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2012年10月24日 (水)

「第三百三十二話」

「ねぇ?ジャンケンしようぜ!」
それは、唐突と言う言葉がもっとも当てはまるだろう状況だった。私の腰ぐらいまでしかない身の丈の少女は、散歩中の私の前に立ち塞がると、それが当たり前かの様に、それを要求して来た。
「お嬢ちゃん?私がお嬢ちゃんとジャンケンをする道理が見当たらない。そこをどいてくれるか?」
「嫌だね!」
「どうしてだね?」
「ジャンケンがしたいからに決まってるだろ!」
「ジャンケンをすればいいのか?」
「そう!ジャンケンしようぜ!」
「ジャンケンをするからには、どちらかが勝ち、どちらかが負ける。それとも勝敗に関係無く、お嬢ちゃんはただただジャンケンをしたいだけなのか?ジャンケンをすれば、お嬢ちゃんの欲望は満たされてどいてくれるか?」
「早く!するの?しないの?」
「しなくてもいいのか?しないって選択肢が、よもや存在すのかい?」
「するに決まってんじゃん!目の前のアタシは小さな女の子なんだよ?小さな女の子が言う戯言だよ?おじさんが、アタシの顔面を蹴り飛ばして、地面に倒れたアタシの上を平然と踏みつけながら、一歩一歩、アタシの臓器を破壊しながら立ち去る事だって、ありなんだぜ?ガソリンをアタシにぶっかけて、火だるまにしたっていんだぜ?銃を持ってるなら、解決策は一番早い。」
何を言ってるんだ?少女は、一体何を言ってるんだ?あまりにもだろ。それはあまりにもだろ。まあでもおそらく、あまりにも表現がバイオレンスに偏ってはいるが、ジャンケンをしない選択肢もあると言いたいのだろう。
「なら、お嬢ちゃん?」
「おい!何してんだよ!放せよ!」
「その選択肢が許されるなら、私はこうしようではないか。」
「ふざけんな!おい!何しやがるんだ!」
「こう言う選択肢を私は選ぶ事にした。」
「どこへ連れてくつもりなんだよ!」
「私の家だよ。私の家で、ジャンケンしよう。」
「何でだよ!どこでジャンケンしても一緒だろ!放せよ!」
「いいや、ジャンケンは私の家でやるに限る。」
私は、泣き叫ぶ少女を抱き抱えると、駐車していた車に乗り込み、家に持ち帰った。

第三百三十二話
「誘拐犯」

「何ですか?」
「何ですか?」
「いやですから、これは何ですか?」
「何が?」
「先生、何なんですか?今回のこのお話は?」
「今回も面白いよね!」
「あれでしょうか?何かこんな感じに書いとけば、それとなくシュールな感じを醸し出してるだろ?的な?ですか?ミステリアスで煙に巻くだろ?的な?ですか?」
「何かあれだよね?聞き方がだよね?いや何か文句があるならストレートにぶつけてくれた方がいいよ!」
「それは失礼しました。では、まず設定がよく分からないのですが?なぜ、少女がジャンケンをしたがっているのでしょうか?」
「そこはあれだよ。何と無く世界観だよ。何と無く不思議な感覚を読者に植え付けようと思ったんだよ。いや、てか何でリンゴはリンゴの味がするんでしょうか?的な?事を聞かれてもだよ。この少女は、こう言う少女なんだよ。ジャンケンがしたい少女なんだよ。」
「なるほど。そこに深い理由はないと。ジャンケンは単なる誤魔化しのアイテムなんですね?では、少女がバイオレンスな言葉を発するのも世界観だと。」
「いやちょっと待ってくれよ。世界観を否定されたら何も書けないだろ。」
「わたくしは、別に先生の世界観を否定したりしていませんよ。ただ、何でもかんでも訳の分からない不条理っぽい世界観で片付けられてしまうと困りますよって話ですよ。」
「えっ?ダメ出し?新作を書いたって言うのに、いきなりダメ出し?」
「これをダメ出しと捉えるか、アドバイスと捉えるかは、先生次第ですよ。この作品を世の中に出していいのかチェックするのが、わたくしの役目です。」
「ちょっと待て、この作品が世に出せないって、そう言いたいのか?」
「当たり前です。」
「おい!いいか?確かに僕の作品はあれだよ!雰囲気を醸し出して誤魔化してる作品だよ!メッセージ性なんてこれっぽっちもないよ!だかなぁ?そんな作風だけどなぁ?作品は僕の子供なんだよ!それを頭ごなしに否定されてやってられっかよ!もういい!もう書かない!」
「困りました。」
「なら、この新作を世の中に出してくれよ。」
「勘違いしないで下さい。困りましたと言うのは、先生がわたくしの発言に激怒して新作を書かなくなってしまう事ではありません。」
「はあ?じゃあ、何だって言うんだよ。」
「先生、惚けてもダメですよ。この少女と誘拐犯、わたくしの事ですよね?わたくしと言う人物を2人の登場人物に分けた。違いますか?つまり先生?これはとてもメッセージ性の込められたSOS的な作品ですよね?こんな作品を世に送り出したら、わたくしと先生との関係性が断たれてしまうではないですか。」
「・・・・・・・・・いつになったら僕は帰れるんだ?」
「先生、それは先生次第ですよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

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