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2012年6月13日 (水)

「第三百十三話」

「ねぇ!」
「あっ、おはよう。」
「あっ、おはよう。じゃないっての!ねぇ!分かる?今、12時だから!お昼だから!」
「なら、こんにちは。」
「あのさぁ?別に挨拶なんてどーだっていい訳よ!アタシが言いたいのは、良い?アタシが言いたいのは!捜査会議さぼって一体何してたんだ!!って事。」
「いや、今日は出るつもりだったんだよ。」
「いやそれ、聞き飽きたから。」
「本当なんだって!」
「なら、どーして捜査会議に顔出さないのよ!」
「良い?顔出さなかったんじゃなくて、顔出せなかったの。」
「顔出せなかった人が、何で呑気にお弁当食べてる訳?ねぇ!どーしてそうなる訳?」
「ここに来る途中でさ。スーパーマーケットに寄ったんだよ。朝食を買う為にね。」
「昼食でしょ?」
「いや、本当に朝食なんだって、疑うなら万引きGメンのおばちゃんを証人として呼んで来ようか?」
「結構です!」
「で、店長さんと万引きGメンのおばちゃんが、そのスーパーマーケットで多発する万引きの話をしてるのが、たまたま耳に入ってさ。で、詳しく事務所でお茶菓子食べながら、万引きGメンのおばちゃんの愚痴やら去年生まれたお孫さんの話やら聞いてたのさ。」
「いやいやいや、完全なる井戸端会議じゃない!やっぱり捜査会議さぼってたんじゃない!」
「まあ、良いじゃないか。万引きGメンのおばちゃんの話も進展の無い捜査会議も、どっちも眠くなるような話なんだからさ。お互い、状況は同じだった訳なんだからさ。」
「いやいやいや、全然!違いますから!捜査会議にお茶菓子ありませんから!」
「で?彼がマンションに出入りした痕跡は見付かったの?」
「見付かってたら、ここに居ません!」
「だよね。」
「もう、無理かもしれないわね。拘留時間もそろそろ限界だしね。」
「姿なき殺人者か。」
「ねぇ?何か、メチャクチャ楽しんでない?」
「そんな事ないよ。」
「透明人間とか瞬間移動とか考えてんじゃないの?」
「彼に透明人間や瞬間移動の能力があったら、彼はとっくに逃げてるだろ?」
「アタシは!アナタが言いそうな事を言ったまでですから!如何にもアタシが考えたみたいな感じで返さないでくれる?」
「時間を止めたとか!」
「ほらね。」
「嘘だよ。彼が時間を止めれたら、もっといとも容易く逃げれてるはずだからね。」
「いやいやいや、真面目にその結論に達する思考回路が凄いわよ。」
「彼は、何らかの方法でマンションに入り、交際相手の元恋人を殺害し、そして何らかの方法でマンションを出た。」
「正確には、交際相手だと思い込んでいたその交際相手だけどね。セキュリティの厳しいあのマンションで防犯カメラに一切映らずに、それを実行するのは、まず不可能よ。」
「でもでも、彼はそれを実行した。」
「ええ。死角ゼロの防犯カメラを掻い潜ってね。」
「彼が犯人なんだよね?」
「ええ、それは間違い無いと思うわ。」
「だったら、別に彼で良いじゃん。」
「あのさぁ?紛いなりにも刑事の端くれでしょ?状況が彼を犯人だと指し示していても、彼が防犯カメラに映っていなかったら、犯人に出来ないのよ。」
「面倒臭いね。」
「そうね。でも、それが仕事でしょ?その進展ゼロの会議に出るのも仕事でしょ?それでアタシ達って、お給料貰ってるんじゃないの?お茶菓子食べておばちゃんの話を聞く為に居るんじゃないのよ!お給料貰ってる訳じゃないのよ!」
「うわっ!?まだ、お茶菓子の事を根に持ってんの?」
「いやいやいや、お茶菓子なんてどーでもいいから!お弁当なんて呑気に食べてないで、早くアタシ達も捜査に行きましょうって事を言いたいのよ!」
「万引きGメンのおばちゃんが言うにはさ。」
「万引きGメンのおばちゃんの話どーでも良くない?」
「事件があった当日も万引きがあったんだってさ。」
「ああそう!それは大変ね!ねぇ?良い?良い良い?万引きと殺人じゃ!管轄が違うの!アタシ達が万引き犯の捜査してどーすんの?」
「いいや、それは違うよ?」
「何が違うの?」
「万引きされたのが、ネクタイだからさ。」
「スーパーマーケットにネクタイ?」
「実は、あのスーパーマーケットってさ。色々な物が売っててね。凄く便利なんだよね!この前なんかさ!まさか無いよなと思って行ってみたら!なんとあっ」
「いやいやいや、そこら辺の説明、どーでも良いです。」
「で、確か捜査資料によると、繊維質なもので首を絞められたってあったよね?」
「まさか!?彼が殺害する為にネクタイを万引きした訳!?」
「だと思ってさ。万引きGメンのおばちゃんに、防犯カメラの映像を見せてもらったんだよ。」
「で?」
「何も映ってなかったよ。」
「はあ?何なのよそれ!まるで事件と関係無いんじゃない!」
「いや、だからさぁ。映ってなかったんだよ。」
「はあ?」
「確かに次の瞬間ネクタイは万引きされた。でも、彼が出入りする姿は防犯カメラに映ってない。でも、ネクタイは何者かに万引きされた。」
「だから、何なの?」
「似過ぎてない?」
「カメラの故障とか、たまたま映像が撮れてなかったんじゃないの?」
「そこでボクは、1つの仮説を設けた!」
「いやいやいや、良いから!良いですから!仮説設けなくて!早く捜査行かない?」
「彼は、故意に電波障害を引き起こす事が出来る能力の持ち主なのでは?とね。」
「そのドヤ顔、いつか殴りたいわね。何なのよ!その都合の良い能力は!」
「能力ってのは、常に都合の良いものだよ?ボクはボクの設けた仮説に確信を持った!」
「持たなくていいから!」
「でも、そこで万引きGメンのおばちゃんが一言ボクに言ったんだよ。」
「いい病院紹介するわよ?かしら?」
「電波障害なら、全く映像が映らなくなるんじゃないの?それに他の防犯カメラも故障するんじゃないの?ってね。」
「真面目に受け答えしちゃったのね。」
「そう言われたらもう、事件は暗礁に乗り上げたも同然さ。お手上げだよ。」
「いやいやいや、ずーっと、暗礁に居たんだよ?」
「だから、そこでボクは、万引きGメンのおばちゃんにお茶のお代わりをお願いする事にした。」
「ねぇ?これ、何の話になってんの?捜査行こうよ!働こうよ!」
「席を立った万引きGメンのおばちゃんが躓いてあるボタンを押しちゃったんだよ。これ、そん時の防犯カメラの映像が録画されてるヤツ。再生するよ?」
「しなくて良いから!」
「いい?ここ!ここでネクタイが万引きされた!」
「熱くなってる意味がわからないんだけども?」
「で、万引きGメンのおばちゃんが躓いた拍子に押しちゃったボタンがこれさ。」
「スロー再生ボタンが何なんでしょうか?」
「万引きGメンのおばちゃんを支えながらボクが目にした映像が、これさ!」
「えっ!?」
「透明人間でも瞬間移動でも時間を止めたでも電波障害でもない!彼は、速いんだ!ただただ速いんだよ!人の何倍もの速度で移動出来る人間だったんだよ!だから、防犯カメラの映像を普通に再生しただけじゃ映らなかったんだよ。映って無い映像を見て、人はわざわざスロー再生なんてしないからね。良い?」
「・・・・・・・・・良い。」

第三百十三話
「超高速人間」

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