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2013年10月 9日 (水)

「第三百八十二話」

「ふわぁ~あ!おはよ~。」
「おはえっ!?」
「えっ!?」
「えっ!?」
「な、何だよ。今日は会社休みだからいつもより遅めに起きて来たんだけど何か問題でも?」
「いや、起床時間に問題はないわよ。」
「なら一体どこに問題があるんだよ。」
「頭よ!頭!何なのその寝癖!」
「寝癖?」
「有り得ないでしょ!お金持ちの病院の個室に置いてあるお見舞いの超豪華フルーツバスケットみたくなってるじゃない!」
「何かよく分からないけど、まあ奇跡的にそんな日もあるだろ。」
「普段の毛量的に考えても有り得ないでしょ!てか、中に超豪華フルーツバスケットを入れない限り有り得ないでしょ!アートみたいになってるじゃない!」
「世の中で、頂点を極めるってあるだろ?」
「何の話?寝癖と関係ある話?」
「いや全く関係無い話。」
「だったら、今しないでよ!今されても内容が絶対に頭の中に入って来ないから!」
「果たして、頂点ってのは、極められるもんなのか?そもそも定義の存在しない頂点に人は到達する事が出来るのか?」
「いやだからしないでってお願いしたじゃん!」
「昨日、寝る前に頂点の事を考えてたからさ。起きたら、意見を聞こうと思ってさ。」
「はあ?だから、そんな寝癖になったの?頂点の事を考えながら寝たから、そんな超豪華フルーツバスケットみたいな寝癖になったの?みたいなと言うか、それもう黒い超豪華フルーツバスケットよ!」
「そんな事を言って、実際は天辺の毛が、ちょっとだけ跳ね上がってるだけなんじゃないか?」
「もしそうならアタシは今から眼医者さんに行くわよ!」
「大袈裟だなぁ。」
「そんなに疑うなら自分の目で確かめてみればいいじゃん!」
「いや遠慮しとく。」
「何ですんのよ遠慮!」
「有り得ないから。そんな有り得ない事を確認してる時間が勿体無い。」
「いや休日じゃん!特に何もする事の無い休日じゃん!しかも寝癖を確認するなんて数秒だし、これから洗面所に行くなら絶対じゃん!」
「いや、今日は洗面所には行かない。」
「何でよ!てか、それは行って!普通に汚いから行って!」
「いや、今日の俺は物凄く綺麗だから行かない。」
「その寝汗でよく言えたもんね。」
「逆にな。」
「何の?何の逆?デトックス的なあれ?」
「デトックス的なあれだ。」
「意味もよく分かってないくせに適当に言わないでくんない?じゃあ、アタシが鏡で見せて上げる。」
「いや、今日は鏡に映りたくない日だから遠慮しとく。」
「どんな日よ!むしろそれは超豪華フルーツバスケットを認めての発言としか考えられないわよ!」
「馬鹿馬鹿しいだろ?」
「何が?」
「有り得ない事をわざわざ確認して、やっぱり有り得なかったなんてそんな時間の無駄、それこそ有り得ないだろ?」
「博士か!研究一筋の博士か!寝る時間すら惜しい博士か!」
「んまあ、そう言う意味で言うなら、博士かな。」
「博士じゃないじゃん!どう言う意味よ!休日暇暇会社員じゃん!ほら、見てみてよ!」
「・・・・・・・・・。」
「何で目を瞑るの?」
「そんな急に鏡を目の前に持って来られたら目を瞑るに決まってるだろ。」
「メデューサか!見たら石になっちゃうのか!」
「んまあ、そう言う意味で言うなら、メデューサかな。」
「何でよ!どう言う意味よ!女じゃん!メデューサ、女じゃん!」
「知らないだけで、男のそう言う奴もいるかもしれないだろ?」
「寝癖がヘビだったらアタシも一瞬そうかなって思ったかもしれないけど、超豪華フルーツバスケットじゃん!と言うか、そもそも仮にそうだとしたら、アタシ結構前に石になってますから!」
「そんな事より、今日の昼御飯は何だ?」
「いやいやいや、昼御飯の前にしなきゃならない事があるのよ!それを片付けないとアタシ、昼御飯に思考が向かないから!」
「しなきゃならない事?窯の温度か?」
「アタシは陶芸家か!個展に向けて作品を作ってんのか!」
「んまあ、そう言う意味で言うなら、陶芸家かな。」
「いや何でもかんでもそれで突き通せる程の魔法の文法じゃないからね!寝癖よ!超豪華フルーツバスケットな寝癖よ!」
「まだそんな戯言と戯れてんのか。」
「ジャレてないわよ!目の前の現実よ!と言うか、いい加減、目を開けたら?」
「目を開けて、目の前に鏡があったらどうすんだ。」
「もう無いわよ。何と無く感覚で目の前に鏡が有るか無いかくらい分かるでしょ?」
「その微妙に有るか無いか分からない距離に鏡を持ってたら、どうするんだ!」
「とんだ天の邪鬼ね!そんな面倒臭い事しないわよ!てか、やっぱりむしろ逆にそれって超豪華フルーツバスケットな寝癖を認めてる発言よね?」
「よし!誤魔化そう!」
「いや、誤魔化そうの意識があまりにも強過ぎて意気込みが口に出ちゃってるから!初めて見たわよ!これから誤魔化す事を堂々と宣言しちゃう人!」
「正直者だな。」
「とんだおっちょこちょいよ!」
「エッヘン!」
「その鼻の下を人差し指で擦る仕草が既におっちょこちょいよ!」
「あ、本当に鏡無い。」
「そんな目の前を、人混みを掻き分ける仕草をしてから確かめなきゃ開けられない訳?」
「これは、癖だ!」
「初めて見たわよ!どんな迷惑な癖よ!あそうだ!見るのがダメなら触ってみてよ!」
「何を?」
「流れ的にそこは絶対!超豪華フルーツバスケットな寝癖でしょ!メロン触ってみてよ!メロン!」
「メロン?」
「そう!メロン!」
「メロンなんて、どこにあるんだ?」
「頭!その超豪華フルーツバスケットな寝癖の真ん中!」
「メロンアレルギーだから無理!」
「いやその頑な感は、何っ!!メロンアレルギーならメロンアレルギーで、既に触れてるから!危うし!と言うか、危うい真っ只中だから!」
「寝癖なんだろ?」
「そうよ!」
「なら大丈夫!」
「寝癖って認めてんじゃん!」
「その戯言に付き合ってやってるだけだよ。」
「はあ?何なのこのイライラ感!アタシが間違ってるみたいになってる空気感!ムカついてしょうがないんですけど!」
「更年期か?」
「まだ30代半ばよ!」
「若年性か?」
「いやマジでメロン触れよ!メロンじゃなくてもブドウでもリンゴでもマンゴーでもバナナでも!とにかく何でもいいから触れよ!」
「違う。」
「違う?何が?」

第三百八十二話
「ナシ」

「これはナシだ。」
「分かってんじゃん!これ、って言っちゃってんじゃん!一通り確認済みなんじゃん!」
「いや、勘だ!」
「テメェ!!」

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