« 「第三百四十七話」 | トップページ | 「第三百四十九話」 »

2013年2月13日 (水)

「第三百四十八話」

「お父さん!」
娘。
「はい。」
父。
「昨日、人を殺したよね!」
「はい。」
二人家族。
「人を殺したのに!どうしてそんな呑気に朝御飯食べてんの!」
「お前だって、人を殺した私に、こうして呑気に朝御飯作ってくれたじゃないか。」
「お父さん!」
「はい。」
「確かにアタシは、人を殺したお父さんに、こうして朝御飯を作ったよ!でも別に呑気に作った訳じゃないから!」
「ん?」
「何!?」
「今日の大根のお味噌汁美味しい。」
「お父さん!」
「はい。」
「人を殺したのに、アタシが作った大根のお味噌汁を褒めないでよ!」
「人を殺したって、娘が作ってくれた朝御飯の大根のお味噌汁が美味しかったら褒めてもいいだろ?」
「ダメよ!」
「なぜ?」
「何か!」
「何か?」
「何かそれはダメよ!」
「ちょっと、醤油取ってくれるか?」
「醤油?・・・・・・はい。」
「ありがとう。」
「って、お父さん!」
「はい。」
「何で?人を殺したのに、何で悠長に大根おろしに軽く醤油たらして卵焼きを食べようとしてんの!」
「そう言うモノだろ?この大根おろしは?」
「その大根おろし自体は、そう言うモノよ!」
「人を殺したら、大根おろしに軽く醤油を垂らして卵焼きと絡めて食べるんじゃなくて、醤油を直に卵焼きに垂らして食べないとダメなのか?」
「卵焼きの食べ方じゃなくて!卵焼きを食べる事自体の問題よ!」
「この卵焼きも美味しい!」
「だから!人を殺したのに、アタシが作った卵焼きを褒めないでよ!」
「ああ、そう言えば来年高校卒業だろ?どうするんだ?」
「お父さん!」
「はい。」
「人を殺したのに、アタシの進路を気にしないでよ!」
「人を殺したって、娘の将来は気になるモノさ。ちょっと、醤油取ってくれるか?」
「醤油?・・・・・・はい。」
「ありがとう。」
「って、お父さん!人を殺したのに、何で再度大根おろしに軽く醤油を垂らして卵焼きを食べようとしてんのよ!」
「人を殺したら、醤油が足りなくて、再度大根おろしに醤油垂らして卵焼きと絡めて食べるのもダメなのか?」
「違うよ!卵焼きを食べる事自体の問題って言ってるじゃん!と言うか、よく使うならわざわざ返さなくていいから、醤油!」
「面倒臭くても、いちいち元の場所に戻す。でないと次に使う人が困るだろ?そう言う事を日常から習慣付けとかないと、ダメなんだよ。」
「人を殺したのに、何か人として的な事を教えないでよね!」
「やっぱり美味しい!」
「そして人を殺したのに、再度褒めないでよ!」
「美味しいから美味しいと言ったんだ。人を殺した殺してないは関係無い。」
「あるの!関係あるの!てか、むしろそこが重要ポイントですから!ねぇ?」
「はい。」
「トマト、食べないの?」
「食べませんよ。」
「何で、食べないの?」
「私がトマト嫌いなの知ってるだろ?」
「人は殺すのに、トマトは食べないんだ。」
「ちょっと待ちなさい。」
「何?」
「どう言う無茶苦茶な理屈なんだよ。人を殺したからって、なにも嫌いなトマトを食べる道理は無いだろ?」
「いやまず、なによりもその道理ってのから外れてるから!お父さんは」
「おかわり!」
「お、おかわり!?人を殺したのに、大根のお味噌汁をおかわり!?する?普通、人を殺したのに大根のお味噌汁おかわりする?」
「確かに昨日、人を殺した。でも、この大根のお味噌汁が美味しいんだから仕方無いだろ?罪なのは、美味しい大根のお味噌汁の方ですよ。」
「アタシが作った大根のお味噌汁が!何で人を殺した罪の上を行っちゃうのよ!」
「ありがとう。うん。美味しい!」
「美味しいじゃないよ!人を殺したのに!」
「ところで、どうなんだ?」
「どうなんだ?って、何が?」
「ボーイフレンドだよ!」
「ちょ、ちょっと!」
「上手くいってるんですか?」
「何で人を殺したのに、娘の恋愛事情を探ろうとしてくんのよ!」
「キスとかしたのか?」
「人を殺したのに、何て質問ぶつけてんのよ!てかもう、人を殺した殺して無いとか関係無しで、その質問はアウトだから!」
「はっは~ん?」
「な、何よ!」
「しましたね?」
「はあ?」
「その反応は、ボーイフレンドとキスしたんですね?」
「バッカじゃないの!してもしなくても!お父さんに言う訳ないじゃん!」
「まあまあまあまあ、う~ん、青春ですねぇ。」
「殺すよ?」
「おお~、こわいこわい。」
「本当に人を殺した人に言われたくないっての!あのね、お父さ」
「おかわり!」
「だから何で人を殺したのに、大根のお味噌汁をおかわりするのよ!」
「大根のお味噌汁、美味し過ぎるんだよ!」
「人を殺したのに、何度も何度も褒めないでよ!」
「ありがとう。うん。美味し過ぎる!」
「だから誉めるなって!」
「人を殺したって、私は何度も何度も褒めるぞ。あ、そうだ!」
「何?」
「背広のボタンが取れそうなんで、宜しくお願いします。」
「人を殺したのに、背広のボタンの心配なんてしないでよ!」
「人を殺したって、見た目は大事だぞ?自分の父親が、ボタンが取れそうな背広着てたら、お前だって恥ずかしいだろ?」
「何で、昨日人を殺した事が、取れそうなボタン以下なのよ!」
「さあ!」
「何?」
「何って、もう行かないと遅刻しちゃいますから。」
「ちょっと待ってよ!人を殺したのに、まさか仕事に行く気なの!?」
「繁忙期なんだよ。」
「いやむしろ逆に何で繁忙期に人を殺したのよ!」
「そうだ!帰りに、お前が大好きなケーキ屋で大好きなあのケーキ買って帰って来るからな!」
「何で人を殺したのに、普通な感じで今夜も帰って来ちゃうのよ!」
「行ってきます。」
「ちょ、ちょっと!?」
「なあ?」
「何!」
「そんなもんなんだよ。」
「何が!」
「人を殺した翌日ってのはさ。」
「はあ?」
「じゃあ、行ってきます!」
「・・・・・・・・・いや、んな訳ないじゃん!!」

第三百四十八話
「シュールレアリスム・ウェンズデー」

|

« 「第三百四十七話」 | トップページ | 「第三百四十九話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/49384956

この記事へのトラックバック一覧です: 「第三百四十八話」:

« 「第三百四十七話」 | トップページ | 「第三百四十九話」 »