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2013年11月20日 (水)

「第三百八十八話」

「先生ーっ!」
「おおっ!遂に俺の短編小説が大ベストセラーか!あの新作短編小説が大賞獲ったか!よっしゃあ!今日は飲むぞ!飲んで歌って!飲んで歌って!飲んで歌って鼻血出して!鼻血出して!鼻血出しまくるぞーっ!」
「飲んで歌うのは構いませんが、鼻血は出さないで下さい。大体、まだ発売されてない新作短編小説が大ベストセラーになったり、大賞を獲る訳がないじゃないですか。それと、飲んで歌うのは、その後にして下さい。」
「発売されてない?それはおかしいぞ?だって俺は昨日、完成させた新作短編小説を顔はカワイイけど、取り柄は足が速いだけの出版社の使い走りである編集者のお前に渡したはずだ。」
「悪かったですね!顔はカワイイのに取り柄が足が速いだけで!先生?ご自分でおっしゃってて、おかしいと感じませんでした?」
「・・・・・・・・・・・・・・・特に?」
「何で昨日、渡された作品が、今日になって大ベストセラーとか大賞を獲れたりするんですか!って、こんな当たり前の事、2度も言わせる事じゃないですよね?」
「違うのか?顔はカワイイけど、取り柄は足が速いだけの出版社の使い走りが、勢いよくドアを開けて、先生ーっ!と入って来る!新作短編小説が大ベストセラーになったり、大賞獲ったり以外、他に何かあるのか?」
「全然違いますよ!私は、使い走りではありません!」
「なら、顔はカワイイけど、取り柄は足が速いだけ、のお前は、一体何をしに来たんだ?」
「もちろん!先生へ作品の書き直しをお願いしに来たんですよ!この新作短編小説の!」

「・・・・・・・・・えっ?」
「お願いします!」
「断る!」
「お願いします!!」
「断る!!」
「先生!書き直さないなら、この作品は世に出ないんですよ!大ベストセラーや大賞を獲る以前の話ですよ!」
「お前はあれだな。顔はカワイイけど、心はウンコだな。いや、ウンコ以下だ!」
「ウンコに心があるんですか!」
「ウンコに心はないんですか!」
「何で聞いてる私に聞き直すんですか!ウンコに心なんてある訳ないでしょ!」
「そう言うところがウンコなんだよ。」
「だぁぁぁぁぁぁ!もう先生と話してると頭がおかしくなりそうです!いいですか!とにかく作品を書き直して下さい!」
「おい、ウンコ。」
「女子に付けるアダ名じゃないでしょ!てか、人に付けるアダ名ではない!」
「その書き直しってのは、上層部の見解か?」
「いいえ!一晩、作品を預かり!その内容を吟味した上での私の独断です!」
「死ね!」
「はあ?」
「すぐ死ね!今死ね!死んで生き返って、生き返ってるか生き返ってないかの丁度中間のまさにその瞬間に、もう一度死ね!」
「何で私が死なないといけないんですか!」
「顔がカワイイだけで!たったそれだけの事で!そんなありふれた長所で!チヤホヤされて今まで世の中を生きて来たお前が!俺の作品を一晩吟味して?独断で書き直しを要求してきた?死だろ!そこには死しかないだろ!」
「あるでしょ!それ以外のたくさんの選択肢があるでしょ!」
「ほお?なら、カワイイだけで、チヤホヤされて今まで世の中を生きて来た、事は否定しないお前の意見を聞いてやるよ。」
「そのたくさんある選択肢の中のもっとも有力なのは、作品を書き直す事です!」
「その選択肢はない!」
「ある!」
「ない!」
「この選択肢しか有り得ません!」
「何でだ!何で俺は魂込めて書き上げた作品を書き直さなきゃならないんだ!顔がカワイイだけで、取り柄は足が速いだけのお前が独断で決めた書き直しに従わなきゃならないんだ!簡潔に述べよ!」
「意味不明。」
「何だと?」
「意味不明なんですよ。この新作短編小説。」

第三百八十八話
「日月火水木木金土」

「これのどこが意味不明なんだ!」
「何で木曜日が2日あるんですか?」
「おいおいおいおい?正気か?そこか?お前、そこから否定したら、恋愛小説を読んで、何でコイツはコイツに恋をするの?推理小説を読んで、何でこの探偵は犯人を突き止めたの?スポ根小説を読んで、コイツら何で野球してんの?って疑問を持つのと一緒だぞ!」
「違うでしょ!」
「違わない!木曜日が2日ある!それはこの短編小説の世界観だー!」
「ある日突然、世界の曜日が増えた。木曜日が連続した。」
「引き込まれる出だしじゃないか!」
「確かに引き込まれる人は引き込まれるかもですけど、引き込まれない人は引き込まれませんよ?」
「当たり前の事を長々とバカ丁寧に説明すんな!美味いもんは美味い!不味いもんは不味い!好きな人は好きな味、なんて言っちゃう大バカ野郎か!」
「木曜日が2日って、木曜日が2日じゃない方がいいんじゃないですか?」
「やれやれ、これだから顔がカワイイだけで、取り柄は足が速いだけのヤツは参るよ。」
「いやいやいや、曜日が増えたってとこは、確かに興味をそそるんですよ。」
「だろ!」
「ただ、日月火水木木金土、じゃなくて、例えば、日月火水木時金土、とか?」
「ああ、何か違うヤツを入れる的なアレか。でもここはシンプルに、日月火水木木金土、の方がいんだよ。あえてな。」
「だから、シンプルだったら、日月火水木時金土、の方がいいじゃないですか!」
「何がシンプルなんだよ。」
「だって、結局これって木曜日と金曜日の間の日は、存在していたけど、その日は、実は時間が止まっていて、誰も気付いていなかった。でも、主人公だけが、謎の曜日を動く事が出来る。って話ですよね。」
「お前、やっぱバカだろ。顔はカワイイけど、心がウンコなお前より!俺は、ウンコだけど、臭くないウンコと仕事がしたかったよ!」
「とどのつまりウンコですよ?ウンコは、何もしてくれませんよ?」
「何もしてくれないで結構!ウンコは俺の作品に対して余計な口出しして来ないからな!いいか?日月火水木時金土、なんてタイトル付けてみろ!ネタバレも甚だしいだろ!」
「そのオチも意味不明なんですけど。」
「おい無視か!実は、主人公だけが、時が止まった謎の曜日を動けたんじゃなくて、その曜日にしか動けなかったんだ。」
「はあ?ですよ。」
「そう言う!はあ?を宿すのが短編小説の醍醐味だろうが!」
「ウンコですね。」
「お前がな!何でウンコに俺の作品をウンコ扱いされなきゃならないんだ!」
「誰かに恋をしたり、誰かが犯人を突き止めたり、分かりやすい盛り上がりが欠けるんですよね。」
「おい、マジで短編小説を理解してんのか?」
「してます!」
「誰かに恋をしたり、誰かが犯人を突き止めたり、いきなり誰かに突き付けられた余命だったりな話が読みたければ!誰かに恋をしたり、誰かが犯人を突き止めたり、いきなり誰かに突き付けられた余命な作品を読めばいいだけの話だろうが!ただ淡々と、盛り上がりもなくただただ淡々と、誰かの頭に、はあ?を宿すのが短編小説なんだよ!」
「ゲリですね。」
「ウンコが違った表現で俺の作品をウンコ扱いしてんじゃねぇよ!」
「で、この主人公って、この事実を知った後って、どうなったんですか?」
「そう言うのはな?読み手が各々、考えるんだよ。」
「なるほど。」
「そこからが読み手の想像力の腕の見せ所だよ。」
「なるほど。」
「お前みたいに、顔がカワイイだけで、取り柄は足が速いだけのヤツなら、どう想像する?」
「私なら・・・・・・・・・?」
「・・・・・・・・・お前なら?」
「とりあえず、お風呂に入ったと想像しますね!」
「はあ?」
「だってこの主人公、作品中に1度もお風呂に入ってないんですよ?だから先生!お風呂に入れてあげて下さい!」
「まさか!?お前?」
「書き直して下さい!」
「まさかだよな?」
「これが1番、意味不明だったんですよね。」
「そこかーっ!」
「はいっ!」

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