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2011年11月

2011年11月 2日 (水)

「第二百八十一話」

 これは、夢か?夢なのか?いや夢じゃないとしたらこれは、地獄だ。この状況は、地獄だ。どこなんだここは?この真っ暗な場所は?一体どこなんだよぉぉぉぉぉ!!
「バッ!バッバッバッババババババッ!」
「眩っ!?」
何だ?急に電気が点いたぞ?て、事はやっぱり僕は誰かに拉致られてここへ?ん?誰か居るのか?いや、居る!誰か居るぞ!駄目だ!目がまだ明るさに慣れてない。
「・・・・・・キミ!?」
「えっ?」
「どうしてキミがここへ?」
僕の事を知ってる?知り合いって事か?いや、確かに聞き覚えのある声だ!知り合いに違いない!誰だ?くそっ!まだ目がボヤけてる。もしかして、この人も僕と同じ様に拉致らてここへ?よし、やっといくらか目が慣れて来たぞ!って、えっ!?
「課長!」
「おっ。」
どうして課長が?いや、それもそうなんだけど、この無駄に広い部屋は一体なんなんだ?いやいや、そんな事よりももっと大事な事が!
「おっ。って何を悠長に挨拶してるんですか!」
「キミ、確か今日は残業すると言ってたな?」
「そうですよ。一人会社で残業してたら、気付くとここに居たんです。課長は?課長は帰り道にでも拉致られたんですか?」
「いや、私は直接この地下5階へやって来た。」
「はあ?まさか!?まさか課長が?課長が僕を拉致したって言うんですか?」
「そんな訳ないじゃないか!私は、元々今日、ここへ来る予定だったんだよ。そして、開始までそこに誰が居るのかさえ知らなかったんだ。だがまさか、それがキミだったとは、正直驚いているよ。」
「ちょっと待って下さい?課長は、ここがどう言う場所だか分かってるって事ですか?」
「当たり前だ。」
「これから一体ここで何が巻き起こるんですか!」
「そうだな。ルールを知らないのは、フェアとは言えないな。」
「ルール?」
「と言っても簡単な話だ。キミは、地下5階から地上へと出ればいいだけの話だ。私の後ろにある扉の先に、地下4階へ繋がる階段がある。他の階もここと作りは同じだ。」
何だこれは?目の前に居る課長は課長的だと言うのに、あまりにも現状は非課長的過ぎるじゃないか!何をするんだ?何が始まるんだ?何にせよこれは、ただこのまま僕が地下4階へと繋がる扉へ普通に辿り着ける流れじゃない!
「課長、これは?」
「キミはただ、全力で扉を目指せばいい!それを私が全力で阻止するだけの簡単な話だ!」
「いや、話の意味が分かりません。」
「正直、私も分からんのだよ。」
「はい?」
「なぜ、こんな施設で、こんな事をしなければならないのかがな。だがこれはもう、どうしようもない現実なんだ!分かってくれ!キミの死は、絶対に無駄にはしない!」
「えっ!?」
「キミのあの働く姿を私は、一生忘れない!」
「課長?何を言ってるんですか?」
「出来れば会社の未来は、若いキミに託したいとこだが、私も家族を養っていかなければならないのでな。すまん。」
「いやいやいやいや、課長!殺し合いなんてする必要ないじゃないですか!一緒に地上を目指しましょうよ!」
「それはできん!」
「なぜですか!」
「キミも企業戦士なら分かるはずだ!」
「いや全然分かりませんって!企業戦士的な思想なんてこの空間のどこに存在するって言うんですか!そもそもここは何なんですか!」
「ここが何かをキミが知る必要はない。それと、キミには見えてないだけで、もっと大きな視点から見れば!ここには、ちゃんとその思想と理念が存在している!」
「理解出来ません!例えそうだとして!何で部下と上司が殺し合わなきゃならないんですか!」
「キミの言う通りだな。それは間違っている。」
「だったら課長!一緒に!」
「これは殺し合いなんかではない。」
「えっ?」
「一方的にキミが私に殺されるだけだ。」
「なっ!?」
「すまんな。」
じゅ、銃!?本気で課長は僕を殺すつもりなのか?
「ちょっと、課長?悪い冗談はやめて下さいよ。」
「バン!!」
「!?」
「悪いが、冗談などではないんだよ。次は天井ではなく、キミの頭を撃つ!」
「か、課長・・・・・・・・・。」
夢だ!やっぱりこれは夢なんだ!飛びっきりの悪夢を僕は今、見てるに違いない!残業中に居眠りしてるから、課長に銃を向けられるなんて悪夢を見るんだ!深層心理が僕に警告してるんだ!早く目を覚ませ!そして残業しろ!って!
「逃げないのかね?」
「嘘・・・・・・ですよね?課長が僕を殺そうとするなんて、夢なんですよね?これは悪夢なんですよね?」
「夢?」
「本当の課長は今頃、自宅でお子さんの小学校での話を肴に晩酌してるんですよね?」
「そっちが現実なら、どれ程いい事か。」
「課長は、僕が罪の意識から作り出した幻なんですよね?だって、だって僕が知ってる課長は!確かに笑えない冗談は言うし、デリカシーのない事を女子社員に聞くし、酔っ払うとしつこく絡んでくるけど!だけど!頼りになるし、陰で部下を無言で支えてるし、皆が尊敬する課長なんですよ!だからどんな理由があろうが!人に、ましてや部下に銃を向ける様な課長じゃないんだ!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ありがとう。」
銃を下ろしてくれた。良かった。例え夢だろうと、課長に撃ち殺されるのは、勘弁だ。
「・・・・・・・・・課長、すいません。すぐに起きて仕事を片付けちゃいますから。」
「本当にありがとう。キミがそんな風に思っていてくれているとは。」
「いえ。」
夢だから言えたんだ。こんな恥ずかしい事、現実の課長を前にとてもじゃないけど言える訳がない。
「だが、こう言う現実をキミが知らなかっただけの事だ。」
「えっ!?」
「私はキミを撃つ!!」
「課長!」
「理不尽だろうが!不条理だろうが!私が課長である以上!これが現実ってヤツなんだ!」
殺される!?僕は課長に殺される!?何がなんなのか分からないまま僕は、課長に撃ち殺される!夢じゃない!これは夢じゃないんだ!そんな事は最初っから分かってた!でも、でもこれはあまりにも夢であって欲しい現実だったから!だから僕は!僕は!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
死んでたまるか!こんな訳も分からないまま死ぬもんか!生きてやる!生きて地上へ出てやる!ジグザグに、縦横無尽に全力疾走であの扉まで!
「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「今だっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
地下4階へと続く階段を歩きながら僕は、考えてた。課長はどうして、僕を撃たなかったんだろう?と。きっと課長は、僕を逃がしてくれたんだ。やっぱり課長に部下を殺す事なんて出来なかったんだ。でも、でも待てよ?僕を殺す事が課長の使命だったとして、僕を見逃した課長は?課長の身は無事なのか?
「・・・・・・・・・課長。」
おそらく無事じゃない。それでも自分を犠牲に課長は、部下を助けてくれたんだ。この先、何が待ち受けてるのか分からないけど、絶対に生きて地上へ出てやる!生きて出て、こんなふざけた事に課長の人生を巻き込んだ奴等を僕は!絶対に許さないっ!!
「課長、ありがとうございました!」
さあ、下ばかり見てられないぞ?振り向いて扉を開けたら、そこにきっとまた地獄が待ってるに違いないんだ!
「・・・・・・・・・ヨッシャっ!」
「ギィィィィィィ!」
く、暗い!?
「バッ!バッバッバッババババババッ!」
「ま、眩っ!?」
「おっ。」
「えっ!?か、課長???」
「今度はキミをビシーッ!と、叱るから、そこんとこ覚悟しとくんだぞ~?」
「は、はい???」
な、何だ?何がどうなってんだ?僕は一体、課長の何に巻き込まれたって言うんだ?

第二百八十一話
「課長検定準1級実地試験会場」

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2011年11月 9日 (水)

「第二百八十二話」

 墓参りの日に限って、数十年に一度あるかないかの大雨とはな。オレもラッキーなんだかアンラッキーなんだか。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ザァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
せっかく恥を忍んで30年以上連れ添った妻と年頃の娘に、飛びっきりな愛のメッセージをギフトしたってのに、この雨音で台無しだ。
「・・・・・・・・・また来る。」
味気無い符号と記号と年号とが刻まれた冷たい石の冷たい袂に、左手に持ってたビショ濡れの花束を置き、オレは墓地をあとにした。この街には、滅多に雨が降らない。だから、雨が降った日には、街の人々は口々に、こう言う。
「ラッキーレイン&アンラッキーレイン・・・・・・か。」
まあ、愛のメッセージを掻き消され、こうして老体を雨にさらしながら街を歩いてるオレには、今のとこアンラッキーレインでしかないがな。
「・・・・・・・・・。」
男が大金を手にして街一番の金持ちになった日、街には雨が降ってた。その街一番の金持ちが、自殺した日にもやはり、街には雨が降ってた。今やこの街のジョークになってる話だが、その街一番の金持ちを殺した犯人はまだ、いまだに捕まっちゃいない。巧妙に雨を利用した殺人ってヤツだ。だがまあ、それを知るのは今やオレを含めて数人だけになっちまったがな。そして今でも犯人が、巧妙なアイデンティティーに守られ、この街で迂闊に生き延びてるのは確かだ。

「ん?」
そんなどうでもいい昔の事を思い出しちまうから、雨はどうも好きになれない。だがどうだ?こうしてランダムに街を歩いて偶然辿り着いた路地裏で、見覚えのあるゴキブリがゴキブリの死骸を前に、ビショ濡れのアスファルトの上に跪き、天を仰いで鳴いてるじゃないか。ひょっとすると、レインがひっくり返ったか?
「クソォォォォォォォォォォォォォォォ!!」
「ゴキブリも鳴くとは知らなかった。」
「誰だっ!!」
「この街は不思議だ。まるでラビリンスかのようだ。さほど大きくもないってのに、偶然出会った人間に、次もう一度偶然出会う確率が異様に低い。」
「老いぼれ刑事が、何の用だ?生き恥さらして散歩するには、あいにくな天候だが?」
「さあな?用ならありすぎて、老いぼれだからいちいち全部覚えちゃいないさ。」
「そーだ!奥さんと年頃の娘は、元気か?」
「さっき会って来たばかりだ。」
「なあ?だったら、オレの事、何か言ってなかったか?特に年頃の娘、死ぬ前にもう一度、彼とベッドをともにしたかったわ。とかな!!」
5本で1本を形成する特殊で異様な禍々しい斧とともに、ゴキブリが立ち上がった。
「あいにく娘は、ゴキブリが苦手でな。見付けたら退治してくれと、よく泣き付かれたもんだ。」
「ああ、そう言われてみれば、今でも時々だがクソしながら思い出す事があるよ。パパ~!助けて~!パパ~!って、娘の声をな!ギャハハハハハ!」
「・・・・・・・・・なぜだ。」
「ああ?」
「なぜ、家族を殺す必要があった。」
「そりゃあ、この街で刑事っつったら、クソ以下だからだよ。特にアンタはその底辺だ。そんなクソの家族もクソの底辺だからだよ!」
「刑事殺しのゴキブリの考えそうな事だ。」
「そんなゴキブリの考えに気付かず!家族を殺された間抜けな刑事は、どこのどいつだぁ!!」
「・・・・・・・・・。」
「ああ、そう言えば刑事さん?右腕、調子はどうだい?」
「・・・・・・・・・。」
「最近の医学っつぅのか?技術っつぅのか?科学っつぅのか?凄いもんなんだな?それが義手だなんて、ん?義腕か?まあ何でもいい。とにかくだ。切断したオレじゃなきゃ、1発で見破れないもんなぁ?あと少しだったなぁ?あとほんの少しで、妻と娘の体に触れる事が出来たってのに、おしかったよなぁ?」
「あの時、もっと早く家に帰ってれば、もっと早くお前の考えに気付いてれば・・・・・・・・・もっと!もっと!オレは、後悔をこの右腕に詰め込んだ。絶対に忘れちゃならない後悔をな。」
「復讐だろ?オレへの?だが、どうだ?他人や仲間を殺したオレを捜す時とは違い。家族を殺されたあの日からアンタは、ビビってオレを捜すフリをしてるだけだろ?そうやって1日1日を無駄に過ごしてるだけだろ?何が後悔だよ。え?この間抜けな腑抜けが!」
「もはや、オレにしたら、ゴキブリを雇って街一番の金持ちを殺させた雇い主の事なんて、とっくにどうでもいい話だ。」
「そうかい。」
「一部のゴキブリどもが、お前をダークヒーローに祭り上げてるが、実際はどうだ?単なる泣き虫だ。」
「あと、数人だ。お前を含めてあと数人殺せば、オレの仕事は完璧に完結する。フィナーレだ!」
「結果的にそれを完結させる訳には、いかないんだよ。」
「ビビって何も出来ない間抜けな腑抜けに、オレのストーリーを修正する事は出来ない。今ここで、偶然出会ったアンタを始末してもいんだが、オレにはまず!コイツを殺したクソヤロウを始末しなきゃならないんでな!今日は見逃してやるから、またオレを捜すフリでもしてな!そのうち殺してやるからよ!」
「花を買ったんだ。」
「ああ?」
「妻と娘のとこへ行く前に、花屋で花を買ったんだよ。しばらく二人が好きだった花が思い出せなくてな。年を感じたよ。」
「だから何だ?それがどうした?オレの気が変わらないうちに消えないと、今すぐこの世から消える事になるぞ?」
「花屋で花を買うとすぐに雨が降って来た。」
「おいおいおい!オレは、老いぼれの下らねぇ話に付き合ってる暇はないんだよ!」
「前から女が走って来た。何か約束でもあったのか?女は人混みの合間を軽やかに、軽快に走り抜けながら、こっちへ向かって来た。」
「だから何だ?その女に一目惚れでもしたのか?やめとけやめとけ、またオレに殺されるだけだ。次は、左腕も失って今以上に死ぬより辛い生き恥をさらすだけになるぞ?」
「雨で足元が滑ったのか?オレとスレ違った瞬間、女は転んだ。」
「C級ラブストーリーか?」
「オレは、手を差し伸べ、女を手助けようとした。しかし女は、オレの手を振り払い、そのまま走り去って行った。」
「パリーン!老いぼれの間抜けな恋が腑抜けて砕け散ったって訳か。下らねぇ!下らねぇ!下らねぇ!」
「その反応からすると、聞いてないようだな。」
「ああ?だから、恋が砕け散ったんだろ?ちゃんと聞いてやってんじゃねぇか!」
「こうして、右手を差し伸べて、オレは女へ手を差し伸べた。」
「ああ?」
「まあ、この街のジェントルマンなら当然、自分の足で引っ掛けて転ばしたゴキブリに対して、手を差し伸べて助けようとするのは必然だがな。しかし、女はそんな自然な行為を振り払った。だが、それで十分だった。女の手に一瞬触れられただけで、十分だった。」
「お前、変態か?」
「そう、触れた手から手へと毒をギフトしてやるには、十分過ぎる一瞬だった。」
「まさか!?」
「墓参りの時間を計算して注入しといたんだ。」
「お前が殺したのか!」
「キス、したか?」
「何だと?」
「キス、だよ。熱烈にスパイシーなキスをしたかって聞いてんだ。」
「殺す!今すぐ殺す!バラバラにして豚に喰わしてやる!」
「どうやら今日の雨は、ラッキーレインだったようだな。」
「ああ!アンタとこうして偶然出会えて切り刻めるんだからな!スーパーラッキーレインだっ!」
「ああ、スーパーラッキーレインだ。生きてるゴキブリに出会えるとはな。最悪、死体でも構わないと思いながら、ランダムに街を歩いてたんだが、これからゴキブリがもがき苦しみながら死んでく姿が見れるとはな。」
「何を言ってやがんだ!!」
「したんだろ?キッス?」
「したから何だって言・・・・・・!?うぇぇぇぇぇ!!な、何しやが・・・・・・った!ぐあああああああ!!」
「何って、ただ家に入って来たゴキブリを2匹、退治しただけじゃないか。」
「があああああああ・・・あ・・・・・・ああ・・・・・・あ・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「これでやっと、娘の笑顔が見れる。」
最果ての街、欲望の街、逆転の街、人の数だけ、この街の呼び名が存在する。確か、知り合いの少し風変わりな男は、糞の溜まり場なんて呼んでたな。まあ、それもあながち間違っちゃいないが、オレにとってこの街は、想い出の街だ。ただ、路地裏にはよく、ゴキブリが出るのが少し問題だが、まあ出たら出たで、また殺虫剤で退治すればいいだけの話だ。

第二百八十二話
「スリーティーズ・シティ・バックアレー」

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2011年11月16日 (水)

「第二百八十三話」

「ヘイヘイヘイヘイヘヘヘヘ~イ!今週もとびっきりでご機嫌なクイズショー!の始まりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!さあ、今週も番組に挑戦状を叩き付けて来た不届きなチャレンジャーはーっ!誰だー!」
「・・・・・・・・・。」
「イエス!この男だ!!」
「ど、ども。」
「ど、ども。じゃねぇぞ?ど、ども。なんつってたら!不正解で即死亡!しちまうぞ!そんなベリベリご機嫌な無駄に脂肪を貯蓄した体で乗り越えられるのか?豚野郎!」
「頑張ります。」
「オッケィ!番組終了までに空腹で、ぶっ倒れない事を祈って!さあさあさあさあ!クイズショーの始まりだーっ!イーッツァーッ!ショォォォォォォォォォォォォターイムッ!!!」
「・・・・・・・・・。」
「第1問。チャラ。さて、今、何問目?」
「・・・・・・・・・。」
「ゆっくり考えくれ豚野郎!このクイズショー!に時間制限は存在しないからな!その代わり?もしも番組終了までに規定の正解数に達してないなんてエマージェンシーな場合は!即死亡!!じゃっ、ミーは豚野郎があらゆる毛穴から大量に流れる汗と眼鏡が顔面に食い込んでる様を横目で見ながら!その間に、ちょっぴり番組の提供をさせてもらうとするかな?この番組のエキセントリックなスポンサーっつったらイエス!食い続けたら病気になる事間違いなし!ブタのマークの2トン食品!エ~ンドゥ!レンズだけを愛してのキャッチコピーでお馴染みの老舗眼鏡フレーム専門会社の隣にひっそりと佇む!踏み潰して40年!害虫駆除のプッチ&ブッチ!で今週もお送りする事間違いなしだ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「って、ヘイヘイヘイヘイヘヘヘヘ~イ!もしかして、居眠りぶっこいてんじゃないだろうな?豚野郎!ブタっ鼻だけは勘弁してくれよ?」
「1万2894問目!」
「おっと!このタイミングでアンサー!さあ!間違えたら即死亡のクイズショー!バスタオル2枚も使用して捻り出したアンサーは?デッド・オア・アンデッド!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「さあさあさあさあ!豚野郎がビッチョビチョの両手を合わせて天に祈りを込めたとこで聞いてみちゃうか?・・・・・・・・・ジ・エンド・オブ・アンサー?」
「・・・・・・・・・ジ・エンド・オブ・アンサー。」
「ジ・エンド・オブ・アンサー?」
「・・・・・・ジ・エンド・オブ・アンサー!」
「ジ・エンド・オブ・アンサー?」
「ジ・エンド・オブ・アンサー!」
「ジ・エンド・オ正解!番組が始まってから今回でジャスト!1万2894問目!コングラッチュレェェェェェェェェェェェェション豚野郎!じゃあ見事、第1問目を正解した豚野郎には!この用途不明のコードをサプライズプレゼントだっ!」
「やたっ!」
「さあさあさあさあ!ヘイヘイヘイヘイヘヘヘヘ~イ!番組は走り出したばかりだ!続けて第2問目にいっちまうけど、準備はオッケィか?」
「お、お願いします。」
「第2問目は、難解3択クイーズッ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ん?ちょっぴり痩せちまったかチャレンジャー?そうそうそう!豚野郎の脂肪も縮み上がちまうのも納得だ!難解3択クイズで散った豚野郎達は、番組史上最多!どうだい?まさか第2問目で難解3択クイズ来るとは?だろ?」
「お願いします!」
「ヘイヘイヘイヘイヘヘヘヘ~イ!こりゃ驚いた!?豚野郎のくせに何だ?このヤル気満々は!豚野郎のくせに何だ?その瞳の中のファイヤーは!だったら、そのヤル気をダイエットに捧げろって視聴者からの苦情とお叱りのご意見はシャットアウトしてだ!第2問。チャラ。ある偉人が、ある名言を残しました。その名言とは?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「さあ!ここからはテンポとの戦いだぞ!1!」
「小さ過ぎる!」
「正解!2!」
「本気を出してないだけ!」
「正解!3!」
「この方が得した気分じゃない?」
「正解!さあ!何番!」
「3、この方が得した気分じゃない?」
「大正解!ある偉人が、ある名言を残しました。1、小さ過ぎる。2、本気を出してないだけ。3、この方が得した気分じゃない?正解は、3番、この方が得した気分じゃない?だ!ヘイヘイヘイヘイヘヘヘヘ~イ!こいつは驚いた!まさかカンニングなんてしてないよな?」
「してません!」
「オッケィ!オッケィ!その言葉、砂糖の塊とチョコレートに誓って信じようじゃないか!バット!その不正がバレた時も即死亡って事を忘れないでくれ?さあさあさあさあ!第2問目も見事、正解した糞豚野郎には!用途無限大の何かの切れ端1年分をビッグサプライズプレゼントなうっ!」
「やたっ!」
「今日は、ひょっとするとひょっとするのか?12年ぶりのチャンピオン誕生か?番組念願のチャンピオン大会も目前か?そんな淡い夢とともに即死亡なんてチープでトリッキーな事は勘弁してくれよ?眼鏡の食い込み具合が尋常じゃないが糞豚野郎?第3問の準備は万端か?」
「はい!」
「ヘイヘイヘイヘイヘヘヘヘ~イ!在り来たりで、それでいて飛びっきり面白くも何ともない返事をサーンクスッ!第3問。チャラ。映像クイズ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ん?んんん?ビビって膝に水でも溜まったか?」
「お、お願いします。」
「第3問!これから御見せする映像は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・プハッ!って、おいおいおい!まさか司会者を窒息死させようって魂胆か?だったら、やめときな!代わりの司会者は、山ほど居るんだ!動き出したら止めらんないのが、このクイズショー!」
「えーと、いっ」
「答える時は、挙手だろ?糞豚眼鏡豚野郎!そんな幼児でも分かる事が分からなくなるほど、脳が脂肪で汚染されちまったのか?」
「はい。」
「はい、豚!」
「えーと?一定の状況下に置かれた人間は、本当に人間を食すのか?」
「場所は?」
「雪山の右!」
「人数は?」
「5人と7匹と3座!」
「それは、ジ・エンド・オブ・アンサー?」
「・・・・・・・・・ジ・エンド・オブ・アンサー!」
「ジ・エンド・オブ・アンサー?」
「・・・・・・ジ・エンド・オブ・アンサー!」
「ジ・エンド・オブ・アンサー?」
「ジ・エンド・オブ・アンサー!」
「オッケィ!映像チェック!チェック!チェーック!!」
「・・・・・・・・・。」
「うわっ!」
「・・・・・・・・・。」
「うわわっ!」
「・・・・・・・・・。」
「ええーっ!マジか!そうか!そこそうきちゃうか!」
「・・・・・・・・・。」
「あらららららら!うわっいわっ!ああ、なるほどね。」
「・・・・・・・・・。」
「まあね。まあ、そうかもしれないね。」
「・・・・・・・・・。」
「うわわわっ!そこもいっちゃう?ああ、いっちゃうんだ。」
「・・・・・・・・・。」
「ウップス!あらまさかの?まさかの展開?かーっ!終了ー!ア~ハ~ン!いやあ、泣けた。こんなに泣けるとは思わなか正解!」
「よし!」
「何だおい!映像観ながら終始ヨダレ垂らしまくりのこの豚の野郎は、あれか?超能力豚野郎か?だとしたら番組は、大ピンチだ!とまあ!どんな豚野郎だろうが!正解は正解だーっ!さあさあさあさあ!今回ももちろん!スペシャルプレゼントを用意してるに決まってるぜ!第3問目の賞品は!豆!」
「やたっ!」
「持ってけ豚!さあさあさあさあ!ヘイヘイヘイヘイヘヘヘヘ~イ!第4問目にいっちまうか?」
「お願いします。」
「オッケィ!カ~モ~ン!」
「・・・・・・・・・。」
「スタジオが揺れてる!スタジオが揺れてる!スタジオが揺れてるぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!この無駄にダイナミックなセットがド迫力のスケールで頭上から降りてくるって事は?もうあれしかないよな!このクイズショー!でもっともフェイバリットでエキサイティングでアクロバティックでデリシャスでセクシーデンジャラスでダイナマイトバディなクイズ!クイズ!クイズ!クイズショータイッ!!」
「ゴクリッ!」
「おいおいおい!生唾ゴックンが丸聞こえだぞ豚糞豚眼鏡豚野郎!とかなんとかタップダンシィングしてる間に!さああああああああ!パーフェクトにセッティング完了だっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「さあさあさあさあ!ヘイヘイヘイヘイヘヘヘヘ~イ!言っちゃうか?言っちゃうだろ?もちろん言っちゃうつもりなんだよな!ヘイヘイヘイヘイヘヘヘヘ~イ!いつもの掛け声頼むぜ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「第4問目はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ?ディースッ!イズッ!ピャ」

第二百八十三話
「番組の途中ですが、お昼の臨時ニュースです」

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2011年11月23日 (水)

「第二百八十四話」

 僕は、クイズショーの途中で流れた臨時ニュースを見終わると、まだ太陽が空の真上にあるベランダに出て、ただ何と無く、本当に本当にただただ何と無く、この高層な建築物が建ち並ぶ景色を眺めていた。
「本当かなぁ?」
そして、今さっき臨時ニュースで流れた音声と映像を思い浮かべながら、現実感の無い現実をさ迷っていた。
「だとしたら、ちょっと参ったなぁ。」
人が想像した事は、実現出来る。的な話を聞いた事があるけど、人が想像しない事もまた、実現されちゃうんだなと、思った。ニュースキャスターの慌てる様が、ちょっとだけ滑稽に見えたけど、500近くあるチャンネルのどのニュースキャスターも慌てているとそれはもう逆に、戦慄以外の何物でもなかった。そしてふと、これももしかしたら、どこかで誰かが想像した事で、それが実現されているのかも?って思った。思ったけど、こんな馬鹿げた想像する暇があるんだったら、もっと画期的な想像をして欲しかった。と同時に思った。
「どうしよう。」
と、呟いてみたものの、これは果てしなくどうしようもない事だった。仮にこの事態をもし、どうしようもなくはない状態に出来る人がいるんだったら、それはもはや人ではなく、神しかいない。
「地球消滅かぁ。」
ニュースキャスターが言うには、どうやら地球に地球と同等のサイズの隕石と思わしき物体が、間も無く地球に衝突するらしい。これはもう、氷河期とか言う問題を遥かに飛び越えた話で、地球そのものが粉々に砕け散るんだから、再生も進化も未来もあったもんじゃない。
「なにも今日じゃなくてもなぁ。」
何で今の今までその事態に気付かなかったんだ!とかで、きっとどこかの回線はパンク状態なんだろう。でも、今の今までその事態に気付いていたとして、さてと一体、我々人類に逃げ場なんてあったんだろうか?そんな愚かな抗議をしている暇があるんだったら、愛する人と出来るだけ長い時間、愛を共有する方が、よっぽど有意義ってもんじゃないかな?
「はぁ。」
しかし、どうして今日なんだ?明日とかじゃダメだったのかなぁ?いや、別に僕は、地球は死ぬ生物だし、人間なんてもっと簡単に死ぬ生物なんだって思っているから、間も無く死ぬ事に対して、あんまし興味は無い。現実味が無いのもそうだし、もしかしたら、絶対的な絶望を叩き付けられたら、人はこんな感じなのかもしれないかもだし、けどそこにもう少し興味があったんなら、たぶんベランダに出て、こんなにもぼんやりと、景色なんて眺めていないんじゃないかって思う。
「プロポーズ、言えなかったなぁ。」
今日のディナーの時、僕は彼女にプロポーズしようと決めていた。この数日間のドキドキっぷりを考えると、やっぱしプロポーズの言葉を伝えたかった。昨日の後悔を振り返るより僕は、明日の後悔を見据える気持ちの方が強かった。だって、だってそりゃあ僕の心は揺るぎなく今日のディナーで固まっていたんだから!でもまあ、今すぐ彼女と連絡が取れる手段があるなら、きっとプロポーズの言葉を伝えているとは思う。けど、その全てが断ち切られた今となってはもう、こうしてベランダで、ただただ何と無く景色を眺めている事しか出来ない。
「うーん?やっぱし伝えたかったなぁ。」
「伝えられるさ!」
「えっ?」
その低い年老いた男性の声は、下の方から聞こえて来た。
「5階さん?」
「伝えられる!」
ベランダの手摺に乗り出して、下の階を覗いて見たけど、あいにくこのマンションの構造上、覗くにはちょっと無理な構造になっていた。いやいや、こんな乗り出すとかより先に、どんな事より先に僕は、今までの呟きを全部聞かれていた事への恥ずかしさで、本当は部屋の中へ飛び込みたい気持ちだった。でもそうしないで乗り出したのは、やっぱし5階さんの言う言葉がちょっと気になったからだ。
「伝えられるってだって、ニュース観ました?」
「地球消滅だろ?」
「そうです。」
「だからどうした!」
「いや、だからどうしたって、だから地球が消えて無くなるんですよ?もう、伝えるもどうも無いじゃないですか!」
ん?どうしたんだろう?どうして僕は、ちょっとだけ熱くなっているんだろう?分かってる。分かっているんだ。きっと5階さんは、こんな僕に希望の言葉を投げ掛けてくれているんだ。絶望に絶望している訳じゃないけど、そこに希望の無い僕へ希望を投げ掛けて来てくれているんだ。それに対して僕は、一体どうなんだ?まるで正論じゃないか。諦め全開じゃないか。悟った風に装っちゃてバカか?人生最期の素敵なユーモアを投げ掛けて来てもらっているってのに、何をそんなに冷めた感じで熱くなっちゃってんだ?ってんだよ!
「あのう?すいません!」
「何を謝っているんだ?」
「いや何かせっかく5階さんが、そのう?こんな時なのに、あのう?僕に希望を持たせようとしてくれたのに、素っ気無い返事をしてしまって、本当にごめんなさい。」
「ハッハッハッ!何かと思えばそんな事で謝っていたのか!気にする事なんて無い!君が気にしなきゃいけないのは!いつ!どのタイミングで!どんなトーンで!どんなニュアンスで!どんな温度で!そのプロポーズの言葉を口にするかだろ?」
「えっ?ああ、そうです!そうでした!あっでも、それを考えたら何かちょっと、ドキドキしてきちゃいました!」
「ハッハッハッ!」
「アハハハハ!」
良かったのかもしれない。いや、良かったんだ。この人が5階さんで、この最期の時、その5階さんとこうして笑い合いながら地球と共に宇宙に散れて、この終わり方も、満更悪くはないのかもしれない。
「ハッハッハッ!」
「アハハハハ・・・・・・ん?」
そしてその時はやっぱしそれはそれで、現実感も現実味も無い現実に、無情にも訪れた。
「暗くなって来た。いよいよ終わりですね。最期に5階さんとこうして、お話が出来て良かったです。ありがとうございました。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「5階さん?」
どうしたんだろう?さっきまであんなに笑っていたのに、もしかして最期の最期で5階さん、急に感傷的になっちゃったのかなぁ?まあでも、それはそれで仕方無いか。5階さんにだっていろいろ・・・・・・・・・。
「えっ!?」
ちょっと待った!?僕の真下の部屋って、誰も住んでない!そう確か、ずーっと空室だったはずだ!じゃあ?じゃあ僕は一体、今まで誰と会話してたんだ!?誰と笑い合ってたんだ!?
「あのう!って、えっ!!?」
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
どうしたんだ?揺れてる!隕石の影響か!?
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
「5階さん!大丈夫ですか?」
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
「5階さん!!」
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
「ぷっ!」
あれ?
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
どうしたんだろう?
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
何か僕、必死にベランダの手摺にしがみつきながら、笑っているぞ?でもまあ、それもそうかなぁ?笑っちゃうか。だって何かあれだもんなぁ?僕の最期は、随分と不思議な最期だったもんなぁ。
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
「必ず渾身のプロポーズの言葉を伝えるんだぞ!」
「5階さん!?」
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
「ぬおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
「5階さん!!」
一体何をしているんだ?もう真っ暗闇で何も見えない。
「ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!」
ああ、終わるんだ。終わっちゃうんだ。さよな
「コノヤロォォォォォォォ!!地球なめんじゃねぇよっ!!!」
「はい?」

第二百八十四話
「地球に右腕が生えた日」

粉々に砕け散った隕石の破片が降る景色をただただ茫然と眺めながら
「・・・・・・・・・あれ?レストランって今日、営業するのかなぁ?」
僕は、呟いた。

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2011年11月30日 (水)

「第二百八十五話」

「てか、何やってんすか!」
「何やってんすか!って、お前なぁ?女の子だろ?チビだけど女子なんだから、すかはないだろ。すかはよぉ。何って見りゃ分かるだろ?」
「見て分かってるから言ってるんすよ!」
「うーるせーなぁ。こんな近くで大声出すなよ。チビが大声ってお前、どう言った裏切りだよ。」
「いやいやいや、オーナーこそどんな偏見すか!」
「俺はなぁ。偏見のド塊なんだよ!ミスター偏見で、ドクター偏見なんだよ!」
「いや、全く意味分かんないし!てか、やめちまえ!そんな感覚でレストランのオーナー兼シェフやってんなら、やめちまえ!」

第二百八十五話
「い、いらっしゃい・・・・・・ませ?」

「んだと?聞き捨てならんねぇ?俺は、オーナー兼シェフ兼キュレーターなんだよ!」
「はいはいはい。」
「はいは、2回まででいいんだよ!」
「てか、オーナー!んな事より!だから何やってんすか!って!」
「お前、何回も何回も何回も同じ事を聞くんじゃねーよ。チビのくせして。」
「チビ関係ないし!チビ何回も同じ事を聞いちゃいけないってルールないし!」
「だっから、何って見りゃ分かるだろ!新メニューの開発してんだよ!!!」
「いや、よっぽどでしょ!よっぽど、オーナーの声の方が大きいから!」
「それがレストランのオーナーってもんだろ?」
「どんな公式ルールなんすか!つか、よくこんな時に暢気に新メニューの開発なんて出来たもんすね。」
「こんな時だからこそ!の新メニュー開発だろ?」
「いや、ちょっと待って下さいよ。オーナー?分かってるんすか?今、この地球がどんな状況なのか?」
「地球消滅が、消滅した。だろ?」
「めっちゃ、かいつまんだらそうなんすけど!」
「ならいいじゃねぇか、うるせーなぁ?真っ暗になったと思ったらまた、太陽が明るく照らす日常に戻ったんだ。レストランのオーナーが新メニュー開発を暢気にしてたって何も文句ないだろ?お前もチビだけど、ウェイトレスなんだから、こんなとこで油売ってないで、さっさと通常業務に戻れよ。」
「どーこが日常に戻ったんすか!街は今でも、十分パニック状態なんすよ!こんな時に店開けて!一体、誰が来るんすか!」
「まあ、あれだ。誰か来んだろ。」
「オーナー!!」
「何だよ!お前さぁ?うるせーって!店の片付けとか掃除とかやる事、満載だろ?それになぁ?人間ってのは、どんな状況下に陥ろうが、腹は減るんだよ。」
「何を明後日の方向見て、すっとぼけた事抜かしちゃってるんすか!」
「はっ!明後日に方向なんてあんのかね!」
「屁理屈ぶっこいてる暇があるなら!このメチャクチャな店内片付けんの手伝ったらどうなんすか!」
「おい、チビ。チビ、おい。だから俺は今、新メニューの開発で忙しいんだよ!片付けは、チビの仕事だろ!天井に開いた穴塞ぐのも、チビの仕事だろ!」
「いや、そこチビにやらすのは絶対に間違ってるから!って、オーナー!」
「お前、あれか?妖怪鼓膜破りか?うっせぇっ!っつってんだろうが!新メニューの開発が全然はかどらないじゃねーか!」
「ゴルフボール煮込むのの!何がどう!どこがどう!新メニューの開発なんすか!!」
「はっ!やれやれやれ、これだから素人はチビなんだよ。」
「やれも2回までなんじゃないんすか?てか、私はプロになってもチビですから!」
「あのなぁ?こうして、ゴルフボールをじっくりポコポコ煮込む事で、ゴルフボールにコクが出んだよ!分かったらさっさと穴の開いた床をどーにかしろ!」
「そんな専門的レベルな注文承れないし、ゴルフボールは、ポコポコ煮たって、果てしなくゴルフボールだーっ!!」
「それはお前、神に誓って言ってんのか?」
「イエス!」
「チビに誓って言ってんだろうな?」
「イ!エ!ス!」
「ジ・エンド・オブ・アンサー?」
「はいはいはい。ジ・エンド・オブ・アンサーすよ!」
「人間ってのは、どんな状況下だろうが、腹は減るんだよ。」
「いやいやいや、何でこのタイミングで、さっき言った事をまた、言ってるんすか!意味不明過ぎるっしょ!」
「我ながら、いい事を言ったと思って、もう1度言ってみたとさ。」
「チャンチャン!って、何がチャンチャンなんすか!何もチャンチャンじゃないじゃないすか!」
「チャンチャンについては、俺発信じゃないから知らねーよ。でもなぁ?人間ってのは、どんな状況下だろうが、腹は減」
「オーーーナーーー!!!!!」
「ぬわっ!?コノヤロー!本格的に俺の鼓膜を破りにきやがったな!」
「いっそガチで破れちまえ!」
「何だと?お前は、チビだから知らねーかもしれねーけどなぁ。俺の鼓膜が破れたら、大変な事になるんだぞ?」
「どうなるんすか?」
「俺の鼓膜が破れたらなぁ?俺の鼓膜が破れたって、そりゃあもう大変な事になんだよ。」
「それ、ガチで言ってます?」
「俺は、料理を作っている時も料理を作っていない時も!サムタイムズガチだっ!!」
「いやもう、どの角度からどうツッコミ入れていいやら、とにかくそんな志しだったら、店を畳んじまえ!」
「・・・・・・・・・。」
「どうしたんすか?」
「そうだなぁ。俺も歳だしなぁ。」
「何なんすか急に?」
「いや店を畳む事も視野に入れとかないとだな、と思ってよ。」
「オーナー?あのう?今のはですねぇ?」
「分かってる分かってる分かってる。でもなぁ?てめぇの体の事は、てめぇが一番、よーく分かってるってもんなんだよ。」
「・・・・・・オーナー。」
「今日の事で、店もこんな有り様になっちまったからなぁ。」
「あ、あのう!私、天井の穴でも床の穴でも何でも塞ぎます!だからオーナー!らしくない事、言わないで下さいよ!」
「ありがとな。まあ、この店を続けるとしても、精々あと・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・あと?」
「700年ってとこかなぁ?」
「テイ!」
「あいたーっ!何でチョップしやがんだよ!」
「チョップじゃありません。テイ!です。」
「ああ、テイ!か。すまんすまんって、やってる事は全くチョップじゃねーか!」
「オーナーが訳の分からない事を言ってるから、テイ!したんじゃないすか!ここを基盤に王国でも築き始める気すか!何なんすか!何か少しでもガチで泣きそうになった私がバカみたいじゃないすか!」
「お前は、バカなんかじゃない。」
「えっ!?」
「チビだーっ!」
「テイ!」
「お前、マジでテイ!やめろ。ゴルフボールを掻き回す手が狂うだろ?」
「だから、ゴルフボールって何なんすか!ゴルフボールって!」
「知らないの?」
「知ってらい!知ってるからこんな感じなんじゃないすか!何なんすか?ふざけてるんすか?」
「ふざけてゴルフボールじっくりポコポコ煮込むかよ!この異常事態で頭でもおかしいくなったんじゃねぇのか?」
「お前がじゃ!」
「新メニューの開発だって!何度も何度も何度も言ってんだろ!」
「ゴルフボール使った新メニューって、一体どんな新メニューなんすか!」
「ま、まあ?あれだ!シェフの気まぐれ目分量300グラム牛フィレステーキ添え煮込みゴルフボール!風な新メニューだよ!」
「よくぞ!よくぞそんなドヤ顔が出来たもんすね!テーブルひっくり返すわいっ!!」
「そんなに喜んでもらえたら、シェフ冥利に尽きるってもんさ。」
「いや、ポジティブ過ぎっしょ!とにかくそんな料理出したらクレームの嵐だし、目分量で300グラムんとこに詐欺も含まれてるし、だいたい何でメインがゴルフボールなんすかーっ!!」
「お前、これ以上、その大声で店を破壊するのだけは、勘弁だからな。それにお前は、チビだから分からないかもしれねーけんども!あんなぁ?誰もが目をつけない食材に目をつけなきゃ、この時代を乗り切る事なんて出来ねーんだよ。食ってけねーんだよ!シェフなのに!」
「あのう?親指立ててる暇があったら、ゴルフボール掻き回した方がいいんじゃないすか?」
「おっと!いけねぇいけねぇいけねぇ!」
「いけねぇいけねぇいけねぇ!じゃねぇよ!新メニューの開発とかそんな事より!当分お客さんなんて来ないんすから!片付け優先でお願いしますよ!」
「分かった。」
「じゃあ、オーナーは天井の穴の方をお願いします。私、チビなんで!」
「新メニューの開発は、後回しにしてだ。それよりディナーの仕込みしねーとだな!」
「テイ!」
「何で?何で、テイ?」
「だから、世界中がこんな状態だってのに、どこのどいつがレストランに来るって言うんすか!」
「来るだろ!腹を減らしたデブが!」
「何なんすかその偏見は!」
「いっつも腹減ってんだよ!デブってのは!腹が一杯になんねーんだよ!デブってのは!でな?デブの中でも特にメガネタイプのデブはな!普通のデブと比べてメガネ掛けてる分!もっと腹減ってんだよ!」
「いやもう、ガチで何言っちゃってるんすか!こんな時に、チビもデブもハゲも関係無いっしょ!」
「ハゲって言うなーっ!!ハゲはなぁ!ハゲはなぁ!なりたくってもなれるもんじゃねーんだよ!選ばれし者に与えられた名誉ある称号なんだよ!栄誉ある勲章なんだよ!」
「何を特別感、醸し出しちゃってくれてるんすか!だったら、チビだって同じじゃないすか!」
「チビは、あれだ。ほら、骨を砕いたり削ったりすれば、誰だって簡単になれんだろ?」
「いや、簡単加減が半端無いから!てか、ハゲの方が引っこ抜けば誰だって簡単になれるじゃないすか!」
「何だとーっ!」
「何すかーっ!」
「あのう?すいません。」
「えっ!?お客さん?」
「ぬぅわぁにぃぃぃ!」
「い、いつの間にテーブルに!?って、メガネの!?」
「デ、ブ!?」
「ガチだ!」
「って、おい!ガチってる場合じゃねーだろ!とっとこ接客行ってこい!」
「あ、ああ、そうだそうだそうだ。」
「そうだも2回まででいいんだよ、チビ!」
「あ、あのう?い、いらっしゃい……ませ?」
「注文いいですか?」
「まじすかっ!?」
「ダメですか?」
「い、いやいやいや、もっちろん!お伺い出来る範囲でお伺いします。」
「やたっ!」
「おいおいおい。こりゃ、もしかしたらもしかしたらで、もしかするか?」

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