« 2012年7月 | トップページ | 2012年9月 »

2012年8月

2012年8月 1日 (水)

「第三百二十話」

 軽快なピアノの曲が流れる酒場のカウンターの一番端の席には、ガンマンが座り、その隣にはさっきまで舞台で踊っていた踊り子が座っていた。
「どうだった?」
「どうだったって?」
「んもう!アタシの躍りに決まってるでしょ!」
「ああ、良かったよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「なんだよ。」
「見てなかったくせに。」
「見てたさ。」
「んまっ、そう言う事にしてあげるわ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ねぇ?」
「ん?」
「暗くない?何か、暗いわよ。こんなに賑わってる酒場で、逆によくそんな暗く振る舞えるわね。マスター!アタシも同じのね!」
「いつからここには、常にニコニコしてろってルールが出来たんだ?」
「別にそんなルールは無いけどさ。サンキューマスター!」
「おいおいおい、まだ踊るんだろ?」
「大丈夫!ちょっとお酒が入った方が妖艶なの知らないの?んで?何かあったの?ああ!また保安官とケンカしたとか?」
「アイツとケンカしたぐらいで、なんで俺が暗くならなきゃならないんだ?」
「ほら!やっぱり暗いんだ!オーケー!今日は特別にこの胸で泣いてもいいわよ?」
「はあ?なんでそうなる?ガキじゃあるまいし。」
「アタシからしてみれば、男なんていつまで経ってもガキだけどね。ほら!」
「ほら、じゃねぇよ。別に泣く理由なんてないし、泣きたかったら、どこか別のとこで泣くよ。」
「あーそっ!」
「お前の方がよっぽどガキじゃねぇか。」
「んでんで?どうしてそーんな暗い顔しる訳?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ほーら!」
「・・・・・・・・・この前、ある男からの依頼で、ある男を撃ったんだ。」
「悪党退治?悪党を退治して、暗くなってんの?今更?」
「悪党ってのは、ある角度から見た時は、正義なのかもしれないって思ったんだよ。」
「ん?ああ、まあそうかもね。」
「俺から見たら悪党だが、あそこでポーカーを楽しんでる奴等から見たら、正義なのかもしれない。」
「ん?いやいやいや、あの人達は、毎日楽しくお酒を飲みながらポーカーが出来ればいいんだって!この時代がどう移り変わっていこうが!全くお構い無しな人達なんだって!」
「例えだろ。アイツらじゃなくて、神父だって宿屋のばあさんだって牧場主の親子だって保安官だって、誰でもいいんだよ。」
「アタシでも!」
「ああ、お前でもいいさ。」
「でもさぁ?やっぱり多くの人間が悪いって思う事をしてるなら、それは悪党でしょ?だいたい、その多くの人間が悪いって思う事をしてる悪党だって悪い事をしてるって思ってしてるんだしさ!」
「・・・・・・・・・極端な話。」
「ねぇ?」
「ん?」
「タバコやめたら?」
「ほっとけよ。いいか?極端な話だ。ある男がしている事を良いと思う人間と悪いと思う人間が、半々だったらその男は、悪党なのか?正義なのか?」
「極端過ぎない?」
「だから、極端な話って言ったろ?」
「難しいわねぇ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・おい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・おい。」
「ちょっと黙っててよ!考えてんだから!」
「すまない。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・分かんない!」
「はあ?」
「だから、分かんない!」
「何だそれ!」
「だって、分かんないんだから仕方無いでしょ!だいたい、極端な話が極端過ぎなのよ!だってそんなの有り得ないもん!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「でも!」
「ん?」
「でーも!」
「でも?」
「仮に、その男を正義だと思う人間と悪党だと思う人間が、ぴったり半分だったとしたら!」
「ああ?何で俺を指差すんだよ。」
「アナタが決めればいんじゃない?」
「なに?」
「アナタが最後の一人になって、その男が正義なのか悪党なのかを決めればいんじゃない?」
「俺が?」
「そう!だって、そうでもしなきゃ決まらないもの!で!それでいんじゃない?それで全て解決!」
「ああ、お前に聞いたのが間違いだった。」
「はあ?なにそれ!人が真面目に考えて真面目に答えて上げたのに、その言い方はないんじゃないの?」
「悪かったよ。ありがとな。」
「感謝してない!絶対!感謝してない!」
「してるさ。」
「ホントに?」
「神に誓って感謝してるよ。」
「じゃあ、キスして!」
「はあ?」
「ほら、早く!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・って、なに!?ただ眺めてるだけって、なんなの!?」
「いや、目を瞑ったお前の目玉が、ギョロギョロ動くのが面白くてな。ほら、ピアノが終わったぞ!出番だろ?行って来いよ。」
「あっ!そっ!撃ち殺されちゃいなっ!」
「はっ、ありがとよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「ん?どうした?早く行けよ。今度はちゃんと見ててやるからさ。」
「誰を退治したのか知らないし知りたくもないし聞かないし聞きたくもないしどうでもいい事だけど・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「アタシは、アナタが正義だと思ってるから。」
そう言うと踊り子は、舞台へと向かった。
「・・・・・・・・・ありがとよ。」
踊り子の後ろ姿を見ながら、ガンマンは呟いた。そして間も無くして、この国の新しい大統領を決める選挙が行われた。

第三百二十話
「動く時代」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年8月 8日 (水)

「第三百二十一話」

「ニャー!ニャー!」
高い木に登り、自力では降りれなくなってしまった猫がいた。しかし、猫は泣き声を上げながらも実のところ安心していた。なぜならこの小さな町には、この小さな町の平和を守る正義の味方が、2人もいるからだ。そして何よりも今、その正義の味方の2人が、真下に馳せ参じてくれたからだった。
「で?どっちが行くんだ?俺か?アンタか?」
「勿論!私が助けに行きたいのは、やまやまだが!ここは、キミに譲っても良いと考えている!」
「はあ?」
「何かな?何か反論でもあるのかな?」
「譲る?あのなぁ?先にこの公園に来たのは、俺だぞ?何でその俺が、あとから来たアンタに偉そうに上から目線で、譲られなきゃならないんだ?」
「それは失敬。では、キミが行きたまえ。」
「だから!何なんだよその偉そうな態度は!だったら、猫の救出はアンタに譲ってやるよ!」
「結構。」
「何で断るんだよ!」
「私の見解ではこうだ。家から公園まで、1485歩。往復で2970歩。ここから猫まで15歩。往復で30歩。ギリギリだ。ギリギリは嫌いだ。何かあった時、そのギリギリの判断が命取りになる。正義の味方は常に余裕を持って任務をこなさなければならないと考えている。」
「いや、ギリギリなら何で来たんだよ!公園の入り口で俺の姿を見たら帰ればいいだろ?いいか?しかもアンタの今の見解だと、アンタもギリギリかもしれないけど、俺だってギリギリなんだからな!」
「それは違う。」
「何が違うんだよ。」
「私の家の隣に住んでいるキミには、3歩の余裕がある。だからここは、キミが行くべきだ。」
「べき、になっちゃってんじゃねぇか!3歩はギリギリじゃねぇのかよ!」
「3歩は余裕のある歩数だ。だからキミしかいない。」
「しかいない、になっちゃったぞおい!なあ?3歩もギリギリなんだぞ?いいか?そのギリギリをどうしようかって考えてたから、アンタが現場に間に合ったんだからな?」
「それは逆に言うならば、キミが3歩も余裕があると言うのに、のんびり考えていたから、私は現場に間に合ってしまったと解釈すれば良いのかな?」
「はあ?間に合ってしまった、ってなんだよ!間に合ってしまった、ってよ!しかも、のんびり、って何なんだよ!」
「だってそうだろ?助けを求めている可哀想な猫を目前に、何を考える必要がある。正義の味方ならば、迷わず救出するのが道理ではないのか?」
「ならアンタが駆け付けた時に真っ先に救出に行けばいいだろ!何で俺の隣に突っ立ってんだよ!」
「立場が違うのだよ!キミと私とではね!」
「同じだろうが!」
「3歩!」
「それが何なんだよ!さっきっから3歩、3歩ってよ!」
「キミは、この3歩の違いの大きさが理解出来ないのか?ギリギリの私と3歩のキミ!3歩だぞ!キミは3歩もあるのだぞ!そんなに余裕をもて余してると言うのに、何を迷う必要がある!」
「おい?確かに俺には、3歩の余裕がある。でもそれはアンタと比べた場合の話だろ?俺は俺で、3歩ってのはギリギリなんだよ!これっぽっちの余裕もないんだよ!いいか?何かあったら3歩だってヤバい歩数なんだよ!」
「押してやろうか!」
「何でだよ!何で急にそうなるんだよ!押してお互いに何のメリットがあるんだよ!」
「すまない。つい、頭に血が昇ってしまって、本当にすまない。」
「ああ、いいよ。って、俺何かアンタの頭に血が昇る様な事を言いました?」
「どうだろうか?ここは一旦休戦して、お互いに力を合わせて猫を救出すると言うのは?」
「いや別にそもそも戦ってないしって、協力って、どうするつもりだよ。」
「3歩余裕のあるキミが、木を蹴ると言うのは、どうだ?そして、驚いた猫が落ちて来るのを3歩余裕のあるキミがキャッチする。完璧だとは思わないか?」
「俺だけじゃん!どこがどう、お互いに力を合わせた?」
「合わせているではないか。」
「どこがだ!俺ばっかしだろ!」
「私は、アイデアを捻り出したではないか。」
「なあ?30回、木を蹴っても猫が落ちて来なかったら、どうすんだ?」
「3歩余裕があるではないか。あと3回で猫を驚かせて落とせばいいではないか。その時は、私が猫をキャッチして上げよう!」
「あのな?だったら木に登って猫を救出する方が早いだろ!何でそんな危ない賭けをしなきゃならないんだよ!」
「だったらゆけい!」
「ゆくよ!ゆくけど何でアンタに指示されなきゃならないんだよ!」
「見ていて焦れったいからに決まっているだろ。」
「俺がゆくんだから俺のタイミングでゆかせろよ!だいたい焦れったいならアンタがゆけばいいだろ!」
「何度も言っているだろう?私にはあまりにもギリギリ過ぎるのだと!キミは、あまりにも若い!若いがゆえに1歩の重要性を理解していない!」
「アンタは!逆に1歩を重要視し過ぎてんだよ!」
「見たまえ!」
「ん?」
「あんなところに梯子があるではないか。きっと公園の用具に違いない。」
「おお!あれを使えば歩数を節約出来る!いや、だけどあそこまで結構な距離があるぞ?」
「大丈夫だ。私の見解ではこうだ。あの梯子まで、15歩。往復で30歩。任せたぞ!」
「だから何で俺なんだよ!」
「だからギリギリだと、何度言えば理解出来るのだね!キミは!」
「いや、絶対に往復で30歩は無理だろ!」
「キミには3歩があるではないか!」
「その3歩でも無理だろ!明らかに!」
「それでもキミは正義の味方か!木の上の猫よりも!そんなに歩数が大切か!」
「アンタだろ!!ギリギリ、ギリギリって、さっきっからそればっかだろ!」
「仕方無いだろう!押してやろうか!」
「だから何で押すんだよ!」
「私はその昔!命を救う事が出来なかった!」
「えっ?」
「あと1歩あれば!あと1歩あれば救う事が出来た命をだ!いいか!私の1歩やキミの1歩はな!人1人の命と同じなのだ!」
「まさか、そんな事があったなんて、俺知らなくて、悪かったよ。」
「理解してくれたのなら、それで構わない。まあ、と言う過去もあるかもしれないと言う未来の話だけどな。はっはっはっ!」
「はあ?」
「押してやろうか!」
「何でだよ!何なんだよアンタは!って、えっ!?」
「はて?何やら頭に肉球な感触が?」
と、その時、高い木の上でバランスを崩した猫が、3000歩マンの頭に見事に着地した。
「ニャー!」


第三百二十一話
「3000歩マンと3001歩マン」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年8月15日 (水)

「第三百二十二話」

「で?大事な話って何だよ。」
「俺、年内には、ハイジャックしようと思ってるんだ!」
「なっ!?お前なぁ?アイスコーヒー吹き出しそうになるような事を言うなよな!」
「いや若干、吹き出したから!」
「本来なら、アイスコーヒーまみれだ!何だよ年内には、ハイジャックしようと思ってるんだ、って!」
「だから、年内には、ハイジャックしようと思ってるんだ、だよ。」
「お前さぁ?ハイジャックって何なのか知って言ってるんだよな?ボランティアとかの類いじゃないってのを分かって言ってるんだよな?」
「飛行機を乗っ取る事だろ?」
「そうだよ!何で知って分かってるのに、年内には、ハイジャックしようと思ってるなんて宣言するんだよ!ハイジャックって、悪い事なんだぞ?」
「ハイジャックって、悪い事だよ。」
「何で悪い事をしようと思ってんだよ!そんなの親友から聞かされたら俺は、全力で止めるに決まってんだろ!」
「でも、俺達来年で35だろ?やるなら今年しかないと思ってさ。」
「いや、でもの意味が分からない!じゃあ何か?お前は、来年35になるからって理由で、そんな理由で年内には、ハイジャックしようと思ってるのか?」
「理由としては十分過ぎるだろ!」
「いや、ハイジャックって別に何かしらのプロテストとかじゃないんだし、生きてる間にやらなくていい事の1つだし、えっ?何なの?何かお前、気持ち悪いよ。お前のその思考が気持ち悪いよ。」
「気持ち悪いは、言い過ぎだろ。何も気持ち悪い事をしようとしてる訳じゃないんだしさ。」
「気持ち悪い事をしようとしてないけど、とても悪い事をしようとしてるんだぞ?ちょっと耳にピアス空けるのとは、訳が違うんだぞ?」
「とても悪い事だってのは、重々承知さ!」
「なら何でハイジャックに行き着く!そして何故に、ちょっと偉そうなんだ!」
「俺達来年で35なんだぞ?」
「いやだから何なんだよ?その35になるからとかって考え!35が何なんだよ!35になる前にハイジャックをしなきゃいけない法律なんてないだろ?みんな普通に35になってんだよ!だからお前も、極々自然に35を迎えろよ!」
「静かにか?」
「静かにだよ!」
「ケーキやプレゼント無しか?」
「ケーキやプレゼントは、俺が用意してやるよ!」
「本当か?」
「本当だよ!他の奴等も呼んで盛大にお前の35を祝ってやるよ!」
「歌とかダンスありか!」
「歌とかダンスありだ!」
「ゲームとかダンスありか!」
「ゲームとかダンスありだ!」
「マジックとかダンスありか!」
「マジックとかダンスありだ!ってダンス!さっきから何かと言えばダンス!1回言えばいいだろ!」
「何回言ってもいいだろ?俺はその日、主役なんだぞ?王様なんだぞ?」
「主役だが王様ではない。ってその日な!話はあくまでその日な!今じゃないから!」
「ハイジャックとかダンスありか!」
「ほらまたハイジャック出て来たよ!何でハイジャック出て来きちゃった!それ無しでの誕生日パーティーだろ?」
「お前が機長な。」
「ああ、何?誕生日パーティーでハイジャックごっこをやりたいって話?」
「で、俺は管制塔のオペレーター!」
「何してんの!何で機外にいんの!流れ的に、絶対お前が当機をハイジャックしなきゃだろ!」
「いやでも、あんだけハイジャックは悪い悪いって言われたら出来ないっしょ!」
「誰?急に!?そこはごっこなんだからハイジャックしていんだよ!てか、じゃあ何でハイジャックとかダンスありか!って聞くんだよ!」
「お前はあれか?俺の誕生日パーティーでもそんなにキレまくってんのか?」
「いやキレまくらないよ。誕生日パーティーの時は、お前を全力で祝うよ。」
「俺は、キレまくってるけどな!」
「何でだよ!常時お前の身に何が巻き起こってんだよ!」
「うるさい!ってキレまくってけどな!」
「誕生日パーティーだぞ?何でしめやかに行わなきゃなんないんだよ!だったらまず、お前が熱望してたダンスは出来ないからな!」
「だからキレまくってんだよ!」
「病気か!」
「病気か?かかか・・・カエル。」
「急に、しりとり始められても困ると言うか、怖い!」
「誕生日パーティーで、俺がハイジャックやるとするだろ?」
「もう強引と言う言葉では収まり切れない戻し方だよな。うん、ハイジャックやるとして何?」
「どうやんの?」
「え?だから、乗客に紛れたお前が突然立ち上がって、この機はジャックした!とか言えばいんじゃないの?」
「バナナ2本持って?」
「バナナ2本持ってハイジャック出来ると思ってんのか?なあ?」
「ああ、じゃあ指の間にバナナ挟もっか!」
「数の問題じゃない!バナナにハイジャック出来るポテンシャルは無い!それ、完璧にハイジャックする気がないよな?」
「でもあれだぜ?人より多く黄色いぜ?」
「何なんだよそのルール!聞いた事ないよそんなハイジャックあるある!」
「ハイジャックないないか!」
「ないないのカテゴリー作られたら、ややこしいだけだから!」
「それからあの、ピンポーン、って鳴るゲートを通るよ。」
「だから何してんの!何で機外なの!」
「馬鹿だなぁ!機内でハイジャックしたら、捕まるだろ!」
「機外でしても捕まるよ!いや捕まるも何も、誕生日パーティーのハイジャックごっこなんだろ?これは!だったらがっつり機内でやろぜ!でなきゃ、全員ポカーンだよ!」
「パナーン!だろ?」
「それ知らない。」
「パナーン!」
「ちょっと、怖いから止めてくれよ。」
「よし!そろそろ帰るか!」
「自由奔放か!」
「自由奔放か?かかか・・・・・・カマキリ!」
「リンゴ。」
「午後10時48分52秒!」
「そんなしりとりが成立してたまるか!!ほら、行くぞ!」
「どこ空港へ?」
「神社だ!」

第三百二十二話
「12月31日」

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2012年8月22日 (水)

「第三百二十三話」

 いつも言っているが、世の中にはそう、とても不愉快な世界が存在する。それは、想像以上に不愉快な世界で、想像以下に不愉快な世界。その不愉快な世界への扉はそう、トイレのドアかもしれないし、エレベーターかもしれないし、ハムスターのゲージかもしれないし、右へ曲がる曲がり角かもしれない。とにかくそう、不愉快な世界への扉へ、ようこそ。

第三百二十三話
「不愉快な世界への扉~episode777~【ビーム】」

 少年は、いつものように目覚めた。そう全くいつものようにだ。ただ、いつもと一つ大きく違うのは、左手の薬指から、ビームが出っぱなしだったって事だ。
「えっ!?」
少年は、驚いた。まあ、実際誰でも体のどこか一部からビームが出たら驚くか。少年は、急いでリビングにいる母親の元へ向かった。
「ママ!」
「どうしたの?階段は静かにって言ってるでしょ?」
「見て!」
「危なっ!?はあ???お前マジか!母親に向かってビームとか何考えてんだ!てか、何でビーム出てんの?」
「分からないよ!起きたら左手の薬指からビームが出てたんだよ!どうしよう?」
「どうしよう?って、別にママの家系もパパの家系もビーム出る家系じゃないから分かる訳ないでしょ!つか、コントロール出来ないのかよ!出っぱなしって、お前この家を破壊する気かよ!」
「僕だって出ないうに出来るならそうしたいよ!でも、どうしていいのか分からないんだよ!」
「それがビーム出っぱなしの奴が言う事かよ!まさか隠れてビームが出るような物、寝る前に食べたんじゃないでしょうね?」
「ビームが出る食べ物って何なんだよぉぉぉ!」
「知るかよ!ただ何と無く言ってみただけよ!正義の味方気取りか!ビームって!いや、家を破壊してんだから世界征服を企む悪の独裁者か!」
「僕はママの息子だよ。正義の味方でも悪の独裁者でもないよ。」
「んな事、知ってらい!博士の知り合いとか居ないのかよ!」
「そんな知り合い居る訳ないじゃん!」
「使えねぇな!」
「お互い様でしょ!」
「お互い様?ママには博士の知り合い居ます!」
「なら、どうにかしてよ!」
「先週死んだわよ!喪服着てる日があったろ!」
「誰が死んだかまでは知らないよ!ならもう、居ないんじゃないか!」
「居ないわよ!居ないけど、居たのよ!居ないのを居ないって言うのと!居たのを居なかった事にされるのとじゃ!全然違うのよ!」
「でも、今居ないならビームどうにも出来ないじゃないか!」
「今居てもビームどうにも出来ないわよ!」
「じゃあ、関係無い博士なんじゃないか!」
「関係無い博士よ!でも博士は博士よ?」
「博士自慢とかどうでもいんだって!」
「向けるな!指!」
「ごめん。」
「ちょっとビームが出るからって偉そうにすんな!」
「してないよ!困ってるんだよ!」
「でも、そのビームをどうにかしないとだわ。だってこのままだと、左手じゃんけん大会で息子が負けちゃうわね。」
「何、その伝統的なヤツ!?」
「ああ、でもビームで相手を倒せば優勝か!」
「喜びの沸点が分かんないし、じゃんけんしなくていいの?だし!違うよそんな事じゃなくて!ビーム出てたら夏休み終わって、学校に行けないよ!」
「何で?行きなさいよ!ちゃんと学校!休むなんて許さないわよ!いい?小学校だからって甘く見ないの!人生は既に小学校から決まってるの!小学校を制する者だけが!いい会社に入れるのよ!」
「何を言ってんの?」
「この国の言語だろうが!!」
「ママ、頼むよ。真面目にお願いしますよ。ビーム出てるんですよ。出っぱなしなんですよ。」
「そうね。例えいい会社に入って、いい女を見付けて、いい結婚するとしても、そんなとこからビーム出っぱなしだったら、指輪交換時に花嫁殺しちゃうわよね。そして、アナタは殺人鬼。アタシは、殺人鬼の母。家族の未来がかかっているんだものね。」
「出っぱなしで結婚まで辿り着けたら、それは奇跡だよ!そんな未来の話なんてしてないでママ!今が肝心なんだって!」
「分かってっよ!ちょっとパニックに陥っただけだろ!ゴチャゴチャうっせぇなぁ!」
「まさかのパニック、自己申告!?」
「切るか!」
「えっ?」
「だから、切るか!」
「はい?ちょっと待ってよ。それをしない前提の、どうにかしなきゃの話じゃなかったの?」
「いや知らんよ!ハサミどこだっけ?」
「知らんよって!しかもハサミって!いやいやいやいや、ちょっと待ってよママ!」
「だってビーム止めれないなら切るしかないっしょ!」
「何その軽いノリ?いやだから待ってよ!ビームの仕組みを考えてよ!薬指から出てるなら切れば止まるよ?でもそうじゃなかったら、切ったとこから出っぱなしだよ?」
「いや、それは切らなきゃ分からない話っしょ?あったハサミ!」
「いやいやいやいや、切るなら切るで病院行くよ!専門的なとこで専門的な人に専門的に切ってもらうってば!」
「1、2、3!で行くわよ?」
「ちょっ!?やめてよママ!放してよ!」
「男の子でしょ!覚悟決めなさいよ!」
「覚悟って、ママ!ちょっと落ち着こうよ!」
「いい?母親が息子の指を切る!こんな不愉快な事ある?こっちは覚悟決めてんだよ!」
「ママ?」
「1!」
「ママ!」
「2!」
「ママァlァァァァァァァァァァァ!!」
「3!」
「うわああああああああああああああ!」
さてと、今回の扉の向こうはどうだったかな?果たして、不愉快な世界への扉を開けたのは、少年だったのか?母親だったのか?そして、少年の左手の薬指から出るビームは、止まったのか?それとも
・・・・・・・・・。まあ、あれだ。そう、それは扉の向こうの話。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年8月29日 (水)

「第三百二十四話」

「タマゴくれるか?」
「は~い~!」
「ベチャ!」
「おい!」
「へい!」
「は~い~!ってなんだ!」
「すいませんでした大将!へい!大将!」
「ベチャ!」
「あと、重要な事が1つ。これはかなり重要な事だから耳の穴をカッポジってよく聞きやがれよ!」
「へい!」
「この激近な距離で、投げるヤツがあるか!」
「大将!」
「何だ!」
「ベチャ!」
「この激近な距離で、投げないとでも思ったんですか!」
「どんな距離だろうが、タマゴを投げて来るだなんて思ってなーい!ないったらなーい!」
「大将!」
「何だ!」
「ベチャ!」
「だとしたら大将は隙だらけマンです!すぐに殺し屋に殺される!隙だらけマンです!」
「意味の判らない事を言ってんじゃねぇぞ!って見習い?何でタマゴ投げまくってんだ?」
「大将!」
「何だ!」
「ベチャ!」
「ほら!」
「いや何なん?お前、何なん?大将をタマゴまみれにして何がしたいんだ?大将がタマゴまみれになってる姿を見て、お前は不思議だと感じないのか?」
「判って欲しいんです!」
「何をだ!」
「大将が隙だらけマンだと言う事をです!殺し屋にすぐ殺されると言う事をっす!」
「俺が隙だらけだとしよう!だか」
「隙だらけマンです!!」
「俺が隙だらけマンだとしよう!だからって何でタマゴ投げるんだ!タマゴ投げないで口で言えばいいだろ!大将は隙だらけマンですよ。って言えばいいだろ!そもそも殺し屋って何なんだよ!」
「大将!」
「何だ!」
「ベチャ!」
「ねっ?」
「いやだからだなぁ!投げるな!」
「投げるな!」
「そう!投げるなよ!もう判ったから!もう隙だらけマンだって判ったから!殺し屋にすぐ殺される隙だらけマンだって判ったから!絶対に投げるなよ!」
「大将!」
「何だ!」
「ベチャ!」
「判ってないじゃないですか!」
「判ってるよ!!と言うかな!タマゴただじゃねぇんだぞ!!なに?どうすれば判った事になるんだ?」
「避けるんです!投げられたタマゴを避けるんですよ!投げたタマゴは、全て私が弁償します!」
「判った!避けたらもうタマゴ投げないんだな!」
「見習いウソ付かない!」
「よし!来い!」
「大将?」
「何だよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・いや大将?よし!来い!って、そんな身構えられてタマゴ避けられても、それはダメですよ。隙がないマンにはならないですよ。これから殺しますよ?って、お茶菓子持って丁寧に挨拶して来る殺し屋がいますか?」
「なるほど。って殺し屋の方はいるかもだろ!」
「私の知る限り!2人しかいませんよ!」
「いんじゃねぇか!」
「いいですか?あくまで、自然な会話の流れで避けて下さい。」
「判った!」
「大将!下!」
「何だ!」
「ベチャ!」
「ほらー!」
「え?今のは騙しだろ?自然な要素ゼロだろ?」
「大将!お客さんがいっつも正々堂々だとは限らないじゃないですか!」
「おい待て、何か?俺は客にタマゴを投げられるのか?」
「寿司屋ですよ?」
「寿司屋だよ?」
「そう言う寿司屋ですよ?」
「どう言う寿司屋だよ!!」
「大将!」
「何だ!」
「ベチャ!」
「どうですか!」
「どうですかって、今になっても何でタマゴを投げられてんのかが全く判らねぇよ!」
「大将!」
「何だ!」
「ベチャ!」
「大将!」
「何だ!」
「ベチャ!」
「真面目にやってます?」
「真面目にやってらい!お前さぁ?逆にこの激近の距離で避けられんのか?」
「避けられません!」
「避けられねぇんじゃねぇかよ!!」
「だって私は見習いですから!」
「見習いは避けられないのか?」
「見習いは避けられませんよ!だから私はいつまでだっても見習いなんでしょ!って、余計なお世話ですよ!大将!へい大将!」
「何を1人で興奮してんだよ。いやそれは、お前が生魚アレルギーだからだろ?生魚を触れないからだろ?だからずーっと見習いなんだろ?」
「私は生魚アレルギーではない!!」
「生魚アレルギーだろうが!!」
「違う!!」
「だったら何だってんだい!!」
「私もずっと生魚アレルギーだと思っていた!だが違う!この前、病院行った!検査した!結果出た!」
「誰なんだよ!ってやっと病院行きやがったか!んで何アレルギーだったんだ?」
「これが、検査結果が書かれた診断書です。」
「なになに?」

第三百二十四話
「大将アレルギー」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年7月 | トップページ | 2012年9月 »