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2013年4月17日 (水)

「第三百五十七話」

「あれ?こんなとこに、こんなのあったんだ。」
アタシが気付かなかっただけで、それは昔からここにあったのか?それとも最近になってここに出来たそれを今、アタシが運命的に気付いたのか?どちらにせよそれは、いつも通る商店街のメガネだらけのメガネ屋さんの2階にあった。

第三百五十七話
「痴漢撃退護身術教室」

メガネだらけのメガネ屋さんの横にある階段を上って教室の扉を開けるとそこには、いかにも達人な老人が、いかにも達人な姿で、いかにも達人に座ってた。
「あのう?表にある看板を見て来たんですけど?」
「教室破りか!」
「えっ?違います違います!痴漢を撃退する護身術を教えて欲しいんです!」
そう、アタシは痴漢に恐怖してた。別に過去に痴漢に遭遇した訳じゃないけど、仕事帰りに商店街へと抜ける公園をいつも通る度に、その恐怖に怯えてた。何もないかもしれないし、護身術を学んだとこで、実際に痴漢と遭遇したらパニックで意味が無いかもしれない。でも人って、心の安心感が必要じゃない?その安心感とゆとりで人って、生きてるもんじゃない?だからアタシは、この教室の扉を開けたの。そう、これは未来の自分の為よ。
「なんじゃ。それならそうとお嬢ちゃん、早く言ってくれたら良かったものを、危うく殺しかけたぞ?」
「殺されるとこだったんですか!?アタシ!?」
「カカカカカッ!冗談じゃよ!冗談!よろしくな。」
「は、はい。」
何だか達人な老人が言うと、その冗談が冗談に聞こえない。そんな冗談が冗談に聞こえない的な事を言うと、達人な老人は達人な立ち上がりを見せ、アタシの前まで達人な歩き方で歩いて来ると、笑顔で右手を差し出した。もちろん、アタシも笑顔で右手を差し出した。
「よろしくお願」
「隙あり!」
「えっ!?」
気付くとアタシは、天井を見上げてた。と同時に全身を畳に打ち付けられた痛みが走った。
「カカカカカッ!冗談じゃよ!お嬢ちゃん、冗談じゃ!」
達人な老人がアタシの腕を掴んで回転させた右手を元の位置に戻すと、アタシも元の位置に戻った。アタシは、達人な老人のその右手を振り払った。
「冗談でマジでやらないでしょ!だいたい隙ありって!そりゃあ!あるでしょ!隙ありまくりだっつぅの!」
「まあまあ、そう怒らんでくれ。じゃがどうじゃ?これでワシが本物だって証明が出来たじゃろ?言葉で言うより体で知った方が早い。」
達人な老人の言う事は、一理あった。確かにアタシは一気に信じた。でもアタシは
「別に疑ってなんかいませんし!」
「で?痴漢撃退護身術を習いたいと?」
「マイペース!?」
達人はマイペースだって聞いた事があるけど、ここまでマイペースだとは思ってもみなかった。
「ん?」
「は、はい。そうです。痴漢撃退護身術を習いたいんです。」
「うむ。ではまず、お嬢ちゃんに簡単な質問をするぞ?」
「質問?」
「護身術に関わる重要な質問じゃ。いいか?」
「は、はい。」
「お嬢ちゃんは、指からビームが出せるか?」
「はい?」
「じゃから、お嬢ちゃんは、指からビームを出せるか?」
「ビーム?ビームってあのビームですか?」
「そうに決まっとるじゃろ?ビームと言ったらそれしかないじゃろ。」
「いや、ビームなんか出る訳ないじゃないですか!だいたい、ビームが出たら痴漢撃退護身術教室の扉なんか開けないっしょ!」
「口から炎を出したりは、どうじゃ?」
「アタシの事が、怪獣に見えてるんですか?」
「大事な質問なんじゃ。口から炎を出したりは、出来るのか?」
「どこがどう?大事な質問なんですか?出る訳ないでしょ!」
「体のどこかからミサイルが発射されられたりすのか?」
「サイボーグじゃないんだから!出る訳ないでしょ!いやだから!そんなんだったら、ここに来ませんって!」
「ビームも出ない。炎も出ない。ましてやミサイルも発射されない。」
「そうですよ!」
「帰ってくれ!」
「何で!?」
「そんなヤツに痴漢撃退護身術を教えられん!」
「どんなヤツ対象に教室やってんの?まずそいつらは絶対にここへ来ないよ?だって来る必要性がないからね!」
「カカカカカッ!冗談じゃよ!お嬢ちゃん、冗談じゃと言っとるだろ?」
「言ってませんよ?」
「いいか?夜、公園をお嬢ちゃんは、歩いとる。」
「何?何か急に始まった感じ?」
「すると後ろから痴漢が、お嬢ちゃんを痴漢しようと近付いて来る。まずはその撃退護身術を教える!」
「お願いします。」
「いいか?後ろから痴漢をしようと近付いて来る痴漢に対しての護身術は、実に簡単じゃ。」
「初心者のアタシでもですか?」
「経験未経験老若男女問わん!」
「どうすればいいんですか?」
「落とし穴じゃ!」
「落とし穴!?それは一体どんな技なんですか?」
「落とし穴は落とし穴じゃ!」
「えっ?」
「いいか?お嬢ちゃんが歩く度に、落とし穴を掘るんじゃ!するとどうだ?後ろから痴漢をしようと近付いて来る痴漢は、穴に落ちる!じゃが、前から痴漢しようと近付いて来る痴漢の護身術としてやっちゃダメじゃぞ!なぜならそれは!お嬢ちゃんが落とし穴に落っこちてしまうからじゃ!」
ドヤ顔!?何でドヤ顔?どのタイミングでそれが出来る要素があったの?
「公園から出た時にはもう朝だよ!」
「そうじゃ。朝になっとるじゃろう。じゃがどうじゃ?人がたくさんいる朝の公園で後ろから痴漢をしようと近付いて来る痴漢は、おらん!」
ドヤ顔!?しかもさっきのドヤ顔よりも濃いドヤ顔!?何でこんな顔が出来るの?これも護身術?
「夜な夜な落とし穴掘ってるアタシの方が捕まっちゃうっつぅの!」
「痴漢は撃退したぞ?」
「痴漢を撃退したからってアタシが留置場じゃ意味無いでしょ!」
「次に夜の公園で前から痴漢しようと近付いて来る痴漢の撃退護身術!」
「次って!その前が片付いてないのに次って!」
「前から痴漢しようと近付いて来る痴漢は、後ろから痴漢をしようと近付いて来る痴漢とは比べモノならない程に厄介じゃ。なぜなら、痴漢しよう!と言う意気込みからして違うからな。相手は最初からMAXの痴漢パワーで来る!」
「痴漢にMAXもパワーも無いでしょ!」
「ここで本来なら、ビームや炎やミサイルが役に立つんじゃが?」
「いや、それもう殺人になるから!撃退じゃないから!」
「んまあ、前から痴漢しようと近付いて来る痴漢には、スタンガンじゃな!」
「はい?」
「知らんか?電流が流れるあれじゃ!」
「いや知ってますよ。」
「それか催涙スプレー!」
「えっ?」
「知らんか?プシューってするあれじゃ!」
「いや知ってますよ。」
「それか予めコートの中に忍ばせといたダイナマイトを見せてやれ!」
「はあ?」
「知らんか?ダイナマイトってのはな?」
「ダイナマイトの説明いいから!」
「それかスコップ!」
「それは落とし穴前提の武器だ!って、何で武器ばっか?護身術なんだから前から来る痴漢になら、さっきの教えればいいじゃん!隙ありってアタシにやったあれ教えればいいじゃんか!」
「隙あり!」
「痛いっ!って何でやった!何で今それを実践する必要性がある!」
「ほれ!」
「いや戻し方っ!」
「次は上から痴漢しようと近付いて来る痴漢の撃退護身術!」
「上って何だ!上って!」
「上から飛び掛かって来たらその右手を掴んで、こう!」
「どう!?」
「こう!」
「この隙ありのやり方を知らないのにどうやんの!って、何でアタシがいちいちやられなきゃならないの!」
「次は八方を痴漢しようと近付いて来る痴漢達の撃退護身術!」
「どんな状況よ!」
「こう!!」
「出来るかーーーーーーーーーーーっ!!」
畳を踏み込んだ達人な老人の衝撃波で吹っ飛ばされながらアタシは、叫んだ。

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