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2012年8月22日 (水)

「第三百二十三話」

 いつも言っているが、世の中にはそう、とても不愉快な世界が存在する。それは、想像以上に不愉快な世界で、想像以下に不愉快な世界。その不愉快な世界への扉はそう、トイレのドアかもしれないし、エレベーターかもしれないし、ハムスターのゲージかもしれないし、右へ曲がる曲がり角かもしれない。とにかくそう、不愉快な世界への扉へ、ようこそ。

第三百二十三話
「不愉快な世界への扉~episode777~【ビーム】」

 少年は、いつものように目覚めた。そう全くいつものようにだ。ただ、いつもと一つ大きく違うのは、左手の薬指から、ビームが出っぱなしだったって事だ。
「えっ!?」
少年は、驚いた。まあ、実際誰でも体のどこか一部からビームが出たら驚くか。少年は、急いでリビングにいる母親の元へ向かった。
「ママ!」
「どうしたの?階段は静かにって言ってるでしょ?」
「見て!」
「危なっ!?はあ???お前マジか!母親に向かってビームとか何考えてんだ!てか、何でビーム出てんの?」
「分からないよ!起きたら左手の薬指からビームが出てたんだよ!どうしよう?」
「どうしよう?って、別にママの家系もパパの家系もビーム出る家系じゃないから分かる訳ないでしょ!つか、コントロール出来ないのかよ!出っぱなしって、お前この家を破壊する気かよ!」
「僕だって出ないうに出来るならそうしたいよ!でも、どうしていいのか分からないんだよ!」
「それがビーム出っぱなしの奴が言う事かよ!まさか隠れてビームが出るような物、寝る前に食べたんじゃないでしょうね?」
「ビームが出る食べ物って何なんだよぉぉぉ!」
「知るかよ!ただ何と無く言ってみただけよ!正義の味方気取りか!ビームって!いや、家を破壊してんだから世界征服を企む悪の独裁者か!」
「僕はママの息子だよ。正義の味方でも悪の独裁者でもないよ。」
「んな事、知ってらい!博士の知り合いとか居ないのかよ!」
「そんな知り合い居る訳ないじゃん!」
「使えねぇな!」
「お互い様でしょ!」
「お互い様?ママには博士の知り合い居ます!」
「なら、どうにかしてよ!」
「先週死んだわよ!喪服着てる日があったろ!」
「誰が死んだかまでは知らないよ!ならもう、居ないんじゃないか!」
「居ないわよ!居ないけど、居たのよ!居ないのを居ないって言うのと!居たのを居なかった事にされるのとじゃ!全然違うのよ!」
「でも、今居ないならビームどうにも出来ないじゃないか!」
「今居てもビームどうにも出来ないわよ!」
「じゃあ、関係無い博士なんじゃないか!」
「関係無い博士よ!でも博士は博士よ?」
「博士自慢とかどうでもいんだって!」
「向けるな!指!」
「ごめん。」
「ちょっとビームが出るからって偉そうにすんな!」
「してないよ!困ってるんだよ!」
「でも、そのビームをどうにかしないとだわ。だってこのままだと、左手じゃんけん大会で息子が負けちゃうわね。」
「何、その伝統的なヤツ!?」
「ああ、でもビームで相手を倒せば優勝か!」
「喜びの沸点が分かんないし、じゃんけんしなくていいの?だし!違うよそんな事じゃなくて!ビーム出てたら夏休み終わって、学校に行けないよ!」
「何で?行きなさいよ!ちゃんと学校!休むなんて許さないわよ!いい?小学校だからって甘く見ないの!人生は既に小学校から決まってるの!小学校を制する者だけが!いい会社に入れるのよ!」
「何を言ってんの?」
「この国の言語だろうが!!」
「ママ、頼むよ。真面目にお願いしますよ。ビーム出てるんですよ。出っぱなしなんですよ。」
「そうね。例えいい会社に入って、いい女を見付けて、いい結婚するとしても、そんなとこからビーム出っぱなしだったら、指輪交換時に花嫁殺しちゃうわよね。そして、アナタは殺人鬼。アタシは、殺人鬼の母。家族の未来がかかっているんだものね。」
「出っぱなしで結婚まで辿り着けたら、それは奇跡だよ!そんな未来の話なんてしてないでママ!今が肝心なんだって!」
「分かってっよ!ちょっとパニックに陥っただけだろ!ゴチャゴチャうっせぇなぁ!」
「まさかのパニック、自己申告!?」
「切るか!」
「えっ?」
「だから、切るか!」
「はい?ちょっと待ってよ。それをしない前提の、どうにかしなきゃの話じゃなかったの?」
「いや知らんよ!ハサミどこだっけ?」
「知らんよって!しかもハサミって!いやいやいやいや、ちょっと待ってよママ!」
「だってビーム止めれないなら切るしかないっしょ!」
「何その軽いノリ?いやだから待ってよ!ビームの仕組みを考えてよ!薬指から出てるなら切れば止まるよ?でもそうじゃなかったら、切ったとこから出っぱなしだよ?」
「いや、それは切らなきゃ分からない話っしょ?あったハサミ!」
「いやいやいやいや、切るなら切るで病院行くよ!専門的なとこで専門的な人に専門的に切ってもらうってば!」
「1、2、3!で行くわよ?」
「ちょっ!?やめてよママ!放してよ!」
「男の子でしょ!覚悟決めなさいよ!」
「覚悟って、ママ!ちょっと落ち着こうよ!」
「いい?母親が息子の指を切る!こんな不愉快な事ある?こっちは覚悟決めてんだよ!」
「ママ?」
「1!」
「ママ!」
「2!」
「ママァlァァァァァァァァァァァ!!」
「3!」
「うわああああああああああああああ!」
さてと、今回の扉の向こうはどうだったかな?果たして、不愉快な世界への扉を開けたのは、少年だったのか?母親だったのか?そして、少年の左手の薬指から出るビームは、止まったのか?それとも
・・・・・・・・・。まあ、あれだ。そう、それは扉の向こうの話。

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