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2012年7月18日 (水)

「第三百十八話」

「何でオマエが付いて来んだよ!」
「何でってこれは!アタシの事件でもあるからです!」
車を運転する30代前半のくわえタバコの男は刑事で、その助手席の20代前半の女は雑誌記者だった。
「ああ?」
「だから!アタシの担当する占いコーナーの占い師が起こした連続殺人なんですよ?アタシが行かないで!他に誰が行くんですか!全ての証拠が揃い!全てのアリバイが崩れた!今日はあの占い師の終わりの始まりの日なんですよ?全面戦争なんですよ!」
「あのなぁ?だからって、オマエが付いて来なくてもいんだよ。確かに来たいって気持ちは分からないでもないよ。だがよぉ?」
「あれ~?」
「何だよ。」
「まさかのまさかで、信じてるんですか?」
「ああ?」
「この前、占い師が言った最後の言葉を、信じてるんだ!」
「信じてねぇよ!」
「ウケる!てか、意外と可愛いんですね!」
「いやいや、逆に雑誌の占いコーナー担当のオマエが信じてないのかよ!」
「信じてません!」
「なにっ!?」
「死を占いして、その相手を自ら殺すような、あんな人殺しのインチキ占い師の言う事なんて信じてません!」
「なるほどな。って別にオレだって信じてねぇよ!」
「ええー?なら、何でアタシに付いて来て欲しくないんですか?それは、あの言葉を信じてるからじゃないんですか?ウケる!」
「次に私の元を訪れる時、どちらか1人が死ぬ。」
「負け惜しみですよ。まあ、勝ち戦なんですし!気楽に行きましょうよ!」
「分かってねぇなぁ?」
そう言うと刑事は、灰皿でタバコを揉み消した。
「分かってない?何をですか?」
「あのなぁ?どちらか1人が死ぬって事はだ。オレかオマエが死ぬって事なんだぞ?」
「当たり前じゃないですか!」
「オレは、オマエのそのお気楽なとこがたまに羨ましくなるよ。」
「ありがとうございます。」
「皮肉だよ。」
「知ってますよ!んで?で?何を分かってないんでしょうか?お気楽なこのアタシは?」
「どちらか1人が死ぬなんて、何でそんな曖昧な事を言ったんだ?占い師なら、未来が見えてるはずだろ?どちらか1人なんて言わずに、オレかオマエかをはっきりと言えばいいじゃないか。」
「あのですね?お気楽なこのアタシの意見としてはですよ?そんなのあの占い師に未来を見る力が無いから、曖昧な事を言ってビビらせようとしただけだと思いますが?はいどーぞ。」
「何だおい、お気楽がそんなに気に触ったのか?」
「別に?」
「いいか?あの占い師に、そんな力が無いのは、百も承知なんだよ。問題はだ。そんな占い師が何で、あえてあんな言葉を口にしたか?って事だ。」
「だからそれは!」
「ビビらせる為か?」
「そうですよ!」
「だから、お気楽だって言うんだよ!」
「何をーっ!」
雑誌記者は、刑事の頬っぺたを引っ張った。
「力の無い単なる嘘つきのあの言葉を解釈するとだな。どちらか1人を殺すって事だ。」
「えっ!?」
雑誌記者は、刑事の頬っぺたから手を放した。
「展開的に、次に刑事が自分のとこに来た時は、逮捕の時だって事ぐらい誰でも分かるだろ。」
「いやでも、いくらなんでも殺しますか?刑事を!」
「オレに決めんなよ!だいたい占い師は、既に7人もの人間を事故死に見せ掛けて殺害してんだぞ?オレやオマエを殺すのなんてたわいない話だ。」
「まさか!?」
「まさかじゃねぇよ。どちらか1人が死ぬなんて言ってたが、2人とも殺すつもりかもしれないんだぞ?」
「どうやって!?」
「んなこたぁ知らねぇよ!例えば、この車に細工するとかな。」
「えっ!」
「なーにビビってんだよ!」
「ビビってないですよ!」
「ビビってんじゃねぇか!大体このくる」
「どうしたんですか!?」
「ブレーキが利かない!」
「ええーっ!」
「どうなってんだ!おい!」
「アタシに聞かれても分かりませんよ!」
「おい!何なんだよこれ!何で利かねぇんだよ!」
「山道ですよ?」
「知ってるよ!」
「しかも上りじゃなくて、下りの山道ですよ?」
「分かってんだよ!んなこと!」
「どうするんですか!アタシ達2人ともカーブを曲がりきれずに転落しちゃいますよ!」
「くそ!ふざけやがって!」
「って!まえまえまえーっ!」
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
刑事と雑誌記者を乗せた車は、何事も無くカーブを曲がりきった。
「ぷっ!」
「はい?」
「はははははははははっ!」
「いやいやいや、頭おかしくなったんですか?笑ってないで、どう言う事なんですか?」
「すげぇビビってんじゃん!」
「まさか?騙したんですか?」
「いや、気付くの遅いだろ!ぷはははははははははっ!」
「ふざけないで下さい!」
「ふざけてねぇよ。」
そう言うと刑事は、くわえたタバコに火を点けた。
「これのどこが一体!何がどう!ふざけてないって言うんですか!アタシをおちょくって楽しいですか?ええっ!」
「今のが現実だったら、どうすんだ?」
「えっ?」
「そう言う事だよ。」
「はい?」
「いや分かれよ!雰囲気掴み取れよ!」
「すいません。ご説明をどうぞ。」
「だから、今日付いて、来て何もオマエまで死ぬ事はないって事だよ。」
「プロポーズですか?」
「はあ???」
「いやいやいや、理解してますよ。」
「プロポーズじゃねぇよ!」
「いやそっちじゃなくて!さっきのですよ。」
「刑事おちょくってんじゃねぇよ。」
「さっきのお返しです。大丈夫です。アタシは、あんな占い師なんかに殺されたりしません。」
「・・・・・・・・・・・・・・・ダッシュボード。」
「はい?」
「ダッシュボードの中。」
「ダッシュボードの中?」
そう言われて雑誌記者は、ダッシュボードを開けた。中には拳銃が入っていた。雑誌記者は、その拳銃を手に取った。
「いいか?仮にもし、オレが占い師に殺されたら、それで自分の身を守るんだ。」
「えっ?」
「いいな?迷うなよ!迷わず占い師を撃つんだ。」
「でもアタシ!刑事さんが殺されるなんて、そんな!?」
「仮にだ!仮!拝むな!」
「ああ、仮にですね。」
「それは最終手段だ。」
「分かりました!」
「ん。」
「いやぁ!でも拳銃なんて持つの初めてだなぁ!意外と重たいんですね!」
「まあな。」
「えっ?でも最終手段だ!って言われても、これどうやって撃つんですか?」
「着いたら教えてやるから、こっち向けんじゃねぇよ!」
「何か、アクション映画のヒロインみたいですね!」
「分かった分かった!だから向けんじゃねぇよ!」
「動くと撃つわよ!なんちゃって!」
「おいおいおい!いい加減にしないと怒るぞ?それには弾が入っ」

「バン!」

「嘘っ!?」
雑誌記者が持つ拳銃から放たれた弾丸は、刑事の頭を貫いた。

第三百十八話
「占われるということ」

「んで何でオレがオマエに撃たれて死ななきゃなんねぇんだよ!」
「いやいやいや、だからこれは仮にの話ですよ。あの占い師の占いが当たるとしたら、こんな感じかなぁ?って話ですよ。」
「どちらか1人が死ぬって言うか、あの場合、あの後、絶対にオマエも死んでたからな!大体そんな間抜けな死に方するぐらいなら、ふざけてカーブに突っ込んだ方がましだ!」
「さあ、いよいよ占い師との決着の時間ですよ!」
「銃返せ!」
「嫌だ!」
刑事と雑誌記者を乗せた車は、占い師の居る館に着いた。

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