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2014年8月20日 (水)

「第四百二十七話」

 友人宅。僕は、いつもの僕じゃない僕で、訪ねた。友人は、そんないつもの僕じゃない僕に対しても、いつもの友人な対応をしてくれた。それどころか、奥さんの手料理まで振る舞ってくれた。3人で食卓を囲みながら他愛ない話で笑い合った。これまでの話、これからの話、どこかで誰かが誰かと会えば、どこででもするようなそんな会話を。そして、会話が途切れる間を待っていたのか、そんなタイミングだったのか。コップに注がれたビールを一気に飲み干すと友人は、いつもの僕じゃない僕に向かって言った。
「いやバレてるから!」

第四百二十七話
「覆面レスラーが家にやって来た」

「バレてる?いやそんなはずはないはずだ!」
「いやいやいや、バレバレだって!なあ!」
「はい。」
「はいって!奥さんまで!」
何だ!?何がどうなってるんだ!?そんなはずは絶対にない!あっちゃならない!覆面レスラーの正体がバレるなんて、何かいい例えが浮かばないけど、アレだ!そうアレだ!
「アレだ!」
「どれだ!」
どれだ!だって!?どれだって言われてもアレだから、どれとは程遠い代物で、法事の時に会う父親の二番目の弟の隣の隣の家に住んでる人ぐらいだ!それはもう全くだ!全くってぐらい全く程遠いだ!
「お前、覆面レスラーになるのか?」
「そうなんですか?」
「とりあえずその中身の僕目線からの会話やめようか。」
「正体がバレないようにプライベートも覆面ってのは分かるけどさ。」
良かった!分かってくれた!さすが友人だ!
「そもそも正体を知ってる俺のとこに覆面した状態は逆効果だろ!」
しまった!逆効果の事を忘れていた!?それはもう、うっかりってくらいうっかりに!まずいぞ!他の国では、どうだか知らないけど、この国の悪しき風習だと、覆面レスラーは正体がバレた時点で、死。覆面警察がノコノコやって来て、僕は撃ち殺される!誤魔化さないと!ここはなんとか誤魔化さないと!
「あはははははは!」
「何、あからさまに誤魔化してんだよ。」
ちょっと待てよ!待ってくれよ!あはははははは!って笑えば、何だって誤魔化せるんじゃないのかよ!そう言う社会じゃないのか、この社会は!僕は、そう聞いてるぞ!
はっ!?」
「はっ?」
「もういいじゃない。覆面レスラーでもなんでも、唐揚げ冷めないうちにもっと召し上がって下さい。」
そうか!そうだよ!そうなんだよ!えっ?そうなのか?いや、そうだ!何かを笑って誤魔化すには、誤魔化さなければならない事柄によって、豪快さをコントロールしなきゃなんだろ?
「ぎゃはははははははははは!!」
「何で無邪気?」
間違えた!豪快と無邪気を間違えた!いやいやいや、そもそも豪快と無邪気にボーダーラインなんて存在しない!あるとすれば、それは友人の勘違いだ!こいつは、豪快と無邪気の区別もつかないのか!だいたい豪快だか無邪気だかなんて表情を見れば、一撃だろ!って、しまった!覆面をしていたのをすっかり忘れていた!ダメだ!こんなへんちくりんな間をこの夫婦に今与えたら、完全に僕の正体がバレる!何でもいいから話題を逸らさなければ!逸脱だ!脱線だ!
「奥さん!」
「はい。」
「僕は、唐揚げが好きではない!何なんだこの唐揚げだらけの食卓は!唐揚げでテーブルが見えないじゃないか!そもそも何でお皿を使わない!」
「ヒドい!」
「ヒドいぞ!」
ヒドいのか!?僕は、ヒドいのか!?見たままの事と唐揚げが苦手だって事実を伝えただけじゃないか!なのにヒドいって、ヒドいだろ!僕が唐揚げ大好物だっとしても、どう考えてもこの食卓は異常だろ!
「妻は、俺の友人が遊びに来たから、得意料理を振る舞っただけだろ?」
「振る舞うなら振る舞うで、唐揚げばっかって、おかしいだろ!選択肢が無いだろう!それと僕は、キミの友人ではなく!覆面レスラーの覆面仮面だ!」
「どっちなんだよ!?」
「どっちってなんだ!どっちって選べるぐらい料理は無いだろ!」
「料理の話じゃなくて!覆面仮面って!なんつぅリングネームなんだよ!」
「人が寝ないで考えたリングネームをけなす友人がどこにいるんだ!」
「寝ないで考えるから最終的に変なリングネームになっちゃうんだろ!後な、キミって他人行儀に言ってみたり友人って言ったり、キャラ設定が曖昧なんだよ!」
「変な壁紙!」
「ヒドい!」
「ヒドいぞ!この壁紙は、妻が選んだんだ!謝れ!妻に謝れ!」
「唐揚げの壁紙のどこが変じゃないって言うんだ!これは、友人としても覆面仮面としてもだ!」
「覆面仮面って名乗る者が、人の何かを変だと言う資格はない!」
「あのう?覆面仮面さん?」
「何でしょうか!奥さん!」
「アタシは、覆面仮面ってリングネーム、素敵だと思います。」
「ほら!」
「ほらって何だ!明らかに旦那の友人に対して気を遣っての発言だろう!」
「気を遣っての発言だろうが構わない!ただ、ワシはキミの友人ではない!」
「何で急に老けるんだよ!」
「いいか?ここで僕の正体がバレたら、僕がどうなるか分かるだろ?」
「覆面警察ですか?」
「そうだよ!唐揚げの言う通りだよ!」
「人の嫁を唐揚げ呼ばわりするな!」
「唐揚げだろ!唐揚げ星人的な奴等が襲来したら真っ先に殺されるだろ!」
「ヒドい!」
「ヒドいぞ!」
「ヒドくない!」
「唐揚げ星人は、そんな人間を襲うような悪い星人じゃありません!」
「唐揚げ愛!アナタを掻き立てるその唐揚げ愛は、何なんですか!」
「妻はな。生まれてすぐ両親に捨てられ、鶏に育てられたんだ。」
「コケ。」
「コケじゃないだろ!コケじゃ!だったらむしろ唐揚げを崇め奉れ!いや、そもそも唐揚げ作っちゃうってどう言う事だ!悪魔か!だいたい2人の結婚式にいた新婦側の両親的な人達は、何なんだ!」
「レンタルです。」
「レンタルだ。業者の人達だ。」
「衝撃だよ。大抵の辛い事は今の話思い出して乗り越えられちゃうくらいの衝撃の事実だよ。」
「まあ、とにかく覆面警察の事は心配するな。」
「そうですよ。」
「そんな訳にはいかないだろ!覆面警察は、いつ覆面レスラーの正体がバレてもいいように、どこに潜んで覆面レスラーの様子を伺ってるか分からないんだぞ!」
「だから、大丈夫なんですよ。」
「なぜ、そう言い切れるんですか、奥さん!」
「この人、覆面警察ですから。」
「はあ?」
「いくら覆面警察だからって、友人を撃ち殺す訳がないだろ!だから、覆面レスラー頑張れよ!」
「頑張って下さい!」
「陰ながら応援してるからな!覆面仮面!」
「覆面仮面さん!」
「お前達・・・・・・。」
「さあ!気を取り直して飲み直そう!」
「もっと唐揚げ作らなきゃ!」
「いや、奥さん。唐揚げは、マジで得意じゃないんで結構です。」
「ヒドい!」
「ヒドいぞ!」
「ヒドくないだろ!」
「しかし、何でお前は急に覆面レスラーになろうと思ったんだ?」
「恩返しさ。僕も生まれてすぐ両親に捨てられてね。」
「覆面レスラーに育てられたのか?それでチャンピオンになって恩返しって訳か。いい話じゃないか。」
「いい話です。」
「いや、覆面に育てられたんだ。」
「「ふ~ん。」」
「・・・・・・・・・。」
覆面に育てられたんだぞ!覆面にだぞ!もっと何かこう、古き良きリアクションがあるだろ!ウンコみたいな反応しやがって!このウンコ夫妻め!想像力不足かお
前達は!

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