« 「第三百七十七話」 | トップページ | 「第三百七十九話」 »

2013年9月11日 (水)

「第三百七十八話」

「時間切れだ。」
「待ていっ!!」
「バン!」
そして男は、少女の頭を銃で撃った。これは、そう言うルールのゲームであり、絶対的な敗北感を男が俺に与える為だ。男が仕掛けて来る数々の無理難題を解くゲーム。だがしかし、それは男の一方的なルールであり、俺は少女を救いたいだけだった。映画やTVゲームの世界では、よくある不条理な話で、実際に現実世界で自分が巻き込まれるだなんて考えてもみなかった。確か何度も命を失いそうになり、確か何度も無関係な人間の命を奪いそうになった。


ステージ1~
『炎の中から大脱出』

ゲームの始まりは、突然であり、前触れがない。もしかしたら仕掛ける側があまりにも巧妙だったら、自分がゲームをさせられている事にすら気付かない人間も存在するかもしれない。
「リンリンリン!」
しかしこのゲームは、巧妙ではなく、正々堂々としていた。電話のベルで起こされた母さんに起こされた俺は、母さんの口からゲームの開始を告げられた。炎上する自宅から外へ出る。それが全ての始まりだった。俺にとってのソレは、あまりにも朝飯前だった。炎上する自宅と言っても実際には炎の形に切られた赤いダンボールがポツポツ置いてあるだけだった。
「誰かのイタズラかしら?」
電話の主の言う通りに自宅の外へ出た俺の家族は、母さんの一言によって、明らかに全員が俺に疑いの眼差しを浴びせてきた。


~ステージ2~
『炎天下の迷走』

蝉の脱け殻を5000殻集めて、それで巨大な蝉の脱け殻を作れ、と言う無理難題を男は次に突き付けてきた。しかも夏に集めた蝉の脱け殻での蝉の脱け殻製作は、冬に行えと言う指示だった。早いか遅いか分からないが、俺は15年の月日を費やし、巨大な蝉の脱け殻を完成させた。蝉の脱け殻を集め始めて12年が過ぎようとした27歳の春、俺は最愛の女性と結婚した。


~ステージ3~
『極寒の屈辱』

冬の間、真っ裸で過ごせ、と言う無理難題だった。この時、俺は5度に渡り風邪を引いた。更に、5度に渡り風邪がぶり返した。そして、この年の冬は、ほぼ毎日のように警察に職務質問された。だから俺は、ほぼ毎日のようにそれまでの経緯を時には巨大な蝉の脱け殻の写真を見せながら語ったが、信じる警察官は誰一人としていなかった。それどころか俺は、いろいろな病院へ行く羽目になった。もちろん真っ裸でだ。35歳にもなってこんな屈辱を風呂場以外で浴びせられとは考えてもみなかった。


~ステージ4~
『炎天下の迷走2』

これは、以前に突き付けられた無理難題の蝉の脱け殻を集めて、巨大な蝉の脱け殻を完成させろと言うものだった。しかも今回は、前回を大きく上回る殻数の5001殻でだった。だが、コツを掴んでいた俺は、前回を大きく上回る14年と言う記録的なスピードで、ソレを完成させた。

「どうだ?目の前で少女の頭を撃たれた気分は?」
「これが、敗北感ってヤツか。」
「今までは電話越しだけの付き合いだったが、どうだ?」
「どうだ?どうだって、何だ?」
「私の顔に見覚えはないか?」
「えっ?」
「だから!私の顔に見覚えはないか!」
「ああ、92歳にもなると、だいぶ耳も遠くなったし、目も見えにくくなったし、記憶も定かでなくなってきたし、分からん!」


~ステージ5~
『太陽旅行』

俺は、この無理難題により、全財産を失った。そして、その時の後遺症かどうか分からないが、鼻の頭に小さなホクロが出来た。


~ステージ6~
「炎天下の迷走3」

これは、以前に2度突き付けられた無理難題の蝉の脱け殻を集めて、巨大な蝉の脱け殻を完成させろと言うもので、しかも今回は、前回と前々回を大きく上回る殻数の5034殻でだった。だが、前回よりも更にコツを掴んでいた俺は、殻数が大きく上回っているにも関わらず、前回同様14年と言う記録的なスピードで、ソレを完成させた。

「私は!お前に6年2組でイジメられてた!」
「それはつまり、どう言う事だ!」
「私は、お前に6年2組でイジメられてたと言う事だ!」
「そうか!」
「これは!私が私の人生全てを賭けたお前への復習だ!」
「自分の人生全てを賭けた俺への復習だとでも言いたいのか!」
「言った!」
「言ったか!」
「敗北感と共に死ね!」
「敗北感と共に死ねとでも言いたいのか!」
「言った!」
「言ったか!」
「バン!」


~ステージ7~

『ゲームオーバー』

俺は確かに、電話の主の告げる日時と場所へ正確にやって来た。正確どころか少し早く辿り着いた。だがしかし男は、不条理に言い放った。
「時間切れだ。」
と、だから続けて俺は言った。
「待ていっ!!」
と、そして男は間髪入れずに少女の頭を持っていた銃で撃った。
「バン!」

第三百七十八話
「トイガン」

|

« 「第三百七十七話」 | トップページ | 「第三百七十九話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/53226723

この記事へのトラックバック一覧です: 「第三百七十八話」:

« 「第三百七十七話」 | トップページ | 「第三百七十九話」 »