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2013年8月14日 (水)

「第三百七十四話」

  大学が夏休みになり、それを利用してボクは、久し振りに実家へ帰ろうと飛行機に乗った。しかし、その飛行機にテロリスト達も乗り合わせていた。ボクは、離陸後シートベルトのサインを確認してトイレに駆け込んだ事で騒ぎの中心に巻き込まれないですんだ。トイレのダクトをつたい貨物室に出ると、そこでテロリストの1人と格闘していた貨物係を目にした。テロリストを倒し、同時に倒れ込む貨物係にボクは、駆け寄った。
「・・・・・・・・・だ、大丈・・・。」
遠目では、荷物ではっきりと分からなかったけど、これはあまりにも悲惨な光景だった。
「大丈夫!いいかい?人間、諦めたら終わりだ!」
「あ、諦めたら終わりって!頭と胴体が切断されてるじゃないですか!」
「よいしょっと!大丈夫!諦めてないから!」
「そう言う問題じゃなくて!諦めるとか諦めないとか!そう言う問題じゃなくて!頭が胴体から切断されたら!普通、即死でしょ!」
「そう?」
「そうですよ!そうですよって答えてる自分に凄く違和感ですよ!」
「きっとそれは、諦めちゃった人達なんだろうね。」
「はあ?」
「で?上で何があったの?あ、もしかしてキミもコイツの仲間?コイツさ!オレを見るなり走って来ていきなりデカいナイフでバッサリだもんね!頭きちゃうぜ!」
「えっ?えっ?じゃあ、もしかしてボクが遠目で見ててテロリストを殴ってた武器って、頭ですか!?」
「そりゃそうだろ。諦めてないんだから手近な武器で戦うだろ。って、帽子・・・・・・・・・?」
「よく見たら顔中傷だらけの血だらけじゃないですか!?」
「大丈夫!諦めてないから!って、帽子がどっかに行っちゃったんだよなぁ?こう、殴ってる時にどっか飛んでっちゃったのかなぁ?参ったなぁ。」
「する!?します!?今、帽子の心配!」
「そりゃあ、するよ!だって無くしたら次からは自腹だよ?」
「いやその帽子を探すのに、両手で頭持って掲げてキョロキョロさせるのとか何なんですか?」
「何なんですかって、キミが今言った通りだよ。」
「上で大変な事が起きてるのに、下でまた違う大変な事が起きてて、その板挟みのボクは、どうすればいんですか。」
「上の大変な事がどれほど大変な事なのか知らないが、オレはオレで結構大変な事なんだぞ?」
「朝食にディナー出されたと思ったら実は夜だった。みたいな感じですよ。」
「ん?いやそれ普通だろ。」
「普通じゃありません!とにかくいいですか?上では今、テロリスト達が占拠してるんですよ!」
「とにかく、って言葉は、とにかく便利だよな。全ての状況を1回無かったものみたいにして、とにかく強引に話を元に戻すが、それが強引に感じられない。」
「どこに感銘を受けてるんですか!」
「て事は?コイツも?」
「おそらくはテロリストの一味です。」
「こわっ!?」
「胡座かいてお腹んとこに頭を両手で持ってる人の方がよっぽど!?この目線で普通に座りながら人と話してるおかしさたるや!?あ、もしかして!」
「どうした?」
「正義のヒーローですか!事前に飛行機にテロリストが乗り込むのが分かって!それでボクらを助ける為に潜入した!」
「いや貨物係ですけど?」
「またまたまたーっ!もう正体を隠さなくてもいんですよ!サイボーグヒーローなんでしょ!」
「いや生身貨物係ですけど?」
「だったら何で頭と胴体を切断されて生きてるんだ!」
「おいおいおい、話を最初に戻すのか?だからこれは、諦めないからだ。」
「だから何なんですか!何なんですかその理由!そんな理由でボクが納得する訳がない!」
「キミが納得するかしないかはオレには無関係だ。オレは諦めないからこうして生きてる。と言うか、今はオレの頭が胴体から切断されても生きてるだとかじゃないだろ?」
「いや今はまずそれでしょ!そこしかないでしょ!他に一体何があるんでしょ!」
「もうキミ、文法とかメチャクチャじゃないか。」
「物理的にメチャクチャな人に言われたくないですよ!」
「ならあれだ。サイボーグヒーローって事でいいよ。オレは!悪を絶対に許さない!サイボーグヒーロー!よろしく!」
「よろしくで頭を差し出されても・・・・・・。それにサイボーグヒーローじゃなくて単なる貨物係なんですよね?」
「もういいじゃないかサイボーグヒーローだろうが貨物係だろうが、今は上の大変な事をどうするかだろ?下の大変な事なんか気にするな。オレだって本当は帽子を探したいんだからな。」
「上って、テロリストですか?」
「そうだよ。テロリストをどうにかしないとオレ達はみんな殺されるぞ!」
「いや説得力が、何よりもその言葉には説得力が、ない!テロリストが要求に応じないから飛行機ごと爆破させても、生きてそうですもん!」
「生きてるかっ!木っ端微塵にされて生きてるかっ!どんな人間だよ!」
「そっくりそのままお返ししますよ!」
「木っ端微塵は、さすがに諦めるわい!」
「言ってる意味が分からないよ!」
「とにかくだ。」
「あ、とにかくって使った。」
「使うよ!使うだろ!オレは真っ当に正々堂々と正面から上の大変な事と向き合おうとしてるってのに!横からゴチャゴチャ言われた日にゃあ!とにかくも使いたくなるだろ!」
「分かりましたよ。で、何か作戦とかあるんですか?」
「ある!」
「マジですか!?無鉄砲にただただ言ってるだけかと思いました!?すいません!」
「オレを誰だと思ってるんだ?貨物係だぞ?」
「やっぱりサイボーグヒーローじゃなかった。」
「当たり前だろ。サイボーグヒーローならサイボーグヒーローで、それはそれでキミも少し引くだろ?」
「・・・・・・んまあ、それはそうですけど・・・・・・。で?作戦とは!」
「諦めない!だ!」
「ん、もうちょっと詳しくお願いします。」
「詳しくも何も、諦めない!は、諦めない!だ!」
「はあ?それ出来るの貨物係のアナタだけですよね?」
「つべこべ言わずに!とにかく上の大変な様子を見に行くぞ!」
「不安でいっぱいだなぁ。」
「ほら!立ち上がれ!若者!」
「いや10も年齢変わらないですよね?だいたい腰に頭を抱えながらって、ヘルメットじゃないんだし。」
「ああーっ!」
「えっ!?な、何ですか!?あっ・・・・・・すいません。」

第三百七十四話
「お尻の下に帽子」

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コメント

すっきり感のあるおもしろさでした!
コントの一部だと思って読んでたら、そこに落としますか~^^

投稿: 水晶 | 2013年8月15日 (木) 00時53分

なんか、書き終わってみたら今までには無かった作品に仕上がった感はありました。あくまで自分的にはですが(笑)

楽しんでもらえて良かったです!

コメントありがとうございましたm(_ _)m

投稿: PYN | 2013年8月15日 (木) 22時49分

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