« 「第三百七十八話」 | トップページ | 「第三百八十話」 »

2013年9月18日 (水)

「第三百七十九話」

「なあ?」
「はい。」
「普通、こう言う後ろに付く人、一緒になる人ってのは、その道のプロ、つまりは先生って事だよな?」
「ですね。」
「おかしいよな?」
「僕は初めての経験だったもので、前にその道のプロ、つまりは先生が付くのかと思ってました。」
「つまりは、俺とアンタは、初心者同士で互いに勘違いをしている間に何だかんだドタバタとスタンバイが進行して行って、こんな上空で事の真相を知る事となった訳だ。」
「おっしゃる通りだと思います。」
「死ぬだろ!」

第三百七十九話
「パラグライダー」

「何と無く助かるかもしれませんよ?」
「いや何そのフワッとした感じ!パラグライダーだけに?パラグライダージョーク?」
「きっと既に心配したスタッフの方たちが救助を呼んでますよ。ここはジッとしてその救助を待ちましょう!」
「その雪山的な発想がよくぞ上空で浮かんだな!しかもその場合の救助はもはや救助ではなく!もう既に動かなくなった俺たちの」
「僕、こう言う者です。」
「どのタイミングで名刺を差し出してんだ!」
「このタイミングを逃すと万が一って事もあるかと思って、すいません。」
「万が一の方の圧が強いんだよ!・・・・・・・・・和菓子屋の五代目?」
「はい!」
「その若さで五代目。あ、もしかして先代を早くに亡くされたとか?いろいろと大変だな。」
「いえ、先代はピンピンしてます!先代の父に、才能と手腕を見込まれて、お店を任されました!」
「何で軽く自慢を含ます自己紹介がこの状況で出来ちゃうのかが俺には不思議でならないよ!」
「これも何かの縁です。近くに寄った際には、是非ともお立ち寄り下さい。特別なおもてなしでお待ちしてますので!」
「手腕!?その見せどころがおかしいだろ!」
「で?」
「で、って?」
「そちらは何をなさってるのですか?」
「いや何かバーで意気投合しちゃって的な流れになってっけど、ここ上空だから!結構な上空ですから!」
「でもこの機会を逃したら万が一って事もあるかと思って、それに何か自分だけ自己紹介して、このままあの世に行って、貴方が何をしてる人だったのか知らないままだと何だか気持ち悪いですし。」
「勝手にお前が自己紹介して来たんだろ!んでだから万が一の方の圧が強いんだって!万が一圧を強めるなら自己紹介してる場所じゃなくて!二人で無事に生きて母なる大地に降り立つアイデアでも出し合おうぜ!」
「それで?」
「そうだなぁ?何とか海や川や森に向かえば助かるんじゃないか?」
「母なる大地じゃないし!」
「何で俺がパラグライダージョーク言ってるみたいになってんだよ!」
「ですから、アイデアよりまずはほら、自己紹介の方をお願いします。」
「夏休みの宿題じゃねんだぞ?アイデア後回しにして乗り切れる状況じゃないだろ!」
「でも、あの世でずっと気持ち悪いって言うのも随分と後味が悪い話ですよ?」
「恐ろしい結末の未来の話の方だけ先に進めるのやめてくんない?」
「それで?」
「俺か!俺は、中古車販売してるよ!」
「凄い!」
「えっ!?いや、そんな凄いもんじゃないよ。因みに小さいけど一応、社長です。」
「僕!丁度今!車欲しいと思ってたんですよ!」
「は?」
「最近、免許を取ったんですよ!で、免許取りたてで新車ってのも万が一じゃないですか!車庫入れとかで絶対に傷つけたりしちゃうじゃないですか!だからしばらくは中古車にしようかと思ってたんですよ!」
「ちょい待てーっ!凄いって言葉に対しての俺の勘違いの恥ずかしさたるや!」
「ん?」
「いやそれはどうでもいい!どうでもよくないのはだ!」
「何かおすすめの中古車あります?」
「それーっ!この感じ!俺を取り巻くまるで自分の店に居るのかとさえ思えるこの空気感!絶体絶命の危機的状況を!何で中古車販売経営社長に絶好のタイミングで出会えた喜びが上回っちゃうんだよ!あれか?むしろ恐怖過ぎて頭が現実を受け入れられなくて逃避しちゃってる感じか?」
「生きてたら絶対に貴方のお店に行きますから!」
「がっつり受け入れてた!?」
「もちろん!お土産にお店の一押し和菓子を持って行きます!」
「じゃあ、それはそれでいいですよ!和菓子楽しみに待ってますよ!でもさぁ?先ずはさぁ?先ずはこの絶体絶命な危機的状況をどうするか考えません?」
「あそこ見て下さい!」
「えっ?何か名案か?見たとこ、いい感じの森でもなければ、いい感じの湖って訳でもなく、国道?」
「最初に乗るなら!ああ言う色の赤い車って決めてるんですよ!」
「そんな気持ちじゃ確実に黒い車に乗るぞ!」
「え、今赤い車、売り切れですか?入荷したら絶対に連絡下さい!お店一押しの和菓子をお土産に馳せ参じますから!」
「誕生日間近の子供以上のワクワク感!?もうあれか、自分でも制御不能か!」
「人生の最期にこんな気分でいられると思いませんでした!ありがとうございました!」
「諦めてた感じ!?もう既に最初っから腹くくってた感じか!?」
「だって、貴方がさっき、死ぬだろ!って、おっしゃるから、ここはもうそうするしかないのかなと思って、すいません。」
「いや確かに仄めかしたけど、無事に生還する可能性だってゼロじゃない!」
「そうだったんですか!?」
「そっちはそっちでかなりの割合で仄めかしてましたけど!」
「気付かなかった!」
「営業で培ったプレゼンテーション力の自信失うわい!ん?おい!あれ見ろ!」
「ああ、ああ言う色の赤じゃないんですよ。僕が乗りたい赤い車は。」
「中古車販売経営者の鑑か俺は!国道じゃない!その横だ!」
「牧場ですか?」
「の真ん中だ!」
「羊の群れですか?」
「そうだ!」
「始めて見ました。」
「鈍感か!」
「えっ?」
「あそこに飛び込むって事だよ!」
「ええーっ!そんな古典的な!」
「この危機的状況下に古典的も何もないだろ!」
「でも羊に飛び込んだ瞬間にその衝撃で羊の内臓とか脳味噌とか目玉とか飛び散るんじゃないですか?」
「どんな想像力だ!奴らフワッフワだから大丈夫だ!」
「けど汚れません?近くに服屋さんありますかね?」
「どんな心配だ!迷ってる暇はない!群れに突っ込みぞ!」
「ああーっ!!」
「うおーっ!!」
「あああーっ!!」
「うおおーっ!!」
「ああああーっ!!」
「うおおおーっ!!」
「あ~ああ~っ!!」
「何でターザ」
「ぼふっ!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・生きてるか?」
「は、はい。何とか。」
「やったな!」
「はい。」
「ははっ!」
「あはっ!」
「はははははっ!」
「あははははっ!」
「はははははっ!」
「あははははっ!」
「はははははっ!」
「あははははっ!」
「よーし!飯でも食いに行くか!」
「いいですね!ジンギスカンとかどうです?」
「お前、この状況でよく言えたな。」

|

« 「第三百七十八話」 | トップページ | 「第三百八十話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/53306571

この記事へのトラックバック一覧です: 「第三百七十九話」:

« 「第三百七十八話」 | トップページ | 「第三百八十話」 »