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2013年1月 2日 (水)

「第三百四十二話」

「閉じ込められるとはなぁ。」
「ぶ、部長?」
「これ、外の人間は、ちゃんと私達が閉じ込められてるって気付いてるんだろうなぁ?まあ、電気が点いてるだけましか。」
「ぶ、部長?それ、何かの冗談ですか?」
「冗談?何がだ?いやいや、これで停電だったら最悪だぞ?」
「じゃなくて!」
「ん?」
「何か、逆に朝の出勤時間にこうして二人でエレベーターの中に閉じ込められて良かったですよ。」
「おいおい、私はそんな趣味ないぞ?」
「じゃなくて!その、カツラです。冗談みたいなカツラの事ですよ。」
「はい?」
「一緒に閉じ込められたのが僕で良かったですよ。」
「何を言ってるんだキミは?カツラなんて私は被ってなどいないぞ?」
「被ってないって、いやだって、どっからどう見てもその冗談みたいなヤツ、カツラですよね?」
「冗談みたいって何だ。世の中に冗談みたいなカツラってのがあるのか?」
「部長のそれですよ。」
「人の頭を指差すんじゃないよ!」
「頭じゃなくて、冗談みたいなカツラを指差したんです。」
「あのなぁ?いいか?冗談みたいなカツラじゃなくてだなぁ?私は今日からこうした斬新なヘアースタイルにしただけだよ。」
「部長。」
「何だ。」
「部長は、意味を被り違えてます。」
「履き違えてるだろ?何だ。何を履き違えてると言うんだ?」
「冗談みたいなカツラって意味をです。いいですか?見た目はあくまで普通なんです。部長のその冗談みたいなカツラは。」
「じゃあ、何で冗談みたいなカツラって言うんだよ。ってそもそもカツラではない!」
「僕が言いたいのはです。昨日までツルッパゲの人が堂々と斬新なヘアースタイルとか言って、翌日カツラを被って来ちゃう事の事ですよ。」
「それがあれか?冗談みたいなカツラって言いたいのか?」
「まあ、斬新なヘアースタイルと言ったのは部長ですけど。」
「なるほど。キミの意見も一理あるな。」
「いや、全てでしょ!」
「若いなぁ。若い。非常に若いよ。だから、若さ故にあんな冗談みたいな彼女と付き合ってしまうんだろうな。」
「はい?」
「ほら、この前の休日に、ばったり会ったろ?私の家族とキミとその冗談みたいな彼女とが。」
「ああ、あのレストランで!っていやいやいや、冗談みたいな彼女ってなんですか?」
「だってキミ、あれは冗談なんだろ?」
「冗談って何なんですか?僕は、彼女と真剣にお付き合いしてますよ?結婚を前提に!」
「笑ってもいんだよな?」
「ダメですよ。笑うタイミングなんてどこにもなかったでしょ!ああ、あれですか?僕みたいな若いヤツが結婚を前提に付き合うなんて、冗談だろ?って意味ですか?でも部長?お言葉ですが、僕ももう30過ぎですし、仕事だって期待以上の結果を残してます。結婚したって何の問題もないと思いますが?」
「いやいや、そう言う意味じゃないんだよ。キミが結婚するなら、それは私も大歓迎だよ。」
「ありがとうございます。その時には、部長には是非とも仲人をお願いします。」
「ああ、喜んで引き受けるよ。だが、まだそんな相手がいないじゃないか。」
「いますよ!この前、見たじゃないですか!」
「おい、キミ、マジか?」
「マジですよ。」
「結婚式を笑いの渦に巻き込むつもりか?いやそれ以前に、結婚だけは冗談でするべきではないぞ!」
「誰が冗談で結婚するんですか!えっ?何なんですか?部長は、僕の彼女がブサイクだって言いたいんですか?」
「そんな事は言ってないだろ?冗談みたいな彼女だと言ってるだけだ。」
「同じ事でしょ!」
「いや違う。キミは、人々を笑顔にしたい。笑顔にして人々を幸福にしたい。この国を!いやこの世界全てを笑顔にして平和にしたい!だから、自分を犠牲にして冗談みたいな彼女と付き合っているんだろ?」
「部長?」
「ん?」
「拝むのやめてくれませんか?聖人ですか僕は!誰がそんな慈善事業してるって言うんですか!僕は彼女を心から愛してるんです!」
「・・・・・・・・・ぷっ!」
「今笑いましたよね?」
「笑ってませんよ。」
「ぷっ!って聞こえましたよ?」
「オ、オナラか何かじゃないか?」
「何かって、何で自分のオナラが分からないんですか!いいですか?部長!他人から見たら、もしかしたら冗談みたいな彼女かもしれません!でも僕にはこの地球上で一番大切な人なんです!」
「そうか。それは悪い事を言ってしまったな。本当にすまない。」
「いや、部長。何も泣かないでも!?」
「本当に申し訳ない!」
「だから拝むなっての!てか、その涙も笑いを堪えての涙だろー!だいたいそんな冗談みたいなカツラで仲人されたら、それこそ結婚式がぶち壊しですよ!」
「カツラじゃないと言ってるだろ!」
「昨日までツルッパゲの人が今日フサフサだったらそれはどう考えても辿り着く答えはカツラでしょ!」
「一日でこんなに生えてきたのかもしれないだろ!!」
「んな訳ないでしょ!」
「ある!」
「じゃあ!引っ張らさせて下さいよ!」
「ダメ!」
「やっぱカツラなんじゃないですか!」
「違う!ヘアースタイルが乱れるからだ!」
「カツラ取れちゃうからでしょ!」
「違う!朝起きたら生えてた!」
「だったらだったで、気持ち悪いですよ!」
「でも仕方無い!」
「引っ張らさせて下さいよ!」
「嫌だ!」
「地毛ならいいじゃないですか!」
「キミに引っ張られるのが嫌なんだ!ここに誰かキミ以外の人を連れて来て引っ張らせるならいい!」
「無理でしょ!閉じ込められてるんですから!なら、後で僕以外の人に引っ張らさせますよ!」
「今じゃなきゃ引っ張らせない!」
「子供ですか!」
「ブス!」
「いや、何なんですか急にブスって!てか、ブスって言ってんじゃないですか!」
「言ってない!」
「いやいや、言いましたよ!」
「言ってない!ブス!」
「また言った!」
「言ってない!」
「カツラ!」
「ブス!」
「カツラ!」
「ブス!」
「カ」
「ブス!」
「完全に言いましたよね?」
「知らない!」
「知らないって何なんですか知らないって!カツラ!」
「ブス!」
「ほら!」
「言ってない!」
「カツラ!」
「ブス!」
「ほら!!」
「言ってない!」
「カツラ!」
「化け物!」
「ば、化け物!?」
「言ってない!」

第三百四十二話
「エレベーターの外はパンデミック」

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コメント

PYNさ〜ん♪明けましておめでとうございます(^^)

ことよろです♪

えーと。七、八カ月ほどごぶさたしておりましたf^_^;

久しぶりに笑いました!うん。初笑い!

で、最後にタイトルを拝見してゾッと(~_~;)

えーと。うん。また、お邪魔いたしますo(^▽^)o♪

投稿: MASSIVE | 2013年1月 4日 (金) 19時33分

MASSIVEさ~ん!
あけましておめでとうございます!
今年もよろしくお願いしますm(_ _)m

初笑い&初ゾッ、ありがとうございましたヽ(´▽`)/

マイペースに書いていますんで、また暇潰しにでも立ち寄って下さい!

コメントありがとうございました。

投稿: PYN | 2013年1月 7日 (月) 22時27分

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