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2013年12月 4日 (水)

「第三百九十話」

「確か、この辺だったか?」
「ん?」
「丁度、この大きな木の裏側の根元だ。」
「懐かしいな。この大きな木。」
僕は今、友人と懐かしい匂いがする神社に来ていた。何一つ当時と変わらない場所。ここに今、変わったものがあるんだとするならそれは、僕らなんだろう。
「よし!じゃあ、やるか!」
「はい?やるって、何を?」
「ここに来てやるって言ったら一つしかないだろ?俺達が、お互いに宛てて書いた20年後の手紙を掘り起こすんだよ!」
「はあ?」
「さすがにもう、目印は無くなってるみたいだな。まあ、この辺を掘ってれば、そのうち見付かるだろ!行くぞ!」
「ちょっと待った!」
「何だよ。」
「何してんだよ。」
「だから、20年後の手紙を掘り起こすって言ってんだろ?行くぞ!」
「ちょっと待った!」
「何だよ!」
「何してんだよ!」
「お前なぁ?掘り起こさなきゃ!20年後の手紙が読めないだろ?あれか!書いた内容を思い出して、ビビってんのか?」
「いや別にビビってないよ。」
「あれだろ?何だか、むず痒くなるような内容なんだろ?その気持ちは分かる!俺だってそうさ!でも、掘り起こさない事には何も始まらない!20年後の手紙を20年後に読まなきゃ、書いた意味が無い!」
「その通りだよ!」
「だろ!行くぞ!」
「だろ!行くぞ!じゃないよ!」
「何なんだよ!」
「18年だろ!まだ20年後の手紙を埋めてから18年だろ!20年後の手紙は20年後に読まないと、書いた意味が無いんだよな?だったら何で今なんだよ!何で18年後の今なんだよ!」
「20年も18年も同じようなもんだろ?」
「違うだろ!20年と18年は、全然違うだろ!何で同じなんだよ!2年だぞ!2年も違うんだぞ!」
「メダカで言ったらな。」
「僕らで言ってもだよ!いやそもそもメダカで言ったらってなんだよ!」
「ごめん。じゃあ、行くぞ!」
「行かないよ!行かないだろ!20年後の手紙を18年後に掘り起こすなんて絶対ダメだろ!47歳の自分らに申し訳ないだろ!」
「でも考えてもみろよ。45歳の今の方が、何かキリが良くないか?」
「いやキリとか、そう言う問題でねじ曲げていい事じゃないだろ!だったら何で25の時に提案しなかったんだよ!」
「その当時は、25より27の方が、カッコいいと思ったからさ。でも、45になってさ。47より45の方がカッコいいと思った訳だな。よし!行くぞ!」
「行かないよ!行かないんだよ!絶対に行かせる訳がない!と言うか、どんな理由だよ!あと、2年だよ?待とうよ!18年も待ったんだから、2年なんてあっという間だよ。」
「いや、2年は長いぜ?2年を侮っちゃいけねぇよ?」
「誰だよ!と言うか、その2年を侮ってんのは、お前だからな!」
「じゃあ、分かった!25の時に書いて埋めた体でどうよ!」
「よくもそんな記憶をねじ曲げる提案を持ち掛けて来れたな。了解すると思ってんのか?」
「帰りにジュースおごってやるからさ!」
「僕は、たかだかジュース一本で2年を無い事にするのか?18年も待ったのにか?」
「誰もジュース一本とは、言ってないだろ?」
「本数の問題じゃない!この2年は!どんな大金を積まれようが買収出来ない2年だろ!思い出は金や物には代えられない!そう言うもんだろ!」
「悪かったよ。確かに、お前の言う通りだ。俺、どうかしてたよ。本当にすまない。」
「分かってくれたんなら、それでいいよ。」
「だから今日は、20年後の手紙が、まだちゃんとあるかどうかを確認するだけにしよう!」
「絶対読むよな!それ絶対読むパターンだよな!読まずにはいられなくなるに決まってるだろ!と言うか、お前は口ではそう言ってるけど!20年後の手紙がちゃんと埋まってるか確認するだけとか言ってるけど!そんな気、更々無いだろ!読む気まんまんだろ!」
「俺だけ読むで、お前は確認ってのは?」
「ここに来て、どんな提案だよ!お互いに宛てた20年後の手紙を18年後に掘り起こして、その横で20年後の手紙を読んでる友人を見てる18年後の僕って、どんだけシュールな空間なんだよ!」
「面白いだろ?」
「18年後のお前を喜ばす為に書いた訳じゃないよ!」
「これはどうだ?」
「いや、もはやどんな提案でも却下な雰囲気を察せよな!」
「俺達は、47歳!」
「はあ?」
「2年後の未来から20年後の手紙を読みに来た!ってのはどうよ?」
「いやまず、47の僕らは、47なんだから、わざわざ2年前にタイムトラベルする必要性が無いだろ?堂々と20年後の手紙を47の現在で読める歳なんだから!」
「だから、手紙の内容が同じかどうかを確認しに来たんじゃないか!」
「バカだろ!そんな無意味な事してる僕ら、バカだろ!同じに決まってるだろ!」
「分かんないぜ?行くぞ!」
「ちょいちょい!何しようとしてんの?」
「確認だけど?」
「いや現実的に45なんだから、それ許されないだろ!」
「頼む!そこを何とか!お願いします!」
「物凄い懇願!?いや何?死ぬの?何か病に侵されてんの?余命的な感じで、あと2年生きられないって医者に言われたの?」
「医者には、健康優良児ってお墨付きだ!」
「児ってなんだよ!児って!だったら、2年後に掘り起こせばいいだろ?」
「俺は健康優良児だけど、お前はどうか分からないだろ?明日死ぬかもしれないじゃないか。」
「そんな事を言い出したらキリが無いだろ!誰だっていつ死ぬか分からないんだら!そう言う事態も踏まえた上での20年後の手紙だったんじゃないの?」
「じゃあ!明日、地球が滅亡したら!お前は今のこの状態を後悔しないのか!あいつが言うように、20年後の体で手紙を読んどけば良かったって後悔しないのか!」
「じゃあ!って何だよ!じゃあ!って!どこまで規模を拡大させるつもりだよ!滅亡する訳がないだろ!」
「お気楽なヤツだ!」
「20年後の手紙を書こうって提案して来たヤツに言われたくないね!」
「行くぞ!」
「どんな思考回路してるんだよ!」
「せーの!」
「せーの!じゃないよ!」
「誰が何と言っても俺は今日!20年後の手紙を読むぞーっ!」
「何を宣言してんだよ!絶対ダメだからな!」
「明日ならいいのか?」
「ダメだって!2年後だって言ってるだろ!さあ帰るぞ!」
「帰らない!」
「座り込むとかやめろよな!」
「絶対に帰らない!」
「お前なぁ。」

第三百九十話
「そんな手紙は存在しない」

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