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2013年7月24日 (水)

「第三百七十一話」

「スピーディー過ぎて、自分が死んだなんて信じられない。」
「だが、キミは死んだ。」
「アンタ、誰なんだ?俺に死を教えてくれたアンタは、一体何者なんだ?」
「神。」
「神?ならここは、天国か?俺は、誰もいない真っ白な空間の黒い椅子に座って、黒いテーブルに置かれた白いカップのコーヒーを飲みながら、神と向かい合って会話してるのか?」
「ここは、天国でも地獄でもない。あの世でもこの世でもない。ましてや喫茶店ではない。」

「だったら、ここは何なんだ?」
「天国でも地獄でもあの世でもこの世でも、ましてや喫茶店ではない場所。」
「夢?これは俺の夢なのか?」
「もう一度、真後ろに転がる自分の死体を。これは、夢ではない。そして、実際には私は神ではない。」
「何で俺は、こんな無惨な殺され方をしなきゃならなかったんだ。って、何だと!神じゃない!?」
「ああ、神ではない。」
「でもさっき自分で神だって言ったんだぞ?」
「それはキミが、この異空間で私が神だと言って欲しそうだったから、そう名乗ったまでだ。」
「じゃあ、本当は何者なんだ!」
「神。」
「どっちなんだよ!」
「キミが神だと思うなら、私は神であり、キミがそうではないと思うなら、私は神ではない。」
「はあ?何なんだよここは!どうなんってんだよ一体!」
「私が何者かなど、この場所が何なのかなど、それらは重要ではない。あえて説明するならば、虚構の中のただ1つのキミの死の真実があれば存在する世界。私は、その世界の住人。」
「まったく意味が分からないね!死後の世界って事か?」
「キミがそう望むのならば、ここは死後の世界と言う事になる。」
「なら、ここは現実の世界だ!」
「それは、無理だ。キミの死の真実がある限り、そんな無茶苦茶は、通らない。」
「現状が既に無茶苦茶過ぎるぐらい無茶苦茶だろ!だいたい、本当の本当に俺は死んだのか?死は突然ってのは理解してるつもりだったが、あまりにも突然過ぎるだろ。最後の記憶は、ベッドに入って小説を読んでたとこだぞ?これが夢じゃないって証明も出来なきゃ!これが夢だって否定も拭い落とせないぞ!」
「キミがキミを死んでいないと思い込むのは、勝手だ。スピーディーに訪れた死を、スローリーに受け入れれば良い。」
「なら、こうしよう。俺は、死を受け入れる。」
「それは、とても良い判断だ。」
「で、どうなる?俺は、これからどうなるんだ?と言うか、この状況は一体何なんだ!どこが終わりなんだ!」
「さあ?」
「これは、臨死体験ってヤツか?俺は非常に貴重な体験をしてんのか?」
「臨死体験って体験にしておきたいのならば、それはそれで良い。だが、それは確実に現実へ返る事の出来ない一方通行な臨死体験になる。」
「おい、何なんだよ!マジで何なんだよ!俺は死んだんだろ?死んだのに何で俺は俺なんだよ!ここは死後の世界でもなんでもない場所なんだろ?俺が俺であり続けてるこの現状は、何なんだよ!」
「キミは、死んではいない。」
「はあ!?だったら今までの俺が死んだ体の話は何だったんだよ!」
「それは、キミが死んだと言って欲しそうだったから、そう言ったまでだ。」
「おいおい、またそれかよ。夢でもない現実でもない死んでもない。これは何なんだよ!」
「夢と言えば夢。現実と言えば現実。死んだと言えば死んだ。ここはその様な場所。」
「意味が分からない!まったく意味が分からない!だったら、俺を現実へ返してくれ!こんな訳の分からない世界はうんざりだ!」
「こっちの現実に居る以上、それは不可能。こっちの夢に居る以上、それは不可能。こっちの死に居る以上、それは不可能。」
「おい、もうやめてくれ。頭がおかしくなりそうだ。これ以上、訳の分からない事を口にしないでくれ。」
「私は、キミだ。」
「おいもうやめろ!」
「人は死ぬと、まあこの場合の死は、肉体が現実から消滅する事を指す。すると、その時点から誰かの心の中で思い出として生きる。」
「何を言い出してんだ?」
「キミは、スピーディーに死んだと言ったが、実際にはどうだろうか?キミは、ベッドに入って小説を読んでいた事を昨夜の様に語っていたが、実際にはどうだろうか?」
「もういい。アンタからは何も聞きたくない。」
「3年と2ヶ月と8日と約19時間。」
「何の話だ?」
「キミが死んだ日から数えた年数だ。」
「バカな!?」
「最初は、この場所も華やかだった。キミの記憶も鮮明だった。しかし、今はどうだ?この真っ白な空間。そして、キミですらキミを忘れかけている。」
「ちょっと待て!待ってくれ!」
「私は最後の住人。キミがキミである事を伝える最後の住人。しかし、それももうそろそろ終わる。キミは忘れ去られる。」
「誰だ!誰の心の中なんだここは!」
「人は、忘れる。それが大切な人であってもだ。完全に維持し続けられる思い出など存在しない。例外は存在しない。モニュメントでもない限りは。」
「大切な人?」
「思い出は固まり、キミは動かなくなり、キミを維持できなくなり、キミであってキミでなくなる。捏造が始まり、やがて混じり合い、虚構のキミが完成する。愛し合った妻の心の中で、妻のキミが生き続ける。辛い思い出を忘却し、楽しい思い出を再生する。」
「また下らない絵空事を言ってんだよな!そうなんだよな!訳の分からない事を口にしてるだけなんだよな!」
「人は、そんなに強くない。キミが死んだ時点で、キミの死の事実は、どうでもよい。あとは如何にして心の中でキミを生かすのかのそれだけだ。3年と2ヶ月と8日と約19時間、キミの妻はよくやった。」
「ウソだろ!?やっぱり夢なんだろ!?そうなんだろ!?」
「さあ、もう辛い思い出から解放して上げようではないか。」
「何だ?何なんだよ!何で体が光出してんだよ!」
「或いは死は、この時点の事を言うのかもしれない。」
「訳の分からないこ

第三百七十一話
「忘却の果てのリボーン」

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