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2014年9月10日 (水)

「第四百三十話」

「私もね。長年、整形外科医をしていますが、貴方のような患者さんは初めてですよ。えっ?顔に?戦車?」
「そうです!先生!僕の顔に戦車を付けて下さい!お願いします!」
「両腕を後ろにピーンとして、深々とお辞儀されてもですよ!顔に戦車って、玩具か何かのって事ですか?」
「違いますよ!マジの戦車ですよ!」
「マジの戦車って!だいたいマジの戦車がいくらすると思ってるんですか!」
「バイト頑張ります!」
「それで買えるなら街中、戦車だらけですよ!と言うかですよ?顔に戦車を付けると言うよりも、戦車に貴方を付ける風になりますよ?」
「それは、先生!もちろん価値観ですよ!人々が僕を見て、あの人、戦車にくっついてるな。と思うかもしれませんが、僕自身、顔に戦車を付けてると思っていれば、それでいいんです!」
「もちろん価値観って、だいたいなぜ顔に戦車を付けたいんです?」
「先生、実は僕、小さい頃いじめられてたんです。いじめられっ子だったんです!」
「こんな自慢気に、いじめられっ子をカミングアウトする人、初めてですよ。」
「今でも、その時受けた心の傷なのか、元々の僕の気質なのか、プライベートでも職場でも、言いたい事が言えないんです。断ればいいのに、その一言が口に出せないんです。泣き寝入りです。泣き寝入りの人生です。いや、もしかしたら、僕自身、こんな情けない僕を受け入れて、諦めて、むしろ逆に僕がいないと世界が回らないんだって、開き直ってるのかもしれません。開き直り人生なのかもしれません。」
「なるほど。で、なぜ戦車に辿り着いたんです?」
「強くなろうと思ったんです!強くなれば、人生が変わると思ったんです!いじめられっ子の僕と、おさらばなんです!」
「考えが飛躍し過ぎでしょ!だったら、ジムに通って体を鍛えるとかすればいいじゃないですか。」
「それじゃあダメなんです!」
「何で?」
「だって先生?想像してみて下さいよ!ムキムキの筋肉男と、顔に戦車が付いてる男、どっちが強そうに見えます!」
「いや、すいません。顔に戦車の方が、いまいち上手く想像出来ないです。」
「もちろんこうですよ!こう以外に考えられないでしょ!」
「それは、戦車のお尻の部分に顔って事でいいんですかね?」
「威圧感が違うてしょ!筋肉がムキムキと顔に戦車とじゃあ!」
「威圧感は、そうですが、単純に日常生活に支障あり過ぎますよ!」
「先生!ありがとうございます!」
「何の握手でしょう?」
「やっぱり先生のような専門家の人に話を聞いてもらって良かった!」
「何の握手ですか?」
「ですよね!顔に戦車を付けてたら日常生活に支障あり過ぎですよね!」
「それは、私じゃなくても近所のおばさんからでも得られたと思いますよ?」
「やめます!顔に戦車、やめます!」
「賢明な判断だと思いますよ。では、お気を付けてお帰り下さい。」
「じゃあ、先生!顔に戦車は諦めるとして、パカッと顔が開いて中からミサイルが50発ぐらい出るように、お願いします!」
「いやだから、体を鍛える方向には向かないんですか?」
「パカッと顔が開いて、中から火炎放射でも構いません!」
「何でそんに、パカッと顔を開けたがるんです。」
「勘違いしてもらっては困ります、先生。ミサイルのパカッとは、顔の左側に蝶番的なモノがあっての右側パカッとです!火炎放射は、右側に蝶番的なモノがあっての左側パカッとです!」
「私が何を勘違いしているのだと思ったのでしょ?左からだろうが右からだろうが、パカッとはパカッとに変わりないでしょ!」
「じゃあ、観音開きで中から毒ガスってのは、どうですか?」
「だから私は別に開き方に問題定義してる訳じゃありませんよ!そんなパカッと顔を開けるようにしたらね?思いも寄らぬ時にパカッとなったら大変でしょ?後々、開く部分がバカになって何かする度にパカパカパカパカ開いたらどうするんです?ねぇ?ここは素直に体を鍛える方向にしましょ。」
「確かに先生の言う通りですね。腕立て伏せしてる時にずっと火炎放射してたら、腕立て伏せする度に火事ですもんね!」
「何でそうなってから体を鍛える!そうなったら別に体を鍛える必要性ないでしょ!なぜにそうなる前に体を鍛えようとしない!」
「あ、そうだ!先生!耳から常に水が出るようにして下さい!」
「どうして顔パカ火炎放射で話を進めてるんです!と言うか、そんな感じにするなら、プラマイゼロなんだから、素直に体を鍛えた方がいいでしょ!」
「じゃあ、先生?顔の真ん中に川流して下さい!」
「ここに来て何ですか?意味不明な発想の転換。」
「僕、川が好きなんですよ。」
「なら、川に行けばいいじゃないですか。」
「もう!川に行っただけじゃ満足しない体なんです!」
「どんな体ですか。」
「川から来てもらいたいんです!」
「どう言う理屈なんですか。」
「こう顔の真ん中に川を流して下さい!大雨の日は外に出ないと誓約書にサインしますから!」
「氾濫したってたかがしれてるでしょ!」
「僕、カナヅチなんです!」
「なぜ、川が好き?」
「カナヅチだって川が好きなんですよ!川は人生です!川は弱肉強食です!川は偉大です!川は英知です!そんな川に包まれて生きて行けたら、きっと僕!生まれ変われると思うんです!昔の自分とおさらばなんです!」
「んまあ、何となく言いたい事は分かりましたよ。でもね?川の仕組みとして、貴方には流れる水がないじゃないですか。」
「何言ってるんですか!人間の体には大量の水分があるじゃないですか!」
「それを水脈として使用したら貴方自身がすぐ干からびて死ぬでしょ!」
「だったら、先生!頭に連峰も作って下さい!そしたら水脈問題は解決じゃないですか!」
「握手、やめて下さい。」
「やめませんよ!」
「何で?」
「握手が好きなんです!握手と言う行為が大好きなんです!握手は人生です!握手は弱肉強食です!握手は偉大です!握手は英知です!」
「握手のどこら辺が弱肉強食なんでしょう?」
「だから先生!顔のど真ん中に第3の手を付けて下さい!」
「そのとりあえず思い付いた事を顔にどうこって発想やめません?」
「何なんですか!先生は!」
「私の台詞ですよ。」
「ことごとく僕のアイデアを否定して!」
「そりゃあ、しますよ!」
「何なんですか!先生は!」
「だからそれは、私の台詞ですよ。」
「はっは~ん!分かったぞ!そっかそっか!なるほどね!」
「な、何ですか?」
「つまりあれだ!」
「どれです?」
「無理って事なんですよね?僕が言った今まで全ての整形手術は、先生の技術では、出来ないって事なんですよね?」
「あのね!貴方ね!」
「だから僕の提案を拒絶して、体を鍛えろ、体を鍛えろ、ってお母さんの如く言うんですよね?そっかそっかそっか!」
「私を侮辱するのもいい加減にしろ!出来ないから拒絶だと?ふざけるな!」
「なら出来るって言うんですか?」

第四百三十話
「はい、全て可能です」

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