« 「第三百話」 | トップページ | 「第三百二話」 »

2012年3月21日 (水)

「第三百一話」

「遅いなぁ。」
ここはカントリークラブ。第1ホールのティーグラウンドで男が1人、キャディーを待っていた。
「お待たせさん。」
するとそこへ、男のゴルフバックを老婆のキャディーが運んで来た。
「で?」
「はい?」
「だから、どーなんでしょう?」
「腰の具合かい?腰の具合はバッチリさ。」
「いやキャディーさんの腰の具合とかじゃなくて、どうすればいいんです?」
「何を?」
「ゴルフに決まってるじゃないですか!」
「ああ、知らん!」
「知らんって!?見るからにベテランキャディーさんの出で立ちで、知らんはないでしょ!」
「見た目はベテランキャディーさんかもしれないが、あたしゃ今日が初めての新人さんだ。そんな基本的も知らないのかい?ゴルフやってますよ的な出で立ちのくせに?」
「キャディーさんに言われたくないね!俺だって今日がゴルフ初めてなんですよ!」
「何で1人で来たんだい?」
「それもキャディーさんに同じく言える事だけどね!当たったんですよ!」
「当たった?ああ、ここのカントリークラブの招待が、商店街の福引きででも当たったのかい?」
「違いますよ!」
「ならお前さん!ゴルフクラブのセットが当たったからって、わざわざ出来もしないのに、ここの会員になったってのかい?こんなもん、売れば良かったじゃないか!」
「それも違いますよ!」
「なら、一体何が当たったってんだい?」
「ティッシュです。ポケットティッシュ!」
「それは当たりなのかい?それよりも、ポケットティッシュが当たって、何でゴルフに繋がるんだい?」
「いいじゃないですか!ポケットティッシュが当たった事がきっかけで、ゴルフを始めても!大体、キャディーさんだって、どうしてその歳でキャディーさん始めたんですか!」
「ポケットティッシュが当たったからさ。」
「ほらー!なら俺を否定しないで下さい!」
「そんな事は、どーでもいいから!早くゴルフしたらどーなんだい?」
「だからー!どーすりゃいいのか分からないんですよ!少なくともゴルフ初心者よりも新人キャディーさんの方が知識上でしょ?」
「ならとりあず鍋でも食うかい?」
「そりゃあ!あれば食うけど!無いじゃないか!」
「ならとりあず流れる雲でも見てみるかい?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「どうだい?」
「どうだいも何も!こんな前代未聞のスポーツ聞いた事もないですよ!どーなったら勝ちで!どーなったら負けなんですか!」
「知らん!」
「ならとりあずのとりあずな考えを口にするなっての!俺はここに!ゴルフをプレイしに来たんだ!」
「ならすればいいだろ?ほら、見ていてやるから、な?」
「よし!やるぞ!って分かってたらキャディーさんが来るのを待たずに1人で始めてましたよ!」
「ところで聞きたいんだが、いいかい?」
「何ですか?」
「キャディーって、何なんだい?」
「そんな事も分からずにキャディーさんをやってたんですか!ゴルフが分からない俺が!そんな事、分かる訳ないでしょ!」
「チッ!」
「えっ?何で舌打ち?立場上同等なはずなのに?何で舌打ち?てか、人のゴルフバックに勝手に触るなーっ!」
「おお、怖い怖い!そんなに怒らなくてもいいだろ?中に何が入ってるのか気になっただけじゃないか。」
「何考えてるんですか!ゴルフバックの中身は!ここぞって時に使用する最終手段なんです!それを始めから使用してどーするんですか!」
「はいはいはい。悪かったよ。ゴルフ知ってるんじゃないか。」
「少しならそりゃあ、知ってますよ。」
「何だかあれだねぇ?」
「何ですか?」
「キャディーってのは、とてつもなく暇だねぇ?」
「いやたぶん、物凄くやる事がふんだんにあると思いますよ?」
「そうなのかい?」
「いや、あくまでも予想の域でしかないですけど、ここにわざわざいるって事は、そー言う事でしょ?」
「そんなもんかねぇ?」
「だいたい、そんなもんでしょう!」
「なあ?」
「はい?」
「このボコボコした小さな丸っこいのは何なんだい?」
「ちょっとー!勝手にいじらないで下さいよ!ボコボコした小さな丸っこいのに!」
「ちょこっと触っただけだろ?ボコボコした小さな丸っこいのにさ。」
「汚れたらどーするんですか!せっかく1番キレイなボコボコした小さな丸っこいのを店で選んで買ったのに!もう、俺のモノをいじらないで下さい!」
「分かった分かった。分かったから、ぎゃいぎゃい、言いなさんな。」
「キャディーさん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「キャディーさん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「キャディーさーーーん!!!」
「心臓止める気かい!」
「無視してるからでしょ!」
「何かやると、ぎゃいぎゃい、言うから黙ってただけだろ?」
「だからってキャディーさんが黙ってどーするんですか!」
「キャディーは、黙らないもんなのかい?」
「知らないですよ!知らないですけど2人いて、1人が黙るって、有り得ないでしょ!」
「歌うか?」
「だからって歌わなくていいですよ!」
「ゴルフって何だ?あれだなぁ?難しいなぁ?」
「そりゃあ!ゴルフは、難しいですよ!」
「アンタ、よくやるな。」
「ええ、紳士ですからね!」
「紳士ではないだろ?」
「んまあ、紳士ではないですけどね。」
「ところで、何で池や砂場があるんだ?」
「キャディーさんが知らない事を、わずかな知識しか無い俺が知る訳がないでしょ!」
「ああ!」
「ど、どうしたんですか?急に大声出して!」
「ほれ!あそこに旗があるだろ?」
「目、いいっすね。ああ、確かにありますね。だから何なんですか?」
「分からないのかい?」
「ええ。」
「だから!18あるホールで、キャディーとゴルファーの、どっちが先により多く旗を見付ける事が出来るかって事だよ!」
「えっ?じゃあもしかして?」
「このホールは、お前さんの負けってこったな。」
「ちきしょーーー!!」

第三百一話
「8勝7敗3引き分け」

|

« 「第三百話」 | トップページ | 「第三百二話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/44583060

この記事へのトラックバック一覧です: 「第三百一話」:

« 「第三百話」 | トップページ | 「第三百二話」 »