« 「第三百九十五話」 | トップページ | 「第三百九十七話」 »

2014年1月15日 (水)

「第三百九十六話」

 女が辿り着いた場所は、ビルの屋上。柵に手を置き、下を覗き込み辺りを見渡していた。
「何ででしょう?なぜか、こう言う追跡劇の果てに辿り着く場所がビルの屋上になってしまうのは?」
女が辿り着いてすぐ、男が屋上へやって来た。
「さあ?貴方、刑事?」
「まあ、一応。そう言う貴女は、オーガンプラスですよね?」
男は、ゆっくりと女の方へと歩き出した。

第三百九十六話
「オーガン・プラス」

「はあ?オーガンプラス?意味が分からないわ。てか、何でアタシが刑事に追われなきゃならないの?」
「なるほど。惚ける方向ですか。じゃあ、刑事らしく聞き直しますが、貴女、殺人犯ですよね?」
困惑する女と呆れる刑事。その距離は、一定に保たれていた。
「ちょっと何よいきなり!?どうしてアタシが殺人犯な訳!」
「そっちも惚ける方向ですか。」
激怒する女と呆れる刑事。
「いや、そっちとかこっちとかあっちとかじゃないわよ!別に惚けてないわよ!ちょっと待って?貴方、本当に刑事なの?まさか、貴方が殺人鬼なんじゃないの!アタシを殺そうと、こんな場所に追い込んだんじゃないの?」
「まあ、別の角度から見たら或いは、僕も大量殺人犯かもしれないですね。」
「アタシを殺すって言うの!?」
「今のところ、オーガンプラスに対しての対処法が即処刑って方法しかないので、そうなります。」
「そのさっきから言ってるオーガンプラスって何なのよ!アタシはただの雑貨屋よ!」
「知ってます。北欧の雑貨を取り扱っている雑貨屋さんのオーナーさん。」
「そうよ!」
「いつからですか?」
「5年前からよ。」
「ではなくて、オーガンプラスになったのは、いつからですかと聞いたんですよ?」
「ねぇ?帰っていい?明後日から現地に仕入れに行かなきゃならないの。その準備とかで忙しいの。刑事さんの訳の分からない話に付き合ってる暇なんてないのよ。」
「だから、今日なんですよ。海外に逃げられたら、手出し出来なくなってしまいますからね。」
「帰るわ!貴方の妄想話に付き合ってる暇なんかないの!」
女は屋上の出入口の方に、少し早足で向かった。
「やれやれ。」
そう言う刑事の横を通り過ぎ、屋上の出入口へと向かった。そして、辿り着いた出入口の前に立ち、最後に一言言ってやろうと刑事の方を振り向いた。
「な、何してんの!?」
刑事は、銃を女に向けていた。
「だから、言いましたよね?今のところ、オーガンプラスに対しての対処法が即処刑って方法しかない、と。」
「何なのよ!いい加減にしてよ!オーガンプラスって何よ!アタシ、そんなんじゃないわよ!」
「貴女、右手からマグマが出せますね?」
刑事は、拳を握って左手を女の方へ突き出した。
「はあ?」
「それが、オーガンプラスです。まあ、どこかの偉い研究者達が勝手に名付けただけですけどね。聞いた事ないですか?超超能力って?」
「スプーンを曲げるとか念写とか?」
「それは、超能力です。超超能力と言うのは、時間を止めれたり、無機物に生命を与えたり、あらゆるモノを爆発物に変化させられたり、右手からマグマが出せたり、などなど。」
「意味が分からない。とても意味が分からない。」
「そう言う、超超能力を使える者の事をオーガンプラスと言うんです。オーガンプラス、つまりは、普通の人より体内に臓器がプラスされているんです。まあ?臓器と言っても、正確には臓器のようなモノであって、臓器ではないんですけどね。ただ、その臓器のようなモノによって、超超能力が引き出されているのは事実です。そして、貴女の場合、超超能力で右手からマグマを作り出せると言う訳です。」
「頭、大丈夫?」
「行方不明の彼氏、貴女が右手から作り出したマグマで、溶かしちゃったんですよね?違いますか?彼氏だけじゃない。友人や親戚、隣人や赤の他人、貴女の回りの行方不明の人間全てを!遡ればそれは、小学生時代、同級生から。貴女、一体いつからオーガンプラスなんですか?」
「証拠は、あるの?行方不明の人を全員アタシが殺したって証拠は、あるの?」
「無いです。」
「はあ?証拠も無いのに、アタシを殺人犯だって言ってるの!」
「正確には、実際の証拠はありません。データ的な証拠だけです。」
「データ的?」
「昔は、分からなかったんですが、今は時代が進んだんです。その人間がオーガンプラスかそうではないかが確率的に分析出来るんです。そのオーガンプラスが、どんな超超能力を使えるのかまでもです。勿論、全てのオーガンプラスが、超超能力を犯罪に使っている訳ではありませんがね。」
「その分析が間違ってる可能性だってあるじゃない!」
「なるほど。そう疑ってきますか。しかしね?分析力は、100%なんですよ。間違いはないんですよ。有り得ないんですよ。そう言う時代なんですよ。科学力、なめてもらったら困るんですよ。つまり、貴女は完全にチェックメイトなんです。」
「そうかしら?」
女は、右手を刑事に向けた。
「ああ、僕をマグマで溶かしちゃうって訳ですか?」
「さあ?」
「いやいや、やる気まんまんですよね?」
「一人でアタシを追跡して来たのが、間違いだったわね。さようなら。」
女の右手から出たマグマは、刑事を包み込んだ。
「バカね。」
「バカは、貴女です。」
「えっ!?」
女は、声のする後ろを向いた。そこには、さっき目の前でマグマに包み込まれた刑事が立っていた。
「僕の超超能力は、ドッペルゲンガー、もう1人の自分を作り出せるんです。そうやって、貴女がオーガンプラスである決定的な証拠を掴むんです。」
「何ですって!?」
「僕は、沢山の嘘を付きました。申し訳ありません。いくら時代が進んだって、分析力100%は有り得ません。確かにウチの分析官は、とても優秀なオーガンプラスです。しかし、最終的には、やはりこうした足での捜査が基本です。」
「バン!」
そう言い終わると、刑事は女の左肩を撃った。
「や、やっぱりバカは貴方よ。この距離で外すなんて、致命的過ぎるでしょ。しかも、銃が撃てるって事は、貴方は本物。アタシは、この距離で外すなんてバカな事はしないわよ?」
「・・・・・・・・・。」
「死ね!!」
「・・・・・・・・・。」
「ど、どうして!?何でマグマが出ないの!?」
「原理は、実に原始的な話です。超超能力を発動させている臓器のようなモノを破壊したんです。」
「えっ!?」
「心臓を外した訳ではなく、左肩のそれを撃って破壊しただけです。これで、貴女はもう、オーガンプラスではありません。」
「・・・・・・・・・。」
「中には、死んで罪を償わなければならない場所に臓器のようなモノが存在するオーガンプラスもいます。こうして、生きて罪を償えるだけ、貴女は幸運なんですよ?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・逮捕します。」
刑事は、女に手錠を掛け、そして2人は屋上から立ち去った。

|

« 「第三百九十五話」 | トップページ | 「第三百九十七話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/54620930

この記事へのトラックバック一覧です: 「第三百九十六話」:

« 「第三百九十五話」 | トップページ | 「第三百九十七話」 »