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2012年2月

2012年2月 1日 (水)

「第二百九十四話」

「ねぇ?おしりマン?」
「何だ。」
「臭いよぉ。」
「おしりマンだからな。我慢しろ。」
「ねぇ?おしりマン?」
「何だ。」
「ウンコ臭いよぉ。」
「おしりマンだからな。カモミール臭かったら、それはそれで大問題だ。」
「ねぇ?おしりマン?」
「何だ。」
「カモミールって?」
「知らん!」
「ねぇ?おしりマン?」
「何だ!」
「風邪引くよ?」
「おいおいおい、おしりマンがおしりから風邪を引いたら、それはもう、おしりマンの様でおしりマンにあらず!」
「ねぇ?おしりマンってさぁ?」
「何かな?」
「武器って、何?」
「おしりマンなんだか、オナラかウンコに決まってるだろ?」
「でもさぁ?そんなので、悪を退治できるの?」
「できないの?と、私は逆に君に問おうじゃないか!」
「う~ん?できない!」
「できる!」
「早っ!?」
「貴様の穴と言う穴に!ウンコ詰めてやろうか!」
「気持ち悪いなぁ!」
「気持ち悪い?今、少年は聖なるウンコを気持ち悪いと、そう言ったのか?」
「ウンコに、聖なるも邪なるもないでしょ!」
「聖なるウンコは、ペーパーで拭かなくとも良いのだ!」
「便切れの話?じゃあ、邪なるウンコは、下痢ぴーウンコって事?」
「ちがーう!」
「ちょっとー!興奮してオナラしないでよね!」
「邪なるウンコとは、大便を垂れ流したら最期!その人間を死に至らしめるウンコだ!」
「どんなウンコだ!」
「悪魔みたいな容姿をしたウンコだ!」
「依然!どんなウンコだ!」
「しようか?」
「いや、正義の味方おしりマンなのに?邪なるウンコを垂れ流せちゃうの?って、聖なるウンコでも邪なるウンコでも!目の前でウンコなんかしないでよ!」
「ウンコジョークじゃないか少年!何をそんなにマジになってんだよ!ブッブッブッブッブッ!」
「笑い声なの?オナラなの?それ?」
「どっちもだ!」
「汚いなぁ!」
「汚い?今、少年はオナラを汚いと?そう言ったのか?」
「言ったけど?」
「なら少年!オナラをしなかったら、人間はどうなってしまうのかを知っているのか?」
「知らないよ。」
「少年、お前もか!」
「おしりマンも知らないのかよ!なら、そんな聞き方しないでよね!」
「少年が知っていたら教えてもらおうと思っただけではないか!何だ?知らない事を他人に聞く事は罪だと、少年はそう言うのか?」
「そんな事を言わないし、むしろおしりマンは、知ってなきゃとは思ったけどさ。」
「ならば教えて上げようではないか!」
「知ってんじゃん!」
「何故に、おしりが2つに割れているのかを!」
「えっ?いや、それは別に教えてくれなくてもいいや。」
「たぶん、2つに割れていないと、オナラもウンコも出しにくいからだと思うぞ!」
「たぶんで始まり、思うで終わる話を教えてもらっても困るよ!」
「あと、2つに割れてなければ、便器にフィットしない!」
「おしり有りきの便器でしょ?便器に合わせて人間が進化して来た訳じゃないでしょ?」
「100つに割れてたらと思うと、少年?」
「何?」
「気持ち悪いぞ!」
「だーからー!初めから100つなら、それはそれで違和感ないし、100つって何!100つって!」
「100つに割れてたら、一体、おしりの穴は何ホールなんだ?」
「知らないし、初めてだよ!単位でおしりの穴を呼ぶ人!」
「時間差でオナラとか出来るのだろうか?そして、好きな穴を選んでウンコを垂れ流せるのだろうか?」
「凄く広げないでいい話題を!凄く広げないでよね!そして、凄く広げないでいいから、おしり!」
「何て!何て夢の無い少年なのだ!」
「何で、どーして僕が!オナラを引っ掛けられなきゃならないの?」
「オナラではない!」
「オナラじゃん!」
「黄昏だ!」
「オナラじゃん!」
「はあ。」
「何で落胆?」
「少年には、情緒と言うものが欠けているな。」
「オナラに情緒も風情もないやい!」
「静かに!少年、悪に気付かれたらどうするのだね!」
「ねぇ?いいの?オナラ連発は許されるの?オナラの音の方が大きいのに?」
「いいか?少年!全ての教訓を忘れたとしても、これだけは覚えておくのだぞ!」
「おしりマンから教わる事なんてないよ。」
「これは、おしりマンとして教えるのではなく!少年よりも少しだけ長く生きている人生の先輩として、教えるのだ!」
「急に顔だけ真面目?でも、何だかんだであれでしょ?オナラは我慢したら、体に悪い!とかでしょ?」
「どうやら、私が教えずとも既に、心に刻み込んでいたようだな!」
「何と無くだよ?何と無く頭の片隅にあるだけの話だよ?そんな事より、オナラマン!」
「おしりマンです!」
「あっ、おしりマン!」
「何だ!」
「正義の味方なんだからさぁ?さっさと悪をやっつけて秘密基地から連れ出してよ!」
「いや、少年!それは私もしたいとこなのだよ!」
「なら、あえてこんな狭い場所に隠れてないで、やっちゃってよ!正直、そろそろ気絶しそうだよ!」
「無理だ!」
「はあ?それでも正義の味方なの?」
「そうですよ!私は、列記とした正義の味方ですよ!おしりマン!」
「それさぁ?おしりを広げてさぁ?おしりの穴を見せなきゃダメなの?」
「ダメなの!正義の味方おしりマン!」
「・・・・・・・・・だったら!早くオナラやウンコでやっつけてってば!」
「だが、無理なのだよ!」
「どーして!」
「相手が悪すぎたのだ。」
「相手?」

第二百九十四話
「鼻無し怪人の巻」

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2012年2月 8日 (水)

「第二百九十五話」

「この国では、黒猫が目の前を横切ると不吉だと言われているじゃないですか?でもね?私、思うんですよ?目の前、目の前って言いますけど、それは本当に目の前だけの事なんでしょうか?だって目で確認出来た横切る黒猫だけが不吉だと言うなら、横切られる瞬間に横を向いたり後ろを向けばいいのでは?もしくは、横切られる瞬間に目を瞑ってしまえばいいのでは?そうすれば、黒猫に横切られた事にはなりませんよね?或いは、そんな事をしたって事前に頭で認識してしまった段階で、黒猫に横切られたら不吉だと言うなら、そこには目の前とかって概念や意味は存在しないですよね?なら、ずーっと遠くの方で横切られても、それは不吉になりますよね?極端な話、海を渡った向こうの国で黒猫が横切っても、それは不吉と言うもんですよね?更に言うなら、宇宙の果てで黒猫に横切られた?そうなったら黒猫の横切りがもたらす不吉から逃れる事は出来ませんよね?だけどここで1つの疑問が生じるはずです。そう、黒猫を飼ってる人は、どうなるんですか?と。それはもう黒猫の横切りにさらされている日々。つまり、毎日、毎日、不吉って事なんでしょうか?毎日、毎日、不吉ってそれは、不吉なんでしょうか?ずーっと不吉に包み込まれている黒猫の飼い主にとっては、毎日、毎日の不吉を、不吉と感じるのは、不可能じゃないでしょうか?つまりそんな日常が日常なら、黒猫に横切られたとこで不吉は、黒猫の飼い主にとって、不吉ではなく日常なのでは?しかし、そんな黒猫の飼い主でも、道で飼ってる黒猫とは別の黒猫に横切られた時には、不吉だと思うのでしょうか?そもそもが、そもそもがですよ?不吉とは実に不安定な事で、その人、その人にとって、種類が違いますよね?黒猫に横切られた事での不吉で死に至るとします。しかしそれは、果たして万人に共通して当てはまる不吉だと言えるんでしょうか?例えば自殺を考えながら街をさ迷ってた人にとっては、むしろ願ったり叶ったりの好都合なんじゃないでしょうか?つまりですよ?不吉の内容が断定的でなく、個人、個人に作用すると言う事なら、黒猫とは物凄い能力を秘めた生物ですよね?どんな思想の持ち主にも、その思想に合った不吉をもたらす。なら、なぜこの国は、黒猫を兵器として活用しないのか?その不吉を軍事力として、抑止力として、活用しないのか?だって考えてもみて下さい?こんなに恐ろしい兵器がありますか?故意に天候を操るより、故意に地震を発生させるより、故意に病原体を撒き散らすより、故意に不吉をもたらす効果は比じゃないですよね?絶大ですよね?ではなぜ、どうして国は、そんな黒猫の横切りを兵器として活用していないのか?それは、簡単な事です。実に単純明快です。だって、黒猫に横切られたとこで、不吉は無いと言う事なんですから。そう、迷信のカテゴライズ。どこかの誰かが、面白半分で作った与太話でしかないんです。しかしもしも、もしもですよ?私が知らないだけで、実際には既にずーっと昔から、黒猫が兵器として活用されているとしたら?その事実を隠蔽しているんだとしたら?そしてこれが、この国の隠蔽ならまだしも、実は黒猫自体が別の国から送り込まれて来た兵器なんだとしたら?それは既に、この国が不吉で覆われているって事になりますよね?そして思い出してみて下さい?黒猫を飼ってる飼い主の話を?そうです。そんなんです。つまり、この国の国民全員、不吉を不吉だと気付いていないと言う事になりますよね?そう考えてみると、どうでしょう?この国が何時まで経っても良くならない理由が見えてくるんじゃないでしょうか?誰が悪いとか何かがダメなんだとかの次元ではなく。我々が不吉から抜け出せない日常が存在するんだとしたら?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「と、いかがですか?長官!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「納得しない国民は、まずいないと思うんですが?」
「・・・・・・・・・・・・却下!」
「いや、待って下さい!長官!ここまででまだ半分なんです!残りの半分を聞いてから決断を!」
「てか・・・・・・・・・クビ!」

第二百九十五話
「スピーチライター」

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2012年2月15日 (水)

「第二百九十六話」

 実は今、全く何もアイデアが浮かんでいない状態で、物語を書き始めました。だから、ハチャメチャな物語になるか?無敵な物語になるか?そこんとこは分かりませんが、まあでも、面白い作品になる事は間違いないでしょうから、是非とも最後までお付き合い下さい。

第二百九十六話
「短編小説ができるまで」

まあ、いつもの喫茶店で、いつもの席からいつもの天井を見上げる事、8分31秒。いまだに何一つアイデアが浮かばない。でも、頑張る。頑張って何とかする!
「あのう?」
とりあえず見知らぬタイプの女性に話し掛けられよう。
「はい?」
返事をしたのが僕ね。んで、どうする?次にタイプの女性は何と言う?とりあずの見切り発車をしたものの、ここが重要ですぞ?ここで物語がどんな展開になるのかが決まる!
「結婚して下さい!」
いや、斬新だけども!実に斬新な恋愛小説だけども!あまりに斬新すぎて、このタイプの女との老後が心配です。
「いきなり結婚と言われても、困ります。」
うん。だから、とりあず無難に断っておこう。てか、そもそも恋愛小説なんて書けないし、こんなの恋愛小説でもなんでもないんだから、女性に話し掛けさせたのが大間違いなんだよ。
「よう!相棒!」
いや、だからって、カウボーイに話し掛けさせるのはどうだろうか?ここ、喫茶店ですよ?何ですか?これから2人で列車強盗でも捕まえに行くんですか?
「ははは。」
とりあえず愛想笑いで時間を稼ぐとして、カウボーイはないや。カウボーイは、ぶっ飛び過ぎる。いやまあ、別にぶっ飛び過ぎたっていいのだけんども!ちょっとそのぶっ飛び加減が違うと言うか、だいぶ違うと言うか?ぶっ飛ぶ角度に問題ありと言うか、そのぶっ飛んだ先に光が見えないと言うか?とにかくだいたい僕は馬乗れないし!
「保安官の面白い話があるんだが聞くかい?」
えっ?聞かないよ。聞かないと言うか、書かないよ!そんな無駄な話。簡単に面白い話を聞かないか?なんて言わないで欲しいね。それ、考えるのは僕、なんだからさ!そもそも、何かそっち系の?西部開拓時代系の?知識が乏しいよ!僕は!とりあえず列車強盗と保安官で、いっぱいいっぱいだよ。
「革命!」
いやだからって、何か中世ヨーロッパな騎士に話し掛けさせたって、もっとダメに決まってんじゃん!更に知識不足でよく分からないよ!だいたい、革命!とか言わせちゃうぐらいだよ?おふざけが過ぎるでしょ!書くなら事前に資料を読んで勉強しなきゃでしょ!
「魔女狩り!」
ああ、もう話し掛けないでくれよ!僕の知識が乏しいのが丸出しで、赤っ恥だよ!
「ギロチン!」
まあもう、次いでだから、消えてもらう前に、最後の知識をひけらかしといたよ。もうあれかな?いつもな感じで、ちょっと面白おかしな、エキセントリックな人物とのやり取りでいいのかな?例えば真横に、博士!
「くそっ!タイムマシーン作りてぇーっ!」
うわっ!口悪っ!?って、そこじゃなくて、博士=タイムマシーンとかって、やり尽くされてる題材だよ!だいたい博士が全員、タイムマシーンを作りたい訳じゃないし、安直が過ぎるぞ!自分!
「ああーっ!タイムマシーンが作りたーいっ!」
泣く!?そこそこ、威厳と貫禄と髭を蓄えた老人が、白昼堂々と喫茶店で、泣く!?泣くならラボで泣けってんだよ!だいたいそんな簡単にタイムマシーンが作られてたら、僕は喫茶店で頭フル回転させて、わざわざ短編小説書いてないやい!
「博士?」
誰!?何か黒服の男が出現しちゃったよ!?大丈夫?展開、大丈夫なの?
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!」
本格的に号泣じゃん!あれだね?大の男の大号泣は、引くね。しかも、大号泣の内容が、訳分からないと500倍、引くね。
「大号泣は他のお客様のご迷惑になりますので、大号泣するなら、ご自分のラボでお願いします。」
まさかのアルバイター!?店長ならまだしも!黒服のサングラスのガタイのいいアルバイター!?喫茶店でアルバイトするその経緯が気になります。など、ふざけている場合ではないぞ?全く物語が動いていないぞ?もうあれか!喫茶店って、シチュエーションがおかしいのか?
「凄く不思議でメルヘンな国にようこそ!」
「あ、はあ。」
不思議な国もメルヘンも書くのが難しいってのに、2つを合わせて更にその前に凄くが付いた日には、お手上げだよ!迷惑極まりない妖精だよ!でも、頑張る!少し頑張ってみる!
「凄く不思議でメルヘンな女王様が貴方をお待ちです。」
「はあ。」
「この凄く不思議でメルヘンな森を抜けた所に、凄く不思議でメルヘンな女王様が住む、凄く不思議でメルヘンなお城がございます。」
「はあ。」
「私は、凄く不思議でメルヘンな女王様から、貴方の凄く不思議でメルヘンな道案内を申し付けられた、凄く不思議でメルヘンな妖精です。」
「はあ。」
「私の後を凄く不思議でメルヘンに着いて来て下さい。でないと、凄く不思議でメルヘンな森で、凄く不思議でメルヘンに迷われてしまいますからね。ふふふっ。」
ふふふっ。じゃねぇよ!頭に凄く不思議でメルヘンが付いてるだけじゃねぇか!誰が一体どうやって凄く不思議でメルヘンを想像できるってんだい!なんだなんだ?凄く不思議でメルヘンな女王様に会って、凄く不思議でメルヘンな宴を催されるのか?凄く不思議でメルヘンなプレゼントを帰りに貰うのか?んで、年老いた僕はこの凄く不思議でメルヘンな体験談を孫に凄く不思議でメルヘンに聞かせたあと、凄く不思議でメルヘンな女王様から頂いたあの、凄く不思議でメルヘンなプレゼントを凄く不思議でメルヘンに見せて、ごく自然な流れで施設に入れられるってか!
「どうかしましたか?」
「消えろ!」
そんな老後は嫌だ!嫌だけど、孫が居るって事は、結婚して家族が居るって事だから、何かいい!って、想像の中の妄想で喜んでいる場合ではないぞ?なら、シリアスやハードボイルド路線でどうだ?
「俺は、殺し屋。」
「はい?」
「しくよろ。」
「えっ?」
「母が余命3ヶ月で、娘が余命3ヶ月で、妻が余命3ヶ月で、俺も余命3ヶ月だ。あと、飼ってる犬も余命3ヶ月だし、飼ってるインコも余命3ヶ月。近所の奥さんも余命3ヶ月だし、隣の御主人も余命3ヶ月。村長も余命3ヶ月だし、余命3ヶ月だと宣告したお医者さんもまた余命3ヶ月だ。」
絶対なんかスゲェ体に悪いもんが、そこら辺の土地から出てんだよ!シリアスでもハードボイルドでもなんでもないじゃん!シニカルでコミカルでケミカルだよ!ってまあ、それは全て僕の責任なんですけどね。
「俺は、村の未来の為に!この国と業者を相手に残された命を懸けて裁判に必ず勝ってみせる!」
やっぱ何かスゲェ体に悪いもんが、そこら辺の土地から出てんじゃん!何だ村とか業者とか裁判とかって!殺し屋が裁判起こしたら逆に裁判起こし返されるだろ!
「頑張って下さい。」
「バーボン!」
何か、ハードボルド風な言葉を口走ってコートの襟立ててタバコ吹かしながら雨の中、傘もささずに月明かりに照らされながら、去って行った!?って、ありったけの思い付く限りのハードボイルド要素を詰め込み過ぎだろ!僕っ!
「・・・・・・・・・無理!もう今日は無理!帰って寝る!」
天井に向かってそう叫ぶと、隣の席の短編小説家の男は、喫茶店を出て行った。こうして私は、隣の席の短編小説家の男が紙ナプキンに書き残した走り書きを元に短編小説を書き上げたのであった。



「・・・・・・・・・・・・・・・。」

とまあ、僕は約2時間を費やして、こんな在り来たりなオチの短編小説を書いていた。次は、もう少し頑張ろうと自分に言い聞かせて、家路に着いた。 

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2012年2月22日 (水)

「第二百九十七話」

 その店は、地上の商店街と地下の商店街を繋ぐ階段の途中、くすんだ壁の1箇所に7色の扉が目印の1/2階に佇んでいた。

第二百九十七話
「ポエム屋」

「あのう?誰かいませんか?」
そして今日も1人、若い女性の客が7色の扉を開け、ポエム屋へと足を踏み入れた。
「いるよ
いるよ
いつも貴女の側にいるよ
いるよ
いるよ
いつの貴女の傍らにいるよ
いない時があると感じた日は
ほら隙間をご覧よ?
ほら隙間の方へと
闊歩
ねっ?
いるよ」
「何か恐いわ!」
店の隙間から、派手なTシャツと派手なズボン姿に派手なバンダナを頭に巻いた小柄の女性が現れた。
「って、お店の方ですか?」
「イヤァ!」
「ここって、ポエム屋さんなんですよね?」
「イヤァ!」
「凄く目がチカチカする店内には、何も置いてないですけど、詩集を売っている訳ではないんですか?」
「お姉さん?何をすっとぼけた事、抜かしちゃってんの?」
「えっ?」
「その大きな両目は、お顔のインテリアかしら?」
「てか、何か口悪くありません?」
「目の前にあるじゃない。」
「何が?」
「詩集よ!ポエムよ!」
「ってまさか!?」
「イヤァ!アタシがポエム!客の希望通りのポエムをアタシが築くの!アタシが詠うの!オーケィ?」
「表現が著しく独特だけど、ワタシがオーダーしたポエムを貴女が作ってくれるって事よね?」
「ハイファーイブ!」
「えっ?」
「ハイファーイブ!」
「こ、こう?」
客の女性は、小柄の女性が広げた両手に、同じく広げた両手を合わせた。
「イヤァ!」
「何か凄く面倒臭いわね。」
「んで?どんなポエムを欲しているのかし、ら?」
「欲してるって、でもちょっと待って?登場のあの感じからして、貴女の力量が分からないわ。」
「アタシのポエム力を疑ってんの?」
「疑うも何も、まだそのステージにすら立っていないって事よ。」
「オーケィ!なら、試詩する?」
「なぜ、わざわざ言いにくい方を選ぶの?ずっとポエム、ポエム言っておいて。」
「んで?試詩すんの?しないの?しないんだったら、最初のポエムをお買い上げになるわよ?」
「最初の恐い詩の事?そんなのボッタクリもいいとこじゃない!するわよ!試詩するわよ!」
「んで?お題は?」
「ねぇ?ねぇねぇ?まず、お客さんとお店の関係性を築けない?」
「お題がないなら、最初のポエムをお買い上げって事でオーケィね?」
「ノーサンキューに決まってるでしょ!あるわよ!お題!」
「なら、さっさとセイ!」
「気分が明るくなるポエムをお願い!」
「リスン!」
「これで変なポエム作ったりしたら、ブッ飛ばすからね!」
「昨日の疲れや嫌な事
忘れるために今日は
目覚ましよりも早く
太陽よりも早く
目を覚ましてアタシ
お気に入りのワンピを着て
お気に入りの靴を履いて
お気に入りの香水を振り撒いて
家電量販店へと
照明売り場へと
闊歩闊歩」
「確実にふざけているか?確実に才能ないかでしょ!」
「お買い上げ?」
「願い下げよ!」
「じゃあ、次!」
「ね?才能あるなら、真面目にやってよ!」
「さっさとセイ!」
「・・・・・・・・・じゃあ、あえて泣きたいって感じのポエムをお願い。」
「リスン!」
「私も暇じゃないんだからね?本当は、ブッ飛ばさないと思ったら大間違いだからね?」
「あえて泣きたい気分
そんなブルーな言い分
誰も聞いてくれない
あえて泣きたい気分
こんなブルーな身分
誰も受け入れてくれない
ネオンな街を闊歩
さ迷い闊歩なアタシ
辿り着いたの
辿り着けたの
家電量販店へと
TVコーナーへと
cry cry cry」
「丁度、コメディー映画が流れてたら泣けないじゃない!って、そこじゃないわね!何なの?家電量販店とこの店は提携しているの?」
「してないけど?何か?」
「だったら、どうしていつも闊歩して辿り着く先が、家電量販店なのよ!」
「たまたまじゃない?」
「いや、貴女のさじ加減でしょ!」
「お買い上げ?」
「こんなお怒りのお客さんを前にして、よくぞ言えたわね!」
「ハイファーイブ!」
「しないわよ!ねぇ?ちょっと自由過ぎでしょ!」
「お題が悪いのよ!」
「そーゆーシステムの店で、そーゆー事を言う!言っちゃうんだ!だったら、自由に作ってご覧なさいよ!」
「オーケィ!ラブな感じのヤツ、いくよ?リスン!」
「いいわよ。」
「胸が苦しいの
胸が苦しいの
貴方を想うと
胸が凄く苦しいの
昨日も今日も
たぶん明日もアタシは
胸が苦しいの
ほんのちょっとでいいの
勇気が欲しいの
ほんのちょっとでいいの
貴方が欲しいの
だから
闊歩、闊歩
そう
闊歩、闊歩
今からアタシは貴方の
体の1部を貰いに行きます
鋭い目付きで
闊歩、闊歩
右手にナイフ
闊歩、闊歩
出来れば右目
闊歩、闊歩
もうすぐ貴方の家に
辿り着きます」
「分かった。分かっちゃった。家電量販店よりも数倍、どうやら貴女は闊歩がお好きなようね?お気に入りなようね?」
「そう?」
「ポエムの中で闊歩させるから変な事になるんじゃない!家電量販店に行ったり、好きな相手の家に行ったりって、ラブの方向性!おかしいでしょ!」
「ラブはラブじゃん!お買い上げ?」
「貴女が良くても!ワタシが嫌なのよ!今のポエム買って、ワタシがどっかで口ずさんでみなさいよ!とんだ犯罪者じゃない!」
「税込みで」
「買わないから!買いませんから!」
「ワガママね?」
「どっちがよ!」
「貴女!」
「貴女がね!もう!癒されようと思って来たのに、イライラさせられっぱなしじゃない!」
「実は、お姉さん?アタシが1番得意とするポエムは、癒しのポエムなの!」
「ああそう。」
「とっととセイ!」
「ね?ポエム聞く前に、ブッ飛ばしてもいい?」
「リスン!」
「とことんね!とことん唯我独尊ね!」
「森森森森もーり
緑緑緑緑みーどり
せせらぎせせらぎ
心地好い風
森森森森もーり
緑緑緑緑みーどり
とどろくとどろく
滝の水しぶき
森森森森もーり
緑緑緑緑みーどり
さえずりさえずり
鳥のオーケストラ
闊歩する
闊歩する
爽やかな朝の森の中を
闊歩する
闊歩する
健やかな霧の森の中を
闊歩する
闊歩する
軽やかなリズム刻みながら」
「・・・・・・・・・。」
「どう?」
「・・・・・・・・・。」
「お買い上げ?」
「うん!そんなに悪くない!」
「イヤァ!」
その店は、地上の商店街と地下の商店街を繋ぐ階段の途中、くすんだ壁の1箇所に7色の扉が目印の1/2階に佇んでいた。

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2012年2月29日 (水)

「第二百九十八話」

 朝日が昇るまで、あと2時間。それは、奴が消えるまでの時間。だが、奴って?奴って誰なんだ?俺の横で震える女は、それを語ろうとはしない。

それは、俺がリビングのソファーで、甘いチョコレートと甘いココアで、凄まじくつまらないホラー映画を観ながら寛いでいた時だった。そんなホラー映画のお陰で、あと少しで夢の世界へと旅立てた。だがそれは、叶わなかった。誰かが物凄く激しくドアを叩いたんだ。最初は、夢なのかと思ったが、テレビでは相変わらずなホラー映画が流れていたから、これは夢じゃないと分かった。なぜなら、これが夢なら、俺はもっと面白いホラー映画を俺に観せているからだ。そんな事を考えながら玄関に向かうと、俺はドアを開けた。するとそこには、見知らぬ女がずぶ濡れで立っていた。もちろん外は雨なんて降っていない。
「お願いします!助けて下さい!」
女に助けを求められて断るなんて、俺には出来なかった。

俺は女をリビングに招き入れ、タオルと洋服を手渡し、リビングを出た。甘いココアをキッチンで作り、リビングのドアの前に立ち、これで女がまだ着替え途中なら仕方ないと、ドアを開けた。するとそこには、ずぶ濡れのままの女が立っていた。俺の中に、着替えないと言う選択肢がなかっただけで、女の中にあったのなら、それはそれで仕方ない。ただ、食い入る様に、凄まじくつまらないホラー映画を観てるのは、理解出来なかった。
「これは?」
床が気になったが、床が濡れる事を気にしたって、今は仕方ない。それよりも気になるのは、女が異様に、それこそ濡れた髪の毛をタオルで拭く事や着替える事をやめてまで、凄まじくつまらないホラー映画に食い入ってる事の方だ。
「ああ、深夜によくある定番のホラー映画さ。」

そう、オーソドックスでスタンダードなそれは、広い屋敷でなぜか一人で住んでる女の元へ真っ黒なシルエットの殺人鬼が、どこからともなくやって来るってストーリーだ。なぜ、女は屋敷から出ないで、屋敷の中だけを駆け回るのか?なぜ、殺人鬼はこれ程までに女を殺したいのか?まあ、そこを掘り下げるのは逆にルール違反で、こうなるとオーソドックスでスタンダードなコメディーと同じで、展開には安心感すら覚える。その安心感でホラー映画を観ながら俺は、夢の中へと誘われた訳だが、女は違った。ガタガタと震え出したんだ。
「何で?」
女が口にする何では、同時に俺の何ででもあった。
「どうして?」
その言葉もまた、同時に俺の言葉でもあった。
「まあ、とりあえずソファーに座って、甘いココアでも飲んで落ち着くといい。」
こう言う時は、こうするのが一番だ。甘いココアは、このホラー映画同様、展開を裏切らない。
「もしかして貴方!・・・・・・いえ、何でもないわ。ごめんなさい。」
女が自分に善からぬ事をしようとしているのかを警戒してなのか?だが、存在自体が意味深な女の意味深な発言を気にする暇は、びしょ濡れのソファーを前にした俺にはなかった。
「一体、何があったんだ?どうしてずぶ濡れなんだ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
人には誰でも、誰にも聞かれたくない話が1つや2つあるもんだ。だがそれは、礼儀とは別の話だ。いい加減、睡眠を邪魔されてまで親切にしてる俺も頭に来るってもんだ。
「朝になるまで、何も聞かないで下さい。朝日が昇るまで、お願いします。アイツが消えるまで、お願いです。」
俺は、ソファーの横の女を危うく追い出す過ちを犯す寸前だった。だったらだったで、その朝日を待つだけだ。甘いココアを飲みながら、甘いチョコレートを食べながら、凄まじくつまらないホラー映画を観ながら、その時を待つだけだ。

「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
朝日が昇るまで、あと2時間。それは、アイツが消えるまでの時間。だが、アイツって?アイツって何なんだ?俺の横で震える女は、それを語ろうとはしない。そして俺は、それを聞こうとはしない。それがさっきこのリビングで生まれたルールだからだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
しかし、こうも退屈な状況は、凄まじく辛い。だから俺は、せめてホラーからコメディーにする為、チャンネルをザッピングした。
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ど、どう言う事だ!」
どのチャンネルにも屋敷の中を逃げ惑う女を追い掛ける殺人鬼が映し出されていた。その時、俺は気付いた。どのチャンネルにも映し出されてる屋敷を逃げ惑う女は、俺の横で震える女と、瓜二つだと言う事を。そして、画面が屋敷の外から窓越しに女を映し出した時、外は大雨だと言う事も同時に気付いた。

第二百九十八話
「逃げて来た女」

俺はそこで考えた。朝日を待ってアイツが消えるのを、ただただじっとこうして甘いチョコレートを食べながら、甘いココアを飲みながら、待っていていいのだろうか?と。女がここに居ると言う事は、殺人鬼がここに来るって事なんじゃないか?と。だが、だからと言って、俺に何が出来る?今すぐ家を飛び出して、車に乗って女と朝日が昇るまでドライブにでも行くか?いや、それよりもこ
「ドガーン!!」
「キャッ!」
雷の音と女の悲鳴で一瞬、何が起きたのかパニックになりそうになったが、それは展開を裏切らない展開のホラー映画の展開だと、俺に抱き付き震える女を笑ってやろうと思ったが、画面に映し出された稲光に照らされた殺人鬼の素顔が俺だったのには、さすがの俺もパニックにならざるを得なかった。

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