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2014年3月 5日 (水)

「第四百三話」

「それで?逃げた犬の特徴は?」
「熊みたいな犬です。」
「熊?と言うとかなり大きな犬って事ですかね?」
「探偵さん。かなり大きな犬だったら、わざわざ熊みたいな犬なんて表現しないで、超高層ビルみたいな犬って言いますよ。」
「いや、かなり大きなをわざわざそんな怪獣みたく表現しなくてもいいでしょ。なら、黒い犬って事ですか?」
「だから探偵さん。黒い犬だったら、わざわざ熊みたいな犬なんて表現しないで、停電みたいな犬って言いますよ。」
「黒に使う表現ではないでしょ。停電みたいな犬ってなんですか。ならば、熊みたいに狂暴な犬って事ですか?」
「やれやれ探偵さん。狂暴な犬だったら、わざわざ熊みたいな犬なんて表現しないで、高2の時の生徒会長みたいな犬って言いますよ。」
「いやいや、そう言われても思い出を共有していない私には、さっぱりですよ。それでよく生徒会長が務まったなって、ただただ思うだけですよ。分かりました。口答ではいくらで聞いても想像出来ないので、この紙に逃げた犬の絵を書いてみて下さい。そうすれば、熊みたいな犬と貴方がおっしゃる意味が一発で理解出来ます。」
「分かりました。」
「お願いします。」
「こんな感じで・・・。」
「ふむふむ。」
「ここはこんな風で・・・。」
「ふむふむ。」
「顔がこんなで・・・。」
「ふむふむ。」
「毛並みはこんな感じで・・・。」
「ふむふむ。」
「こうでこうかな?」
「ふむふむ。」
「こんな犬です。」
「うん、モロに熊!!」
「名前は、五臓六腑、と言います。」
「いや、名前についてとやかく言うつもりはありませんが、これ完全に熊ですよね?熊みたいな犬じゃなく、熊そのものですよね?」
「違いますよ。熊じゃなくて、僕が飼ってる犬の五臓六腑ですよ。」
「ガオー!的な?熊出没注意的な?愛犬の絵を、犬の絵を書いて下さいってお願いされて、まずこんな絵を書かないでしょ!あれ?冷やかし?」
「違いますよ!!!」
「!?」
「冷やかしな訳ないじゃないですか!僕は、五臓六腑が居なくなった一週間前から心配で心配で一睡もしてないんですよ!そりゃあ、一週間一睡もしないなんて有り得ない事ですけど!僕の知る限り!僕は一睡もしてません!僕の知らないとこではしていたかもしれません!うっかり寝ちゃってたかもしれませ!本当は逃げたその日に寝ただろって誰かに言われたら、本当は寝たって正直に言います!けどこれは気持ちの問題なんです!気持ちの上で僕は、五臓六腑の事が心配で心配で一週間無睡眠って事です!!」
「ん?何の話ですか?と、とにかく胸ぐらを掴んでる両手を放して、そして座って落ち着いて話しましょうか。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ゴホン、とにかく愛犬が逃げて心配だって気持ちは、物凄く伝わりました。」
「ありがとうございます。」
「その逃げた犬の写真をお持ちでないですか?」
「ありますよ。」
「そうですよね!ありますよね!私とした事が、うっかりしていました!そうなんですよね!写真ですよね!口や絵じゃなくて、まずは写真でしたよね!」
「これです。」
「熊じゃないか!!」
「はい。」
「いや、はいって!だったら、今までの熊だ熊じゃないのやり取りは何だったんですか!私は、ただただ理不尽に胸ぐらを掴まれたんですか!と言うか、こんなのが閑静な住宅街で逃げ出したとしたら、最悪、人喰ってますよ!」
「五臓六腑は、人を食べた事ありません。人を与えた事もありませんし、散歩中に食べた事もありません。」
「そりゃあ、そうでしょうよ!あったら大問題ですよ!私が言いたいのは、そう言う事ではなく、制御不能状態で野に放たれたこの写真の猛獣が、この一週間で何をしてもおかしくないって事です!」
「写真は、熊です。」
「写真は?」
「僕、熊がメチャクチャ好きなんですよ。熊ファンなんですよ。」
「ああだから、熊みたいな犬を飼ったんですねって事は、物凄く理解出来ましたけど、このタイミングで本物の熊の写真を出して来ちゃう事は、理解出来ません。」
「探偵さんと喜びを分かち合いたかったんです!」
「そんなキラキラな目で見詰められてもですよ。と言うか、さっきの絵は、この写真じゃないですか!」
「はい。」
「じゃあ、やっぱり絵の犬は、熊だったんじゃないですか!」
「そこは、ご愛敬。」
「探させる気あります?」
「まんマンです!」
「正義のヒーローみたいに言わないで下さい。でしたら、大好きな熊の写真ではなく、大好きな愛犬の写真を見せて下さい。」
「ラジャー!」
「なぜ、正義のヒーロー寄りに?」
「これが、一週間前に逃げ出した五臓六腑です。」
「何で熊みたいな犬だなんて表現した!!!」
「お、落ち着いて、探偵さん。胸ぐらを掴んでる両手を放して、座って話の続きを楽しくしましょうよ。ああ!五臓六腑の写真を破ろうとしないで!!」

第四百三話
「ボストンテリア」

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