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2014年7月 2日 (水)

「第四百二十話」

「はっ!?」
目が覚めた。ベッドの上だ。ここは?ここはどこだ?ここは俺の部屋だ。
「・・・・・・・・・。」
そうだよな。目が覚めて自分の部屋じゃない事なんて実は、滅多にある事じゃない。
「・・・・・・喉が渇いたな。」
飲み物は確か冷蔵庫の中だったな。当たり前か。考えるまでもない事をなぜ、俺はさっきから考えてるんだ?まあでもとにかく今は、この手にしてる水を飲んで、喉を潤そう。それからの事は、それからだ。
「・・・・・・・・・プハア!」
生き返った。いや別に特に死んでいた訳じゃないけど生き返った。おかしい、何かがおかしい。なぜ、考えなくてもいい様な事をさっきっから頭の中で自分に言い聞かせるかの様にしてるんだ?
「・・・・・・病気か?」
季節の変わり目で、体調でも崩したのか?喉は痛くないし、体もダルくはない。でもここは一応念の為に計ってみるか。
「体温計は確か・・・・・・。」
ん?どこだ?確か体温計は、この辺にしまってあるはずなんだけどな?どこだ?ないぞ?この部屋じゃないのか?そっちの部屋か?それともあっちの部屋か?どこだ?どこにあるんだ?体温計、体温計、体温計。ないないない。ないぞ?もしかして、1階の部屋にあるのか?
「面倒臭い事になったな。」
ないならないで、特に熱がある訳でもなさそうだから計らないでもいいんだけど、気になる。むしろ熱があるのかないのかじゃなく、もはや体温計が家にあるのかないのかが気になるんだ。気持ちはもうそっちに向いてるんだ。
「どこだ?」
これか?体温計か?キッチンにあったのか!でもなぜ?何で俺はキッチンなんかに体温計を置いてたんだ?前回、どんな状況で使用したんだ?んまあとにかくこれで、ない事はほぼ確定してるけど熱が計れる。さあ、早く早く。早く熱がどれぐらいなのかを教えてくれ。一体俺は今、どれぐらいの熱があるんだ?知りたい!知りたくてたまらない!
「って、マドラーじゃないか!」
もういい。面倒臭い。ない、熱はない。まあ、まったくない訳じゃないけど、平熱以上はないって意味だ。体もダルくない。まあ、まったくダルくない訳じゃないが、病気のダルさじゃないって意味だ。喉だって痛くない。まあ、今さっき大きな声を出したから多少は痛いけど、もうしばらくすれば治まる痛さって意味だ。
「・・・・・・何かおかしい。」
何だ?何がおかしいんだ?改めて考えなくてもいい事を一生懸命頭の中で考えてるぞ?この違和感は、何だ?昨日の夜、洗濯をしてベランダに干してる洗濯物が、大雨にさらされてるからか?
「何っ!?」
バカか俺は!起きてからずっと窓の外の大雨が視覚と聴覚から入って来てたってのに、今頃か!今頃になって事の重大さに気付いたのか!って、早く洗濯物を取り込まないとだろ!
「・・・・・・・・・。」
いや、別に急ぐ必要はない。今まさに雨が降り出したんならまだしも、既に雨は降ってるんだ。しかも大雨だ。急いだって結果は一緒だ。むしろこんな時は、急いだ方が悪い結果を生む事がある。手を壁にぶつけたり、手を窓に挟んだり、洗濯物を地面に落としたり、まあとにかく焦らずに、このずぶ濡れの洗濯物を洗濯機まで運んで、もう1度洗濯して、今度は乾燥機を使おう。
「ツイてない。」
いや、天気予報を見なかった俺が悪いのか。よし、これであとは洗濯が終わるのを待つだけだ。とんだハプニングだったけど、落ち着いて対処すればどうって事ない。怪我もしないですんだ。そう、何事も落ち着いて冷静になって考えれば、大抵の事は解決の糸口が見えて来る。
「・・・・・・・・・。」
何か忘れてるんだ。俺は、きっと何か重要な事を忘れてる。記憶がない。何か突発的な病気とかじゃなく、原因は枕元に転がるこのバーボンの空瓶だ。何だ?何かとてつもなく重要な事を忘れてるぞ?辿れ、辿るんだ。記憶を辿れ!でなきゃ何かとてつもなく悪い事態に陥る気がしてならない。早く思い出すんだ。
「・・・・・・・・・。」
ダメだ!バーボンのお陰で記憶を辿れない。だとしたら、記憶を辿れないとしたら、本能だ。俺の目が覚めてからの本能を探るんだ。本能は嘘を付かない。記憶の様に歪められたり自分の都合良く書き換えられたりしない。本能だ。
「・・・・・・・・・。」
なぜ、飲み物を?なぜ、体温計を?なぜ、洗濯物を?なぜだ?なぜなんだ?
「なぜ、俺はベッドから1度も降りない!?」
・・・・・・・・・
思い出した!思い出したぞ!ベッドの下だ!ベッドの下に怪物がいるからだ!俺がベッドから降りた途端に、俺を食べ様と静かにジッと待ち続けてる怪物がいるからだ!赤い目をしたあの怪物が!

第四百二十話
「右腕がめちゃくそ長い男」

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