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2012年12月19日 (水)

「第三百四十話」

「カシュッ!」
「こうしてリンゴを丸かじりしてると、いつも思うんだ。リンゴを最初に食べた人は、一体どこまで食べたんだろう?と。丸ごと全て食べたんだろうか?それとも一口しか食べなかったんだろうか?或いは皮だけを食べたんだろうか?と。」
「何を言っているんだ?」
「最初と言うのは、難しいと言う事さ。」
「難しい?」
「幾人の人間を経て、リンゴと言う食べ物を食す時は、ここからここまでが美味しく食せる部分だと分かった。そしてまた、幾人の人間を経て、人が美味しいと感じるリンゴが作られた。」
「そうかもしれないな。」
「歴史もリンゴと同じさ。」
「今度は歴史か?」
「歴史と言うもんは、生き残った人間が作る。リンゴと同じで、幾人の人間を経て、ここからここまでが美味しい部分だと分かった。」
「まさか。キミは、リンゴを我々の好みに合わせて品種改良する様に、歴史も品種改良されてるって言うのか?」
「カシュッ!」
「さあ?」
「さあ?それじゃあ言ってる事が支離滅裂だろ。」
「原理はリンゴと同じだが、もたらす影響はリンゴとは違うな。リンゴは品種が複数存在し、人はその中から好みのリンゴを選択すればいい。しかし、歴史は1つしかなく、選択すると言う選択肢が存在しない。」
「まあ、確かにそうかもしれないな。」
「信じたくなければ信じなくてもいいさ。でも、歴史は確実に存在してる。こうであって欲しいと願っても、こうであるのが正しいと思っても、歴史は変わらない。歴史は歴史。新たな発見でもない限り歴史は揺るがない。」
「新たな発見か。」
「しかし、それは誰もが出来る事でもない。そして、それが不味い歴史だとしたら、リンゴのように世の中に出て来る事もない。」
「面白い考えだ。」
「面白い?確かに歴史は、この世で一番面白い書物かもしれない。この世の全ての人が読んでいるんだから、どんな作家もなし得なかった前人未踏の偉業さ。」
「ちょっと待った。キミは、歴史が誰かが書いた空想だとでも言うのか?新たな発見でもない限りと言ったじゃないか。」
「それは、あくまで頭の中での発見って意味さ。歴史の一番の特徴はそこさ。だからこそ、無条件で歴史は現実に起きた出来事だと思い込ませる事が出来る。」
「おいおいおい、それはいくらなんでもキミの想像力が過ぎるだろ。」
「登場人物。この選択がとても重要なのさ。人は皆、リアリスト。現実からかけ離れ過ぎた登場人物は、所詮は偶像。でもそれらは、歴史の抜け道としては格好の道具だったのさ。だから神話や童話は、歴史の保険になり、歴史は歴史の完成度をより増す事が出来た。」
「おい、何を言ってるんだ。なら、革命は起きてないとでも言うのか!」
「革命は起きてない。」
「バカな!数世紀前に革命が起こった証拠や文献だって残ってるんだぞ?それに、今でも続く血族はどう説明する。」
「そこがまた、歴史の凄いところさ。現実とのリンク。これによって、歴史は確実な歴史となった訳さ。貴方は、実際に革命を目にした訳でもなければ、実際に血族のDNAを検査した訳でもない。」
「そりゃあそうだが、それを言うならキミだってそうだろ。」
「カシュッ!」
「ああ、そうさ。」
「だったら、歴史が作られたものだと断言出来ないだろ。」
「例えそれを証明したとこで、誰が信じると思う?きっと誰も信じないさ。いや、信じようとしないだろうな。なぜなら、歴史って言うのは、人が地球でより快適に住みやすくする為、品種改良されて来たものだからさ。それは、安心する為にさ。人は人の歴史が、この地球上に長くあるってだけで、ただそれだけで安眠出来る。」
「バカな事を!安眠する為に歴史を作ったのか!」
「ある日、突然、何の歴史もなしに生まれて来たんじゃあ、人はあまりにも脳が発達し過ぎた。安眠するには、歴史が必要だったのさ。歴史の正体なんてものは、そんなものさ。」
「・・・・・・キミは何者なんだ?」
「俺かい?見ての通り、ただのリンゴ売りさ。」

第三百四十話
「カシュッ!」

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