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2012年12月 5日 (水)

「第三百三十八話」

「本当に何なんだ!」
「貴方には、本当に感謝しているわ。」
「何で私は今!どうして盗んだジープの助手席に見知らぬ女性を乗せて!なぜ異国の大地を動物達と爆走しているんだ!何なんだこの状況は!何に巻き込まれてるんだ私は!」
「こんな事に巻き込んでしまって、本当に申し訳ないと思っているわ。」
「申し訳ないと思っているだって?だったらなぜ!何だかよく分からない!最高技術により作られた最新の戦闘機に私を乗せた!キミが1人で乗れば良かっただろ!そして、このジープにもキミが1人で乗れば良かっただろ!いいか私は!単なるおじさんなんだよ!50代半ばのおじさんなんだよ!」
「・・・・・・・・・本当にごめんなさい。」
「妻も娘も居て!孫だって居るんだぞ!普通の!ごくごく普通の!50代半ばのおじさんなんだよ!銃撃戦とか!滝壺に落ちるとか!燃えさかる建物から脱出だとか!ジープ盗むとか!パラシュートとか!そんな出来事とは無縁の!お菓子を作ってる会社で働く50半ばのおじさんなんだよ!」
「ごめんなさい。でも、貴方が居てくれて本当に助かってるわ。本当に。」
「てるわ?たわ、じゃなくて?てるわ?過去形ではなく、現在進行形って事は!キミは、私をこの先もまだまだこんな事に巻き込むつもりなのか!巻き込み続けるつもりなのか!電車の屋根の上でも!時限爆弾を解除した時も!2メートルぐらいの大男を倒した時も!キミじゃないか!活躍してたのはキミだけじゃないか!私が一体キミの何を助けた?ダムから落ちそうになった私を助けたのもキミ!吊り橋から落ちそうになった私を助けたのもキミ!雪山から落ちそうになった私を助けたのもキミ!私の何が必要だ?いやむしろ私が居た方が!逆に足手まといだろ!」
「そんな事はないわ。」
「はっ!」
「見て!」
「ん?」
「包帯を巻いてくれたわ。」
「私じゃなくても出来るだろ!その怪我だって、あの男が撃った銃弾が私に当たりそうになったのをキミがかばったからだろ!どうにか男から逃げれたあと!私は建物の中で腕から銃弾を取り出す君を見ていただけだ!いいか?だいたい命を狙われて逃走劇を繰り広げたいんなら!何かそう言ったエキスパートをパートナーに選ぶべきだろ!私は医者じゃない!私は科学者じゃない!私は軍人じゃない!私は警察じゃない!私はな!私はな!お菓子を作ってる会社で働く50代半ばのおじさんなんだよ!家から飛び出して来たキミがたまたま前を歩いていた私の腕を掴んで逃走劇に連れ回す様なパートナーじゃないんだよ!私は!!」
「危ない!前っ!象よっ!」
「何っ!?くそっ!」
「ふぅ。」
「危ない!前っ!象よっ!、とか、触っちゃダメ!死ぬわよ!、とか、走ってー!ビルが崩壊するわーっ!、とか、間違った仕掛けを選んだら、私達はマグマに落ちるわ!、とか、こんな言葉を掛けられる人生じゃないんだ私の人生は!部長、新商品の試食をお願いします。とか言葉を掛けられる人生なんだ私の人生は!」
「まあ、ちょっとスリリングではあったわね。」
「ちょっとスリリングだと?それは高速道路を逆走する事がか?飛行機の車輪にしがみついて搭乗する事がか?触れたら切断されるレーザー光線の中を進む事がか?毒を飲んでしまう事がかーっ!私は何千回分の人生のスリリングを味わえばいいんだ!」
「・・・・・・・・・ウソでしょ!?」
「何だ!今度はどうした!まあ、キミのお陰で大抵の事には驚かなくなったがな!」
「見付かったわ!」
「何だと!?またあの男に見付かったのか!」
「ヘリで追い掛けて来るわ!急いで!」
「急いでって言われても!ジープを運転するのも初めてなら!こんな舗装されてない大自然を走るのも初めてなんだよ!」
「ミサイルを撃って来る気だわ!」
「ましてや!ミサイルを掻い潜りながらなんて初めてだからな!そもそもあの男は誰なんだ!何でキミはあの男に追い掛けられてるんだ!」
「夫よ。」
「何?夫だと!?」
「そうよ。」
「こんな執拗に命を狙ってくる夫って・・・・・・一体キミはあの男に何をしたって言うんだ!!」
「それは・・・・・・。」

第三百三十八話
「夫のプリンを食べた」

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