« 「第三百六十六話」 | トップページ | 「第三百六十八話」 »

2013年6月26日 (水)

「第三百六十七話」

「降ってるねぇ。」

「降ってますね。」

その店は、雨の日にだけ営業している。

第三百六十七話
「雨屋」

「どしゃ降りだねぇ。」

「どしゃ降りですね。」

「お客さんもあれだよねぇ?雨の日にウチに来るだなんて物好きだよねぇ。」

「雨の日に来るって、雨の日にしか営業してないじゃないですか。」

「天気予報ではさぁ。そんなに降らない、いやむしろ今日は雨降らないかもって言ってたのに、これだよ。朝起きてみたら、これだよ。あの天気予報ってのは、一体何なんだろうねぇ?えぇ?」

「あくまで予報ですからね。そう言う準備をして、そう言う心構えで、その一日を過ごして下さいって事じゃありませんか?」

「心構えって!いやもっと根本的な話でさぁ。いる?天気予報って、いる?って話だよ。だってだぜ?雨は降る!その予報が当たろうがハズレようが、その日その時その場所には、雨は降る!天気予報で雨が降るっつってさぁ?国民から投票を募って、雨が降って欲しくないって票が多くて、んで雨を降らせなくさせる事が出来るなら話は別だぜ?でも降るんだよ!雨は!確実にその日その時その場所に!」

「天気を操作出来るなら、そもそもが天気予報なんて必要ないんじゃありませんか?」

「天気を操作出来ようが出来まいが、天気予報なんて必要ないと思うぜ?これから一生、天気予報見なくても死なないだろ?だいたい、天気予報見たって死ぬ時は死ぬんだしよ。」

「死ぬとか死なないとかと、天気予報は関係無いんじゃありませんか?」

「そもそも雨が降る確率が何パーセントとか言われてもピンと来るヤツなんかいないだろ。90パーセントだろうが降らない時は降らない。10パーセントだろうが降る時は降る。そもそも何が100パーセントなのかすら知らされてないんだ。朝起きて、カーテン開けて、窓の外を見たら雨が降ってる。旅行に出掛けて、美術館で絵を観賞して、美術館を出てみると雨が降ってる。めちゃくちゃ雨が降りそうな曇り空だけど、今日は雨が降らなかった。それでいんじゃねぇ?それがいんじゃねぇ?」

「まあ、それでもいいと思いますよ?」

「そもそもがだよ。天気予報が当たったからって、なに?天気予報が当たり続けたからって、なに?」

「そんな顔を近付けて、なに?を強調しなくても・・・・・・・・・。」

「誰かの懐に大金でも舞い込んでくんのかい?」

「天気予報は、ギャンブルじゃありませんから。」

「逆に言うとだぜ?悪天候を予報して、大荒れの海の被害に遭った人間を助けるのか?そうじゃない。ただただ注意を促すだけで、後は傍観だ。ほらだから言ったでしょ?ってな塩梅だ。土砂に注意、雪崩に注意、河川の増水、暴風による飛んでくる倒れてくる危険物。ほらだから言ったでしょ?ってな塩梅だ。」

「傍観してる訳じゃありませんよ。」

「だいたい山の天気をだぞ?山の天気は変わりやすい。の一言で済ませるような機関だぜ?そこまでしっかり100パーセントの予報をしてこその天気予報じゃないのか!」

「きっとそこまで世の中は、天気予報に期待してないんですよ。」

「なら、いらないだろ。」

「きっとそこまで世の中は、天気予報を必要としてない訳でもないんですよ。何か予定を立てる時、少しだけ天気予報を組み込んでおくんじゃありませんか?それでも決行する時もあれば、それで中止する時もある。予定自体、天気予報と同じみたいなもんで、そもそも曖昧ですからね。でもどうしたんです?今日はヤケに天気予報に食らい付きますよね?」

「今日なぁ?楽しみにしてた予定があったんだよ。昨日や明日じゃダメな予定があったんだよ。」

「だからそんなに天気予報に怒り大爆発なんですね。」

「ああ、そんなとこだ。どんな天気だろうが、そんなもんには左右される事のない、今日しかダメな、今日だけしかダメな、そんな予定があったんだよ。」

「だったら、店なんて開けないで、予定を決行すれば良かったじゃありませんか。」

「そうはいかないだろ。雨の日には、どんな事情があれ、店は営業する!それがこの店の長年のルールだ!先代や先々代から受け継いだ伝統ってヤツだ。」

「伝統ですか。」

「そうだよ!伝統だよ!」

その店は、雨の日にだけ古いビルの屋上で営業している。

「店に屋根が無いのも伝統ですか?」

「そうだよ!伝統だよ!」

|

« 「第三百六十六話」 | トップページ | 「第三百六十八話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/52190340

この記事へのトラックバック一覧です: 「第三百六十七話」:

« 「第三百六十六話」 | トップページ | 「第三百六十八話」 »