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2013年11月27日 (水)

「第三百八十九話」

「ん?」
風呂から上がると、秘書兼助手がビール片手にテレビを観ていた。
「ああ、所長。」
「ああ、所長じゃねぇよ。朝っぱらからビール片手にテレビ観てる女子がこの街でなんて呼ばれてるか知ってるか?」
「美女?」
「クズだ!」
「残念。でも所長だってビール飲んでるじゃないですか。」
「風呂上がりには、ビールだろ!」
「と言うか、何で所長、朝からお風呂に入ってるんですか?確か、夜派でしたよね?」
「それがな。何かよく分からねぇけど、とにかく風呂に入らなきゃ!って思ったんだよ。」
「へぇ~。相変わらず不思議な方ですね。」
「プハーッ!」
「そうそう。不思議と言えば観て下さいよ、テレビ!この方も所長に負けず劣らず不思議な方ですよ!」
「ん?」
「どうです?」
「行くぞ!」
「はあ?行くってどこにですか!」
「そこだよ!」
「テレビ・・・・・・の中ですか?」
「アホか!さっさと用意しろ!」
最果ての街、欲望の街、逆転の街、人の数だけ、この街の呼び名があるって言うが、本当にあるんだろうか?まあでも、あるって言うんだから、あるんだろうな。そんな街で俺は、探偵をしている。職員は、秘書兼助手しかいないちっぽけな探偵事務所だ。こんな腐った街だから、警察なんてもんが機能してる訳がねぇ。噂では、この街にも真っ当に悪人を裁く警察もいるって聞いた事があるが、俺はいまだにそんな聖人にお目に掛かった事がねぇ。まああれだ。だからって訳じゃねぇけど、探偵の俺は、この街で勝手に事件を掘り起こしては、勝手に解決してるって訳だ。
「ツイてるぞ!」
「ツイてる?何もツイませんよ?」
「頭にじゃねぇよ!これはあれだな!朝から風呂に入ったご利益だな!」
「雨も降ってないのにラッキー?ああでも、雨が降ってたらアンラッキー?不思議な方ですね。」
「おめぇの方がよっぽど不思議ちゃんだ!」
車の中で、秘書兼助手と下らない会話をしてると、お目当ての場所に着いた。
「ビュ~ティフォ~!」
「感動してねぇで行くぞ!」
「所長!アタシ、ちょっとあちらに用が!」
「お、おい!勝手に行くんじゃねぇよ!あちらに用はねぇんだよ!こちらだ!こちら!」
その老人を収容する施設は、めちゃくちゃ立派に聳え建っていた。秘書兼助手が感動するのも頷ける。一体いくら稼げば、老後をこんな場所で優雅に過ごせるんだ?1つだけ言える事は、この中にいる全員、真っ当な人間じゃないって事だな。
「お邪魔します。」
俺は、施設の中でも1階の1番奥にある1番立派な部屋、1104号室を訪れた。
「・・・・・・・・・。」
「ああ、そのままで構いませんよ。そのままでね。でもあれですね?部屋の外は、あんなに警備が厳重なのに、部屋の中は、貴方だけなんですね。申し遅れました。俺は、このイカれた街で探偵をやってる者です。」
「・・・・・・・・・。」
「で、あの庭で珍しい蝶を追い掛けてるのが、って蝶に追い掛けられてんじゃねぇか!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・あれは、俺の秘書兼助手です。んまあ、特に気にしなくて結構です。気にしだしたらキリがないんでね。気になっても気にしないで下さい。」
「・・・・・・・・・。」
「ところで、こんな超豪華なとこに入れるって、一体どんな悪事を働いたんですか?」
「・・・・・・・・・。」
「こりゃあ失敬!いやあ、先入観ってのは厄介ですな!探偵なんかしてると先入観ばっかりですいません。」
「・・・・・・・・・。」
「この街に生きてると、擦れ違う人間、擦れ違う人間、殺人者に見えて仕方ないですよ。でも、殺人者とクソ野郎とを見分ける方法を知ってるんでね。大丈夫です。擦れ違う度に撃ち殺したりなんかしません。」
「・・・・・・・・・。」
「笑顔。」
「・・・・・・・・・。」
「笑顔で分かるんですよ。まあ、事前に資料なんかを見て、殺人者の笑顔を見てないとですけどね。ほら、こんな話、知りません?人間だけが地球上で唯一、笑う動物だ。とか話。」
「・・・・・・・・・。」
「だからね?どんなに整形しようが、体型や性別を変化させようが、根本にある笑顔っては変化させようがないんですよ。」
「・・・・・・・・・。」
「勿論、科学的や医学的、生物学的な根拠なんかありませんよ。これは俺が長年、この街で暮らして来て編み出した業です。まあ、きっと腐りきったこの街でしか通用しない限定業でしょうけどね。」
「・・・・・・・・・。」
「単刀直入に伺います!」
「・・・・・・・・・。」
「ジイさん?この180年前の連続殺人事件の犯人なんだろ?」
「・・・あ・・・・・・ああ。」
「笑っちゃったんだよなぁ?つい?嬉しくて?笑っちゃったんですよね?それを俺がたまたまテレビで見ちゃったんですよ。」
「あああああ!」
「その外で居眠りしてる警備を呼ぶそれは、つまりあれですよね?お認めになられたって事でいいんですよね?」
「あああああああああ!!」
「もっと早く死んでれば、伝説になれたかもしれなかったのにねぇ?長生きはするもんじゃねぇなぁ?」
「!?」
「バン!」

第三百八十九話
「スリーティーズ・シティ・TV」

「てか、何で所長、朝からお風呂に入ってるんですか?確か、夜派でしたよね?」
「それがな。何かよく分からねぇけど、とにかく風呂に入らなきゃ!って思ったんだよ。」
「へぇ~。相変わらず不思議な方ですね。」
「プハーッ!」
「そうそう。不思議と言えば観て下さいよ、テレビ!この方も所長に負けず劣らず不思議な方ですよ!」
「ん?」
「どうです?」
「何が?ジイさんが、この街1番の殺人者からメダルやら盾やら賞状を貰ってるだけじゃねぇか!」
「この街1番の殺人者って!市長さんでしょ!」
「だから、何なんだよ。何でこんなジイさんとこに、わざわざこの街1番のグズが?」
「市長さんですってば!何でって!昨日がこのお爺様の200歳のお誕生日だったからですよ!」
「ブーッ!200歳!?」
「汚っ!ビール吹き出さないで下さいよ!」
「吹き出すだろ!200歳ってマジか!」
「マジです!ほら、市長さんと並んで写真撮影して、とっても嬉しそうですよ!あ、所長も300歳まで生きれば市長さんの側に近付けるんじゃないですか?」
「行くぞ!」
「はあ?行くってどこにですか!」
「そこだよ!」
「テレビ・・・・・・の中ですか?」
「アホか!さっさと用意しろ!」
最果ての街、欲望の街、逆転の街、人の数だけ、この街の呼び名があるって言うが、本当にあるんだろうか?まあでも、あるって言うんだから、あるんだろうな。そのノリで言わしてもらうんなら、有名になっちゃいけない街、だ。
「お邪魔しま~す。って、所長!遂に殺してしまったんですか!?」
「アホか。空砲だ。こんだけチューブまみれのジイさんだ。強い光を見ただけでも心臓麻痺だろう。」
「ならやっぱり空砲殺人では!?」
「アホ。そもそもジイさんは、俺が空砲を撃つ前に罪の意識の重圧が引き金になって心臓麻痺で自ら絶命の道を選んだ。」
「ならばなぜ、撃ったのですか?」
「ノリ?」
「所長?いい加減に、あらゆる策を練って殺人者を自殺的な方向に追い込むと言う面倒臭い方法をやめて、頭に銃弾を撃ち込まれたらいかがでしょう?」
「やっぱりアホだなぁ?それじゃあ、俺も殺人者じゃねぇか。しかし、盲点だったと言うかなんと言うか、180年前の殺人事件が掘り当てられるとはな。こりゃあ、事務所に帰ったら根本から資料の読み直しだな。って、その前にだ。俺達の防犯カメラの映像の削除を頼む。」
「もう、完了しました。」
「はっはっ!やるな。」
「あと、外で眠ってる警備の方々の一部記憶の削除も完了してます。」

「さすがだ。よし、帰るぞ!」
「はい。」
「ああ、それとな。」
「はい?」
「俺が300歳の時には、街1番のクズはさすがに死んでるだろ。」
「ああ、ですね。」
「大体、お前の技術でそろそろどうにかならねぇのかよ。」
「市長さんのセキュリティは完璧です。もう少し時間を下さい。」
「俺が生きてる間に何とかしてくれよ?」
「はいっ!」
「さあ、帰ってまずは風呂にでも入るかな!」
「またですか~!」

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