« 「第四百二十八話」 | トップページ | 「第四百三十話」 »

2014年9月 3日 (水)

「第四百二十九話」

 この作品を書くにあたり、作者は複数の寺を巡り、作品の無事を祈願した。

第四百二十九話
「心霊写真」

「ハゲ。」
「ハゲてねぇよ!剃ってんだよ!」
「あそう。で、この写真なんだけどな。」
「写真がどうかなさったのかな?」
「おいおいおい!寺の住職に写真を持って来たんだぞ?楽しい二人の旅行のスナップ写真な訳がないだろ!心霊写真だよ!心霊写真!供養してもらおうと持って来たんだよ!大丈夫か?この寺?」
「心霊写真と言うのは、あの心霊写真ですかな?」
「心霊写真って言ったら心霊写真だよ!あのもそのもこのもないだろ!」
「では、拝見しましょう。」
「おう!拝見して腰抜かすなよ!」
「どれどれ?」
「その写真はな。バスで行く旅行のツアーに先週参加した時に観光地で撮った集合写真なんだよ。」
「ふむふむ。」
「俺もさ。最初は、何の事はないただの旅行の楽しい思い出の集合写真だと思って、ニヤニヤしながら見てたんだよ。」
「ふむふむ。」
「でもさ。何だか、段々違和感を感じるようになって来たんだよ。」
「ふむふむ。」
「そしたらどうだよ!戦慄の心霊写真じゃねぇか!」
「ふむふむ。」
「もう恐くて恐くて!きっとこの写真は、手元にあるだけで何か不吉な事が起こるんじゃないかって!そう思ったらいてもたってもいられなくなってさ!」
「ふむふむ。」
「家の近くのこの寺に来たって訳だよ!」
「ふむふむ。」
「まだ見付からないのかよ!結構な時間、写真と睨めっこだったろ!」
「しかし、私にはいくら拝見しても普通の楽しい旅行の思い出の写真にしか見えませんが?」
「視力もハゲか!」
「ハゲてねぇよ!剃ってんだよ!」
「いいか?こんなもん寺の住職だとかって立場関係ないないぞ!はっきりと写ってんだろうが!大丈夫か?この寺?」
「え?」
「いや、このタイミングで写真の裏見る住職がどこにいんだよ!本格的にこの寺、大丈夫なのか!」
「この寺は!由緒正しき寺である!」
「いや、どこに行こうとしてんだ!」
「木魚を叩きに行こうかな、と。」
「何で?いいから早くその心霊写真を供養してくれよ!」
「だから!この写真の一体どこが心霊写真なんですか!」
「モロだろ!」
「モロって!」
「だから!はっきりとお化けが写り込んでんだろ!」
「それじゃあ、心霊写真ではないか!」
「そうだよ!それをさっきっから何度も何度も言ってんだよ!」
「いや、しかしね?私もそれに負けず劣らず何度も何度も言ってるように、この写真の一体どこが心霊写真なんですか?この写真の一体どこにお化けが写り込んでるんですか?ですよ。」
「本当に分からないのか?」
「申し訳ない。」
「本当に本当か?」
「このハゲに誓ってウソではない。」
「ハゲなんじゃねぇか!」
「教えてくれ!お化けは、どこに写ってるのかを!」
「ハゲを近付けて来るんじゃない!ハゲを!いいか?住職!聞いて驚くなよ!」
「はい!」
「全部だ。」
「全部?全部と言うのは?」
「だから!この集合写真に写ってる俺以外の人間全員だよ!」
「恐っ!」
「だろ?」
「いやいやいや、この写真がじゃなくて、貴方がですよ!」
「何で俺が恐いんだよ!別に鉈とか持ってる訳でもあるまいし!」
「だって、バスで行く旅行ツアーの集合写真でしょ?つまり、貴方の回りにいる人達は、他のツアー客って事でしょ?」
「だから!最初に言っただろ!初めは旅行の楽しい思い出だと思ってニヤニヤしながら見てたって!でもな?ここに写る誰1人として知らないんだよ!」
「そりゃあ、そうでしょ!」
「いやだから!同じツアー客として、初対面って話じゃなくて!その時の他のツアー客じゃないんだよ!」
「それは、貴方が別のツアーの集合写真に写り込んでしまっただけの話じゃないんですか?つまりそれは、このツアー客からしてみれば、貴方がお化けじゃないですか。」
「俺は馬鹿か?何で他のツアーの集合写真に写りに行っちゃうんだよ!それにいいか?だいたい俺は、こんな場所で集合写真を撮った覚えはないんだよ!」
「じゃあ、この写真は一体何なんですか!」
「後日、旅行会社から送られて来た写真の中に入ってたんだよ!いいか?それはつまり何を意味するのかって言うとな?お化けは、写真に写り込んでる奴等だけじゃなく!この写真を撮影してる奴もお化けって事だ!」
「どんな心霊写真だよ!」
「凄く心霊写真って事だよ!」
「有り得ないでしょう!」
「それにな。よくよく考えてみると、そもそも俺は先週、バスで行く旅行ツアーになんか行ってないんだよ!それはつまり何を意味するのかって言うとな?旅行会社もお化けって事だ!」
「それは、お寺に来る以前に病院へ行かれた方がいいのでは?」
「それとまだあるんだ!」
「まだあるの?」
「住職、その心霊写真を見てるアンタもお化けなんだよ!」
「どゆこと?」
「戦慄はまだ終わらない!」
「もう終わってもいんじゃないですか?」
「その心霊写真を持って来た俺自身もお化けなんだよ!」
「怪談話ド下手か!ならいいじゃないですか!全部が全部お化けなら、それはそれで平和じゃないですか!」
「住職?」
「はい?」
「これって、除霊始まってんのか?」
「だとしら、私もヤバいわい!」

|

« 「第四百二十八話」 | トップページ | 「第四百三十話」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/121942/57268417

この記事へのトラックバック一覧です: 「第四百二十九話」:

« 「第四百二十八話」 | トップページ | 「第四百三十話」 »