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2014年8月

2014年8月 6日 (水)

「第四百二十五話」

「何をしてるんだ!」
「何をされてるのか?それは自分が1番よく分かってるんじゃないのか?」
「こんな廃ビルの8階辺りに連れて来て、ドラム缶の中にロープでグルグル巻きにされて入れられて、コンクリート流し込まれて、今は首から上だけ出てる状態で、何をしてるんだ!」
「そこまで分かってたら普通は分かるだろう!」
「殺すのか?私を殺すのか?」
「サプライズのバースデーって訳にはいかないだろ。」
「なぜだ!」
「なぜだ?こんなサプライズのバースデーがあってたまるか!」
「違う!なぜ私を殺す!キミと私に接点はないはずだ!」
「ああ、もちろん接点なんかない。これは、単なる俺の趣味だ。」
「趣味?趣味って?」
「俺は、廃ビルの8階辺りに人を連れて来て、ロープでグルグル巻きにして、ドラム缶の中に入れて、コンクリートを流し込んで殺すのが趣味なんだ。」
「一体全体どんな趣味なんだ!?」
「悪く思わないでくれ。」
「思うだろう!思わない人間がいるなら私は、そいつをぶん殴ってやりたいね!」
「おじさんには、俺の個人的な趣味に付き合わせて本当に悪いと思ってる。」
「はい?誰がおじさんだ!私は、単なる老け顔だ!きっと、お前とたいして歳は変わらないぞ!このハゲかけた頭は、私が一生懸命に生きた証だ!!」
「・・・・・・そうか。」
「そうだ!」
「・・・・・・じゃあ、そろそろ。」
「じゃあそろそろ何だ!」
「死んでもらおう。」
「だから、ちょっと待ちなさいよ。な?意味が分からないだろ?とってもだろ?それはもう、とってもだろ?とっても意味が分からないだろうがっ!!」
「意味は、あってないようなもんだ。なぜならこれは、趣味の領域の話だからな。俺の自己満足ってヤツで、アンタにとっては意味なんてないだろうな。」
「ならば1つ提案がある!」
「何だ?」
「私は、お前の趣味に付き合って殺されよう。」
「ありがとう。」
「だが!お前にも私の趣味に付き合ってもらう!ギブ&テイクだ!」
「ギブ&テイク?」
「ああ!だってそうだろ!考えてもみろ!私は理不尽に趣味に付き合わされているんだ!お前だって理不尽に私の趣味に付き合うべきだろ!」
「断ったら?」
「断るのか!?断るとかって選択肢ありなのか!?私には、お前の趣味に付き合う選択肢がないのにか!?」
「聞いただけだろ?」
「だけが通用する状況ではないだろうが!」
「で?アンタの趣味って?」
「私の趣味は、生きる事だ!」
「はあ?」
「どんな状況下であろうが!生きて生きて生きまくる!それが私の趣味だ!さあ!どうした!私の趣味に付き合ってくれるんだろ!」
「いや、どんな趣味だよ。」
「お前にだけは、言絶対に言われたくない!」
「と言うか、そんなのが趣味として認められると思ってんのか?」
「当たり前だろ!大の大人が言ってるんだ!認められないでどうする!」
「生きるなんてのは、人間なら当たり前の事だろ?呼吸をするとか瞬きをするとかを心臓を動かすとか趣味にするヤツなんかいないだろ?お前の趣味は、オートマチック過ぎて趣味の領域じゃない。と言うか、俺の趣味にどうにか対抗して今作っただけの事だろ?」
「それはなにか?私が殺されたくない一心で苦し紛れに嘘を付いてるとでも言いたいのか?」
「違うのか?」
「違う!」
「んまあ、違っても違ってなくても、そんなのはどっちでもいい。」
「どっちでもよくないだろ!」
「俺に、アンタの趣味に付き合う気がないって事だ。」
「なら、私もお前の趣味に付き合う気はない!」
「この状況で、よく言えるな。アンタに、俺の趣味に付き合うか付き合わないかの選択肢は、ないだろ?」
「あれ!」
「あれってなんだよ!もはや願望じゃねぇか!いいか?正義のヒーローでも来ない限り、どうにもならないんだよ。」
「正義のヒーローが来たら、どうにかなるのか?」
「そりゃあ、正義のヒーローが俺を倒して、アンタを救ってくれんだから、どうにかなるだろ。」
「お前が正義のヒーローを逆に倒してしまう可能性は、ないのか!」
「何で、あえてそんな可能性を考えるんだよ!」
「私は、とても用心深い人間だからだ!」
「説得力の欠片もないな。安心しろ。見ての通り俺は、普通の人間だ。正義のヒーローが来たら確実に倒される。」
「嘘ではないな?」
「ああ、嘘じゃない。俺には、アンタを救いに来た正義のヒーローを返り討ちに出来る特殊能力なんかない。」
「それを聞いて安心した。」
「何?ま、まさかお前!?実は俺に捕まったふりをして、何人もの人間を趣味に付き合わせて来た俺を倒しに来た正義のヒーロー!?」
「な訳がないだろ。考えてもみろ。私が仮に正義のヒーローだったとしたら、首から上だけになる前に、お前に正義の鉄槌を下している。」
「なら、何に安心したんだよ。」
「お前が正義のヒーローに負ける人間だって分かったからに決まっているだろ!」
「だからそれが何なんだ!それが分かったとこで何1つ状況は変わらないだろ!」
「それがそうとも限らないんだよ。」
「何だと!?何が変わらない!と言うか、そんなのはもうどうだっていい!無駄話はここまでだ!お前には今すぐ俺の趣味に付き合ってもらう!」
「ああ、とことんお前の趣味に付き合ってやろう!だが、お前にも私の新しい趣味にとことん付き合ってもらうぞ!」
「新しい趣味だと!?」
「そう!正義のヒーローに助けられると言う趣味だっ!!」
「・・・・・・・・・。」
「ざまあみろ!」
「・・・・・・じゃあな。」
「お、おい!?ちょっと待て!?やめろ!!やめろおおおおおおおおおおお!!んんんんん・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「趣味完了。」

第四百二十五話
「正義のヒーロー到着1、2分前」

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2014年8月13日 (水)

「第四百二十六話」

「おい!鬼!絶対にその手に持ってる女性を握り殺したり喰い殺したり壁に投げ付けて殺したりするなよ!」
「グヘヘヘヘヘヘヘ!人間ごときがワシに命令とは、笑止!」
「いいな!絶対に殺すな!」
「はあ?この女をどうしようが、ワシの自由だろうが!」
「自由じゃないだろうが!その女性が、お前に何をした!お前とは、無関係だろうが!」
「笑止!笑止笑止笑止!人間とは、ワシら鬼にとったら単なる食料!時に酒の肴!」
「だからその人間をスナック菓子感覚で扱うのをやめろと言ってるんだ!」
「グヘヘヘヘヘヘヘ!だったら人間、スナック菓子が今のお前のように訴え掛けて来たら、お前はスナック菓子を食べるのをやめるのか?笑止!」
「スナック菓子は、そもそも食べる用に作られたもんだろうが!」
「だろ?」
「人間は違うだろうが!鬼が食べる用に一生懸命生きてる訳じゃないだろうが!だから、だから絶対にその女性を食べるなよ!素直に私の言う事を聞いて、こっちに渡すんだ!さあ!」
「海の魚を喰らい!山のキノコを喰らい!大地の生物を喰らい!何を戯言を抜かすか!人間よ!ワシら鬼が人間を喰らう事は自然の摂理!同種族が目の前で弄ばれたからと頭に血が上り戯言とは、笑止!」
「う、うるさい!」
「笑止!笑止笑止!」
「黙れ!鬼ごときが人間を見下すような発言をするな!」
「笑止!」
「やめろよ!いいな!絶っっっっ対にやめろ!」
「人間は、元より鬼よりも下だろ!」
「ダメだ!その女性は放せ!今すぐ解放しろ!」
「笑止!」
「タダでとは言わない!その女性を渡すなら、代わりにこれをやろう!」
「バナナ?」
「これを単なるバナナと侮るな!このバナナはな!このバナナはな!メチャ美味いバナナだ!どうだ?好条件過ぎるだろ!好条件過ぎて自慢のツノがアレだろ!さあ!さあさあさあ!バナナが欲しければ今すぐ女性をあっ!」
「うまっ!」

第四百二十六話
「鬼課」

「で?キミは、そのまま帰って来たと言うのか?」
「はい。」
「未来ある女性を見殺しにして帰って来たと言うのか!」
「見殺しって・・・・・・課長。言い方があるじゃないですか。私は、決して未来ある女性を見殺しになどしていません!」
「いいか?町の住民達の声は、もっと厳しいぞ!要するに何事も結果が全てなんだ!」
「・・・・・・分かってます。」
「今月に入ってから鬼絡みの通報が何件あるか分かってるのか!」
「64件。」
「67件だ!そのうち鬼に喰い殺されたのが59件!今日の女性を入れたら60件か。未来ある人間が殺されたとなったら、役所の職員のあることないこと週刊誌に書かれたり、報道されたり、またマスコミに叩かれるぞ!キミだって先週叩かれたばかりだろ。」
「はい。むしろ鬼側に人間を横流ししてるって叩かれました。」
「私も既に3回も浮気している事になっているよ!子供が小学校でイジメに遭っている職員もいる!離婚した職員やストレスで病気になる職員だっている!前任の課長は、心の病で今は施設だ!どうにかしないとそのうちここはゴースト役場になってしまう!」
「ですが課長!」
「何だ!愚痴を言う暇があるなら一体でも鬼退治して来たらどうなんだ!」
「したいですよ!私だって人間を苦しめる鬼を許せませんよ!」
「だったら今すぐ女性を喰い殺した鬼を退治して来たらどうなんだ!」
「したいですよ!この手であの鬼を退治したいですよ!」
「だったらこんなとこで油売ってないで行動に移したらどうなんだ!」
「これはもう何回も言ってる事なんですが、どうして役所の人間なんですか!警察じゃなくて何で役所が鬼退治しなきゃならないんですか!」
「これはもう何回も言い返していると思うがな。警察ってのは、対人間犯罪の機関なんだ!鬼は管轄外なんだ!だから我々各役所が地域住民の安全を守らなきゃならないんだ!」
「いくら鬼は管轄外って言っても!警察には、鬼を退治出来るだけの十分な武器があるじゃないですか!こっちには、このメチャ美味いバナナしか支給されてないんですよ!メチャ美味いバナナで!どうやって鬼退治出来るんですか!」
「とにかく警察は、鬼絡みの事件には、介入出来ない。それはもう何かよく分からないが難しい政治的な話だ!それとメチャ美味いバナナは、とにかく学者達が研究に研究を重ねて導き出した鬼の弱点だ!」
「その学者達をここへ呼んで下さいよ!メチャ美味いバナナが鬼の弱点な訳がない!」
「呼べる訳がないだろ!」
「実際の現場も見ないで!机の上で出した答えです!メチャ美味いバナナが鬼の弱点だったら!今月の鬼に喰われた被害は0件なはずです!」
「キミは私にどうしろと言うんだ!」
「本気で役所の職員に鬼退治を任せるなら!こんなメチャ美味いバナナじゃなくて!メチャ銃火器を支給して下さいって事ですよ!」
「メチャ無理を言うなキミは!そんな事を上に提案してみろ!私だけではない!キミの首も飛ぶぞ!」
「自然の摂理ですか!」
「何を言っているんだね?」
「結局は、鬼が言うように!人間は、鬼に喰われる運命って事ですか!運命には、逆らえないって事ですか!私はあと、何人の未来ある人間が目の前で鬼に喰われる現場を目の当たりにすればいいんですか!私はあと、何回鬼に笑止笑止と言われればいいんですか!」
「メチャ美味いバナナがあるだろ!」
「メチャ美味いバナナ絶対弱点じゃないだろうが!」
「メチャ頭のいいメチャ学者達がメチャ研究して!メチャ導き出したメチャ答えだぞ!」
「だからメチャなんだ!」
「上司に向かってなんだ!その口の利き方は!」
「上司がなんだ!」
「メチャクビになりたいのか!」
「クビが怖くて上司にメチャ意見が出来るか!」

「トゥルルルルルルルルルル!」

「はい。こちら未来ある地域住民を鬼の魔の手からお守りする、鬼課。・・・・・・何ですと!?鬼が少年を!?分かりました!すぐに職員を向かわせます!」
「・・・・・・・・・。」
「話はあとだ!三丁目のクリーニング屋の隣の花屋に向かってくれ!」
「・・・・・・・・・。」
「何してる!早くしないと未来ある少年が鬼に喰われてしまうかもしれないぞ!」
「・・・・・・分かりました。」
「おい!」
「何ですか?」
「メチャ美味いバナナを忘れてるぞ?」
「いるかっ!!」

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2014年8月20日 (水)

「第四百二十七話」

 友人宅。僕は、いつもの僕じゃない僕で、訪ねた。友人は、そんないつもの僕じゃない僕に対しても、いつもの友人な対応をしてくれた。それどころか、奥さんの手料理まで振る舞ってくれた。3人で食卓を囲みながら他愛ない話で笑い合った。これまでの話、これからの話、どこかで誰かが誰かと会えば、どこででもするようなそんな会話を。そして、会話が途切れる間を待っていたのか、そんなタイミングだったのか。コップに注がれたビールを一気に飲み干すと友人は、いつもの僕じゃない僕に向かって言った。
「いやバレてるから!」

第四百二十七話
「覆面レスラーが家にやって来た」

「バレてる?いやそんなはずはないはずだ!」
「いやいやいや、バレバレだって!なあ!」
「はい。」
「はいって!奥さんまで!」
何だ!?何がどうなってるんだ!?そんなはずは絶対にない!あっちゃならない!覆面レスラーの正体がバレるなんて、何かいい例えが浮かばないけど、アレだ!そうアレだ!
「アレだ!」
「どれだ!」
どれだ!だって!?どれだって言われてもアレだから、どれとは程遠い代物で、法事の時に会う父親の二番目の弟の隣の隣の家に住んでる人ぐらいだ!それはもう全くだ!全くってぐらい全く程遠いだ!
「お前、覆面レスラーになるのか?」
「そうなんですか?」
「とりあえずその中身の僕目線からの会話やめようか。」
「正体がバレないようにプライベートも覆面ってのは分かるけどさ。」
良かった!分かってくれた!さすが友人だ!
「そもそも正体を知ってる俺のとこに覆面した状態は逆効果だろ!」
しまった!逆効果の事を忘れていた!?それはもう、うっかりってくらいうっかりに!まずいぞ!他の国では、どうだか知らないけど、この国の悪しき風習だと、覆面レスラーは正体がバレた時点で、死。覆面警察がノコノコやって来て、僕は撃ち殺される!誤魔化さないと!ここはなんとか誤魔化さないと!
「あはははははは!」
「何、あからさまに誤魔化してんだよ。」
ちょっと待てよ!待ってくれよ!あはははははは!って笑えば、何だって誤魔化せるんじゃないのかよ!そう言う社会じゃないのか、この社会は!僕は、そう聞いてるぞ!
はっ!?」
「はっ?」
「もういいじゃない。覆面レスラーでもなんでも、唐揚げ冷めないうちにもっと召し上がって下さい。」
そうか!そうだよ!そうなんだよ!えっ?そうなのか?いや、そうだ!何かを笑って誤魔化すには、誤魔化さなければならない事柄によって、豪快さをコントロールしなきゃなんだろ?
「ぎゃはははははははははは!!」
「何で無邪気?」
間違えた!豪快と無邪気を間違えた!いやいやいや、そもそも豪快と無邪気にボーダーラインなんて存在しない!あるとすれば、それは友人の勘違いだ!こいつは、豪快と無邪気の区別もつかないのか!だいたい豪快だか無邪気だかなんて表情を見れば、一撃だろ!って、しまった!覆面をしていたのをすっかり忘れていた!ダメだ!こんなへんちくりんな間をこの夫婦に今与えたら、完全に僕の正体がバレる!何でもいいから話題を逸らさなければ!逸脱だ!脱線だ!
「奥さん!」
「はい。」
「僕は、唐揚げが好きではない!何なんだこの唐揚げだらけの食卓は!唐揚げでテーブルが見えないじゃないか!そもそも何でお皿を使わない!」
「ヒドい!」
「ヒドいぞ!」
ヒドいのか!?僕は、ヒドいのか!?見たままの事と唐揚げが苦手だって事実を伝えただけじゃないか!なのにヒドいって、ヒドいだろ!僕が唐揚げ大好物だっとしても、どう考えてもこの食卓は異常だろ!
「妻は、俺の友人が遊びに来たから、得意料理を振る舞っただけだろ?」
「振る舞うなら振る舞うで、唐揚げばっかって、おかしいだろ!選択肢が無いだろう!それと僕は、キミの友人ではなく!覆面レスラーの覆面仮面だ!」
「どっちなんだよ!?」
「どっちってなんだ!どっちって選べるぐらい料理は無いだろ!」
「料理の話じゃなくて!覆面仮面って!なんつぅリングネームなんだよ!」
「人が寝ないで考えたリングネームをけなす友人がどこにいるんだ!」
「寝ないで考えるから最終的に変なリングネームになっちゃうんだろ!後な、キミって他人行儀に言ってみたり友人って言ったり、キャラ設定が曖昧なんだよ!」
「変な壁紙!」
「ヒドい!」
「ヒドいぞ!この壁紙は、妻が選んだんだ!謝れ!妻に謝れ!」
「唐揚げの壁紙のどこが変じゃないって言うんだ!これは、友人としても覆面仮面としてもだ!」
「覆面仮面って名乗る者が、人の何かを変だと言う資格はない!」
「あのう?覆面仮面さん?」
「何でしょうか!奥さん!」
「アタシは、覆面仮面ってリングネーム、素敵だと思います。」
「ほら!」
「ほらって何だ!明らかに旦那の友人に対して気を遣っての発言だろう!」
「気を遣っての発言だろうが構わない!ただ、ワシはキミの友人ではない!」
「何で急に老けるんだよ!」
「いいか?ここで僕の正体がバレたら、僕がどうなるか分かるだろ?」
「覆面警察ですか?」
「そうだよ!唐揚げの言う通りだよ!」
「人の嫁を唐揚げ呼ばわりするな!」
「唐揚げだろ!唐揚げ星人的な奴等が襲来したら真っ先に殺されるだろ!」
「ヒドい!」
「ヒドいぞ!」
「ヒドくない!」
「唐揚げ星人は、そんな人間を襲うような悪い星人じゃありません!」
「唐揚げ愛!アナタを掻き立てるその唐揚げ愛は、何なんですか!」
「妻はな。生まれてすぐ両親に捨てられ、鶏に育てられたんだ。」
「コケ。」
「コケじゃないだろ!コケじゃ!だったらむしろ唐揚げを崇め奉れ!いや、そもそも唐揚げ作っちゃうってどう言う事だ!悪魔か!だいたい2人の結婚式にいた新婦側の両親的な人達は、何なんだ!」
「レンタルです。」
「レンタルだ。業者の人達だ。」
「衝撃だよ。大抵の辛い事は今の話思い出して乗り越えられちゃうくらいの衝撃の事実だよ。」
「まあ、とにかく覆面警察の事は心配するな。」
「そうですよ。」
「そんな訳にはいかないだろ!覆面警察は、いつ覆面レスラーの正体がバレてもいいように、どこに潜んで覆面レスラーの様子を伺ってるか分からないんだぞ!」
「だから、大丈夫なんですよ。」
「なぜ、そう言い切れるんですか、奥さん!」
「この人、覆面警察ですから。」
「はあ?」
「いくら覆面警察だからって、友人を撃ち殺す訳がないだろ!だから、覆面レスラー頑張れよ!」
「頑張って下さい!」
「陰ながら応援してるからな!覆面仮面!」
「覆面仮面さん!」
「お前達・・・・・・。」
「さあ!気を取り直して飲み直そう!」
「もっと唐揚げ作らなきゃ!」
「いや、奥さん。唐揚げは、マジで得意じゃないんで結構です。」
「ヒドい!」
「ヒドいぞ!」
「ヒドくないだろ!」
「しかし、何でお前は急に覆面レスラーになろうと思ったんだ?」
「恩返しさ。僕も生まれてすぐ両親に捨てられてね。」
「覆面レスラーに育てられたのか?それでチャンピオンになって恩返しって訳か。いい話じゃないか。」
「いい話です。」
「いや、覆面に育てられたんだ。」
「「ふ~ん。」」
「・・・・・・・・・。」
覆面に育てられたんだぞ!覆面にだぞ!もっと何かこう、古き良きリアクションがあるだろ!ウンコみたいな反応しやがって!このウンコ夫妻め!想像力不足かお
前達は!

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2014年8月27日 (水)

「第四百二十八話」

「先生?電気イスって知ってる?」
「ん?」
「座ると、ビリビリビリビリって!」
「ビリビリどころじゃないだろ。死刑執行の道具なんだからさ。」
放課後、二人きりの教室、無邪気に話し掛けて来る彼女は、僕の教え子だ。僕は、この女子高で世界史を教えている。彼女とは、彼女が一年生の時に出会った。そして僕等は、自然とお互いに惹かれ合った。あれから二年、まさか自分が15も離れた子供だと思っていた存在と付き合うだなんて考えもしなかった。
「ねぇ?」
「ん?」
「電気イスに座った人は、どんな気分なんだろうね?」
「どんな気分って、こらから死刑執行されるんだから・・・・・・。」
彼女は、無邪気過ぎて僕には持て余す存在だった。無邪気とは時に残虐で、時に狂気で、なによりも純粋だ。そして、それら全てが無意識の中に混在し、本人は全く気付いていない。彼女の無邪気がいつか暴走したらと考えると、一日でも早く付き合いを終わらせた方がいいのだろう。
「先生?どうしたの?」
「ん?ああ、そんなありもしない気分なんか、やっぱり分かんないよ。」
「もう!相変わらず先生は、大真面目なんだから!」
「かもな。さあ、帰ろう。」
「うん!」
「お、おい!?学校の中じゃくっつかないのがルールだろ。」
「はいはい。」
僕にとって、この無邪気な笑顔を無防備に向ける彼女は、まさに電気イスだ。きっと電気イスに座らされた人間は、こんな気分なんじゃないだろうか?

第四百二十八話
「電気イス」

「看守さん。」
「何だ?」
「こ、これって本当に単なる掃除なんですよね?」
「当たり前だろ。」
「で、でも。」
「でも、何だ?」
「死刑囚が電気イスの掃除をするなんて聞いた事ないですよ!」
「あのな?お前は、ここで死刑囚になる前にも外で死刑囚やってたのか?ここではここの、他では他の、ルールってもんがあるんだ。だいたい掃除用具を手に、掃除以外の何が考えられる。」
「そうですけど、死刑囚が電気イスの掃除なんて、ブラックジョークにも程がありますよ。」
「なら笑えばいいだろ。」
「笑えないですよ!」
「どうしたんだよ。1104、何だかおかしいぞ。体調でも悪いのか?」
「こ、これは単なる確認なんですが、いや確認と言うか。」
「何を怯えてるんだよ。」
「まさか、刑が執行される訳じゃないですよね!」
「はあ?おいおいおい、一体どっちがブラックジョークなんだよ!刑が執行って、つまりは死刑執行って事だよな?」
「そうです。」
「ないないない!ある訳がないだろ!だいたい、神父もいなけりゃ、ここには俺とお前の2人しかいないし、死刑執行なんて膨大な書類に判を押さなきゃならないんだぞ?俺の気分で死刑執行してたら、ここはゴーストジェイルだ!」
「そ、そうですよね。」
「気持ちは分かるが、考えがまるで飛躍し過ぎだ。それに、良い事を教えてやるよ。今の死刑執行は、薬物投与で、こんな骨董品なんか使わない。」
「そうですか。」
「分かったら、床ばっか掃除してないでさっさと骨董品の方も掃除しろ。俺だって、こんな部屋に長居したくないんだ。」
「は、はい。」
「そうだ!良い事を思い付いたぞ!」
「何ですか?」
「1104、お前ちょっとイスに座ってみろよ!」
「絶対に嫌ですよ!」
「何で!記念写真撮ってやるよ!」
「何の記念ですか!」
「ジョークだよ!ジョーク!」
「笑えませんよ!私は、看守さん以上に!1秒でも早くこの場を去りたいんです!掃除の邪魔をするような話題は、やめて下さ・・・・・・ん?あ、あれ?」
「どうした!1104!?」
「な、何か体の調子が。」
「立ち眩みか?」
「かもしれません。」
「とにかく治まるまで、気分は乗らないだろうが、そこに座れ、転んで怪我でもされたら俺が所長に説教喰らうんだからな。」
「は、はい。」
「おい、本当に体調が悪いんじゃないんだろうな?」
「ありがとうございます。本当に単なる立ち眩みです。」
「それとも?昼食に入れた睡眠薬が効いてきた?」
「えっ!?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「これはやっぱり!?」
「ジョークだよ!ジョーク!」

第四百二十八話
「電気イス」

「者ども-!遂に地球を侵略する時が来た!宇宙大魔王の時代だー!」
「おー!!」
「間もなく地球だ!各自持ち場を離れるんじゃないぞ!吾輩は、地球侵略の前に腹ごしらえをする!おい!」
「はい!何でしょうか?宇宙帝王!」
「宇宙大魔王だ!」
「宇宙大魔王!」
「いやだから、腹ごしらえするって言ったよ?」
「いつものですね?」
「いつものだよ!侵略の前には、ホットケーキ!マストだろ!」
「マストです!ささ、あちらにご用意していますので、テーブルの方へと移動を!足元にお気を付け下さい。」
「してるんじゃないか!」
「宇宙大統領!」
「大魔王な。」
「宇宙大魔王!今日は、地球侵略と言う事で特別なモノをご用意致しました!」
「それは、楽しみだ!」
「こちらになります!」
「おい!」
「有り難き幸せ!」
「褒めてない褒めてない!」
「だとしたら、いかがされました?」
「どう見ても普通のホットケーキだが?」
「あはい。」
「あはい、やめろ!宇宙大魔王だぞ!貴様、さっき特別なモノを用意したとか言わなかったか?」
「言いました。」
「普通のホットケーキだが?」
「特別なのは、イスです!」
「何で?こう言う場合は、ホットケーキの方を特別にしないか?」
「いえ、こう言う場合だからこそ!特別なイスをご用意致しました!」
「何なんだ貴様のその価値観は!んまあいい。それで?特別って何が特別なんだ?このイスに座ってホットケーキを食べると、いつものホットケーキが数倍美味しく感じられるとかか?」
「電気が流れます!」
「死ぬだろ!この場合、いつものホットケーキが数倍美味しく感じられるイス以外あっちゃならないだろ!んまあいい。ビリビリしながらホットケーキ食べて地球到着を待つのも乙なもんなんだろう。」
「宇宙先生!」
「ただただ宇宙に詳しいだけのヤツか吾輩は!宇宙大魔王だ!」
「宇宙大魔王、こちらを頭に。」
「いやだから、それ頭にやっちゃったら完全に終わりだろ?何か?これを頭に装着したら、いつものホットケーキが数倍美味しく感じられるとかか?」
「電気が流れます!」
「ちょっと貴様が、吾輩と交代してそれを頭に装着してみろよ!」
「嫌です!」
「何で?」
「電気が流れるからです!」
「だよな!だったら吾輩に、それを頭に装着させたがるな!と言うか早くホットケーキを持って来い!」
「はい!宇宙さん!」
「隣人か!大魔王だー!ったく!」

第四百二十八話
「電気イス」

「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
ああ、気持ちい~い!
「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
めちゃくちゃ気持ちい~い!
「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
ん?
「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
あれ?
「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
死ぬ?
「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
死ぬか?
「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
死にそうか?
「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
うん!
「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
大丈夫!
「ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!!」
あっ!?死んだ。

第四百二十八話
「電気イス」

「ねぇ?先生?」
「ん?」
「今日、先生の家に泊まってもいい?」
「ん?うん、ああもちろん。」
「よし!じゃあ、何か食べたいモノがあったら言って!愛情たっぷりで作っちゃうから!」
「うん。じゃあ、カレーかな。」
「またカレー!んでもまあ、いいよ!じゃあ、いつものスーパー寄って帰ろ!」
「そうだね。」
僕の真横で無邪気な笑顔を無防備に向ける彼女が電気イスなら、今さっき廊下で擦れ違い様に会釈をした彼女は、僕にとってギロチンだ。

第四百二十八話
「電気イス」

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