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2014年3月12日 (水)

「第四百四話」

金なんか持っていても幸せになどなれない。私は、1日でも早く、この大金とお別れしたいと願っている。そんな大金が入った鞄を眺めながら溜め息を吐いていると、その客は時間通りにやって来た。
「アンタがクラシックを聴くとはな。」
「私だってクラシックが無性に聴きたくなる日もあるさ。」
「そんな趣味があったなんて知らなかったよ。」
「人は人のキャラクターを自分勝手に構築する。面倒臭い生き物だ。」
「確かにそうだな。」
「そう言えばまた殺人事件が起きたみたいだな。」
「ああ、今度は小さな女の子らしい。変態の仕業だろ。」
「この街も物騒になったものだ。」
「じいさんを殺して快感を得る変態が居ないといいな。」
「ふっ。私が死んだとこで誰も悲しみはしない。例え変態でも、人生の最後が誰かを喜ばして終われるなら、それもいいのかもしれない。」
「変態を喜ばして死んでもいいだなんて、アンタが一番の変態だよ。」
「そう言う運命や罰だとしたら、潔く受け入れようと言う例えだ。」
「・・・・・・俺には難し過ぎて、そのポジティブについて行けないね。」
「キミも独りぼっちで大金を持って年老いてみれば分かるだろう。」
「金が増え続ける事が悩みなんて、アンタいい死に方しないだろうな。」
「死に方に良いも悪いもないだろ。ただ、いつも私は金の使い方を間違ってしまったのかもしれないと思い続けているだけだ。」
「だったら全部燃やしちまえばいい。」
「はっはっはっ!それが出来たら苦労しない。」
「で?金は用意出来てるのか?」
「その鞄の中だ。」
「確かめても?」
「もちろん。」
「・・・・・・・・・。」
「満足か?」
「ああ、満足だ。」
「それは良かった。」
「大金の代金はここに置いてく、それじゃあ。」
「次は、いつ大金を見に来るんだ?」
「さあな?」
今日もまた、少し金が増えた。

第四百四話
「本末転倒」

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