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2013年2月

2013年2月 6日 (水)

「第三百四十七話」

「ここは・・・・・・?お店?」
商店街を歩いていた私は、知らず知らずに道に迷ってしまい、迷った道を知らず知らずに歩き、いつの間にか狭い暗闇を壁づたいに進み、行き止まりの壁が引っくり返ると、天井を見上げていた。私は、天井の木目をゆっくりと壁へと目でなぞりながら立ち上がり、和風な商品が並ぶ和風な佇まいの店の真ん中で、出口を探していた。
「バタン!」
すると突然、壁が引っくり返り、和風な店主が現れた。
「いらっしゃいませ。からくり屋へようこそ!」

第三百四十七話
「からくり屋」

「からくり屋?」
「へい!うちの店は、あらゆるからくりをからくり取り扱っています。」
「からくりって、からくりにそんな需要があるんですか?」
「旦那!この世は全てからくり!からくられからくり返すからくり世界!からくってからくってからくりまくる事で我々はからくり生きている!需要が無い訳が無いじゃありませんか!」
「そ、そうですか。」
「あっ!もしかして今の旦那のって!」
「えっ?」
「からくりですか!いやぁ~、こりゃあ~、1本からくられた!」
「からくりなんてしていませんよ?」
「またまたまたまた~、あんまりからくらないで下さいよ!それで?今日はどんなからくりを?」
私は思った。1秒でも早く、この異空間から脱け出さなければ、と。
「実は、私は客ではないんですよ。商店街を歩いていたら、知らず知らずに道に迷ってしまって、知らず知らずにこのお店に辿り着いていてしまったんです。だから、申し訳ないんですが、出口を教えてもらえないでしょうか?」
「なるほど。そう言うからくりでしたか。」
「ええ、そうなんです。」
しかし、考えれば考えるほど、おかしな事だらけだ。普通の道を迷っただけだと言うのに、なぜ私は、気付くと暗くて狭い道を歩いていたんだ?それにどうして、地球の重力に従っていたはずの私が、壁が引っくり返った途端に、店の天井を見上げていたんだ?いや、もしかしたら、こんな事を考える事自体が間違っているのかもしれない。これはこれで、こう言う事なんだと、受け流さなければならない事なのかもしれない。いや、きっとそうだ。
「あのう?それで、出口は?」
「この世はからくりから始まり、からくりに終わる。」
「はい?」
「昔の人は、よくからくり言ったものです。」
「言ってないでしょ、昔の人。」
「つまり旦那がこの店にからくり辿り着いたのも何かのからくり!店をからくり出て行く前に、もしかしたら旦那が好むからくりがあるかもしれません!」
「それはつまり、私に何か買え、と?」
「そんな露骨なからくりはしません。もしも、あっしがからくり紹介するモノを旦那が気に入ったら、その時はからくりお買い上げしてもらえれば、あっしも生活が潤うってからくりです。」
さすがは商売人と言ったところだろうか。だが正直、好奇心はあったが、興味は無かった。しかし、帰れると言う絶対条件が向こう側に存在しているのであれば、話だけなら聞いてみても損は無いだろう。
「分かりました。」
「さすが旦那!話がからくり分かる!因みに出口は、旦那が入って来たところです。」
「なに!?」
それじゃあ、来た道を帰れと言う事か?そうすれば、知らず知らずに私はまた、商店街に辿り着くと言う事か?確かに、一般的な理論ではそうなるが、果たして私は今、その一般的な理論が通用する空間に存在しているのか?
「旦那がもうからくり帰りたいとからくり思った時点で、どうぞご自由にからくり帰ってくれて構いません。そうだなぁ?旦那が好みそうなからくりは・・・・・・・・・えっ?旦那?そんなからくり有りですか!ちょっとからくり待っ」
「バタン!」
「どうなってるんだ?」
店主のその言葉を聞くと同時に私は、まずその真意を確かめてみようと、店主が商品を選びに行ってる間に、店に来た時と同じように床に寝そべった。とてもじゃないが、保障を確保しない限り、この店にいる事は出来ない。間も無くして床は引っくり返り、私は商店街に立っていた。後ろを振り返るとそこには、壁があり、もう1度からくり屋に入ろうとしたが、壁は壁、引っくり返る事は無かった。
「これは一体・・・・・・・・・。」

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2013年2月13日 (水)

「第三百四十八話」

「お父さん!」
娘。
「はい。」
父。
「昨日、人を殺したよね!」
「はい。」
二人家族。
「人を殺したのに!どうしてそんな呑気に朝御飯食べてんの!」
「お前だって、人を殺した私に、こうして呑気に朝御飯作ってくれたじゃないか。」
「お父さん!」
「はい。」
「確かにアタシは、人を殺したお父さんに、こうして朝御飯を作ったよ!でも別に呑気に作った訳じゃないから!」
「ん?」
「何!?」
「今日の大根のお味噌汁美味しい。」
「お父さん!」
「はい。」
「人を殺したのに、アタシが作った大根のお味噌汁を褒めないでよ!」
「人を殺したって、娘が作ってくれた朝御飯の大根のお味噌汁が美味しかったら褒めてもいいだろ?」
「ダメよ!」
「なぜ?」
「何か!」
「何か?」
「何かそれはダメよ!」
「ちょっと、醤油取ってくれるか?」
「醤油?・・・・・・はい。」
「ありがとう。」
「って、お父さん!」
「はい。」
「何で?人を殺したのに、何で悠長に大根おろしに軽く醤油たらして卵焼きを食べようとしてんの!」
「そう言うモノだろ?この大根おろしは?」
「その大根おろし自体は、そう言うモノよ!」
「人を殺したら、大根おろしに軽く醤油を垂らして卵焼きと絡めて食べるんじゃなくて、醤油を直に卵焼きに垂らして食べないとダメなのか?」
「卵焼きの食べ方じゃなくて!卵焼きを食べる事自体の問題よ!」
「この卵焼きも美味しい!」
「だから!人を殺したのに、アタシが作った卵焼きを褒めないでよ!」
「ああ、そう言えば来年高校卒業だろ?どうするんだ?」
「お父さん!」
「はい。」
「人を殺したのに、アタシの進路を気にしないでよ!」
「人を殺したって、娘の将来は気になるモノさ。ちょっと、醤油取ってくれるか?」
「醤油?・・・・・・はい。」
「ありがとう。」
「って、お父さん!人を殺したのに、何で再度大根おろしに軽く醤油を垂らして卵焼きを食べようとしてんのよ!」
「人を殺したら、醤油が足りなくて、再度大根おろしに醤油垂らして卵焼きと絡めて食べるのもダメなのか?」
「違うよ!卵焼きを食べる事自体の問題って言ってるじゃん!と言うか、よく使うならわざわざ返さなくていいから、醤油!」
「面倒臭くても、いちいち元の場所に戻す。でないと次に使う人が困るだろ?そう言う事を日常から習慣付けとかないと、ダメなんだよ。」
「人を殺したのに、何か人として的な事を教えないでよね!」
「やっぱり美味しい!」
「そして人を殺したのに、再度褒めないでよ!」
「美味しいから美味しいと言ったんだ。人を殺した殺してないは関係無い。」
「あるの!関係あるの!てか、むしろそこが重要ポイントですから!ねぇ?」
「はい。」
「トマト、食べないの?」
「食べませんよ。」
「何で、食べないの?」
「私がトマト嫌いなの知ってるだろ?」
「人は殺すのに、トマトは食べないんだ。」
「ちょっと待ちなさい。」
「何?」
「どう言う無茶苦茶な理屈なんだよ。人を殺したからって、なにも嫌いなトマトを食べる道理は無いだろ?」
「いやまず、なによりもその道理ってのから外れてるから!お父さんは」
「おかわり!」
「お、おかわり!?人を殺したのに、大根のお味噌汁をおかわり!?する?普通、人を殺したのに大根のお味噌汁おかわりする?」
「確かに昨日、人を殺した。でも、この大根のお味噌汁が美味しいんだから仕方無いだろ?罪なのは、美味しい大根のお味噌汁の方ですよ。」
「アタシが作った大根のお味噌汁が!何で人を殺した罪の上を行っちゃうのよ!」
「ありがとう。うん。美味しい!」
「美味しいじゃないよ!人を殺したのに!」
「ところで、どうなんだ?」
「どうなんだ?って、何が?」
「ボーイフレンドだよ!」
「ちょ、ちょっと!」
「上手くいってるんですか?」
「何で人を殺したのに、娘の恋愛事情を探ろうとしてくんのよ!」
「キスとかしたのか?」
「人を殺したのに、何て質問ぶつけてんのよ!てかもう、人を殺した殺して無いとか関係無しで、その質問はアウトだから!」
「はっは~ん?」
「な、何よ!」
「しましたね?」
「はあ?」
「その反応は、ボーイフレンドとキスしたんですね?」
「バッカじゃないの!してもしなくても!お父さんに言う訳ないじゃん!」
「まあまあまあまあ、う~ん、青春ですねぇ。」
「殺すよ?」
「おお~、こわいこわい。」
「本当に人を殺した人に言われたくないっての!あのね、お父さ」
「おかわり!」
「だから何で人を殺したのに、大根のお味噌汁をおかわりするのよ!」
「大根のお味噌汁、美味し過ぎるんだよ!」
「人を殺したのに、何度も何度も褒めないでよ!」
「ありがとう。うん。美味し過ぎる!」
「だから誉めるなって!」
「人を殺したって、私は何度も何度も褒めるぞ。あ、そうだ!」
「何?」
「背広のボタンが取れそうなんで、宜しくお願いします。」
「人を殺したのに、背広のボタンの心配なんてしないでよ!」
「人を殺したって、見た目は大事だぞ?自分の父親が、ボタンが取れそうな背広着てたら、お前だって恥ずかしいだろ?」
「何で、昨日人を殺した事が、取れそうなボタン以下なのよ!」
「さあ!」
「何?」
「何って、もう行かないと遅刻しちゃいますから。」
「ちょっと待ってよ!人を殺したのに、まさか仕事に行く気なの!?」
「繁忙期なんだよ。」
「いやむしろ逆に何で繁忙期に人を殺したのよ!」
「そうだ!帰りに、お前が大好きなケーキ屋で大好きなあのケーキ買って帰って来るからな!」
「何で人を殺したのに、普通な感じで今夜も帰って来ちゃうのよ!」
「行ってきます。」
「ちょ、ちょっと!?」
「なあ?」
「何!」
「そんなもんなんだよ。」
「何が!」
「人を殺した翌日ってのはさ。」
「はあ?」
「じゃあ、行ってきます!」
「・・・・・・・・・いや、んな訳ないじゃん!!」

第三百四十八話
「シュールレアリスム・ウェンズデー」

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2013年2月20日 (水)

「第三百四十九話」

「よっしゃ!遊園地、きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「なあ?」
「どれ乗る!どれ乗る!」
「なあ?ってさ。」
「やっぱ遊園地に来たんだからまずは、あそこのベンチに座って一休み?って何でだよっほい!」
「あのさ。一人でノリツッコミして楽しんでるとこ、大変申し訳ないんだけどさ。」
「何だよさっきっから、どした?」
「何で三十代半ばの男二人で遊園地に来ないといけないんだ?」
「遊園地に!三十代半ばの男二人で来てはならないと言う禁止事項はないっ!!」
「いやまあ、そりゃそうなんだけどさ。」
「そんな事を言うけどな。お前だってノリノリで誘いにノってここまで来たんだ。僕らは来たんだ。」
「だってさ、女の子がいると思うだろ普通!」
「それは、お前が勝手に描いた妄想!俺は女の子がいるだなんて、一言も言ってぬわい!」
「ならお前、マジで最初から俺と二人で遊園地に行く為に、こんな開園時間ぴったし着くような、あんな朝早くに待ち合わせしたのかよ!」
「どう考えてもそうだろ!よっしゃ!妙な蟠りも無くなった事ですし!旦那?まずは、何から乗っちゃいやすか?ジェットコースター?メリーゴーランド?コーヒーカップ?それとも?観覧車?」
「なあ?お前、どんなテンションでこの場にいんのさ。・・・・・・違うよな?」
「当たり前だろ!俺はな!女の子が大好きだ!出来れば一生!女の子を触っていたい!」
「いや、分かったよ。」
「すれ違う女の子、すれ違う女の子、俺は頭の中で全員裸にしてる!」
「いやもう、分かったからさ。お前が違うのは、十分に伝わったから、だからそんな事を堂々と大声で言わないでくれ。警備員の人とか来ちゃうからさ。」
「三十代半ばの男二人で喫茶店に行くのはよくて、なぜ遊園地はいけない!三十代半ばの男二人でファミレスに行くのはよくて、なぜ遊園地はいけない!三十代半ばの男二人で映画館に行くのはよくて、なぜ遊園地はいけない!」
「分かったから、ありだよあり!これもまあ、ありだよあり!」
「よし!ジェットコースター乗ろう!」
「分かった。乗ろう。」
三十代半ばの男二人は、ジェットコースター乗り場に行き、そしてジェットコースターに乗った。
「いや~!凄かったな!両目とれるかと思った!」
「よし、じゃあジェットコースターも乗った事だし、そろそろ帰ろうか。」
「待て待てーい!ジェットコースターしか乗ってないし、そろそろ帰ろうかってのは、陽が暮れてから言う言葉だし、え何?嫌なの?三十年以上の付き合いの親友と遊園地、嫌なの?」
「嫌ではないんだけどさ。何て言うか、回りの目が気になるんだよ。」
「お前は器がちっさいなぁ!回りは回り!俺達は俺達だろ!忍法は忍法!」
「忍法関係ある?」
「いいかい?どーせ二度と会う事もない肉の塊だぞ?もしも明日、地球が滅亡するって知ったら、慌てふためくような奴らだぞ?」
「いや、それは誰でもだろ。」
「うんこをケツの穴からするような奴らだぞ?」
「むしろ、そうじゃない的な事を言ってるお前が、こえーよ!」
「外国人に話し掛けられてオロオロする奴らだぞ?」
「お前もさっき駅前で、そうだったじゃんか!」
「いざとなったら、自分の安全だけを考えるような奴らだぞ?」
「お前!さっきジェットコースターの安全バーがグラグラするっつって!席交代させたろ!」
「つまりだ!回りの目なんか気にするな!って事だよ!」
「めちゃくちゃな遠回りでそこに辿り着くんだな。いやまあ、言いたい事は分かるんだけどさ。」
「それにな!遊園地は俺達の原点だろ!」
「その思い出共有してない。」
「よし!じゃあ、次は何乗る!何乗る!メリーゴーランド?コーヒーカップ?それとも?観覧車?」
「観覧車だけは絶対に嫌だ!」
「よし!ジェットコースター乗ろう!」
「また?」
三十代半ばの男二人は、ジェットコースター乗り場に行き、そしてジェットコースターに乗った。
「いや~!凄かったな!両目とれるかと思った!」
「ちょっとさすがに二回連続ジェットコースターは、三十代半ばにはしんどいな。」
「何言ってんだよ!来てまだ、二つしか乗り物を満喫してないんだぞ?」
「まあ、正確には一種類だけどな。ちょっと次は落ち着いた感じのにしない?」
「お化け屋敷とか?」
「嫌だよ!」
「あら?お前、まさかのかさま?」
「回文加減がいい加減過ぎるだろ。」
「で、恐いの?」
「恐い訳じゃないよ。」
「いや、俺には分かる!お前、昔からお化けとか苦手だったもんな!でも大丈夫!お化け屋敷って言っても!本物のお化けが出る訳じゃないから!」
「いや、そんな事は分かってるさ。そうじゃなくて、三十代半ばの男二人でお化け屋敷は、観覧車に乗るぐらい嫌なんだよ。」
「よし!なら、ジェットコースター乗ろう!」
「何で?」
三十代半ばの男二人は、ジェットコースター乗り場に行き、そしてジェットコースターに乗った。
「いや~!凄かったな!両目とれるかと思った!」
「ちょっと、マジで吐いちゃうよ。」
「よし!コーヒーカップ行っとくか?」
「何で、マジで吐いちゃうって言ってる親友をマジで吐かそうとしちゃうんだよ!ちょっと一旦、ベンチに座って一休みしよう。」
「って、何でだよっほい!」
「いや、ボケてないボケてない!冷たいもん飲みながら一休みしよう。」
「お前、遊園地の一休みがどれだけ危険な事なのか分かって言ってんのか?」
「いや、大丈夫だよ。休んだら最後、落ち着いちゃってもう二度と乗り物に乗りたくなくなるって言いたいんだろ?そんな事ないからさ。」
「違う!遊園地のベンチのどれかは、座ると下から杭が出て来る!」
「どんな仕掛けだよ!てか、死ぬだろそれ!」
「だから危険だっつってんの!!」
「お前、俺をベンチに座らせないが為に、幼稚園児ですら思い付かないとんでもない凄い嘘付くんだな。分かったよ。じゃあ、ジェットコースター以外な。」
「よし!だったら、ジェットコースター乗ろう!」
「吐くよ?出ちゃうよ?なあ?なあ?って!」
三十代半ばの男二人は、ジェットコースター乗り場に行き、そしてジェットコースターに乗った。
「いや~!凄かったな!両目とれるかと思った!」
「それ何なの?確かにそう言う宣伝文句のジェットコースターだけどさ。仮にマジでとれそうなら、なぜお前は何度も何度もジェットコースターに乗る!」
「この幸せな気分のまま、よし!ジェットコースター乗ろう!」
「もうとれちゃえよ!」
三十代半ばの男二人は、ジェットコースター乗り場に行き、そしてジェットコースターに乗った。
「いや~!凄かったな!両目とれた!」

第三百四十九話
「とれちゃった!?」

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2013年2月27日 (水)

「第三百五十話」

「何の真似だね!副操縦士!これは一体どう言う事なんだ!」
「・・・・・・・・・機長。」
「早まるな!今ならまだ、この事は私の心の中だけにとどめておく!銃をしまうのだ!」
「申し訳ありません機長。その頼みは、聞く事は出来ません。」
「・・・・・・何が目的だ!ハイジャックか!テロか!」
「違う。」
「違う?」
「違う!目的は機長!貴方だ!」
「わ、私だと!?」
「そうです。」
「私を殺すと言うのか?」
「まあ、簡単に言うならそんなとこです。」
「だったら、何も飛行機を操縦している時でなくても良いではないか!乗客や他の乗員には関係の無い事ではないか!要求はなんだ!金か?」
「金?金なんかじゃありませんよ。金なんて、いりませんよ。」
「なら、何だ!」
「何か、面白い事をやってみせて下さい。」
「何だと!?」
「俺が心の底から笑ったら、命は救われます。タイムリミットは、目的地の滑走路が目視出来るまでです。仮にそれまでに俺を笑わす事が出来なかったら、当機は墜落、乗員乗客全員死亡です。もちろん、この要求を拒否や放棄した時点で、俺は貴方を撃ち殺します。」
「何をバカな事を言っているのだ、副操縦士!そんなふざけた要求を受け入れられる訳がないだろう!そもそも面白い事をしてくれなんて急に言われても、そんな難しい事を、ましてや銃を向けられながら、飛行機を運転して出来る訳がない!」
「機長?」
「何だ!」
「今時、寄り目で笑うとでも?」
「笑わないのか?」
「笑わないでしょ。」
「いやしかし、寄り目だぞ?」
「寄り目ですよ?」
「ちょっと待ってよ、副操縦士!寄り目って言ってもただの寄り目じゃないんだぞ?何かこう、真面目な事を語りつつの寄り目だぞ?」
「踏まえてですよ。それを分かった上で言ってます。」
「あれか!副操縦士の方を振り向き様に既に寄り目だったのが悪かったのか!話ながら徐々に徐々に寄り目にしていけば良かったのか!」
「そう言う問題じゃなくて、やめません?そのもう寄り目についての説明。笑いを説明されればされる程に笑えなくなっちゃいますから。んでもう寄り目しなくていいですから。」
「じゃあ何だ!モノマネとかか!」
「俺を心の底から笑わせられるなら、何でもいいですよ。」
「どう?」
「いやどうって、また寄り目してるだけじゃないですか!」
「違うよ。さっき寄り目してた時の私のモノマネだよ。」
「自分で自分のモノマネしちゃうとか、何なんですか!自分で自分のモノマネしてたら、それは自分でしょ!モノマネの境界線が分からないでしょ!だいたい笑わなかった寄り目をチョイスしたとこで、笑わないでしょ!」
「寄り目がダメとなると、参ったなぁ。」
「いや機長!面白い事をしてくれで、寄り目しか武器が無いんですか?」
「まあ、後は・・・・・・ここに新聞があればなぁ。」
「新聞があったらどうだって言うんですか。」
「新聞を両手で開いて読みながら、その向こうにいる娘さんを下さいと頭を下げる青年に、娘はやらん!と言いつつ、そんなやり取りがあり、最終的には、娘を頼むと言う父親が、新聞を置いた時、寄り目!」
「寄り目ーっ!ほらまた寄り目!いいですか機長!寄り目で俺は笑いません!それはもう絶対にです!だから他の方法を考えて下さい!」
「なら、新聞を置いた時、普通の目!」
「いや、それはもう普通に娘さんを下さい、でしょ!」
「新聞を置いた時、爆破した時みたいになってる!」
「いやまあ、何で1人だけ?って思いますよ。何があったの?とか思いますよ。ちょっと面白いですよ。」
「ほら!」
「ほら、じゃなくて!それを実際に今、ここでやってくれるなら笑ったかもしれませんよ!けど想像だけでは無理です!」
「じゃあ、分かった!右手を左手だと思い込んでる男、やります!」
「はい?」
「なあ?副操縦士?」
「何ですか?」
「人間は、右足があり右目があり右耳があり右肩があり右腕があると言うのに、右手が無いんだ?いっつも左手だ。何をするにも左手だ。右利きなのにだぞ!右利きなのに全てが左手だ!左手でフォークを握り、左手でナイフを握り、左手でステーキを切り、左手でステーキを食べる!左手と左手でハンドルを握り車を運転する!どうして私には右手が無いんだ!!」
「・・・・・・いやシュールと言うか、恐いですよ!何なんですかそのシチュエーション!とてもじゃないけど笑えないですよ!」
「急に鼻の存在に気付く人、はどう?」
「いやちょっと、そのシリーズで心の底から笑う自信が無いです。」
「えっ!?何これ!!」
「やらなくていいですよ。」
「あれ?こんなの昨日、ついてたかなぁ?剃り残し?」
「ヒゲじゃないんですから、ちょっと機長?」
「はっ!病気?まさか、私は病気なのか!?」
「笑いませんよ?」
「鼻病!」
「鼻って言っちゃってるし!」
「鼻って言っちゃった!」
「鼻って言っちゃったじゃないでしょ!こんなんだと、全員死亡は確実ですよ?」
「急に額が割れて血でも出てくればなぁ?」
「いや、それ見て心の底から笑ってたら、俺どーかしてるでしょ!」
「脱出ボタン押してさ。上に飛び出ないで、下に飛び出たら面白くない?」
「いやまあ、面白いですけど、だからそれって想像の話じゃないですか!」
「脱出ボタン押したらさ。ただ単に指が赤くなっただけとか。」
「いたずらされてるだけじゃないですか!」
「脱出ボタン押したらさ。乗員乗客全員がオナラ出ちゃうとか!」
「だったら面白いですよ。って脱出ボタン何なんですか!脱出ボタンネタもういいですよ!」
「脱出ボタン押したらさ。乗員乗客全員が寄り目んなっちゃう!」
「脱出ボタンも寄り目も、もういいんですよ!!真面目に面白い事をして下さい!全員の命がかかってるんですよ!」
「そんな事を言われてもだろ!だったら、今すぐにでもこんな事をやめたらいいだろ!」
「やめられないんですよ!」
「何でだ!さじ加減だろ!」
「これを見て下さい!」
「な、何だその胸についてる複雑な装置は!」
「時限爆弾です。」
「じ、時限爆弾だと!?ならやっぱり副操縦士!貴様!」
「違う!俺はテロリストでも愉快犯でもない!朝、起きたらこうだったんです。」
「何だと!?」
「これは、ゲームなんです。」
「ゲーム!?」
「解除するには、機長が心の底から俺を笑わせる事なんです!」
「犯人は誰なんだ!」
「分かりません!今は犯人が誰だとか目的は何なのかを詮索してる時間は無いんですよ!早く面白い事を!機長!」
「・・・・・・・・・分かった。」
「ってこのタイミングでまた寄り目ーっ!!」

第三百五十話
「C☆C1104型機」

「空路から外れ、消息が不明になっていたC☆C1104型機が、先ほど無事に目的地の空港に到着した模様です。こちらは詳しい情報が入り次第、現地から中継を繋ぎます。続いてものニュースは最近街で話題になっ・・・・・・・・・」

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