ぎてた!したら今日のそのスゲー地球規模な実験は、昨日って事になって!何か本当は行われるはずだったのに、概念が邪魔して行われないって言うんですか!昨日今日明日の概念を臨機応変に受け止めないで何が地球規模な話ですか!」
「いやもう、途中から何の話なんだかさっぱり分からないから!分からないけど、別に行えばいいじゃんないの?スゲー地球規模な実験をさ。」
「そうだよ!だから俺だって本当は今日しようとした話が昨日になっちゃったけど話そうとしたさ!でもそこでお前が、ウンコの裏みたいな顔してゴチャゴチャ言ったんだろ!」
「ウンコだ!何だかんだでウンコの裏もウンコだ!てか、何か物凄く怒らないでもいい事で、物凄く怒られてないか?俺!」
「やっぱりな!」
「また、やっぱり?」
「単刀直入に言うけど、一回ちょっとボケとツッコミを入れ替えてみない?」
「何を言い出す?」
「昨日、まあ正確には一昨日なんだけどさ。ウンコしてて、ふと思ったんだよ。ほら、よく言うだろ?人はふと思った瞬間!ウンコをしている!ってさ。」
「何かお漏らし的な話になってないか?」
「なってない!俺はちゃんとトイレで!ふと思ったんだ!」
「あそう。でも、ボケとツッコミを入れ替えるって言っても、何十年もこんな感じの付き合いだしなぁ。別に俺達、その道で食ってってる訳でもないしなぁ。」
「じゃあ何か?お前は別にその道で食ってってる訳でも無いのに、米を食ってんのに、別にその道で食ってってる訳でも無いのに、歩いてんのに、別にその道で食ってってる訳でも無いのに、ウンコしてんのに、別にその道で食ってってる訳でも無いからって、ボケとツッコミを逆にしないってのか?」
「もう、例え話がとにかく無茶苦茶だろ!分かったよ。逆にしてみればいいんだろ?」
「じゃあ、今からな!ヨーイ、スタァー!!」

第二百七十八話
「ボケがツッコミでツッコミがボケで」

男同士の友情を乗せ、ブリティッシュグリーンなクラブマンは真夜中の山道をひた走っていた。

「いやいや、黙ってないで何かボケないと!」
「そんな急にボケれないだろ。」
「簡単なボケでいいんだよ。この車、空飛ぶんですか?とか。」
「バカじゃん!それボケとかじゃなくて、単なるバカじゃん!何で急に俺はそんな事を聞くの?」
「真面目か!バカとかじゃなくて、取っ掛かりだよ。」
「取っ掛かり?」
「そうだよ?別にいきなり俺だって、お前にシュールなボケを要求してる訳じゃないよ。だいたいシュールなボケに対してのシュールなツッコミが上手く出来る自信もまだ俺には無い訳だし、何か簡単なとこから、お互いの立場を慣れさせてこうぜ!って事だよ。アイドリングだよ。ドライブなだけに!」
「いやもう、結構な距離を走ってるだろ。」
「バカなの?」
「はあ?」
「そこはさぁ?何かアイドリングに対してお前がボケを被せて来なきゃ!俺がボケた事になっちゃってんじゃん!」
「いやボケじゃん!」
「普通ならな?今までの関係性ならそれでもいいよ。いやむしろそれがいいよ。けど今は、ボケとツッコミが入れ替わってんだから!ボケなきゃ!この車、空飛ぶんですか?とか言わなきゃ!」
「何でアイドリングに被せてそのボケなんだよ!」
「何かその方がシュールだろ?」
「さっきっから、シュールシュールって言ってるけど、いまいちシュールの意味が分かんないんだよ。」
「だから、シュールって言うのは・・・・・・ちょっと、昨日はお昼に何を食べました?って聞いてみ?」
「昨日はお昼に何を食べました?」
「ダイエット中なんで、右肘の毛玉を2玉。」
「それがシュールなボケなのか?」
「今のがシュールなボケなのかどうかは、後は神頼みだよ!」
「シュールって神頼みなのか?」
「シュールってほぼ神頼みだよ。」
「どんな世界だよ!」
「強いて言うなら、2玉の部分を少々って言うかどうか迷った。」
「ええーっ!ちょっとかなり難しいんですけどーっ!」
「午後2時の1歳児かよっ!」
「はあ?」
「いや、何か駄々こねてるから、昼寝前の幼児かなって事だよ!」
「急に分かりにくい!えっ?それがシュールなツッコミなの?」
「だから、シュールかどうかは神頼みだよ!」
「えっツッコミも?」
「強いて言うなら、1歳児の部分を1歳3ヶ月児にするかどうかで迷った。」
「普通で良くないか?」
「良くない!!」
「何かもう、会話する自信ないぞ?」
「ある!!」
「いやいや、俺内の事だから。」
「俺達、親友だよな?」
「急に恥ずかしい事を面と向かって言うんだな?まあ、親友だよ。」
「だったら!その親友がこんなに頭下げて泣いて頼んでんだから、いいじゃないか!少しの間ぐらいシュールにしてくれても!」
「分かったよ。泣いてもいないし、1度も頭下げてないけど、分かったよ。出来るだけ頑張ってシュールにボケてみるよ。」
「よっしゃああああああああああああ!!!!!」

男同士の友情を乗せ、ブリティッシュグリーンなクラブマンは朝靄の国道をひた走っていた。

「そう言えばこの車って、ロボットに変身したりするの?」
「いや、天井に謎のボタンがあるからって、ロボットに変身するかよ!」
「じゃあ、この謎のボタンは一体何なんだよ。押したらカプチーノでも出て来るのか?」
「おいおい、そんな発音してたら、現地でとんだ変態扱いだぞ?」
「ああ、膵臓痒い。」
「またまたー!近未来的な事言ってその場を誤魔化しちゃってー!」
「あっ!」
「どうした?」
「今、擦れ違ったトラック見たか?」
「見てない。」
「売国奴が乗ってた!」
「何を愛国者みたいな顔して売国奴みたいな事を言ってんだよ!」
「ああ、膵臓痒い。」
「誤魔化し方が近未来一辺倒だっつーの!」
「おい見てみろよこの海!」
「綺麗だなー!」
「塩分控えめ!」
「濃口醤油顔が何を言うか!」
「ああ、小腹減ったなぁ。」
「言われてみればそんな感じだな。どっかで軽く食べてくか。」
「ワクチン食べたーい!」
「近未来もういいっつーの!」
「こうして右手の人差し指を曲げると、まるでこうして右手の人差し指を曲げている様だ!!」
「急に哲学!?」
「ああ、新しい元素発見したーい!」
「そして近未来!?」

男同士の友情を乗せ、ブリティッシュグリーンなクラブマンは朝焼けに照らされた海沿いの国道をひた走っていた。

「こんな感じか?」
「まあ、後は神頼みだな。」
「おい!」

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2011年10月19日 (水)

「第二百七十九話」

「そんなビックリしなくても!お爺さんは、大袈裟だなぁ!」
「するだろ!ビックリ!玄関開けて朝刊取ろうと思ってポストのとこまで行ったら突然、門の前にファンタジーな怪物がいたら!目が飛び出るってもんだろ!」
「いやいや、お爺さん!ファンタジーって言ってんだから、そこはモンスターって言わなきゃ!」
「ああ?!そんな事は、どうだっていいんだよ!何なんだ貴様は!わしとばあさんを食う気かっ!そうか食う気なんだなっ!おう?!」
「雷だなぁ!お爺さんは!ちょこっと落ち着いてってば!僕が人間を食べる訳がないでしょ!あっ!でも、ガムくれるなら食べるよ!ガム好きー!」
「んなファンタスティックな食い物なんか家にはないっ!例えそんなマジカルな食い物があったとしてもだ!毛むくじゃらのドラゴンみたいな怪物になどくれてやるかーっ!」
「みたいじゃなくてドーラーゴーン!直立タイプのね!所謂、ながーいタイプじゃなくて、翼の生えてるタイプね!っていや、お爺さん!何でドラゴンまできてまだ怪物って言う?」
「ドラゴンとかモンスターって言うにはあまりにも怪物だからだろ!毛むくじゃらのドラゴンはいいとして!」
「フワッフワッだよ!」
「何なんだそのサーモンピンクとエメラルドグリーンの全身チェック柄は!」
「ママがサーモンピンクドラゴンで、パパがエメラルドグリーンドラゴンだからだよ!」
「DNAの比率!なーんでそんな細かく均等に出ちゃってんだ!」
「妹は、イエローシルバー&グレーゴールドドラゴンだよ!」
「ややこし!何がどうなってそうなるんだ!」
「アッハッハッハッ!」
「別に、面白い事なんて言ってないぞ!つうかなぁ!空向いて笑うのはいいが!火を吹きながら笑うんじゃーない!」
「熱くないんだよ!」
「熱くない火なんかあってたまるかー!」
「やれやれ、本当にお爺さんは雷だなぁ!」
「おい、チェック柄のドラゴン!」
「ああ、因みに僕は、クリムゾンドラゴンだよ!」
「疑うわい!そんな見た目と異なったネーミングだったら!貴様がさっき言ったファミリーカラー全て疑うわい!」
「お爺さん!」
「何だ!!」
「尻尾短いでしょ!」
「んなこたぁ!全く全然これっぽっちも聞いてないわい!だいたい標準が分からん話を持ち出すなー!」
「そんな大きな声ばっかり出してると、血管切れちゃうよ?」
「恐いからだ!貴様の存在が恐くて恐くて堪らないから!だからなんとか大声で恐怖心をおさえてるんだー!」
「なーんだ!だったら、大丈夫だよ!僕は、恐くないよ!」
「顔を近付け!顔をなめるなー!余計に恐さが倍増するわい!いいか?よーく聞けよ怪物!子供だろうが!ドラゴンはドラゴンなんです!内面の問題じゃなくて!とにかく自分よりデカイ生き物は恐いんです!恐竜とは訳が違うんだー!」
「ブラキオサウルス好きー!」
「だーれがいつ好きな恐竜を聞いたー!そうじゃなくてな?恐竜でギりだって事だよ!ある日、目の前に恐竜が現れたら!そりゃあ、恐い!恐いけどなぁ!まあ、ありなんだよ!いたからね!大昔に実際にいたから!ああ、こんな事もあるもんなんだなぁ。ってな!それなりに納得出来る!納得出来ないとしてもだ!それなりにはまあ、出来るんだ!だけどなぁ?ドラゴンなんて空想上の生き物が現れてみろ!何だこの言い様のない今まで経験した事のない恐怖感は!ふざけるなーっ!」
「ピヨ!」
「おい!おいおい!どこの誰が、ドラゴンがヒヨコの真似事したからって恐くないって思うんだー!」
「でもお爺さん?」
「何だ!!」
「大きなヒヨコだと思えば大丈夫だよ!」
「大きなヒヨコは!ニワトリだーっ!」
「アッハッハッハッ!」
「何がおかしい!つうかなぁ!火を吹くヒヨコがどこの世界にいるんだー!」
「そこをなんとか火を吹くヒヨコでお願いできないでしょうか?」
「無理だろ!だいたいこれがニワトリになる絵が浮かばん!」
「ワンワン!!」
「馬鹿にしているな?貴様ーっ!そうやって老人を馬鹿にしてるんだろー!耳の穴かっぽじってよーく聞けよ!食うなら食え!だかなー!ばあさんに指一本触れてみろ?そんときゃ地獄の底から蘇って!貴様を血祭だーっ!!!」
「こわっ!お爺さんの方がよっぽど恐いって!白髪鬼だーっ!!」
「完全に馬鹿にしてるなっ?こっちが何にも出来ないと思って!あれか!そんなに年寄りをからかって楽しいか!何だ?ドラゴンってのは弱い者イジメが趣味なのかっ?そんな子供達のファンタジックな夢をぶち壊すなんて!クソ以下だ!おいクソ怪物!用が無いならさっさとファンタジーな世界へ帰れーっ!!」
「現実の世界とファンタジーの世界を繋ぐ扉ってのはね?こっち側から扉をどうやって開くのか分からないけど、至るところにあるんだよ?だから、お爺さんの言う空想上の生き物ってのは、全て存在するんだよ?でもね?それを実際に目にした人間が、少しアレンジしちゃったんだよ!だって、色々なタイプのドラゴンがいるけど、ドラゴンって、ぜーんぶサーモンピンクとエメラルドグリーンのチェック柄なんだもん!」
「何をポカーン、とさせる様な事を突然、言い出すんだ?このタイミングで!つまりあれか!人間が勝手に格好良くアレンジを加えたって言いたいのか!」
「酷いよー!」
「んまあ、真実をねじ曲げて伝える事は、確かにいけない事だ!」
「クソ以下だなんてーっ!クソ怪物だなんてーっ!以下って言ったのに怪物の前にクソが付いてるよーっ!」
「何だおい!情緒不安定か?まあ、確かにわしも言い過ぎた感はある!そりゃあ否めん!だがなぁ!貴様も悪いぞ?わしの恐怖心の針が振り切れてんのは!貴様がわしの前に現れた目的を言わないからだ!例えそれが、わしを食うつもりじゃないとしてもだ!人間は、何が起きているのか!そしてこれから何が起こるのか!そんなエマージェンシーをもっとも恐怖する生き物なんだ!」
「ごめんなさい。僕、それ知らなかったから。」
「いい、いい。知らなかったもんは仕方ないとしてだ。目的は何だ?」
「それは・・・・・・・・・。」
「どうした!さっきまでの勢いは!」
「だから、帰れないんだってばー!」
「いや帰れないって、お前さん、向こう側から来たんなら、そこからまた向こう側へ帰ればいいだけの話だろ?」
「だから、こっち側からの扉の開け方が分からないんだよーっ!助けて、魔法使いのお爺さーんっ!」
「誰が魔法使いだ!ぽいけども!」
「ええーっ!?魔法使わないなのー!?」
「正確には魔法使えないだ!なるほど、だからわざわざ、わしの所へ来たのか。さてはて、しかしこれは、だいぶ参ったのぅ。」

第二百七十九話
「四丁目の魔法使い」

「ばぁば?じぃじは?」
「じぃじかい?今、出掛けちゃってるんだよ。」
「ええーっ!せっかく遊びに来たのにー!」
「ごめんね。」
「じぃじ、どこ行ったの?」
「さあ?どこに行ったんだろうね?でもきっと今頃、どこかの大空の上で、気持ち良さそうにイビキでもかいて、ドラゴンの背中で昼寝でもしてるかもしれないね。」
「何それー!」
「ふふっ、何だろうね?」
「でも何か、魔法使いみたーい!」

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2011年10月26日 (水)

「第二百八十話」

 俺は今、緑色のカーテンの前で正座している。別に、カーテンの色が緑色だとか、俺が正座しているとかは、特に問題じゃない。カーテンの色は何色だっていいし、俺の座り方だって自由で構わない。じゃあ、一体俺は、緑色のカーテンの前で正座して何をしているのか?
「・・・・・・・・・。」
俺は、緑色のカーテンの前に正座して、緑色のカーテンの向こう側がどうなっているのかを考えているんだ。このカーテンをこの手で開けた時、その瞬間俺は、一体どんな光景を目にするのか?それを考えているんだ。いやきっと、100%いつもの街並みを目にするんだろうが、果たしてその100%と言う真実を100%に信じていいもんなんだろうか?
「・・・・・・・・・。」
だから俺は、仮病の連絡まで入れて事務所を休み、平日のど真ん中の目が覚めてから約2時間、電気も点けずにこうしてカーテンの前に座り、考えているんだ。一体今、このカーテンの向こう側は、どうなっているんだろうか?もしかしたら、既に人類が滅亡しているのかもしれない。カーテンの向こう側には、悉く街並みは無く、果てしなく滅しているのかもしれない。地球の暴走、自然の乱舞、宇宙の偶然、或いは・・・・・・。
「人類同時死!」
いやいや、それは考え過ぎだ。あまりに突飛で、逆に所謂な発想が、所謂過ぎる。人類が滅亡するなら、俺の存在は?このマンションの存在は?だがもし、仮にもう既に俺自身が死んでいるんだとしたら?その死に気付いていないのだとしたら?どうする?
「・・・・・・・・・。」
だとしたらまず、この足で脳の専門家のいる病院へ行こう。そこで専門的な診察を受け、専門的な治療を施して貰おう。なぜなら、死んでいる事に気付いていないナンセンス程、ナンセンスなもんは、この世に存在しないからだ。そもそもまず、耳から伝わるカーテンの向こう側からのいつもと変わらぬ日常音が、何よりもの証明だ。
「うん。」
だとしたらやっぱりカーテンの向こう側には、いつもの光景が展開しているのか?学校へ向かう子供達、会社へ向かう大人達、自転車に幼子を乗せ保育園に向かう親達、そして渋滞する車達。100%真実な光景が、当たり前の様に100%展開しているってのか?だったら俺は!俺は、緑色のカーテンの前で正座して一体何をしているってんだ!おいっ!
「ちくしょーっ!!」
いや、待て!待つんだ俺!ここは一旦、冷静になるんだ!怒りまかせにカーテンを開けるには、まだ早い!その決断は命取りだ!落ち着け、落ち着くんだ俺。そうだ、そう、ゆっくりと、ゆっくりとカーテンから手を放すんだ。
「・・・・・・・・・危なかった。」
100%真実の光景が展開しているとして、本当にそれが100%なのか?カーテンの向こう側の学校へ向かう子供達、会社へ向かう大人達、自転車に幼子を乗せ保育園に向かう親達、そして渋滞する車達の車内達をよく見てみろ。見渡してみろ。そこにいるは、本当に俺と同じ人間なのか?もしかしたら、着々と地球侵略を企んでいたあの、アアアッアアアーア星人かもしれないぞ!
「って面倒臭いかっ!」
俺は、宇宙人の名前を考える事すら面倒臭いのかっ!これは、違う!この感じは、違うぞ!この状況でこの緊張感だとしたら、断じて人類は宇宙人にこっそりいつの間にか摩り替わられてなどない!
「でも飛んでるかも!」
そう、カーテンの向こう側では、人が飛んでいるのかもしれないぞ!突然変異、ミッシングリンク!だとしたら俺は!
「飛べる!」
いや、それはすぐに答えが出る。いや、もう答えが出ているじゃないか。俺は、飛べない。正直に告白しよう。これは日々、俺が寝る前と起きた後に必ず確める事だ。つまり俺は、何だかんだとカーテンの前に座る以前から既に、それは解決済みの真実と言う事だ。
「明日こそは!」
もっとこう、真面目に考えようじゃないか。でないと所長に申し訳がない。その罪悪感から来る風邪で、本当に明日は事務所を休まなければならなくなってしまう。もっとこう、リアルに!そう例えば今までの地球規模での考えを捨て去り、対象を俺個人に切り替えたら?するとどうだ?どうなるんだ?一体、カーテンの向こう側には、何が待ち受けていると言うんだ?
「・・・・・・・・・そんなまさか!?」
いや、それは有り得ない。有り得る訳がない。カーテンを開けた向こう側に、死神やホウキに乗った魔女やもう一人の俺がいるならまだしも!その考えは、あまりにも非現実的過ぎるぞ!俺!
「そ、そうだな。」
ああ、そうさ。そうだよ。それはもう、本当に思考回路がショートしたとしか考えられない突飛で、脳の専門家の専門的な診察と専門的な治療が必要不可欠な発想だ。カーテンを開けた向こう側に、アアアッアアアーア星人が立っているだなんて、そんな考えでいたら俺は、これから一体どんな顔して宅配を受け取れって言うんだ!
「・・・・・・・・・。」
やっぱり、カーテンを開けてもそこは、いつものベランダ。いつもの街並み。いつもの人間模様。だとしたら、つまりあれか?やっぱりのやっぱりで、やっぱりそこには100%真実の光景が100%展開しているって言うのか?
「はあ~。」
ああ、そうだな。だとしたら、落胆ってヤツだな。分かる。分かるぞ、俺!今、落胆せずに一体いつ落胆すればいいんだ!ってヤツだな?だがまだ、落胆には早いんじゃないのか?俺!カーテンを開けて、そこに100%いつもの光景が展開しているとして、果たしてそれが現在と決め付けるのは、あまりにも早くないか?
「まさかの・・・タイム・・・スリップ?」
そう!みんなの憧れ!夢にまで見た!まさかのタイムスリップだ!時空を越えた事に気付いた時既に人は時空を越えている!と言う俺の格言がある様に、つまり既に俺は、現在には存在していない。俺タイムスリップ独自ルールとして、人は過去へ遡れないと言うのがある様に、だからつまり俺は今、何かしらで未来にいるのかもしれないとしたら?それはもはや、今日だと思っていたのが実は、明日なのかもしれない!それはつまり何を意味するのか?
「まさか!?」
「シャアアアアア!」
ああ、そうだ。そのカーテンの向こう側は、100%真実の光景が100%展開している。と同時にそれは、100%真実の光景が100%展開していないと言う事だ。分かるか?俺!分かっているのか?俺!!
「これは!?」
そう、俺にとっての明日もまた、世の中にとっての今日と同じ様に、平日なんだ。やけに、おかしいと思っていたんだよ。この寝覚めの爽快感、電話越しの所長との会話の不一致感。
「これが、カーテンの向こう側?」
ああ、これが、カーテンの向こう側だ。疑う余地もなく紛れも無い現実世界。カーテンの向こう側だ。俺の思う100%真実だと思っていた光景はそこには存在しなかった。ただ、やはりそこには100%真実だと言う光景だけが俺の100%を100%裏切り、100%展開していた。

第二百八十話
「1日無断欠勤」

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