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2014年4月

2014年4月 2日 (水)

「第四百七話」

「ピーナッツバター、出してくれ。」
「ないよ。」
「いやいやいや、奥さん。朝からジョークなんか言ってる場合じゃなくて、ピーナッツバター出してくれよ。」
「いや、旦那さん。別にジョークなんて言ってないよ。あったら出してる場合だよ。」
「朝から意地悪とかタチ悪いぞ!早くピーナッツバター出してくれよ!」
「ジョークとか意地悪とかじゃなくて!ないもんはないんだから、仕方ないでしょ!」
「・・・・・・ピーナッツバターがない?」
「そう!ごめんね。昨日、買い忘れちゃったの。」
「・・・・・・・・・。」
「どうしたの?」
「・・・・・・・・・。」
「ねぇ?」
「・・・・・・・・・ピーナッツバターがない。」
「大丈夫?震えてるけど何か病気?」
「現時刻をもって!ピーナッツバター戦争勃発!」

第四百七話
「ピーナッツバター戦争」

「はあ?戦争?何それ?何、ピーナッツバター戦争って?」
「朝、パンにピーナッツバターを塗って食べたい!それが叶わなかった!だから戦争だ!」
「早くない?経るの早過ぎない?もっともっといろんな事を経てから勃発するんじゃないの戦争って?つか、夫婦間で戦争って!」
「夫婦間だろうが何だろうがなる時はなるんだよ!戦争ってヤツはな!」
「ならないよ!どんな戦争よ!夫婦が夫婦ゲンカの域を越えないよ!」
「いや時には越える時がある!教科書に載らない戦争だ!だがそれは確実に起きたこれは現実だ!」
「ちょっと本当に何を言ってるのか文法すらも危うくて分からない。」
「さあ!戦争だ!」
「いや、さあ!戦争だ!って言われても具体的に何したらいいのか分からないし、どうなったら勝ちなのかも分からないよ。全く分からない事だらけなんですけど?」
「降伏した方が負けで!降伏させた方が勝ちに決まってるだろ!」
「だから、どうなったら降伏なの?つか、こんな下らない展開になるなら、今からピーナッツバター買ってくるよ。」
「席を立ったら!その時点でお前の負けだぞ!」
「どんな戦争?我慢大会みたいになってない?」
「なってない!」
「いや負けでもいいよ。この訳の分からない現実から抜け出せるなら、ピーナッツバター買ってくるよ。」
「いいか!もはやピーナッツバターがどうこうって話じゃない!」
「ピーナッツバター戦争なんでしょ!ピーナッツバターどうこうしなきゃ戦争が成り立たないでしょ!」
「もはや、ここにピーナッツバターを買ってこようが戦争は終わらない事態にまで発展してるって事だ!!」
「いつ!?こんな数分で、どのタイミングで発展したの!」
「戦争ってのは生き物だ。」
「絶対違うと思う。」
「我々の知らない間に姿を変え、質を変えてしまう。だから、この地球上でいつになっても戦争は消えない。いや、もしかしたら戦争を消そうとする行為事態が既に戦争を勃発させているのかもしれない。」
「誰?軍事評論家?」
「ある意味な。」
「あそう。じゃあ、ピーナッツバター買ってくるね。」
「いいのか?席を立つと言う事は、それ即ち負けを意味するんだぞ?」
「だから、別に負けたっていいよ。」
「捕虜になるって事だぞ?捕虜になって拷問されて、国民の目前で公開処刑されるって事だぞ?」
「いやもう、何よりもアナタの立ち位置が分からない!つか、仕事行かなくていいの?」
「戦争中に仕事なんて行ってられるか!」
「仕事場から電話来たら何て言うつもりよ。」
「今日は戦争中なので、お休みします。と言う!」
「頭おかしな人じゃない!明日から変人扱いされちゃうよ!」
「構わん!」
「構え!」
「突撃!!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・何が?」
「突撃!!」
「ちょっと近所迷惑になるから大きな声、出さないでよ。突撃分かったから。突撃ね。突撃。凄い凄い。」
「バカにしてんのか!」
「バカにしてるよ!そんなのとっくにバカにしてるよ!ピーナッツバター戦争って突然言い出す人、バカにしない訳ないでしょ!」
「爆撃機出すぞ!」
「爆撃したら、諸共でしょ!」
「・・・・・・・・・。」
「ねぇ?本当に仕事に遅刻だよ?」
「・・・・・・・・・。」
「ねぇ?」
「・・・・・・・・・。」
「血管浮き出るぐらい顔真っ赤にして怒ったって恐くないよ?」
「・・・・・・ブッ!!」
「どんな爆撃よ!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「ちょっと?まさかまた爆撃しようとしてないでしょうね?」
「・・・・・・・・・。」
「やめてよ?」
「現時刻をもって!ピーナッツバター戦争休戦!」
「休戦って、終戦でいいよ。つか、スローモーションでどこ行くの?」
「・・・・・・トイレだ。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・漏らした?」

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2014年4月 9日 (水)

「第四百八話」

「カランカランカランカラン。」
俺は今、喫茶店でアイスコーヒーをストローでかき回しながら、友人が来るのをどうしても押さえきれない衝動を胸に待っていた。

第四百八話
「殺しの衝動」

「おう!早いな。」
「おう!」
数分して、友人がやって来た。
「あ、オレもアイスコーヒー。で?話って?」
「今日は、俺の一大決心を聞いてもらおうと思って呼んだんだ。」
「何だ何だ?もしかして、結婚か!あ、どうも。そうかそうか!36にして、いよいよお前も結婚か!」
「いや違う。」
「まさか、彼女と別れたのか!?」
「別れてない。」
「そうか。なら良かった。じゃあ、一大決心ってのは?」
「それを話す前に、まずは俺のどうしても押さえきれない衝動について話す必要がある。」
「どうぞ。」
「俺は、お前を殺したい。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・いやあれだな。普段からあんまり冗談を言わない奴から急に冗談が飛び出すと、驚きが上回って笑えないもんだな。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「冗談じゃない。」
「・・・・・・・・・ちょっと待て!」
「話を最後まで聞いてくれ、俺の一大決心って言うのは、殺したいお前を絶対に殺さないって事だ!」
「んん?いやまあ、何て言ったらいいのか分からないけど、とりあえずありがとう。」
「お礼を言われる事じゃない。」
「友達だもんな!親友だもんな!相手を殺したいって衝動も時にはあるさ!オレだって奥さんの事を本気で殺したいって思う時があるもんな。」
「違う。お前は、何も分かってない。」
「どういう意味だ?」
「俺は別に、今すぐこの場で、お前を殺してもいいと思ってる。」
「えっ?」
「警察に捕まらない為に小細工なんかいらないんだ。例え死刑になろうが、俺はお前が殺せればそれでいい。」
「笑えないぞ?そこまで言うと冗談が冗談になってないぞ?」
「冗談なんかじゃないって言ってるだろ?」
「銃!?」
俺は、上着の中に隠していた銃を友人に見せた。
「冗談じゃないって分かってくれたか?」
「玩具だよな?」
「今の俺が、そんな目をしてるか?」
「ならまさか本当に!?」
「だからさっきから言ってるだろ。」
「やめろ。俺には奥さんがいるんだ。」
「だからそれもさっきから言ってるだろ。俺は、お前を殺したい。だが、絶対に殺さない。」
「なぜ、そんなに殺したいのに、オレを殺さないんだ?」
「バカみたいだからだ。」
「バカみたい?」
「殺したいヤツを殺したヤツの愚かな結末。俺は、それを知ってる。そんな愚かな殺人者に俺はならない。だから、お前を絶対に殺さないんだ。」
「愚かな結末?憎しみで人を殺しても、その後に襲ってくる罪の意識に耐えきれず後悔するって事か?」
「いや、俺はお前を殺しても絶対に後悔しない。むしろ爽快感だ。例え一生を刑務所の中で過ごしたとしても、楽しく人生を終える事が出来る。」
「何なんだ!そんなに殺したい衝動を持つお前がオレを殺さない愚かな結末ってのは!何なんだ!」
「それは、殺人犯が逮捕された時に明かされる真実だ。」
「真実?」
「例えば、俺が警察に捕まらないように、小細工をしてお前を殺したとしよう。それもかなりの労力と時間と金を費やす小細工だ。切れ者の刑事がいなければ迷宮入り確実のな。だが、俺はあと一歩のところで切れ者の刑事に、まさかそんな所から辿り着くはずがないってわずかな綻びから、証拠を掴まれ逮捕される。その時に明かされる真実。」
「何が明かされるんだ?」
「俺が殺さなくても、お前は既に医者から余命を宣告されていて、数ヶ月後には死ぬと言う真実だ。全く愚かな結末だよ。」
「ちょっと待て。」
「こんなケースも考えられる。実は、お前は俺がずっと探してた俺の本当の父親だったって真実だ。」
「ちょっと待てよ!」
「こんなケースも考えられる。逆に、お前は俺の子供だったって真実だ。」
「ドラマや映画の観過ぎにも程があるだろ!最初のケースを考えるのは分かるけど!後の二つのケースは、オレとお前は同級生なんだから有り得ないだろ!」
「有り得ない衝撃の真実が明かされるのが殺人のあとなんだよ!」
「ドラマや映画の影響が現実を上回り過ぎだろ!」
「こんなケースもあったな。」
「もう、あったな。になっちゃってんじゃねぇか!」
「俺は、誰かに操られて、お前を殺そうと考えてる。だが、お前を殺そうとした瞬間、俺はその呪縛から逃れる。そして、またいつその黒幕に操られてしまうかもしれない俺は、廃ビルの屋上から飛び降り、自ら命を絶つ。」
「いやもう、質が!ジャンルが変わっちゃってんじゃん!」
「そう言えばこの前、こんな映画を観たな。」
「映画観たになっちゃってるぞ!」
「タイムスリップした主人公が、その時代で恋をしたが実る事なく、最後は死ぬ映画。」
「内容!?ただ、ざっくり映画の内容を言っただけ!?待てよ!待て待て!このままだと、数時間後には二人で映画館にいそうだから、まあそれでもいいけど、その前に話を整理しよう!結局、お前はオレを殺したいけど殺さないんだろ?」
「ああ、絶対に殺さない。」
「これからも、この関係は変わらず続いて行くんだろ?」
「ああ、何一つ変わらず続いて行く。」
「うん。なら、いい!それでいい!それが分かれば、他はどうでもいい!握手だ!これからもよろしく!」
「こちらこそ、これからもよろしく!」
「で?一つだけ最後に聞きたいんだけど、お前は何でそれほどまでにオレを殺したいんだ?」
「あの時、小四の時、透明人間になりたいって言う俺の将来の夢を笑ったから。」
「・・・・・・・・・ごめん。」

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2014年4月16日 (水)

「第四百九話」

「好き、嫌い、好き、嫌い、好き、嫌い、好き。」
「知らないお兄ちゃん!」
「ん?何?知らないお嬢ちゃん。」
「みんなの公園のみんなのベンチに座って、さっきから何してんの?」
「みんなの公園のみんなのベンチに座って、花びらで占いをしてるんだよ。」
「花びらで占い?」
「実は、知らないお兄ちゃんは今、恋をしてるんだ。で、花びらを1枚1枚、好き嫌い、って順番に取っていって、最後の1枚で相手の女性が知らないお兄ちゃんの事をどう思ってるか占ってたんだよ。」
「そんな事で?」
「そんな事って酷いな。これでも知らないお兄ちゃん、結構悩んでるんだよ?」
「てめぇの恋愛事情で!んな下らない事の為に!お花さんを殺してんのかよ!」
「言い方が随分とバイオレンスだよ。そうだね。お花さん、ごめんなさい。」
「いや、てめぇは人を殺したとしても、上の空の誠意の欠片もない、ごめんなさいで許されると思ってんのかよ!だいたい既に絶対に許されない領域からのスタートなんだって事を理解してんのかよ!一生だよ!てめぇはこれから一生!花殺しって呼ばれんだよ!」
「花びらの占いしてて、花殺しって言われるとは、思わなかったよ。」
「そもそも、逆の立場だったらてめぇはどーすんだよ!」
「逆って?」
「お花さんが、好き嫌い好き嫌い好き嫌いって、てめぇの腕や足や頭を引きちぎったらって事だよ!痛いだろうが!」
「それは・・・・・・嫌だね。痛いどころじゃないね。」
「だろ!たわけが!」
「でもね?知らないお嬢ちゃん。物凄く勘違いさせちゃったみたいで悪いんだけどね。一応これ、落ちてた花だから安心して。」
「物凄くわりぃ!」
「知らないお嬢ちゃんなんだよね?」
「見掛けはね!」
「中身は違うの?」
「中身もね!」
「紛らわしい言い方だなぁ。」
「わりぃ!でもさぁ?知らないお兄ちゃん?」
「ん?」
「ああ、この知らないお兄ちゃんバカなんだなぁ。きっと頭が異様に悪いんだなぁ。たぶん脳みそ7割腐ってるんだなぁ。って思ったのはね。」
「言い方が躊躇ないよね。と言うかそんな気持ちで話し掛けて来てたんだ。」
「花びらの数が決まってるんだから、最後の1枚が好きで終わるか嫌いで終わるかなんて、さじ加減だよね?」
「子供らしからぬ夢も希望も感じられない元も子もない事を言うね。」
「夢や希望でメシが食えるかっての!」
「実は知らないおじさんじゃないよね?」
「こんな知らないおじさんがいたら、アタシ今こんなみんなの公園のみんなのベンチに座る知らないお兄ちゃんの前にいないで、世界的スターになってて今頃は、大量の睡眠薬を飲んでホテルのスイートルームのベッドの上さ。」
「何があったんだ?」
「そもそもがだ!世の中ってのは元も子もない事だらけなんだよ!むしろ地球事態が元も子もない事の集合体なんだよ!勇気がないから元も子もない事に、人は何か意味有り気な理由付けをして!誤魔化しながら生きてんだよ!そう言う愚かな生き物なんだよ!シンプルに生きて行く事から逃げ出した弱者なんだよ!」
「他の人にも知らないお嬢ちゃんの姿って見えてるんだよね?まあでも、知らないお嬢ちゃんの飛躍し過ぎた独特な価値観にも一理あるかもね。こうして、花びらなんかで相手の気持ちを都合よく解釈して自分を納得させるんじゃなく、シンプルに直接この気持ちを伝えた方がいんだよね。」
「ったりめぇよ!花びらの結果が良くても上手く行かない時は行かない!花びらの結果が悪くても上手く行く時は行く!どんな結果が待ち受けてようがだ知らないお兄ちゃん?」
「ん?」
「それが人生だ。」
「知らないお嬢ちゃん。」
「そして、ありったけの想いを伝えてどうなるかは分からないが、それでもなお、もうしばらく続いて行くのが人生ってヤツなんだよ。」
「よく分からないけど、何だか泣きそうだよ知らないお嬢ちゃん。」
「泣きたい時は泣く!男だからとか女だからとか子供だからとか大人だからとか、そんな不憫な考えなんか捨てちまえ!シンプルに生きればいいんだよ知らないお兄ちゃん。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
「きっと上手く行く!なんて無責任な言葉は掛けねぇ!いいか?ただな。知らないお兄ちゃん?絶望を味わっても後悔だけはするんじゃねぇよ。」
「どんな結果になっても、必ずまたこのみんなの公園に来て、知らないお嬢ちゃんに報告するよ。」
「日曜日の午前中なら、大概アタシは、みんなのお砂場でお山を作ってるよ。」
「ありがとう。知らないお嬢ちゃん。」
「またな。知らないお兄ちゃん。」

第四百九話
life goes on

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2014年4月23日 (水)

「第四百十話」

「ちょ!ちょっと待ってくれ!ストップ!ストップ!!」
僕は、黒スーツの女に追い掛けられてた。追い掛けられて追い掛けられて、気付くと夜中になってた。更に気付くと線路の上を走ってた。もう一つおまけに気付くと結構な雨が降ってた。昼御飯を買いに行こうと玄関のドアを開けると、僕好みの黒スーツの女が立ってたから、隙あらばこのまま結婚まで漕ぎ着けるんじゃなかろうかと思ってた13時間前が懐かしいし愛しい。そんな黒スーツの女を見てまず人としての礼儀として、お昼に打って付けの挨拶をしようと言葉を発すると同時に黒スーツの女がハンマーを振り上げた時から、これは何か少し事態が妙だぞ、と。そう思った途端、考えるより先に体が走り出した。少しだけ余談だけど、考えるより先に体が動き出すなんて、四半世紀と少ししかまだ生きてないのに、結構耳にしてたけど、そんな事ある訳がないと思ってた。だって、おかしくない?脳が命令を出してから体は動くんだ。考えるより先に体が動くって、自分の体であって自分の体じゃない。命令違反だし反乱分子だ。戯言の戯れ言にも甚だしい。でも、あるんだね。あったんだね。考えるより先に体が動き出すってさ。んで、考えるより先に体が走り出した僕を見て、黒スーツの女は女で、きっと考えるより先に体が走り出したんだと思う。足に少しだけ自信があった僕は、黒スーツの女に追い付かれる事はなかった。しばらく走っていたら気付いたんだ。追い掛けられてる時、待てー!とか、待ちやがれー!とか、待ちなさーい!とかって、言葉を掛けられた方がいいね。無言で追い掛けられてると、なぜか次第に精神面が不安定になってくるし、訳が分からないって恐怖感が増すね。黒スーツの女のそう言う作戦だとしたら、それは事実上大成功だ。とにかくハンマーを振り上げた時、黒スーツの女とあわよくば流れで結婚ってのは破談になって、逆に命を狙われてるんだって分かった以上、黒スーツの女に捕まる訳にはいかないって必死。もう必死で逃げた。こっちの問い掛けにも無言だし、好みの女性に対してこんなにも気持ち悪いって思うとは思わなかった。汗だくで超高層ビルに逃げ込んで、殺されなきゃならない理由をこれでもかってぐらい考えてみたけど、思い当たらない。本当は、思い当たってたのかもしれないけど、人ってそんな事で人を殺すのか?って感じで無意識に削除してたっぽい。そうなるともう、無意識の領域からの脱出は困難を極める。ついでに、いくら上手に身を隠しても黒スーツの女は、僕を見付け出す。何回目かの見付け出され時に、ああこれはきっと僕に何か僕の居場所が分かるような物が取り付けられてるんだなって思って、身に付けてる物を逃げてる途中で全て買い換えた。線路上を走る僕と回想上を走ってる僕の服装が違うのは、それだ。でも、未だに線路上をこうして僕がずぶ濡れで走ってるって事は、つまりそう、あの努力は無駄だったって事さ。体内に埋め込まれてるとしたら、とてもじゃないが命を狙われながら、オペって訳にはいかない。ましてや、黒スーツの女に逃げる相手を捜索出来ちゃう超能力があるんだとしたら、オペ損だ。無駄死にだ。もう、オペが失敗したのか黒スーツの女に殺されたのか術後の僕には分からない。だとしたら僕は、どの道死ぬ運命なのか?訳の分からないまま、死ぬ運命なのか?って、死ぬ運命を考えてたら、気付くと夜中になってて、更に気付くと線路の上を走ってて、もう一つおまけに気付くと結構な雨が降ってた。
「いい加減に待ちなさい!」
喋った!?今まで喋る事のなかった黒スーツの女が理不尽で身勝手でアンバランスな言葉を発した。ドアを開けた時、何かを語ってくれたのなら、きっとここまでの事態に発展してはなかったはずだろうに。そう思うと怒りが沸き上がって来た僕は、走ってて急に立ち止まるのは、体によくない事だと知りつつ、立ち止まった。すると、黒スーツの女も一定の距離感で立ち止まった。立ち止まった途端、凶器で襲われかもしれないって思ったけど、案外そうでもなかった。って危ない危ない。妙な安堵感が沸き上がる怒りを上回るとこだった。
「一体何で僕を執拗に追い掛けるんだ!一体何で僕を殺そうとするんだ!」
いっぱい言いたい事があったけど、出て来た言葉は、こんなもんだった。まあ、人間っていざって時は、こんなもんさ。
「この国の為よ!」
「はあ!」
雨音で聞きにくくなってたけど、確かに今、黒スーツの女は、この国の為よ!って言った。僕は、この国の為に執拗に追い掛けられて、この国の為に殺されるってのか?とりあえずの訳を聞いてみたけど、どうやら僕は深みにはまったようだ。
「詳しい事は話せない!けど貴方には、ここで死んでもらう!」
「どうして!何で僕なんだ!僕が何をした!」
「国同士のスポーツの祭典が年間何回もある!しかし、我が国は、この二十数年もの間全く勝てていない!」
「スポーツ?スポーツと僕がどう関係するんだ!僕はこの国の代表選手でも何でもないぞ!」
「我々の機関が導き出した一つの答えがある!」
「機関?」
「貴方が観戦してるから負ける!」
「そんなバカな!?」
「ならば、貴方がテレビや会場で観戦して我が国が勝った事があるの!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・ない!!」
「さようなら!」
「えっ?」
振り向くと僕の目の前には、貨物列車が。

第四百十話
「スポーツ観戦する男」

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2014年4月30日 (水)

「第四百十一話」

奇妙な朝だった。そう、まるで夜みたいな朝。
「夜だよ!」
「誰だ!?お前!?」
「夜の番人さ。」
「夜の番人?」
「夜がちゃんと、夜であるように、夜を管理するのさ。」
「出来てないだろ!夜の管理!朝が夜になっちゃってんじゃないか!」
「いいや、今は夜。」
「時計を見てみろ!今は午前8時!朝だ!」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「夜さ。」
「何か変な間があった!何かちょっと変な間があったぞ!」
「時計が間違ってるのさ。」
「間違わない時計だ!どうでもいいから早く夜を終わりにしてくれ!」
「はい!」
「何だよ。その手は?」
「お金ちょーだい!」
「はあ?」
「夜を終わりにして欲しいなら、それなりのね?分かるでしょ?」
「分かんないだろ!何で私が夜を終わらす為に、お金を払わなきゃならないんだ!」
「それはね?夜の順番が回って来たからなんだよ。」
「じゃあ何か?朝が来るのは、毎日毎日、どこかで誰かが、お金を払ってるからだって言うのか!」
「正解!」
「だとしたらだ!こんな一般市民のところに来ないで!国の政府的な機関に行けばいいだろ!」
「人類皆平等!の精神でやってます。」
「だとしたらだ!人類から同額徴収すべきだろ!」
「バカですね。」
「貴様がだ!」
「地球の人類が今、何人いるのかご存知?」
「ご存知な訳がないだろ!」
「そりゃもう!いーっぱい!そんないーっぱいの人類一人一人から徴収してたら、夜が明けちゃうよ!」
「何をニヤニヤしてるんだ!別に何一つ面白い事なんか巻き起こっていからな!」
「堅物だなぁ。とにかく!そんな一人一人から徴収なんて面倒臭いやり方じゃなく!こうして一人から徴収の方がスマートでしょ?」
「迷惑だ!」
「迷惑なのは、こうしてアナタが駄々こねて夜代を支払わないで夜が明けないその他の人類だ!いい?ここの夜が終わらないって事は、他では夜が来ないって事で、一方で朝が終わらないって事なんだよ?」
「納得いくか!」
「運が悪かったって思うんじゃなくて、名誉な事だって思って、さあ契約書にサインして!」
「何か貰えるのか?ここで、人類の為に夜を終わらせるお金を払ったら、私は何か貰えるのか?」
「貰える訳がないでしょ。」
「どうして!?」
「逆にどうして!?」
「お金を払うんだぞ!」
「そうですよ。でも、アナタも今まで、何も知らずに、夜代を払って夜を終わらしていた先人達の恩恵を受けてたんですよ?なぜ、アナタにだけ何か上げなきゃならないんですか?なぜ、アナタだけ特別扱いしなきゃならないんですか?」
「・・・・・・・・・。」
「駄々こねて、わがままで、身勝手なアナタに!どーしてそん」
「もう分かった!!もういい!!払う!!」
「まいど!」
「サインすればいいんだな。」
「ここね。ここにサインして、それからお金を支払ってくれれば、それでオールオッケー!」「今、ここでか?」
「もちろん!」
「契約書には、一度夜代を支払えば、今後一生支払う事はないと書かれてるが、それは本当だな?」
「夜ノ番人ウソツカナイ!」
「・・・・・・・・・ほらサインしたぞ。」
「じゃあ、契約書に書かれてるお金ちょーだい!」
「ちょっと待て、今持って来る!」
「りょーかい!ワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワク!」
「ほら!」
「ワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワクワク確かに!」
「どんな数え方だ!さっさと夜を終わらせろ!」
「この場では無理!なので、僕が帰ったあと、しばらくしたら、夜が終わります。」
「だったら!さっさと帰れー!」
「あひゃー!」
「真面目に帰れ!」
夜の番人がふざけながら出て行き、しばらく待ったが、相変わらず奇妙な朝だった。

第四百十一話
「夜夜詐欺」

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