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2012年2月 8日 (水)

「第二百九十五話」

「この国では、黒猫が目の前を横切ると不吉だと言われているじゃないですか?でもね?私、思うんですよ?目の前、目の前って言いますけど、それは本当に目の前だけの事なんでしょうか?だって目で確認出来た横切る黒猫だけが不吉だと言うなら、横切られる瞬間に横を向いたり後ろを向けばいいのでは?もしくは、横切られる瞬間に目を瞑ってしまえばいいのでは?そうすれば、黒猫に横切られた事にはなりませんよね?或いは、そんな事をしたって事前に頭で認識してしまった段階で、黒猫に横切られたら不吉だと言うなら、そこには目の前とかって概念や意味は存在しないですよね?なら、ずーっと遠くの方で横切られても、それは不吉になりますよね?極端な話、海を渡った向こうの国で黒猫が横切っても、それは不吉と言うもんですよね?更に言うなら、宇宙の果てで黒猫に横切られた?そうなったら黒猫の横切りがもたらす不吉から逃れる事は出来ませんよね?だけどここで1つの疑問が生じるはずです。そう、黒猫を飼ってる人は、どうなるんですか?と。それはもう黒猫の横切りにさらされている日々。つまり、毎日、毎日、不吉って事なんでしょうか?毎日、毎日、不吉ってそれは、不吉なんでしょうか?ずーっと不吉に包み込まれている黒猫の飼い主にとっては、毎日、毎日の不吉を、不吉と感じるのは、不可能じゃないでしょうか?つまりそんな日常が日常なら、黒猫に横切られたとこで不吉は、黒猫の飼い主にとって、不吉ではなく日常なのでは?しかし、そんな黒猫の飼い主でも、道で飼ってる黒猫とは別の黒猫に横切られた時には、不吉だと思うのでしょうか?そもそもが、そもそもがですよ?不吉とは実に不安定な事で、その人、その人にとって、種類が違いますよね?黒猫に横切られた事での不吉で死に至るとします。しかしそれは、果たして万人に共通して当てはまる不吉だと言えるんでしょうか?例えば自殺を考えながら街をさ迷ってた人にとっては、むしろ願ったり叶ったりの好都合なんじゃないでしょうか?つまりですよ?不吉の内容が断定的でなく、個人、個人に作用すると言う事なら、黒猫とは物凄い能力を秘めた生物ですよね?どんな思想の持ち主にも、その思想に合った不吉をもたらす。なら、なぜこの国は、黒猫を兵器として活用しないのか?その不吉を軍事力として、抑止力として、活用しないのか?だって考えてもみて下さい?こんなに恐ろしい兵器がありますか?故意に天候を操るより、故意に地震を発生させるより、故意に病原体を撒き散らすより、故意に不吉をもたらす効果は比じゃないですよね?絶大ですよね?ではなぜ、どうして国は、そんな黒猫の横切りを兵器として活用していないのか?それは、簡単な事です。実に単純明快です。だって、黒猫に横切られたとこで、不吉は無いと言う事なんですから。そう、迷信のカテゴライズ。どこかの誰かが、面白半分で作った与太話でしかないんです。しかしもしも、もしもですよ?私が知らないだけで、実際には既にずーっと昔から、黒猫が兵器として活用されているとしたら?その事実を隠蔽しているんだとしたら?そしてこれが、この国の隠蔽ならまだしも、実は黒猫自体が別の国から送り込まれて来た兵器なんだとしたら?それは既に、この国が不吉で覆われているって事になりますよね?そして思い出してみて下さい?黒猫を飼ってる飼い主の話を?そうです。そんなんです。つまり、この国の国民全員、不吉を不吉だと気付いていないと言う事になりますよね?そう考えてみると、どうでしょう?この国が何時まで経っても良くならない理由が見えてくるんじゃないでしょうか?誰が悪いとか何かがダメなんだとかの次元ではなく。我々が不吉から抜け出せない日常が存在するんだとしたら?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「と、いかがですか?長官!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「納得しない国民は、まずいないと思うんですが?」
「・・・・・・・・・・・・却下!」
「いや、待って下さい!長官!ここまででまだ半分なんです!残りの半分を聞いてから決断を!」
「てか・・・・・・・・・クビ!」

第二百九十五話
「スピーチライター」

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