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2014年5月14日 (水)

「第四百十三話」

「幽霊!?」
「そう、幽霊。」
「朝から?」
「朝だけど、幽霊。」
俺が身支度を整えて、寝室を出たドアの前に、その若い女が立っていた。
「・・・・・・・・・。」
「そんなマジマジと見られると、お恥ずかしい。」
「本当に幽霊か?」
「考えてもみてよ。アタシが幽霊じゃなかったら、大変だよ?不審者って事だよ?強盗だよ?殺されますよ?大問題でしょ!」
「俺には幽霊でも大問題だけどな。」
「それとも~?」
「何だよ。」
「スケベな想像した?」
「スケベな想像?」
「酔っ払って、知らない女、連れ込んじゃった的な?誰なんだこの女ー!的な?浮気しちゃったー!的な?女房にバレるー!など?」
「するかよ!別に昨日は酔っ払ってない。」
「女房は?」
「一人暮らしだ。」
「そうかそうか。おじさん、女房子供に逃げられたんだね。」
「一人暮らしだって言っただろ!勝手に想像膨らませるんじゃねぇ!未婚だ!俺は!ちょっと待て!だいたい幽霊が何なんだよ!幽霊と愉快痛快に立ち話してる場合じゃないんだよ!」
「ジャーン!」
「効果音がおかしいだろ!」
その女の幽霊がTシャツの裾を一気に捲り上げると、そこには無数の刺し傷があった。
「ノーブラ!」
「そこじゃないだろ!」
「またスケベな想像したでしょ?」
「またって何だ!またって!それにだいたいこれは、スケベな想像どころの話じゃなくて!モロだろ!むしろスケベは、お前だろ!」
「アタシ、このマンションのこの部屋で、殺されたんです。アタシがこの寝室で寝てる時、夜中に忍び込んで来たヤツに、何度も!何度も!何度も何度も何度も!包丁でお腹を刺されて!こうやって馬乗りになって!何度も何度も何度も!何度も何度も!」
「いや、そう言う話は、Tシャツを下ろしてからにしてくれないか?」
「キャッ!」
「どういう感情回路なんだよ!」
「何度も!何度も何度も!何度も何度も何度も!」
「いや、何度もの下り、何度もいいから!」
「んで、アタシは死にましたとさ。チャンチャン!」
「軽いな。」
「ええ!そりゃあ!もう!恐怖でしたよ!恐怖で声も出ませんでしたよ!ええ!ええ!もしかしたら、おしっこちびってたかもしれませんよ!だけどそれが何か?いけませんか?ええ!」
「待った!俺は、何を怒られてんだ?で、何で急にその時の心情を俺が聞いてるみたいに話し始めた?」
「おじさんが何も聞いて来ないからでしょ!」
「おいおいおい、こりゃあ、朝から有り得ない方角から、厄介事が舞い込んで来たな。ダメ元で聞くけどな。」
「膝枕で耳かきは、無理です!」
「違うに決まってる!この状況で俺は幽霊に何をお願いしてんだ!そんな訳がないだろ!そのあれだろ?お前が、俺の目の前に現れたってのは、その殺したヤツを見付けて欲しいって話だろ?でも、今は忙しいんだよ。これから仕事だし、夜じゃダメか?いや、詳しい話は、夜にしてくれ!」
「勘違いしてる。」
「勘違い?」
「殺したヤツを殺して欲しいだなんて、お願いしたい訳じゃない。」
「だいぶ話が飛躍してるけどな。」
「そもそも、おじさん警察じゃないでしょ?」
「ああ。」
「売れない画家でしょ?」
「小学校の教師だ!職業当てる気がないだろ!適当にも程がある!」
「そもそも、アタシを殺した男は、次の日に魔のカーブで殺したし!」
「そのVサインは、どんな感情で受け止めたらいいのか分からん!って、はあ?なら、お前は何しにわざわざ俺の前に現れたんだよ!もう、復讐する相手がいないなら、さっさと成仏すればいいだろ?」
「まだ、成仏する訳にはいかないのです!」
「なぜに敬礼?じゃあ、あれか?お前を殺した男は、誰かに依頼されて、お前を殺しただけで、まだ復讐する相手がいるって言うのか?復讐は終わってないのか?」
「アタシは、国の秘密を知った二重スパイか!」
「んなガチガチな設定、思い付くか!」
「ノンノンノン!チガイマース!」
「誰?」
「別に、犯人は複数いない。アイツは、単なる快楽殺人鬼。単独犯。アタシは、運が悪かっただけ。8人中の1人。」
「8人・・・・・・。連続殺人鬼って訳か。」
「ピンポーン!」
「テンションおかしいだろ。」
「ああ!おじさんにも見せたかったなぁ!8人で力を合わせて、あの男を魔のカーブで殺したとこ!ああ、因みにアタシは、ピンク、って呼ばれてたんだ!」
「何でそんなニックネームを?いや、そもそもそんな奇妙な復讐劇を見せられてもだよ。」
「まず、レッドが車のブレーキに細工してね!」
「それ、魔のカーブとか関係あるのか?何か、思ってた魔のカーブと違うな。」
「関係大あり!魔のカーブで殺すとこに意味があるんだよ!でねでね!ブルーとイエローがね!ホワイトの」
「ちょっと待った!聞かされてもなんだよ。忙しいんだよ。職員会議が始まっちゃうんだよ。な?復讐話は、一旦置いといて、なぜに成仏する訳にはいかないんだ?」
「ケーキ屋さんになりたいって夢があるからに決まってるでしょ!」
「えっ?」
「いや分かってるよ?アタシ、もう死んじゃってるし、幽霊がケーキ屋さんなんて無理だって事はさ。」
「なら、そこまで理解してるのに、何で?」
「だから、おじさん!」
「おい、嫌な予感しかしないぞ?」
「アタシの代わりにケーキ屋さんを!」
「無茶だろ!」
「無茶じゃない!おじさんなら出来るから!」
「どんな確信だよ!いや、そもそも俺は教師だし!」
「大丈夫!」
「何が?」
「夢を諦めないで!」
「えっ?」
「何もしないで諦めないで!お願い!」
女が指差す押し入れの中には、確か将来の夢を書いた俺の小学生の卒業アルバムが入っていた。
「ケーキ屋の夢を諦めるも何も、そもそも俺の夢は、宇宙飛行士だ!」
「ベタ!?」
「ベタって何だ!子供の頃の夢にベタとかないだろ!」
「んまあ、いいじゃんいいじゃん!ケーキ屋さんやろうよ!」
「何でだよ!何でそんな軽い感じで、人の子供の頃の夢をねじ曲げんだよ!」
「とりあえず土地買いに行こ!」
「とりあえずで買いに行くクラスの買い物じゃないだろ!」
「名前何にしようか?」
「俺はこれから職員会議があるんだー!」

第四百十三話
「悪霊」

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