« 「第三百六十四話」 | トップページ | 「第三百六十六話」 »

2013年6月12日 (水)

「第三百六十五話」

「女は道端で泣き、月は夜空で悲しく笑う。」

「え?そ、それ、アタシの事ですか?」

「大切な人の言葉。発するその90%を疑い、残りの9%を信じようとせず、余りの1%は下らないと嘲笑いながら全力で真実だと疑わない。」

「あのう?アタシに話し掛けてるんですよね?」

「やる気があるのか、やる気がないのか、それは他人が判断してはならない。なぜなら、やる気とは己でしか測定出来ず、外見に騙されて誰かが決め付けるモノではない。やる気なくやる気ある人間のジャッジをならば、他人は果たして見極められるだろうか?経験を積み重ねても人は、人のやる気を判断出来るモノではない。或いは、やる気とは、客観的なモノであり、主観的には存在しないモノなのかもしれない。だとしたら、やる気を出させると言う自己満足に近いその行為自体、殺人行為に等しい。」

「さっきから、何を言ってるんですか?哲学とかですか?」

「月は夜空で悲しく笑い、星は夜空で淋しく笑い、女は道端で泣く。」

「やっぱりその、道端で泣く女って言うのは、アタシですよね?えっとあのう?これは一体どう言う状況なんでしょうか?」

「愛や勇気が例えば目に見えたとしよう。」

「は、はあ。」

「愛や勇気が例えば目に見えたとして、何も変わらない。きっと何かが変わると思い、そんなあやふやな希望を抱き時に人はそんな事を口にするが、何も変わらない。無理矢理にでも何かが変わったとするならそれはきっと、愛や勇気が目に見えるようになったと言う事だ。愛や勇気が目に見えるようになっただけでは、人は変われない。人格を追加したり削除は出来ても変わる事は出来ない。それは人が生きるか死ぬかの二択上に存在するからだ。」

「・・・・・・・・・実は、さっき別れてきたんです。こんな事、訳分からない状況で、訳分からない人に言う事じゃないんですけど、アタシさっき、3年付き合ってた彼と別れたんです。」

「奇跡とは、果たして善なのだろうか?」

「捨ててやったんです。浮気が原因です。他に女がいたんです。だから、アタシから捨ててやったんです。あんな男・・・・・・・・・。」

「パーセンテージ的に低い確率で起こる予測不能の事故や災害、それらも或いは、奇跡と呼べるのではないだろうか?」

「分かってたんです。他に女がいるって、薄々は気付いていたんです。でも心の片隅では、この人は、最終的にアタシのところに帰ってくる。そんな妙な自信があったんです。」

「善の奇跡と悪の奇跡。誰かにしてみればそれは善の奇跡であり、誰かにしてみればそれは悪の奇跡である。奇跡とは実に正義のようなモノだ。誰かにしてみればそれは歓喜であり、誰かにしてみればそれは絶望である。」

「でも、結婚する。って言われちゃいました。その浮気相手の女と結婚するって言われちゃったんです。その時、全て分かったんです。浮気相手はアタシで、捨てられたのはアタシなんだって・・・・・・バカですよね、アタシ。最後の最後まで、気付かないなんて、捨てられちゃったのは、アタシの方なんです。捨てられちゃったんです、アタシ。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・なんか言って下さいよ。」

「・・・・・・・・・。」

「さっきみたいに訳分からない事、なんか言って下さいよ。急に・・・・・・急に黙らないで下さいよ。」

「・・・・・・・・・。」

「なんか言って下さい。でないとアタシ・・・アタシ・・・・・・・・・。」

「明日。」

「・・・・・・明日?」

「明日の朝を迎える選択肢が存在するならば、明日の朝を迎えてみるのもまた、いいものだ。」

「・・・・・・・・・。」

「しかしそれは、あくまでも選択肢の一つ。明日の朝を迎える前に、今日の夜の間に闇の中へ溶け込み、闇の中へ沈み込み、忘却の果てへ旅立つのも自由。」

「・・・・・・・・・。」

「闇は不運を排除し、闇は悲痛を癒し、闇は連繋を断絶し、闇は困難を曖昧にし、闇は歴史を忘却する。」

「・・・・・・・・・。」

「人が立つ道の上には常に二つの選択肢が存在する。その選択肢は、何時も自由に選択する事が出来る。その選択肢は、何時も平等に選択する事が出来る。その選択肢は、何時も正しいモノである。それはその選択肢が誰のモノでもない、自分のモノだからだ。」

「・・・・・・・・・。」

「ただ、明日の朝を迎える選択肢が存在するならば、明日の朝を迎えてみるのもまた、いいものだ。と、月は夜空で悲しく笑いながら、そう言っている。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・ありがとう。」

第三百六十五話
「ハンカチーフ」

|

« 「第三百六十四話」 | トップページ | 「第三百六十六話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/52013946

この記事へのトラックバック一覧です: 「第三百六十五話」:

« 「第三百六十四話」 | トップページ | 「第三百六十六話」 »