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2013年6月 5日 (水)

「第三百六十四話」

「定規、貸してくんない?」

「何で?」

「何でって、線が引きたいからだよ。」

「別に定規使わなくても線は、引けるだろ?」

「確かに定規無くても線は引けるけど、定規使って真っ直ぐな線を引きたいんだよ。」

「なるほどね。」

「だから、定規貸してくんない?」

「断る!」

「はあ?何で?」

「何で?」

「定規ぐらい貸してくれたっていいじゃんか。」

「定規ぐらい?俺はね。そのお前の定規ぐらいって価値観が気に食わないんだよ。お前には、この定規が定規ぐらいの価値かもしれないけど、俺にとったら物凄く大切な定規かもしれないんだぞ?死んだら一緒に埋めてくれ的な定規かもしれないんだぞ?」

「違うだろ?」

「もちろん!」

「なら、貸してくれよ。」

「だから、そうじゃないけど、その定規ぐらいって価値観が気に食わないって言ってんだろ。お前、地球貸してくれよって、地球ぐらいって価値観で言うか?言わないだろ?そう言う事だよ。」

「どう言う事だよ!どんな価値観で俺は、誰に地球貸してくれって言うんだよ!死ぬまで口にしないであろう文章だよ!」

「例えばの話だよ。」

「到底、例え話になってないから、それ。俺の言い方が悪かったんなら謝る。ごめん。お願いだから、定規を貸して下さい。」

「断る!」

「頑固マンか!何で貸してくれないんだよ。一本真っ直ぐな線を引いたらすぐ返すよ。」

「そう言う問題じゃない。」

「何がだよ。どう言う問題なんだよ。」

「俺は、頑固マンじゃない!」

「どこを問題にしてんだよ!」

「俺は、さすらいの海賊だ!」

「お前、頭大丈夫か?それが事実なら何で陸にいんだよ!」

「さすらってんだ。」

「定規貸してくれよ。」

「断るっつってんだろ。定規が無くても定規の代わりになるモノを使って真っ直ぐな線を引いたらいいだろ?」

「持ってないんだよ。そんな事は、お前に定規を貸してくれって言う前に調査済みだよ。」

「腕は?」

「腕?」

「こうやって、腕を定規代わりにして使って引けばいいだろ。」

「真っ直ぐな線を引きたいんだ!俺は!」

「引けるだろ。」

「引けないだろ!太さが均一じゃないんだから斜めになるだろ!」

「そこは、お前の想像力次第だよ。」

「想像力で真っ直ぐな線を引ける能力があるなら、腕なんか使ってないし、最初からお前に定規を借りようとしてないだろ!」

「少しぐらい曲がった線の方が、逆に真っ直ぐな線である。」

「急に何だよ。」

「昔の偉い学者先生が、そう言ったかもしれないだろ?」

「言ったとしたらバカだろ、その偉い学者先生!曲がってんだよ!その偉い学者先生の首が!」

「真っ直ぐな骨とか取り出して使えよ。」

「どんな発想だよ!急に横で俺が骨を取り出してたらビックリだろ!」

「ああ、きっと定規が無くて真っ直ぐな線を引きたくて骨を取り出してんだろうなぁ?と思う。何だ、言ってくれたら定規ぐらい貸したのになぁ?とは思わない。」

「思わないし思え!思わないし思え!」

「なあ?」

「何だよ!」

「壁を壊せば或いは、その壊した壁の破片の中に真っ直ぐな破片があって、それを定規代わりに真っ直ぐな線が引けるんじゃないか?」

「意味が分からない。何で俺は横に定規を持ってるヤツが居んのに、わざわざ壁を壊して破片から真っ直ぐなモノを探し出し、真っ直ぐな線を引かなきゃならないんだよ!」

「それはその横に居るヤツが定規を貸してくれないからだろ。」

「貸してくれよ!」

「それは無理!」

「無理って何だよ!無理って!」

「願掛けしてんだ。この定規。だから誰かに使わせる訳にはいかないんだ。」

「願掛け?」

「お前が定規を使って真っ直ぐな線を引けますようにってな。」

「ついさっきだろ!それついさっき掛けただろ!てか、その願い叶うから!俺に今すぐその定規を貸してくれたら叶うから!」

「それは無理だ。願掛け中は誰にも貸せない。だけど、願いが叶ったら貸してやるよ。」

「願いが叶った時点で!定規は必要無くなるんだよ!」

「何で?急に手の届かない背中の箇所が痒くなるかもしれないだろ?」

「それこそわざわざお前の定規を借りる必要無いだろ!」

「真っ直ぐな線を引かない人生ってのもいいもんだぜ?」

「そう思うなら定規くれよ!」

「泥棒!」

「何でだよ!正論を言っただけで取ってないだろ!」

「正論言うヤツは泥棒の始まり!」

「何があった幼少時代!」

「遠足とか、ピクニックとか、ハイキングとか。」

「大きなカテゴリーだと一緒!って、こんな話はどうだっていいんだよ!定規貸してくれよ!」

「断る!」

「何でだよ!お前マジで俺が借りた定規を盗むと思ってんじゃないだろうな?」

「違うよ!俺は、お前が貸した定規を食うんじゃないかと思ってるんだ!」

「俺は、定規食いか!」

「出たな!定規食い!」

「定規食いじゃないから!だいたい定規食いに定規武器に挑むっておかしいだろ?って定規食いって、何!頼むから定規貸してくれよ!」

「何を言ってんだよ。もう貸したじゃないか。」

「お前こそ何を言ってんだよ。借りてないよ。」

「5年前に俺は、ちゃんと定規を貸した。明日が丁度その定規記念日だ!乾杯!」

「定規で乾杯って、俺持ってないし、記念日明日だし。」

「定規記念日イブ!」

「何でもかんでもイブを作んな!てか、何で定規を貸した日なんか覚えてんだよ!いや別に覚えててもいいけど、今借りたいんだよ!5年前の明日みたいにさ!」

「断る!」

「何なんだよ!お前は!貸してくれよ!」

「断る!」

「貸して下さい!」

「断る!」

「ああああああああああああああ!!」

第三百六十四話
「なら線を引いてもらうと言う発想に辿り着くまで」

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