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2014年2月

2014年2月 5日 (水)

「第三百九十九話」

「何落ち込んでんだ?」
「えっ?」
それは、突然だった。
「ここいいか?」
「えっ?」
既にコーヒーカップとフレンチトーストの皿を持ち、向かいの席に座ろうとしているこの男に対して、僕に断る選択肢があるんだろうか?
「何だ?仕事が上手く行かないとかか?」
「はあ。」
「そうかそうか!まあ、そんな時もあるってもんだ。ほら、これでも食って元気出せ。」
「えっ?」
そう言うと男は食べ掛けのフレンチトーストの皿を僕の方へと滑らした。確かに僕は、今日も訪問セールスの成果が出ずに、昼過ぎだってのにこの喫茶店でサボっていた。門前払いにもならなきゃ、たまに話に耳を傾けてくれると言ったら一人暮らしの老人達で、小一時間の世間話の帰り際には、決して商品のカタログを受け取ろうとはしない。
「半永久的に需要が無くならない仕事をしてる俺には、アンタの辛さは分からないが、悩みや不平不満を聞いてやる事は出来る。」
「はあ。」
半永久的に需要が無くならない仕事?墓掘り人でもしてるのか?それとも保険のセールスマンか?にしてもこんなド派手に着飾ってる訳がない。それとも僕が知らないだけで、墓掘り人ってのは、プライベートではみんな、ブランド物のサングラスを掛け、ブランド物のスーツを着て、ブランド物の腕時計をつけて、ド派手にゴージャスに、着飾ってるのか?いやそれ以前に、なぜこんなにも上から目線で話されなきゃならないんだ?一体この男は、どんな仕事をしてるんだ?
「で、この前も女が言うんだよ。それは」
「あのう?」
「いやいやいや、待て!ここからが面白いんだ!ダメだ!何か聞きたい事があるならその後だ!」
「貴方は、一体何の仕事をしてるんですか?」
「おいおいおい、待てって言っただろ?何で質問してくんだ!」
「教えて下さい。半永久的に需要が無くならない仕事って、何なんです?」
「・・・・・・・・・・・・分かった。教えてやるよ。」
「ありがとうございます。」
「これを使う。」
「ナプキン?」
男は、スーツの胸元の真っ赤なナプキンを取り出して、目の前で何かを拭くジェスチャーを始めた。
「どうだ?」
「どうだ?って言われても、何かを拭いてるとしか?何かを拭く仕事って事ですか?それが半永久的に需要が無くならない仕事って事ですか?」
「そうだ!俺はこうして、空気を拭いてる!」
「はい?」
単に僕は、男にからかわれているのか?空気を拭くって何だ?空気を拭いて何なんだ?
「この国の空気が世界で一番綺麗なのは、知ってるよな?」
「はい。でもそれは、山々に囲まれた自然豊かな国だからですよね?」
「まあ、確かに山々に囲まれた自然豊かな国だから、他より空気が綺麗だってのはある。でもな?それを数字に表したら、2位の国との差は、プラス3ってとこだ。」
「プラス3!?そんな馬鹿な!?発表された2位の国との差は、約プラス7000だったはず!?」
「だから、その驚異的な数字を叩き出したのは、これだよ。」
男は、得意気に自慢気に笑みを浮かべながら、再び赤いナプキンで僕と男の間の空間を拭くジェスチャーをした。
「信じられない。」
「おい、おいおいおい、信じるか信じないかは、アンタの勝手だ。アンタが信じようが信じまいが、俺が空気を拭く仕事をしてる事は事実なんだからな。それによって、この国が世界で一番空気が綺麗な国だって事もな。だけど、アンタは何を持って信じようとしないんだ?」
「だって、そんな仕事、聞いた事も見た事もない!」
「今聞いて、今見たろ?自分が無知でいるのはいい。それはそいつが好きで無知でいるんだからな。ただ、その自分の無知で、世界を見るな。そして、語るな。」
「つまり、それは?」
つまりそれは、男が言ってる事が本当で、この国を世界一空気が綺麗な国にしてるって事なのか?信じたくても信じられない事が今、僕の目の前で唐突に起こったって事か?そう言う事なのか?つまりこれは、そう言う事なんだよな?
「で?」
「は、はい?」
「俺の仕事は話した。アンタは、一体どんな仕事をしてるんだ?どんな仕事をして落ち込んで、この喫茶店で昼間っからサボってるんだ?」
「えっ?」
「当ててやろうか?そうだな?訪問セールスをしてるだろ?」
「何で分かったんですか!?」
「そんな驚く事ないだろ?ほら、アンタの鞄から何かのカタログがはみ出てるからだよ。」
「あっ!」
「で?一体何を売り歩いてるってんだ?」
「あちょっと!」
コンマ数秒、男の腕を掴むのが間に合わなかった。男は、鞄からはみ出してたカタログを抜き取り、ページを捲り、まじまじと見ていた。
「・・・・・・・・・プッ!ハハハハハハハッ!」
「・・・・・・・・・。」
そして、抱腹絶倒。
「おいおいおい、マジか?こりゃあ、何かのジョークか?」
「ジョークなんかじゃないよ。」
「ハハハハハハハッ!」
「・・・・・・・・・。」
「あれか?だったら、俺を笑い殺しに来た殺し屋か?」
「そんな訳ないだろ。」
「ハハハハハハハッ!お、おい!こ、こ、これは、この山々で囲まれた国で船を売るより難しいぞ!」
「・・・・・・・・・かもな。」
「そりゃあ、落ち込んでる訳だ!ハハハハハハハッ!」
「・・・・・・・・・。」
目の前で抱腹絶倒な男を心の底から本気で死ね!そう僕は思った。
「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ!!!」
「・・・・・・・・・。」

第三百九十九話
「空気清浄機を売る男」

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2014年2月12日 (水)

「第四百話」

「ピーンポーン!」
朝早く、友人からの電話で叩き起こされ。まだだいぶ夢世界と現実世界とを行ったり来たりだが、大事な話があるから今すぐ来て欲しいと言う友人からの電話に、今日が特に予定も何もない1日だったら、こうして駆け付けるのが友人ってもんだ。
「はーーーー。」
寒い。それにしても今日は特に寒い。てか、今気づいたけど、まだ日の出前じゃないか!?そして遅い!ワンルームタイプなのに何でドア開けるまでこんなに掛かるんだ!
「ガチャ。」
「おせーよ!」
「ごめん。二度寝してた。」
「何でだよ!」
「上がってくれ。」
「この状況で帰ってくれって言われたら、かじかんだこの手で、ぶん殴ってるとこだよ。」
「バタン。」

第四百話
「交換殺人」

「はあ?交換殺人?」
「そうなんだよ。」
「まだ日の出前に呼び出して、温かいインスタントコーヒー飲みながら聞かされる話が、交換殺人?」
「そうなんだよ。」
「どうなんだよ!何がそうなんだよ!言ってる事、分かってんのか?交換殺人って、殺人だぞ?人を殺すって事なんだぞ?てか、交換殺人って、なに!」
「分かってるよ。交換殺人ってのは、お互いの殺したい相手を交換するって殺人だよ。」
「いやお前、何も分かってない!それは単なる殺人じゃなくて!交換、つまりは、俺の殺したい相手をお前が、お前の殺したい相手を俺が、殺すって事なんだろ?」
「だからそう言ってるじゃないか。」
「いやいやいやいや、お前分かってない!」
「分かってるよ。」
「えっ?お前、殺したい相手がいるって事なのか?」
「でなきゃ、日の出前に呼び出したりなんかしないよ。」
「いや別に交換殺人の話すんのに連絡のタイミングとかねーから!それに、いくら友人の頼みだからって、無理な事は無理だ。」
「そこをなんとか頼む!こんな事頼めるのお前しかいないんだ!」
「いやちょっと待てよ。何か?お前には、俺は常に誰かを殺したがってる風に見えてるのか?」
「まあ、難しく言うとそうだ!」
「簡単に言ったらどうなんだよ!いいか?お前には殺したい相手がいるかもしれないが、残念ながら俺には殺したい相手がいないんだよ。だから、無理なんだ。」
「そんなの無理矢理にでも殺したい相手を見付ければ済む話だろ!」
「何で俺が叱られてんだ?意味分からないぞ、この状況。」
「ちょっとその辺、歩いて来いよ!」
「無理矢理に見付けるにも程があるだろ!むしろ、初対面の俺に殺意を抱かせるって、その通行人のその能力凄まじいな!」
「何なんだよお前!頭ごなしに否定ばっかだな!」
「いやいやいやいや、そもそもが急な殺人話を肯定出来る奴を見てみたいよ。いいか?お前がやろうとしてるのは、殺人なんだぞ?人を殺す事なんだぞ?犯罪なんだぞ?」
「それは、お前ら人間がこの地球の支配者面して勝手に決めたルールだろ!」
「お前も人間だろ!何で悪魔目線なんだよ!」
「目線?ブハハハハハハハハ!そう、俺は人間だ!」
「じゃあ何で一旦悪魔をほのめかす発言&大笑いすんだよ!」
「どっきり?」
「成立すると思ったのかよ。」
「いつにする?」
「何が?」
「交換殺人。」
「どうして、こんな間近にいんのに俺に内緒で着々と計画が進行してんだよ!俺には殺したい相手がいないって言ってるし、殺人なんて俺はしねーしって言ってるし!そもそも殺人しようとしてる友人を俺は全力で止めようとしてるんだよ!なあ?考えてもみろよ!交換殺人なんてしてどうなる?お互いの殺したい相手を交換して、それで何なんだ?そこにメリットが見出だせないだろ!結局何だかんだで、2人共逮捕だろ!」
「チチチチチ!」
「チの間隔!」
「違うな。これは、巧妙な完全犯罪なんだよ。」
「どこが?俺には結局単なる2つの殺人事件にしか思えないけど?」
「お互いが殺したい相手とは、お互いに面識はないんだよ。つまり、俺が殺したい相手をお前が殺しても、そこからお前に辿り着くのは、不可能!捜査線上に俺の名前が出ても、お前の名前は出ない!」
「何でそんな事断言出来んだよ!それだけでどこが巧妙な完全犯罪なんだよ!」
「それはお前が俺の殺したい相手を巧みな密室殺人するからだろ!」
「ん?」
「どんな名刑事でも!どんな名探偵でも!絶対に解くことが出来ないトリックを仕掛けるからだろ!」
「バカなの?」
「お前がな。」
「何でだよ!だと思うなら俺に交換殺人の話を持ち掛けるなよ!てか、何なんだよその俺の密室トリックのポテンシャル!」
「高いだろ?」
「どうやって測定すんだよ!」
「今日は?」
「何がですか!」
「交換殺人。」
「何で今日の今日で出来る事なんだよ!舞台の代役じゃねんだよ!」
「舞台の代役みたいなもんだよ!」
「どこがだよ!」
「お前は、俺が殺したい相手を殺すんだ。つまり、お前は俺を演じるって事だ。」
「納得すると思ったのか?とにかく、俺にはお前に殺して欲しい相手もいなけりゃ、お前が殺して欲しい相手を殺すつもりはない。だいたい、お前は誰を殺したいんだよ。」
「彼女。」
「はあ???メチャクチャ俺も顔見知りじゃねーか!」
「いや、アイツはお前の事、嫌いだってさ。」
「いや、の意味が分からない。そして何か凄く精神的にダメージを負った。」
「頑張ろう!」
「何を?てか、相手が俺の事を嫌ってんなら、凄い確率で捜査線上に俺の名前が出んじゃねーか!」
「例え出たとしても密室殺人のトリックは誰にも解けないから大丈夫だ!」
「俺の密室トリック頼みやめろ!てかなぜ密室殺人限定で話が進んでんだ?」
「会社の上司でいいか?」
「何で勝手にどんどんどんどん話が進んで行くんだよ!別に俺は上司を殺したいなんて思ってねーよ!」
「行き付けのバーのマスターか?」
「まず、俺には行き付けのバーがない!」
「んじゃあ!やっぱその辺を歩いてる誰かでいいじゃん!」
「旅行土産じゃねんだよ!とりあえず何でもいっかって話じゃないだろ!いやだから!殺人なんか考え直せよ!彼女殺したいなら!そんなのさっさと別れればいいだけの話だろうが!」
「なあ?」
「何だよ!」
「とりあえずお前は、俺の殺したい相手を殺して、んでお前の殺したい相手が見付かったらそん時に俺が殺すってのは、どう?」
「悪魔的とりあえずだな!いいか!俺は今から帰る!」
「えっ?」
「交換殺人なんかしない!こんな馬鹿げた話をこれ以上する気もない!」
「いやちょっと!」
「彼女の愚痴ならいつだって、何時間だって聞いてやる!もっと冷静になれ!俺がお前に言える事は、今はそれだけだ!じゃあな!」
「ちょっと待てよっ!!」
「何だよ!」
「ここでお前に帰られたら、俺はどうすりゃいんだよ・・・・・・・・・。」
「だから、今は何を話しても無理だろ?ここは一旦別れて、改めて今夜飲みにでも行こう。なっ?」
「ここでお前に帰られたら、風呂場のアレは、どうすりゃいんだよって話だよ!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・アレって?」

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2014年2月19日 (水)

「第四百一話」

「それ以上、余計な事を言うんじゃない!」
「ん?まだ何も言ってないけど?」
「ああ、すまん。何か余計な事を言いそうな顔付きしてたから、つい。」
「余計な事なんか言わないさ。」
「そうか。なら、帰ってくれ。」
「何でだ。お前から呼び出されて、わざわざ大草原に来て、まだ何も始まってないってのに、なぜ俺を帰らせる。」
「これが何だか分かるか?」
「シートで隠されてる飛行機の事か?」
「なんて情緒のない奴なんだ、お前は!」
「だったら、なぜもっと上手くシートで覆わない!」
「ふっふっふっふっふっ!」
「何だ急に?変な蟹でも食べたのか?」
「変な蟹って何だよ!僕はな。遂にやったんだよ!飛行機を完成させたんだよ!このシートに覆われてるモノが一体何なのか!キミに分かるか?」
「サプライズ下手くそか!だから、飛行機だろ?」
「見よ!」
「おお!ってならないぞ?出会った時から既にそんな格好の奴に、案の定なモノを見せ付けられても。」
「赤い飛行機だ!」
「青い飛行機だろ。どう言う緊張だよ。」
「僕はな!この飛行機で、世界初の!地球初の!有人動力飛行に成功する!」
「世界初も地球初も同じだし、有人動力飛行は5年ぐらい前に、どっかの兄弟が成功させたとかって記事を読んだぞ?それもお前とな。」
「世界初!一人っ子での有人動力飛行に成功する!」
「そんな区分けが成立するなら、ほぼ毎日、何かのジャンルで世界初だよ!」
「おい!」
「何で詰め寄るんだよ。」
「友人が遂に飛行機を作った事にまず感動するのが友人ってもんだろ!」
「感動はしてるよ。スゲェなとも思ってるよ。けど何か素直にそれらを前面に出せないのは、お前のせいだろ。」
「感動してるなら、それでよし!」
「いや、いらないよ?ハンカチ。」
「見ての通り、このドルフィン号は二人乗りだ。」
「ネーミングセンス!?飛行機に付ける名前じゃないだろ!」
「僕は、イルカが大好きなんだよ!」
「分かったよ。いいよ。いい、お前が作った飛行機なんだから、お前の好きな名前を付ければいいよ。」
「ありがとう。」
「だから別に必要ないけど、ハンカチ。」
「二人乗りって事は、もう言わずとも分かるだろ?」
「俺も乗るって事なのか?」
「そうさ!僕は、友人であるキミと共にこの大空で鳥になりたいんだ!その感動を共に分かち合いたいんだ!」
「ハンカチ何枚渡して来る気なんだよ!確かに、友としてその気持ちは嬉しいよ。けど、大丈夫なのか?」
「大丈夫にも程があるだろ!」
「どんな言い回しだよ!」
「僕が後ろに乗って操縦する!キミが前に乗って操縦する!どこに不安要素があるって言うんだ!」
「もうその両方共に操縦席ってとこが不安でたまらない!」
「なら、操縦は僕に任せてくれ。」
「何かの拍子に触っちゃいけないモノに触っちゃったらどうすんだよ!」
「その時はその時!」
「その時はその時の確率が異様に高い飛行機に乗りたくないだろ!」
「触らなきゃいいだろっ!!」
「怒りだけで簡単に乗り越えられる問題じゃないだろ。」
「よし分かった!僕が前に乗るからキミは後ろに乗ればいい!」
「何の解決にもなってない!?」
「ジャンケンしよう!」
「何のジャンケン?」
「どっちが後ろの操縦席に乗るのかジャンケンだ!」
「いいよ、お前が後ろに乗りたいなら、乗ればいいだろ?別に俺は、そう言う事を言ってる訳じゃないしさ。」
「マジで?本当に僕が後ろでいいの?良かったぁ。本当に良かった。前の操縦席はフェイクだからな。」
「俺がジャンケンに勝利してたら、どうなってたんだよ!」
「死ぬとこだったよ。キミは、命の恩人だ。」
「お前が命を粗末にし過ぎなだけだろ。何なの?このいちいちハンカチを渡して来る風習?」
「それじゃあ!そろそろ?」
「いや、俺こんな普段着だけど大丈夫か?」
「大丈夫大丈夫!むしろその格好の方が踊りやすいから。」
「踊らないだろ?」
「踊らないの!?」
「踊らないよ。」
「翼の上で踊らないの!?」
「俺、お前にそんな夢語った記憶がないが?」
「会う度に言ってなかったか?」
「だったとしたら、友として注意してくれ。叶える方を選ばないでくれ。」
「まあ、踊らないなら踊らないでいいよ。鳥になってくれ。」
「ああ、そうだな。大空からの景色を堪能させてもらうよ。」
「鷲か?」
「はあ?」
「鷹か?」
「何が?」
「コンドルか!」
「いや別にマジに鳥にならないよ?人間、大空へ行ったら鳥になっちゃうような刻み込まれ方、遺伝子にしてないから。」
「ジョークだよ!ジョーク!大空ジョークだよ!」
「何か、あれだな。あんまり面白くないな。」
「まあ、地面に足が着いてる状態で聞いてもな。」
「じゃあ、完全に言うタイミングおかしいだろ。」
「さあ、お遊びはここまでだ!乗ってくれ!」
「お遊びしてたのは、主にお前だろ?」
「いざ!大空へ!」
「ここまで来たら、おもいっきり楽しませてもらうからな!」
「当たり前だっ!!ああ、あと足元に蟹がいるけど気にするな!」
「気になるだろ!何なんだよ、蟹!」
「もしもの時は食料になる!!」
「えっ!何て!うるさくて聞こえないぞ!」
「これより僕らは、伝説になる。」
「おい!!この蟹は、何なんだよ!!」

第四百一話
「世界初の蟹との有人動力飛行」

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2014年2月26日 (水)

「第四百二話」

「何で顔が真っ赤っ赤なの?」
「ドヘヘヘヘへ!ガキ、それは俺様が、悪だからだ!」
「悪は、顔が真っ赤っ赤なの?」
「そうだ!」
「あの人も悪?」
「そうだ!」
「あの人も?」
「そうだ!」
「あの人も?」
「そうだ!」
「あの人も?」
「そうだろ!悪の秘密基地なんだから、ここにいるのはみんな悪だろ!」
「でも、悪は、顔が真っ赤っ赤なんでしょ?」
「ゼバババババ!そうだ!」
「顔が真っ赤っ赤なのは、おじさんだけだよ?あの人は、黄色だし、あの人は、青いし、あの人は、カラフルだよ?」
「おじさんはな。悪の中でもメチャクチャ悪だから、顔が赤いんだ!」
「そうなんだ。」
「そもそもこの状況で、俺様以外が悪じゃないと思うか?小学校の先生の顔が黄色いか?喫茶店のマスターの顔が青いか?ヨガの講師の顔がカラフルか?そんな事よりも根本的に人間と容姿が違うだろうが!」
「違うって言ってもツノがあって、キバがあって、厳ついスーツにマントだけど、こうして普通に話してるよ?」
「恐くないのか?」
「恐いよ!!メチャクチャに恐いよ!!」
「こっちが恐いだろ!急に何だ!何で急に大声だ!」
「あ、ごめんなさい。つい、大声出しちゃった。本当にごめんなさい。だから、食べないで!」
「食うか!」
「えっ?食べないの!?悪なのに!?悪なのに子供食べないの!?」
「おいガキ、どんな偏見だ!悪がみんな人間を食うと思うな!」
「人間食べないの!?じゃあ、おじさん達は何を食べるの?」
「はあ?何をって、そんなの別に人間と同じ物を食ってるよ。」
「グラタンとか?」
「ああ、まあ、グラタンも食うな。」
「えっ?グラタン食べるの?悪でもグラタン食べるの?」
「食うだろ!別に悪がグラタン食ったらダメなルールないだろ!」
「悪とグラタンって、真逆じゃん!対極じゃん!」
「どんな価値観だ!」
「えっ?グラタンのマカロニ食べるの?」
「グラタンでマカロニ避けながら食べるんだったら何の為にグラタンをオーダーしたか分からないだろうが!」
「僕、チャーハンのお米食べないよ。」
「不思議ちゃんか!だったらなぜ、チャーハンをオーダーする!」
「チャーハン、って言いたいからだよ。」
「だったら自分の部屋なり連峰を前に言ってりゃいいだろ!」
「チャーハン、って言って、目の前に美味しそうなチャーハンが出て来るところがいいんだよ!いい?チャーハンって言うのは、いわゆる芸術品なんだよ。お腹を満たすなんてのは、二の次なの。その料理人がどれだけ客の目を満足させる事が出来るか。ああ、またあの料理人のチャーハンが見たいなぁ、月に1度は見たいなぁ、週に1度は見たいなぁ、いやいや毎日でも見たいなぁ、腐るまで見ていたいなぁ、って思わす事が出来るか。そこが勝負なんだ!」
「訳の分からないチャーハンについての持論を展開すんな!恐いんだろ?」
「恐いよ!!おしっこチビれるもんならチビってるよ!!」
「キレ具合が尋常じゃないな。ガキ、立場を理解してんのか?お前は、誘拐されたんだぞ?」
「知ってるよ!公園で遊んでたら急にだよ!ホント突然だよ!誘拐なんて誘拐される奴が悪いんだって思ってたけど、それは大間違いだったよ!」
「その価値観は、育った環境の成せる業なのか?」
「難しい事は分かんない!」
「都合よくガキを利用すんな!」
「だってガキだもの!」
「おいガキ、あんまり調子に乗ってると、この光線銃で撃ち殺すぞ!」
「スゲェ!光線銃だ!本物?それ本物?」
「当たり前だろ!悪が何で偽物突き付けるとかそんな恥ずかしい事しなきゃならん!」
「スゲェ!本物の光線銃!貸して貸して!」
「親戚のおじさんの家に遊びに来た感覚か!貸す訳がないだろ!」
「ケチ!」
「ベヒャヒャヒャヒャ!何とでも言え!」
「グズ!」
「ありがとよ。最高の誉め言葉だ。」
「バカ!」
「ヌハハハハハ!愉快愉快!」
「アホ!」
「ボバババババ!もっと言ってくれ!」
「正義!」
「貴様!悪に向かって正義とは何だ!ガキ、マジで死にたいのか!」
「チャーハン!」
「どのタイミングで叫んでんだ!」
「柄の部分が派手な色のメガネのビジネスマンは、何か嫌だ!信用出来ない!」
「何だそれは!今は別に言いたい事を好き勝手に言っていい時間ではないんだぞ!」
「はい!」
「はい、ガキ。」
「そもそも、何で僕を誘拐したの?」
「ゴガガガガガ!所詮はガキ!自分がなぜ誘拐されたかも分からんとは!」
「何で?」
「知りたいか?」
「うん!知りたい!」
「それはな?」
「うんうん!」
「悪ってのは、ガキを誘拐するもんだからだ!」
「うん?」
「ベガッベガッベガッベガッ!ベガガガガガガガ!」
「えっ?誘拐されて、それで僕はどうなるの?」
「ギャギャギャギャギャ!やはりガキはガキ!」
「どうするつもりなの?」
「そんなの日が暮れる前に、お家に帰すに決まってるだろ!」
「僕、日が暮れる前に家に帰れちゃうの?」
「当たり前だ!お母さんがお家で心配するだろ!」
「そうなんだ。」
「ビビっただろ!」
「ビビったビビった。じゃあ、日が暮れる前にお願いがあるんだけど?」
「何だ?チャーハンは、作らないぞ。」
「ロボ見せてよ!」
「ロボ?」
「そう!ロボ!光線銃があるんだから、巨大ロボとか合体ロボもあるんでしょ!お願い見せて!一生のお願いだから!」
「ロボはない!」
「ロボないのーっ!!」

第四百二話
「おかえり」

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