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2014年9月

2014年9月 3日 (水)

「第四百二十九話」

 この作品を書くにあたり、作者は複数の寺を巡り、作品の無事を祈願した。

第四百二十九話
「心霊写真」

「ハゲ。」
「ハゲてねぇよ!剃ってんだよ!」
「あそう。で、この写真なんだけどな。」
「写真がどうかなさったのかな?」
「おいおいおい!寺の住職に写真を持って来たんだぞ?楽しい二人の旅行のスナップ写真な訳がないだろ!心霊写真だよ!心霊写真!供養してもらおうと持って来たんだよ!大丈夫か?この寺?」
「心霊写真と言うのは、あの心霊写真ですかな?」
「心霊写真って言ったら心霊写真だよ!あのもそのもこのもないだろ!」
「では、拝見しましょう。」
「おう!拝見して腰抜かすなよ!」
「どれどれ?」
「その写真はな。バスで行く旅行のツアーに先週参加した時に観光地で撮った集合写真なんだよ。」
「ふむふむ。」
「俺もさ。最初は、何の事はないただの旅行の楽しい思い出の集合写真だと思って、ニヤニヤしながら見てたんだよ。」
「ふむふむ。」
「でもさ。何だか、段々違和感を感じるようになって来たんだよ。」
「ふむふむ。」
「そしたらどうだよ!戦慄の心霊写真じゃねぇか!」
「ふむふむ。」
「もう恐くて恐くて!きっとこの写真は、手元にあるだけで何か不吉な事が起こるんじゃないかって!そう思ったらいてもたってもいられなくなってさ!」
「ふむふむ。」
「家の近くのこの寺に来たって訳だよ!」
「ふむふむ。」
「まだ見付からないのかよ!結構な時間、写真と睨めっこだったろ!」
「しかし、私にはいくら拝見しても普通の楽しい旅行の思い出の写真にしか見えませんが?」
「視力もハゲか!」
「ハゲてねぇよ!剃ってんだよ!」
「いいか?こんなもん寺の住職だとかって立場関係ないないぞ!はっきりと写ってんだろうが!大丈夫か?この寺?」
「え?」
「いや、このタイミングで写真の裏見る住職がどこにいんだよ!本格的にこの寺、大丈夫なのか!」
「この寺は!由緒正しき寺である!」
「いや、どこに行こうとしてんだ!」
「木魚を叩きに行こうかな、と。」
「何で?いいから早くその心霊写真を供養してくれよ!」
「だから!この写真の一体どこが心霊写真なんですか!」
「モロだろ!」
「モロって!」
「だから!はっきりとお化けが写り込んでんだろ!」
「それじゃあ、心霊写真ではないか!」
「そうだよ!それをさっきっから何度も何度も言ってんだよ!」
「いや、しかしね?私もそれに負けず劣らず何度も何度も言ってるように、この写真の一体どこが心霊写真なんですか?この写真の一体どこにお化けが写り込んでるんですか?ですよ。」
「本当に分からないのか?」
「申し訳ない。」
「本当に本当か?」
「このハゲに誓ってウソではない。」
「ハゲなんじゃねぇか!」
「教えてくれ!お化けは、どこに写ってるのかを!」
「ハゲを近付けて来るんじゃない!ハゲを!いいか?住職!聞いて驚くなよ!」
「はい!」
「全部だ。」
「全部?全部と言うのは?」
「だから!この集合写真に写ってる俺以外の人間全員だよ!」
「恐っ!」
「だろ?」
「いやいやいや、この写真がじゃなくて、貴方がですよ!」
「何で俺が恐いんだよ!別に鉈とか持ってる訳でもあるまいし!」
「だって、バスで行く旅行ツアーの集合写真でしょ?つまり、貴方の回りにいる人達は、他のツアー客って事でしょ?」
「だから!最初に言っただろ!初めは旅行の楽しい思い出だと思ってニヤニヤしながら見てたって!でもな?ここに写る誰1人として知らないんだよ!」
「そりゃあ、そうでしょ!」
「いやだから!同じツアー客として、初対面って話じゃなくて!その時の他のツアー客じゃないんだよ!」
「それは、貴方が別のツアーの集合写真に写り込んでしまっただけの話じゃないんですか?つまりそれは、このツアー客からしてみれば、貴方がお化けじゃないですか。」
「俺は馬鹿か?何で他のツアーの集合写真に写りに行っちゃうんだよ!それにいいか?だいたい俺は、こんな場所で集合写真を撮った覚えはないんだよ!」
「じゃあ、この写真は一体何なんですか!」
「後日、旅行会社から送られて来た写真の中に入ってたんだよ!いいか?それはつまり何を意味するのかって言うとな?お化けは、写真に写り込んでる奴等だけじゃなく!この写真を撮影してる奴もお化けって事だ!」
「どんな心霊写真だよ!」
「凄く心霊写真って事だよ!」
「有り得ないでしょう!」
「それにな。よくよく考えてみると、そもそも俺は先週、バスで行く旅行ツアーになんか行ってないんだよ!それはつまり何を意味するのかって言うとな?旅行会社もお化けって事だ!」
「それは、お寺に来る以前に病院へ行かれた方がいいのでは?」
「それとまだあるんだ!」
「まだあるの?」
「住職、その心霊写真を見てるアンタもお化けなんだよ!」
「どゆこと?」
「戦慄はまだ終わらない!」
「もう終わってもいんじゃないですか?」
「その心霊写真を持って来た俺自身もお化けなんだよ!」
「怪談話ド下手か!ならいいじゃないですか!全部が全部お化けなら、それはそれで平和じゃないですか!」
「住職?」
「はい?」
「これって、除霊始まってんのか?」
「だとしら、私もヤバいわい!」

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2014年9月10日 (水)

「第四百三十話」

「私もね。長年、整形外科医をしていますが、貴方のような患者さんは初めてですよ。えっ?顔に?戦車?」
「そうです!先生!僕の顔に戦車を付けて下さい!お願いします!」
「両腕を後ろにピーンとして、深々とお辞儀されてもですよ!顔に戦車って、玩具か何かのって事ですか?」
「違いますよ!マジの戦車ですよ!」
「マジの戦車って!だいたいマジの戦車がいくらすると思ってるんですか!」
「バイト頑張ります!」
「それで買えるなら街中、戦車だらけですよ!と言うかですよ?顔に戦車を付けると言うよりも、戦車に貴方を付ける風になりますよ?」
「それは、先生!もちろん価値観ですよ!人々が僕を見て、あの人、戦車にくっついてるな。と思うかもしれませんが、僕自身、顔に戦車を付けてると思っていれば、それでいいんです!」
「もちろん価値観って、だいたいなぜ顔に戦車を付けたいんです?」
「先生、実は僕、小さい頃いじめられてたんです。いじめられっ子だったんです!」
「こんな自慢気に、いじめられっ子をカミングアウトする人、初めてですよ。」
「今でも、その時受けた心の傷なのか、元々の僕の気質なのか、プライベートでも職場でも、言いたい事が言えないんです。断ればいいのに、その一言が口に出せないんです。泣き寝入りです。泣き寝入りの人生です。いや、もしかしたら、僕自身、こんな情けない僕を受け入れて、諦めて、むしろ逆に僕がいないと世界が回らないんだって、開き直ってるのかもしれません。開き直り人生なのかもしれません。」
「なるほど。で、なぜ戦車に辿り着いたんです?」
「強くなろうと思ったんです!強くなれば、人生が変わると思ったんです!いじめられっ子の僕と、おさらばなんです!」
「考えが飛躍し過ぎでしょ!だったら、ジムに通って体を鍛えるとかすればいいじゃないですか。」
「それじゃあダメなんです!」
「何で?」
「だって先生?想像してみて下さいよ!ムキムキの筋肉男と、顔に戦車が付いてる男、どっちが強そうに見えます!」
「いや、すいません。顔に戦車の方が、いまいち上手く想像出来ないです。」
「もちろんこうですよ!こう以外に考えられないでしょ!」
「それは、戦車のお尻の部分に顔って事でいいんですかね?」
「威圧感が違うてしょ!筋肉がムキムキと顔に戦車とじゃあ!」
「威圧感は、そうですが、単純に日常生活に支障あり過ぎますよ!」
「先生!ありがとうございます!」
「何の握手でしょう?」
「やっぱり先生のような専門家の人に話を聞いてもらって良かった!」
「何の握手ですか?」
「ですよね!顔に戦車を付けてたら日常生活に支障あり過ぎですよね!」
「それは、私じゃなくても近所のおばさんからでも得られたと思いますよ?」
「やめます!顔に戦車、やめます!」
「賢明な判断だと思いますよ。では、お気を付けてお帰り下さい。」
「じゃあ、先生!顔に戦車は諦めるとして、パカッと顔が開いて中からミサイルが50発ぐらい出るように、お願いします!」
「いやだから、体を鍛える方向には向かないんですか?」
「パカッと顔が開いて、中から火炎放射でも構いません!」
「何でそんに、パカッと顔を開けたがるんです。」
「勘違いしてもらっては困ります、先生。ミサイルのパカッとは、顔の左側に蝶番的なモノがあっての右側パカッとです!火炎放射は、右側に蝶番的なモノがあっての左側パカッとです!」
「私が何を勘違いしているのだと思ったのでしょ?左からだろうが右からだろうが、パカッとはパカッとに変わりないでしょ!」
「じゃあ、観音開きで中から毒ガスってのは、どうですか?」
「だから私は別に開き方に問題定義してる訳じゃありませんよ!そんなパカッと顔を開けるようにしたらね?思いも寄らぬ時にパカッとなったら大変でしょ?後々、開く部分がバカになって何かする度にパカパカパカパカ開いたらどうするんです?ねぇ?ここは素直に体を鍛える方向にしましょ。」
「確かに先生の言う通りですね。腕立て伏せしてる時にずっと火炎放射してたら、腕立て伏せする度に火事ですもんね!」
「何でそうなってから体を鍛える!そうなったら別に体を鍛える必要性ないでしょ!なぜにそうなる前に体を鍛えようとしない!」
「あ、そうだ!先生!耳から常に水が出るようにして下さい!」
「どうして顔パカ火炎放射で話を進めてるんです!と言うか、そんな感じにするなら、プラマイゼロなんだから、素直に体を鍛えた方がいいでしょ!」
「じゃあ、先生?顔の真ん中に川流して下さい!」
「ここに来て何ですか?意味不明な発想の転換。」
「僕、川が好きなんですよ。」
「なら、川に行けばいいじゃないですか。」
「もう!川に行っただけじゃ満足しない体なんです!」
「どんな体ですか。」
「川から来てもらいたいんです!」
「どう言う理屈なんですか。」
「こう顔の真ん中に川を流して下さい!大雨の日は外に出ないと誓約書にサインしますから!」
「氾濫したってたかがしれてるでしょ!」
「僕、カナヅチなんです!」
「なぜ、川が好き?」
「カナヅチだって川が好きなんですよ!川は人生です!川は弱肉強食です!川は偉大です!川は英知です!そんな川に包まれて生きて行けたら、きっと僕!生まれ変われると思うんです!昔の自分とおさらばなんです!」
「んまあ、何となく言いたい事は分かりましたよ。でもね?川の仕組みとして、貴方には流れる水がないじゃないですか。」
「何言ってるんですか!人間の体には大量の水分があるじゃないですか!」
「それを水脈として使用したら貴方自身がすぐ干からびて死ぬでしょ!」
「だったら、先生!頭に連峰も作って下さい!そしたら水脈問題は解決じゃないですか!」
「握手、やめて下さい。」
「やめませんよ!」
「何で?」
「握手が好きなんです!握手と言う行為が大好きなんです!握手は人生です!握手は弱肉強食です!握手は偉大です!握手は英知です!」
「握手のどこら辺が弱肉強食なんでしょう?」
「だから先生!顔のど真ん中に第3の手を付けて下さい!」
「そのとりあえず思い付いた事を顔にどうこって発想やめません?」
「何なんですか!先生は!」
「私の台詞ですよ。」
「ことごとく僕のアイデアを否定して!」
「そりゃあ、しますよ!」
「何なんですか!先生は!」
「だからそれは、私の台詞ですよ。」
「はっは~ん!分かったぞ!そっかそっか!なるほどね!」
「な、何ですか?」
「つまりあれだ!」
「どれです?」
「無理って事なんですよね?僕が言った今まで全ての整形手術は、先生の技術では、出来ないって事なんですよね?」
「あのね!貴方ね!」
「だから僕の提案を拒絶して、体を鍛えろ、体を鍛えろ、ってお母さんの如く言うんですよね?そっかそっかそっか!」
「私を侮辱するのもいい加減にしろ!出来ないから拒絶だと?ふざけるな!」
「なら出来るって言うんですか?」

第四百三十話
「はい、全て可能です」

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2014年9月17日 (水)

「第四百三十一話」

 銃は、素晴らしい。俺がいつから銃の虜になったのかなんて覚えてない。物心ついた時には既に、俺は銃の虜になってた。このフォルム、弾丸が発射される仕組み、そして何よりも遠くの対象を撃ち抜ける現象。まさにロマンだ。銃好きの奴には、これぞって言うこだわりの銃がある。だが俺は、違う。そこら辺の奴とは違う。俺にそんなこだわりなんかはない。いやむしろ、そんなこだわりは必要ない。俺は、どんな銃でも好きだ。銃は、人間が創り出したもっとも素晴らしい発明だ。世の中、色々と驚かされる発明があるが、それらは銃の比じゃない。銃は、素晴らしい。発射された弾丸は、どこまでも、どこまでも、飛んで行く。どこまでも、どこまでも、俺の夢を乗せ飛んで行く。何も恐れない。何にも屈しない。力強くどこまでも、どこまでも飛んで行く。
「グジュッ!!」
は?何だ?今の怪音は?奇怪で絶望的な今の怪音は?一体何だ?と共に頭へのこの違和感は何だ?俺が放った弾丸が俺の脳ミソの中心を直撃した怪音だとでも言うのか?バカな!?そんなはずはない!俺が放った弾丸は、どこまでも、どこまでも、遠くへ、遠くへ、飛んで行ったはずだ!?それが俺の脳ミソに到達するはずがない!だがなぜだ?これは紛れもない現実だ!淀む事のない透明な現実だ!どうしてだ?どうしてだ?銃は、素晴らしい。 俺がいつから銃の虜になったのかなんて覚えてない。 物心ついた時には既に、俺は銃の虜になってた。なぜだ?なぜ俺の脳ミソに?頭の中に響き渡った怪音の正体は何なんだ? このフォルム、弾丸が発射される仕組み、そして何よりも遠くの対象を撃ち抜ける現象。何がある!今、俺の脳ミソの中心に、一体何が!? いやむしろ、そんなこだわりは必要ない。俺は、どんな銃でも好きだ。確かに俺は、銃を撃った。それは事実だ。 発射された弾丸は、どこまでも、どこまでも、飛んで行く。どこまでも、どこまでも、俺の夢を乗せ飛んで行く。何も恐れない。何にも屈しない。力強くどこまでも、どこまでも飛んで行く。何だ?何が起こった!? どこまでも、どこまでも、飛んで行く。どこまでも、どこまでも、銃は、素晴らしい。何が?何が素晴らしいんだ? 銃好きの奴には、これぞって言うこだわりの銃がある。だが俺は、違う。そこら辺の奴とは違う。俺にそんなこだわりなんかはない。銃は、素晴らしい。どこまでも、どこまでも、俺の脳ミソの怪音は、 物心ついた時には既に、俺の銃を虜になってた。むしろそれは、銃の方が俺に虜にどこまでも、どこまでも、夢と希望を乗せて、力強く脳ミソが発射されて、ロマンだ。こだわりなんかはない。 銃は、人間が創り出したもっとも素晴らしい脳ミソだ。ゼリーが食べたい!ゼリーが無性に食べたい!イチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリーイチゴゼリー!
「・・・・・・・・・。」
銃は、素晴らしい。俺がいつから銃の虜になったのかなんて覚えてない。物心ついた時には既に、俺は銃の虜になってた。このフォルム、弾丸が発射される仕組み、そして何よりも遠くの対象を撃ち抜ける現象。まさにロマンだ。銃好きの奴には、これぞって言うこだわりの銃がある。だが俺は、違う。そこら辺の奴とは違う。俺にそんなこだわりなんかはない。いやむしろ、そんなこだわりは必要ない。俺は、どんな銃でも好きだ。銃は、人間が創り出したもっとも素晴らしい発明だ。世の中、色々と驚かされる発明があるが、それらは銃の比じゃない。銃は、素晴らしい。発射された弾丸は、どこまでも、どこまでも、飛んで行く。どこまでも、どこまでも、俺の夢を乗せ飛んで行く。何も恐れない。何にも屈しない。力強くどこまでも、どこまでも飛んで行く。

第四百三十一話
「コウトウブニ銃ヲ」

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2014年9月24日 (水)

「第四百三十二話」

「ちょっと待てー!!」
「どうしたのよ!?急に大声出して!ビックリするじゃない!」
「ビックリしてるのは、俺だ!」
「何でビックリしてるの?」
「まず!夜中にトイレに行こうと起き上がった時、部屋の天井が落ちて来た事にビックリで!その天井を支えてる自分の火事場の馬鹿力に次にビックリして、最後にお前にビックリだよ!」
「アタシ!?何でアタシ?」
「夫が必死で天井を支えてる横で、妻が呑気にブーメラン作ってる光景にビックリしない訳がないだろ!」
「何か、変な時間に目が覚めちゃって、眠れなくなっちゃったから、作りかけのブーメランでも作ろうかなってさ。」
「何だ作りかけのブーメランって!先住民か!お前は、俺が会社で働いてる時にブーメランなんか作ってたのか!」
「そうよ。悪い?」
「いや別に、お前がどんな趣味を持とうが口出しするつもりはないよ!」
「ありがと。」
「だが!この場合は、おかしいだろ!」
「だって、変な時間に目が覚めちゃって、眠れなくなっちゃったから。」
「変な時間に目が覚めちゃって!眠れなくなっちゃっても!その横で夫がプルプルしながら天井支えてるのにブーメランっておかしいと思わないのか!」
「ドリームキャッチャーなら良かった?」
「何だお前、先住民への憧れメガマックスか!」
「別にそんな事ないわよ。」
「そうじゃなくて!」
「シーッ!」
「何だよ。」
「今、一番集中して取り掛からなきゃならない場所に差し掛かったの!」
「ブーメランなんか今どうでもいいだろ!!」
「あのね?確かに、どうでもいいかもしれないけど、アタシは変な時間に目が覚めちゃって、眠れなくなっちゃったの!」
「だとしたら、もっと他にやらなきゃならない事が、目の前にあんだろって!」
「無いのよ!」
「無い訳が無いだろ!」
「無いのよ!」
「おいちょっと、マジで一旦ブーメラン作るその手を止めろ!そして、俺を見ろ!」
「何、急に?恥ずかしいよ。」
「馬鹿か!いいから、俺を見ろ!」
「はいはい。」
「どうだ?俺は今、どんな状況下だ?」
「天井を支えてる。」
「うん!」
「うん!」
「うん!」
「うん!」
「いや、うんじゃなくて!」
「ご苦労様。」
「いや、ご苦労様だけどご苦労様じゃなくて!」
「えっ?何?これはあまりにも寝起きには難問過ぎるクイズよ!」
「クイズなんか出題してない!寝起きでブーメラン作れるぐらい頭冴えてるだろ!」
「これはもう、何て言うの?ほら、何年も何年も作ってるから、感覚で覚えてるって言うの?目を瞑ってでも作れる域?」
「何だよその域!お前にいるのかその域!お前、何になりたいんだ?」
「フォトグラファー。」
「だったらそんな事してないで写真を撮れ!」
「そうね!ブーメランなんか作ってる場合じゃないわね!カメラ、どこだったかしら?」
「このタイミングでカメラを探すな-!」
「何で?このタイミングを与えてくれたのは、アナタよ?」
「そのタイミングは与えたかもしれない!がしかし!今はカメラを探すよりももっと他にやる事があんだろ!」
「朝御飯の支度?」
「助けを呼ぶ事だ!!」
「何で?」
「何で、は絶対におかしいだろ!いいか?助けを呼ばなきゃ!お前だって危険なんだぞ!このプルプルは、いつ限界が来てもおかしくないプルプルなんだぞ!天井に押し潰されるんだぞ!」
「ワオ!」
「この状況で、よくぞそんなリアクションが飛び出たな!」
「どうすればいいの!」
「だから!助けだよ!」
「レスキュー?」
「そうだよ!」
「レスキューね!」
「分かったんなら早くしてくれ!」
「その前に、ちょっと聞いてもいい?」
「何だよ!」
「どうしてそんなに激しくプルプルしてるの?」
「天井支える限界に来てるって言ってんだろうが!」
「ねえ?」
「何だよ!」
「そのプルプル、何かに活用出来るんじゃない?」
「何に出来るんだよ!てか、プルプルの活用法とかいんだよ!」
「ちょっと待って?」
「待たせるなー!」
「例えばそうね?そのプルプルで発電するとか?」
「どんだけのプルプルが必要だと思ってんだ!」
「だから!プルプル発電所を作るのよ!プルプルをかき集めるのよ!」
「何だよプルプル発電所って!何だよプルプルをかき集めるって!思い付きもいいとこだな!と言うか何で助けを呼ぶ気配を出さないんだよ!お前は! 」
「だって、そのプルプル勿体ないじゃない?」
「このプルプルはな!必死で俺とお前の命を守ってるプルプルなんだよ!勿体ないじゃなくて!既に十分な役割を果たしてるんだよ!だからもう!俺のプルプルに構うな!」
「分かった。」
「だからって、ブーメラン作りに戻るな!早く助けを呼べー!!」
「難しいわね。」
「何が難しいんだー!」
「助けて-。」
「お前な!ブーメラン作りメインに片手間でそんな棒読みで感情ゼロの小さな声で助けが来ると思うなよ!」
「だって、夜中よ?近所迷惑でしょ。」
「この状況で何で近所に気を遣わなきゃならないんだよ!俺に遣えよその気!そのブーメラン作りの手を止めろー!」
「はいはい。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・。」
「・・・・・・暇ね。」
「暇なもんか!」
「あれ?」
「どうした!?」
「何か眠くなって来たわ!」
「はあ?」
「おやすみなさい。」
「おい!」
「Zzzzzz。」
「おい!」
「Zzzzzz。」
「おーい!」
「・・・・・・何?」
「助けを呼ぶ気が無いなら手伝え!」
「はあ?無理よ!」
「いいから手伝え!」
「分かったわよ。全く、こんな力仕事を女性にやらすなんて、鬼ね!」
「鬼はお前だろ!」
「ねえ?」
「何だよ!」
「早くもプルプルして来たわ。」
「そうか。」
「見て!いい感じのプルプルよ!」
「うるさい!」
「痩せそうだわ!」
「集中しろ!」
「はいはい。」

第四百三十ニ話
「プルプル発電所秘話」

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