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2013年8月 7日 (水)

「第三百七十三話」

「博士!」
「どうなさいました?」
「博士!!」
「博士です。」
「妖怪博士!!」
「はい、妖怪博士です。一回ね。一回落ち着きましょうか。ね?ゆっくり、座りましょう。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ね。ゆっくり過ぎですから、あまりにもゆっくり過ぎで、ほぼ動いてませんから、とりあえず普通に座りましょう。」
「プハー!」
「プハー!って、着席する時の擬音で初めて聞きましたよ。それで、何か妖怪で困った事でも?」
「夫が・・・・・・夫が妖怪に取り憑かれてるんです!」
「何ですと!?それは一体何と言う妖怪ですか!」
「妖怪朝帰りです!」
「・・・・・・・・・はい?」
「あの妖怪朝帰りですよ!」
「ご存知みたいな?妖怪と言ったら的な?妖怪の代表格でしょ!ぽいニュアンスで言われてもですよ。奥さん?」
「ここ最近、毎日毎日、朝帰りなんです!毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日、毎日毎日!」
「私が聞くであろう一生分の毎日毎日、更に色々な言い方のバリエーションの毎日毎日、をありがとうございました。でもね、奥さん?」
「何ですの、妖怪博士?」
「お門違いですよ。」
「お門違い?」
「だって、妖怪朝帰りなんて妖怪など存在しないんですからね。旦那さんの浮気を解決したいなら、妖怪博士の所ではなく、別の所にご相談に行かれた方が良いかと。」
「ああ?」
「何で拳を振り上げてるんでしょうか?私、何か物凄くお門違いな事を言いましたか?」
「近所の奥さん連中と喫茶店で話してるんじゃないのよ!アタシは、妖怪研究所の妖怪博士に話してるのよ!」
「ええ。」
「それを何?妖怪朝帰りなんて妖怪など存在しないんです。旦那さんの浮気を解決したいなら、妖怪博士の所ではなく、別の所にご相談に行った方が良い。ですって!」
「そんなマヌケ面で言いましたっけ、私?」
「やたらとトイレに派手な装飾してる向かいの奥さんみたいな意味不明な!そんな事を言ってんじゃないわよ!」
「私は、何を言われてもいいですが、向かいの奥さんを巻き込むのは、やめましょう。」
「年間、新種の妖怪が数体発見されてると!そうアタシは隔週水曜日発売の妖怪雑誌で妖怪博士!アナタが書いたコラムを読んでいる事を知らなくって!」
「いやもう、両拳を振り上げるのは、激怒と言うか、おふざけにしか見えませんよ?まあ確かに、私は隔週水曜日発売の妖怪雑誌のコラムで、そのような事を書きました。」
「だったら!アタシの夫は、妖怪朝帰りに取り憑かれたんです!これは歴然たる事実なんです!それを何ですか!ええ?妖怪朝帰りなんて妖怪など存在しない。旦那さんの浮気を解決したいなら、妖怪博士の所ではなく、別の所にご相談に行った方が良い。はあ?何だよそれ!何なんだよ!ああ?それが妖怪博士の言う事かよ!マジふざけんなよ!何が妖怪博士だよ!浮気されてんのはテメェだろ!それを人に擦り付けてんじゃねぇよ!妖怪で困ってる人を助けられないなら妖怪博士やめちまえよ!」
「ねっ、奥さん。口が悪くなってますんで、落ち着きましょう。一旦、落ち着きましょう。あと、私は独り身ですからね。されるとかされないとかの次元じゃないんですよ。」
「プハー!」
「落ち着く時の擬音だったんですね。でもね、奥さん?」
「何ですの、妖怪博士?」
「普通に考えたらですよ?妖怪に取り憑かれたと思うんでなく、旦那さんの浮気を疑うでしょ。」
「だから!何で浮気なんだよ!確かに若い女の影はチラついてっけど!」
「だったら!」
「血が緑色なんだよ!」
「何が!?」
「アタシだってバッカじゃないわよ!ただ若い女の影がチラつくだけなら!浮気だと思うけど、血が緑色なのよ!」
「誰のですか!?そのチラつく若い女の血がですか?」
「夫よ!」
「はい!?旦那さんの血が緑色!?」
「んまあ、勢い余って緑色って言っちゃったけど、何て言うの?緑色っちゃあ緑色だけど、赤っちゃあ赤って感じかしら?ほら、限り無く赤に近い緑色って言うの?見た目はもう赤なんだけどね。赤にしか見えないんだけどね。気持ち緑色って事?」
「じゃあ!」
「じゃあって、何よ!それだけじゃないわよ!夫はね!電源が入ってない真っ黒の画面のテレビの前に座って、手を叩いて大笑いしながら観てるのよ!」
「こえーよ!」
「だからアタシも言ってやったわよ!こえーよ!って!これでもかってぐらい浴びせてやったわよ!こえーよ!ってさ!ええ?どうなのさ!これでもそれだと言うのかい!」
「いや、奥さんのキャラクターたるやもう、パニックの何者でもありませんよ。分かりました。入院の手続きをしましょう。」
「妖怪博士!」
「奥さん!」
「ありがとうございます!」
「いえいえ、妖怪に困ってる人を救う。これが私の仕事ですから。では、この書類に。」
「はい。」
「これから大丈夫ですよね?」
「これからって、夫は今、仕事です。」
「旦那さんではなく、奥さんが、ですよ。」
「アタシ!?アタシが入院すんの!?」
「はい。」
「ちょっと待ってよ!アタシの頭がイカれたとでも言いたいの!!」
「いやもう、椅子に座って両拳&両足を振り上げるって、大激怒と言うか喜劇ですよ。いいですか、奥さん。この妖怪研究所に辿り着いた時点で、奥さん貴女が妖怪に取り憑かれてるんですよ。」
「はあ?」
「妖怪に取り憑かれたり、妖怪に悩んで困ってる当事者の目の前にしか、この施設は現れないんです!」
「そんな!?ウソよ!だってアタシは隔週水曜日発売の妖怪雑」
「それは、私達が救助を発してるシグナルです。あの隔週水曜日発売の妖怪雑誌は、普通の人には見えません。」

第三百七十三話
「妖怪旦那さん」

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