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2014年1月 1日 (水)

「第三百九十四話」

 小さな男の子が眠るその家には今、サンタクロースが二人いる。
「こりゃ驚いた!?先客がいたとはな。」
年老いたサンタクロースと
「おいおいおい、先客がいたかじゃねぇだろ?」
中年のサンタクロース。

第三百九十四話
「サンタクロースルール」

「で?もうプレゼントは、靴下の中に入れてあげたのかな?」
「リビングにあるデカいツリーに付けられてる靴下の中にプレゼントを入れようとしたまさに今、アンタが後ろから話し掛けて来たんじゃねぇか。」
「ほうほうほう。そうか。さあ、ワシに遠慮する事はない。プレゼントを靴下に入れてあげなさい。」
「おいおいおい?ジイさん。アンタ、笑い事じゃないだろ?その歳で知らない訳ないよな?」
「サンタクロースは、子供が眠る家に同時に二人以上存在してはならない。」
「そうだ。サンタクロースルールの基本中の基本だぞ?オレのソリと目印の存在に気付かなかったじゃ済まされないぞ?」
「今日は、随分と冷え込むと思ったら、ほら窓の外を見てご覧なさい。いつの間にか、ホワイトクリスマスになっているじゃないか。」
「人の話、聞いてんのか?」
「この家の小さな男の子は、ちゃんと暖かくして寝ているかね?プレゼントはやはり、車のオモチャか?それとも、ロボットのオモチャかな?」
「いい加減にしろよ?ジイさん、アンタ一体何が目的なんだ?」
「サンタクロースの目的と言ったら、サンタクロースルールの最初にある、サンタクロースは子供達を笑顔にするプレゼントを贈る、だろ?」
「ああ、そうだな。だけど、オレが言いたいのは、そう言うサンタクロースルールじゃない。」
そう言うと中年のサンタクロースは、大きな袋の中から、銃を取り出し、年老いたサンタクロースに向けた。
「ワシを撃つのか?」
「撃つか撃たないかじゃないだろ?撃つんだよ。この場合、それ以外の選択肢なんか存在しねぇじゃねぇか。」
「小さな男の子が眠っているこの家で、ワシを撃つのか?サンタクロースがサンタクロースを殺すのか?」
「小さな男の子がいるからこそだろ?」
「なるほど、まあそれもそうだな。」
「何のつもりだ?」
年老いたサンタクロースもまた、大きな袋の中から銃を取り出し、それを中年のサンタクロースに向けた。
「ワシが殺されないようにするには、これしか方法がないだろ?」
「権利はオレにある!先に家に入ったのはオレじゃねぇか!」
「権利?そんな権利は存在しない。聖なる夜の極稀な奇跡的状況下に置いて、権利なんてものは存在しない。サンタクロースルール、もしサンタクロースが子供が眠る家で会話を交わしてしまった場合、サンタクロースが一人になるまで殺し合う、それがお前さんの大好きなルールだろ?先にいた者の権利などない。」
「ふざけるな!」
「ワシは、ふざけてなどいない。サンタクロースに与えられた平等な権利を言ったまでだ。それより、そんな大声を出したら、小さな男の子が起きてここへやって来てしまうぞ?」
「起きる?ジイさん、アンタがこの家に入って来た時点で、子供の眠気は覚め続けてんだよ!非常事態なんだよ!呑気に後ろからオレに話し掛けてる暇があったら!お互いにお互いを認識する前に、とっととこの家から出て行くんだったな!」
「昔から不思議に思っていた。なぜ、サンタクロースがこうして二人以上存在してしまうと、眠りに誘う力が失われてしまうのか?それも寄りにも寄って子供達だけにそれは働いてしまう。」
「昔話に華を咲かせてる場合じゃねぇんだよ!こんな事をしてる間に!もう既にそのドアの向こうに男の子が突っ立ってるかもしれねぇだろ!」
「皮肉なもんだ。ある種のリスクのようなモノなのかもしれないな。或いは、矛盾のような力が働いてるのかもしれないな。」
「この世の真理についての不条理で理不尽な苦情なら!あの世に行って神様にたっぷりと聞かせてやってくれ!」
「サンタクロースが殺し合わなければならないこの状況、1つだけ回避する方法があるとしたら、お前さんどうする?試してみたいと思わないか?」
「何だと!?」
「それはまだ、誰も試みた事のない方法。いや、どんなサンタクロースも考えに及ばない考え。」
「あるのか?そんな方法が!?」
「おそらく、もうすぐあのドアの前に立つであろう小さな男の子が、ドアを開けて我々の姿を目にする前に、撃つ!」
「ジイさん、アンタ一体何を言ってんだ!」
「サンタクロースは、子供に姿を見られたら灰になる。それがサンタクロースルールだ。しかし、その元凶を排除したらどうなると思う?」
「バカな!?オレ達は、サンタクロースだぞ!サンタクロースが子供を殺すなんてあっちゃならない!」
「知りたくないか?この真理の真実を?サンタクロースは、子供を殺す事が出来るのか?」
「ジイさん、アンタまさかそれが狙いで、わざとこの家に入って来たのか!?わざとオレに話し掛けたのか!?」
「そうだ。」
「ふざけるな!」
「躊躇ったな?ワシを撃つその一瞬の躊躇いもまた狙いだった!」
年老いたサンタクロースがドアの方へ銃を向けると、ゆっくりとドアノブが動いた。
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
「さあ、真理の真実を!ん?」
「・・・・・・ジイさん、アンタ、バカヤロウだよ。」
「なぜだ!子供に姿を見られていないのに、なぜワシの体が灰に!?」
「出来る訳がねぇだろ?オレ達はサンタクロースなんだぞ?」
「うおおおおおおおおおお!!」
「ジイさん、まったく最高のプレゼントじゃねぇか。お互いにとってのな。」
「き、きさまあああああああああ!!」
「オレも知りたかったんだよ。サンタクロースが子供を殺そうと本気で実行しようとした瞬間、一体何が起こるのかをな。メリークリスマスだ。ジイさん。」
年老いたサンタクロースは、灰になり煙突から吸い出されて行った。
「・・・・・・ギリギリだったな。」
サンタクロースは、子供を殺す事は出来ない。それはサンタクロースルールに記載すらされる事のない基本中の基本。

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