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2011年11月 2日 (水)

「第二百八十一話」

 これは、夢か?夢なのか?いや夢じゃないとしたらこれは、地獄だ。この状況は、地獄だ。どこなんだここは?この真っ暗な場所は?一体どこなんだよぉぉぉぉぉ!!
「バッ!バッバッバッババババババッ!」
「眩っ!?」
何だ?急に電気が点いたぞ?て、事はやっぱり僕は誰かに拉致られてここへ?ん?誰か居るのか?いや、居る!誰か居るぞ!駄目だ!目がまだ明るさに慣れてない。
「・・・・・・キミ!?」
「えっ?」
「どうしてキミがここへ?」
僕の事を知ってる?知り合いって事か?いや、確かに聞き覚えのある声だ!知り合いに違いない!誰だ?くそっ!まだ目がボヤけてる。もしかして、この人も僕と同じ様に拉致らてここへ?よし、やっといくらか目が慣れて来たぞ!って、えっ!?
「課長!」
「おっ。」
どうして課長が?いや、それもそうなんだけど、この無駄に広い部屋は一体なんなんだ?いやいや、そんな事よりももっと大事な事が!
「おっ。って何を悠長に挨拶してるんですか!」
「キミ、確か今日は残業すると言ってたな?」
「そうですよ。一人会社で残業してたら、気付くとここに居たんです。課長は?課長は帰り道にでも拉致られたんですか?」
「いや、私は直接この地下5階へやって来た。」
「はあ?まさか!?まさか課長が?課長が僕を拉致したって言うんですか?」
「そんな訳ないじゃないか!私は、元々今日、ここへ来る予定だったんだよ。そして、開始までそこに誰が居るのかさえ知らなかったんだ。だがまさか、それがキミだったとは、正直驚いているよ。」
「ちょっと待って下さい?課長は、ここがどう言う場所だか分かってるって事ですか?」
「当たり前だ。」
「これから一体ここで何が巻き起こるんですか!」
「そうだな。ルールを知らないのは、フェアとは言えないな。」
「ルール?」
「と言っても簡単な話だ。キミは、地下5階から地上へと出ればいいだけの話だ。私の後ろにある扉の先に、地下4階へ繋がる階段がある。他の階もここと作りは同じだ。」
何だこれは?目の前に居る課長は課長的だと言うのに、あまりにも現状は非課長的過ぎるじゃないか!何をするんだ?何が始まるんだ?何にせよこれは、ただこのまま僕が地下4階へと繋がる扉へ普通に辿り着ける流れじゃない!
「課長、これは?」
「キミはただ、全力で扉を目指せばいい!それを私が全力で阻止するだけの簡単な話だ!」
「いや、話の意味が分かりません。」
「正直、私も分からんのだよ。」
「はい?」
「なぜ、こんな施設で、こんな事をしなければならないのかがな。だがこれはもう、どうしようもない現実なんだ!分かってくれ!キミの死は、絶対に無駄にはしない!」
「えっ!?」
「キミのあの働く姿を私は、一生忘れない!」
「課長?何を言ってるんですか?」
「出来れば会社の未来は、若いキミに託したいとこだが、私も家族を養っていかなければならないのでな。すまん。」
「いやいやいやいや、課長!殺し合いなんてする必要ないじゃないですか!一緒に地上を目指しましょうよ!」
「それはできん!」
「なぜですか!」
「キミも企業戦士なら分かるはずだ!」
「いや全然分かりませんって!企業戦士的な思想なんてこの空間のどこに存在するって言うんですか!そもそもここは何なんですか!」
「ここが何かをキミが知る必要はない。それと、キミには見えてないだけで、もっと大きな視点から見れば!ここには、ちゃんとその思想と理念が存在している!」
「理解出来ません!例えそうだとして!何で部下と上司が殺し合わなきゃならないんですか!」
「キミの言う通りだな。それは間違っている。」
「だったら課長!一緒に!」
「これは殺し合いなんかではない。」
「えっ?」
「一方的にキミが私に殺されるだけだ。」
「なっ!?」
「すまんな。」
じゅ、銃!?本気で課長は僕を殺すつもりなのか?
「ちょっと、課長?悪い冗談はやめて下さいよ。」
「バン!!」
「!?」
「悪いが、冗談などではないんだよ。次は天井ではなく、キミの頭を撃つ!」
「か、課長・・・・・・・・・。」
夢だ!やっぱりこれは夢なんだ!飛びっきりの悪夢を僕は今、見てるに違いない!残業中に居眠りしてるから、課長に銃を向けられるなんて悪夢を見るんだ!深層心理が僕に警告してるんだ!早く目を覚ませ!そして残業しろ!って!
「逃げないのかね?」
「嘘・・・・・・ですよね?課長が僕を殺そうとするなんて、夢なんですよね?これは悪夢なんですよね?」
「夢?」
「本当の課長は今頃、自宅でお子さんの小学校での話を肴に晩酌してるんですよね?」
「そっちが現実なら、どれ程いい事か。」
「課長は、僕が罪の意識から作り出した幻なんですよね?だって、だって僕が知ってる課長は!確かに笑えない冗談は言うし、デリカシーのない事を女子社員に聞くし、酔っ払うとしつこく絡んでくるけど!だけど!頼りになるし、陰で部下を無言で支えてるし、皆が尊敬する課長なんですよ!だからどんな理由があろうが!人に、ましてや部下に銃を向ける様な課長じゃないんだ!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ありがとう。」
銃を下ろしてくれた。良かった。例え夢だろうと、課長に撃ち殺されるのは、勘弁だ。
「・・・・・・・・・課長、すいません。すぐに起きて仕事を片付けちゃいますから。」
「本当にありがとう。キミがそんな風に思っていてくれているとは。」
「いえ。」
夢だから言えたんだ。こんな恥ずかしい事、現実の課長を前にとてもじゃないけど言える訳がない。
「だが、こう言う現実をキミが知らなかっただけの事だ。」
「えっ!?」
「私はキミを撃つ!!」
「課長!」
「理不尽だろうが!不条理だろうが!私が課長である以上!これが現実ってヤツなんだ!」
殺される!?僕は課長に殺される!?何がなんなのか分からないまま僕は、課長に撃ち殺される!夢じゃない!これは夢じゃないんだ!そんな事は最初っから分かってた!でも、でもこれはあまりにも夢であって欲しい現実だったから!だから僕は!僕は!
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
死んでたまるか!こんな訳も分からないまま死ぬもんか!生きてやる!生きて地上へ出てやる!ジグザグに、縦横無尽に全力疾走であの扉まで!
「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「今だっ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
地下4階へと続く階段を歩きながら僕は、考えてた。課長はどうして、僕を撃たなかったんだろう?と。きっと課長は、僕を逃がしてくれたんだ。やっぱり課長に部下を殺す事なんて出来なかったんだ。でも、でも待てよ?僕を殺す事が課長の使命だったとして、僕を見逃した課長は?課長の身は無事なのか?
「・・・・・・・・・課長。」
おそらく無事じゃない。それでも自分を犠牲に課長は、部下を助けてくれたんだ。この先、何が待ち受けてるのか分からないけど、絶対に生きて地上へ出てやる!生きて出て、こんなふざけた事に課長の人生を巻き込んだ奴等を僕は!絶対に許さないっ!!
「課長、ありがとうございました!」
さあ、下ばかり見てられないぞ?振り向いて扉を開けたら、そこにきっとまた地獄が待ってるに違いないんだ!
「・・・・・・・・・ヨッシャっ!」
「ギィィィィィィ!」
く、暗い!?
「バッ!バッバッバッババババババッ!」
「ま、眩っ!?」
「おっ。」
「えっ!?か、課長???」
「今度はキミをビシーッ!と、叱るから、そこんとこ覚悟しとくんだぞ~?」
「は、はい???」
な、何だ?何がどうなってんだ?僕は一体、課長の何に巻き込まれたって言うんだ?

第二百八十一話
「課長検定準1級実地試験会場」

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