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2014年1月22日 (水)

「第三百九十七話」

どうなっている?どうなっているのだ?これは国家の陰謀か?宇宙人の嫌がらせか?もう、とっくに用を足し終えたと言うのに、なぜだ?尻も拭き終えてズボンも履き終えているのになぜ、私はトイレから出られないのだ?トイレは普通、用を足し終えたら出られるモノではないのか?
「おーい!誰かいないのかー!」
真ん中に入ったからか?27ある個室の真ん中に入ったからなのか?意気揚々と調子に乗って真ん中に入ってしまったからなのか?いや違う。私は、鼻歌混じりのスキップがてらで真ん中の個室に入った訳ではない。ないのだよ。顔面蒼白で卸したばかりのパンツを失う覚悟で真ん中の個室に入ったのだ。閉じ込められる筋合いはない。微塵もないのだよ!そもそも、真ん中だからって何なのだ?
「んんんんん!出られない!」
カギがバカになってるのか?いいや、カギはバカになってなどいない。カギは、正常に作動している。開閉開閉開閉開閉開閉、と。そしてドアも正常に作動している。開閉開閉開閉開閉開閉、と。正常に作動しているのだ。ならば、もう一度カギを開け、ドアを内側へ。
「んんんんんんんんんん!」
ここっ!この個室と個室でないとこの空間!ここに何か見えない壁みたいなモノがある!あるのだよ!!信じられないかもしれないが、確かに壁みたいなモノは存在する!するのだよ!!ここに!空間と空間の間の空間に!
「一体全体どうなっているのだ!」
こうしてドアを開けっ放しでは、まるで私は見せ物になってしまうからと仕方無しにドアを閉めるが、どうしたものか。一体この一連の作業を何度繰り返せば、見えない壁は私の前からなくなるのだ?
「なぜだ?」
便座に座って考えてみても考えてみても考えてみても考えてみても、なぜだ?しか頭の中に浮かんで来ない。来ないのだよ。私がトイレに閉じ込められなければならない理由が思い浮かばない。浮かばないのだよ。そもそも私をトイレに閉じ込めたからと言ってどうなのだ?誰かが何か得をするのか?
「おーい!」
だいたい、なぜこんなにも大型の公衆トイレだと言うのに、ずーっと誰も来ないのだよ!ずーっと誰も来ないのだよ状態なのに、どうしてこんなにも大型の公衆トイレなのだよ!それなりの需要があるからの供給なのではないのか?たまたま、そう言う時間帯なのか?たまたま、そう言う時間帯で、そう言う曜日なのか?だったら仕方無い!だとしたら仕方が無い!
「うああああああああああ!!」
仕方が無いからと言って納得出来るモノと納得出来ないモノとがあり、この現状は確実に仕方無いからと言って納得出来ないモノのであるのは、事実過ぎるのだよ!
「カギを開け、ドアを内側へ。」
行ける!今度こそは、こっち側からあっち側へと行ける!私は、行ける!絶対に行ける!誰が何と言おうが行ける!地球が滅亡しても行ける!まあ、実際には地球が滅亡したら行けないが、それぐらいの気持ちな感じで行ける!一歩踏み出し、目を開けた時には、私はこっち側ではなく、あっち側に立っていて、あっち側がこっち側となり、こっち側はあっち側となっている!いるのだ!いるに決まっているのだ!
「んんんんんんんんんん!って、何なのだよ!何なのだよーっ!!」
落ち着こう。少し落ち着こうではないか。まず、こんな事は、有り得ないのだよ。見えない壁?馬鹿馬鹿しい。見えない壁って何なのだよ。そんなモノが現実に存在する訳がないではないか。全く私も、おっちょこちょいだな。少し、ほんの少し冷静になれば分かる事ではないか。普通に、いつも通りに、落ち着いて、すっきりな表情をして、出て行けばいいのだよ。簡単な話ではないか。冷静に、実に冷静に、ベテランな感じで、紳士的な感じで、こんなモノはこんなモノだと当たり前の事過ぎて余裕すら見せずに、いつも通り。それでいいのだよ。それがいいのだよ。変に何かを意識せず。スッと、それはもう、スッとあっち側へ行けばいいのだよ。行ってしまえばいいのだよ。
「んんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!もーーーーーっ!!!」

第三百九十七話
「記憶喪失のパントマイミスト」

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